密会旅行準備モード②
今日もいつもの時間に彼からチャットが来て、
ビデオ通話に切り替えた。
最初ふつうの話をしていて、今日のご飯とか
今日撮った写真とかの話題だったのだけれど、
なぜか途中から、生き物を飼っている場合に
一緒に入居できる老人ホームの話になった。
いやに具体的な話になって、つい熱中してしまった。
「まだ数十年は元気でいたいものです。
というかこれ何の話?」
「僕らの終活!」
思わず爆笑してしまった。
「確かに!」
「僕たちの関係も、とうとう終活の話をするようになっちゃったね。」
「終活の話の前に、数日後の予定の話しませんか?」
「そうだね、そうしよう。」
内心、終活の話を彼とする事になるとは。。と、
ちょっと嬉しかったが、私のスーツケースのパッキングに関わることを聞くのが先決だった。
「けっこう気温が低そうだから冬服の方がいいですかね?雨予報も出てたから、傘も持っていかなきゃ。」
「なんでも買えるから、クレジットカードだけあればなんとかなるよ。」
「そうですね。でも風邪引くと悪いから、ある程度は持っていかないと。服は、着いてから買ってもいいんですけど。下着とかは、ちゃんと持っていきます。」
「うん。今回は、頑張って外にいかなくてもゆっくり過ごせばいいかなって気がするよ。元気で会えればそれで良いかな。」
「そうですね、終活の話が出るくらいの年齢だし。
ちょっと着いてからの体調をみて考えましょう。」
2人で爆笑した。
「なんだか僕たちも年とったね。」
「わたし、旅行する時って、あまり細かい計画は立てないで、現地に着いてから考えるんですよ。」
「うん、今回も、その場のノリで考えよう。」
「そうですね。お昼寝しにいく感じでもいいかな。その方が、例のアーティストの舞台を観るという本来の目的を忘れないでいられるし。」
「そうだね。たまたま同じアーティストが好きで、たまたま同じ日の公演を観に来て、たまたま同じホテルの同じ部屋に泊まって、たまたま一緒に寝ちゃうんでしょ。」
「そうです。そう考えた方が気がラク。趣味が合うお友達だって。」
「オタ友だね。身体だけの関係だったら、こんなに長続きしないし、話も続かないからこんなに毎日毎日電話しないよ。」
「そうですね。手の届く所に身体がないのに話が続くのは、オタク友達だからですね。うん、そう考えると、今回の計画も自分の中で納得できるんですよ。」
「でもさ、一緒に寝れるの良いよね。」
「はい。。」
「前もそうだったけど。」
(朝起きて彼の寝顔が横にあるのが幸せだと思ったのを思い出してキュンとした。彼もそんな風に思ってるのかな?)
「夜もやって、朝起きてもまたやってさ。連日よくセックスしたよね。あれ最高だったな。」
(私がキュンとしたのとは別の視点のようだった。)
「もう、どうしてそういうこと言うんですか?」
「だって事実だから。」
「そうですけど。。」
「今回、そういうことを目的に行くわけじゃないですからね。!あくまで、目的はアーティストの公演ですから。」
「そうだね。でも会えるの楽しみだな。
一緒のベッドでくっついて寝るの。」
「なんだかまた顔が赤くなってきちゃうからやめてください。」
「ふふっ、想像しちゃった?」
「やだもう。」
ビデオ通話の画面に映ってる自分の顔が、また赤くなってきた。
「じゃあ僕は明日ちょっと早いから、そろそろ寝るね。」
「はい。ゆっくり休んでくださいね。」
「おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」