”別れた”はずの彼と6ヶ月以上ぶりに会って、
するはずじゃなかったセックスをして
動画を撮られて
食事をして
自分たちの動画を観て興奮した彼と
またセックスをして...
気づくと、夕方の6時を回っていた。
朝の9時に待ち合わせたから、もう9時間も経っていた。
楽しくて、時間があっという間に過ぎていた。
結局、私は彼と一緒にいると楽しいのだ。
ーーー
前回を最後に彼と“お別れした”あと、
私の気持ちは本当に冷めていて
セックスしたいとか全く思っていなかった。
離れていた期間も、
彼に会いたくてどうしようもないとか
抱かれたいとか、性欲すら特に感じなかった。
それなのに、いったん彼とのセックスが始まると
身体が自然に反応してしまい
私は何度も達してしまった。
好きだとか、愛してるとか、そういう気持ちは
感じていないのに。
それとも、感じないように気持ちを抑制しているのだろうか?
※前に彼にそんなことを指摘されたことがありました。
↓↓
ーーー
最後のセックスが終わり、
彼に腕枕をされながら休んでいた。
彼はさっきまでの猛りが嘘のように
別人のように穏やかになっている。
「ねぇtefeさん、またこっちに遊びにきてよ」
「え、だってもう行く用事がないですもん」
「...」
「...?」
自分の口からポロッと出た言葉を
慌てて心の中で反芻した。
(いや、前は彼に会いに行くことが用事だった。。公式の用事が無いのに、彼に会いにいくためだけに彼の赴任先の国に行ったんだった。)
「...そういえば、今月から友人が○○に移住することになったんです。だから◯◯には遊びに行きたいなと思ってます。」
○○は、以前彼と密会旅行として落ち合った街だ。
その時は彼も私も比較的自由に移動できた。
彼が住んでいるのと同じ国内だけれど、彼の街から○○までは、飛行機で6時間くらいかかる。
「そうなんだ、じゃあ○○に行くことがあったら、僕のとこに寄ってってよ」
「...○○で落ち合うことはもうできないですもんね。」
「そうだねぇ…」
前回、○○で落ち合った時は楽しかった。
たった5日間だったけれど、
2人で好きなように過ごした。
いやだなと思うことが1つもなくて、全部が完璧だった。
間違いなく、人生の中で1番楽しい旅行だったし
一緒に見た夕日はたぶん人生の中で1番綺麗だった。
もし次回も彼が○○に来てくれて合流できるなら
そこで会うのも良いかもしれない。
でも、彼の現在のライフスタイル上、それは難しい。
“私が友人に会うために○○に行くとして、
途中で彼の住む街に寄って、そこから○○まで飛行機で6時間のフライトをする...?なぜ私がそんな面倒なことを...?”
前回、彼と別れると決めたことで、
きっと私は自分の中で線引きができていたのだろう。
以前だったら、僕のとこに遊びにきてよ、などと言われたら嬉しくなってすぐ計画していた。実際に、似たような行程で会いにいったこともあった。それも2度も。
今回はそういう気持ちもエネルギーも全く湧き上がってこなかった。
それは、コロナ自粛が終わってお互いテレワークではなくなりそこまで自由時間が取りにくくなったこともあるが、彼とのオンライン同棲状態が終わって感情的なアタッチメントがなくなったこと、なによりも、彼に会うためだけに時間と労力をかけて準備をすることを上回る情熱(?)のようなものが消えただせいだろう。
それに、彼の赴任先での滞在身分の諸手続きが終わり
彼が赴任先から自由に出国できるようになったと
聞いたことも大きい。
私が彼の赴任先に行かなくても
彼が今後また日本に戻るタイミングで
会える時/会いたい時に会えば
それでいいんじゃないだろうか?
ーーー
その後また他愛もない話をしたり、
食事中に話していた次の本の構想を話したり、
チェックアウトまでの時間を楽しく過ごした。
シャワーを浴びに行って、
浴室を出る時に、“これでもうお別れ”という気分になった。
バスタオルを身体に巻き付けた状態で部屋に戻り、
脱いだ服が置いてあるソファとローテーブルの方に行った。
さっきなし崩し的にセックスすることになったので
ソファとローテーブルの辺りに、
下着も服も置きっぱなしにしたままだったのだ。
すると、ガラスの透明なローテーブルの上に
何か置いてある。
手のひらサイズの、重厚な装丁の本を模した可愛らしい缶だった。パステルカラーのリボンがかけられている。
「あれ? これなんですか?」
「ふふっ お土産です」
「え すごく嬉しい!形も可愛いし色も綺麗ですね。」
中にはチョコレートが入っているようだった。
前にも、赴任先から一時帰国した時に
帰国中に会うための場所を借りてくれて
そこに初めて一緒に行った時にお土産を渡してくれた。
あの時のお土産も、手のひらサイズの絵本ケースの中に、まるで絵本の表紙のような色とりどりの包装紙で包んだチョコレートが“何冊も”入ったものだった。
前回と今回でメーカーは違うようだけれど、
彼の赴任先の国では本の形をしたチョコレートが
流行っているのだろうか?
服を着ると、
これでもうお別れだという気分になった。
物悲しさもなく、かといって嫌な気分になるでもなく、
ごく自然な感じで一緒にチェックアウトして
ホテルから駅までのコンコースに向かって一緒に歩いた。
話に夢中になって途中で方向を間違い、
ホテルの地下駐車場に続く通路に紛れ混んでしまった。
気づいた時には顔を見合わせて笑った。
前回、彼と“別れた”時にも同じようなことがあった。
駅前のコンコース上の、
別々の方向に行かなければいけない別れ道で、
私たちは会釈をして別れた。
まるで、近所に住んでいて、またすぐに会える関係であるかのように。
あまりにあっさりした別れ方だったが、
それでいて、お互いに何らかのニュアンスを込めた
眼差しを交わした。
具体的な約束は何一つしなかったが、
私たちはまたきっと会ってしまうんだろう。
確信に近い予感がした。
そして、以前、展示会で見た長い詩の
最後のパートを思い出して、
あのシーンみたい!と思った。