ABC理論(ABCD理論ともよばれることもある)は、アメリカの臨床心理学者アルバート・エリスが提唱した考え方でアサーション にも深く関わるものです。彼は、人の悩みは出来事そのものではなく出来事の受け取り方によって生み出されると考えました。下図の出来事(Activating event)と結果(Consequence)との間に置かれた”Belief(信念)”がその「受け取り方」を表しています。そして受け取り方のうち、「非合理的な思い込み(Irrational Belief)」を「合理的なものの見方(Rational Belief)」に変換することを「論駁(Dispute)」と呼び、彼が創始した論理療法(Rational Therapy)の要としたようです。
「非合理的な思い込み」といっても、子供のころからさまざまな形で教え込まれてきた常識も多くみられます。平木典子さんは アサーション で参考にさせていただいた著書の中で、
・人は誰からも愛されなければならない
・人は失敗をしてはならない
・人を傷つけてはならない
といった例をあげています。
「非合理的な思い込み」は、文章の記述が「~ねばならない」「~べきである」「~はずである」といった表現をとることが多く、強い願望がいつの間にか事実とすり替えられてしまうことから生じます。したがって、そうしたすり替え(混同)を論理的に論駁することで「合理的な見方」に書き換えることが論理療法の基本的なアプローチとなっています。
「人は失敗してはならない」という例でいえば、「失敗しないほうがいいけれど失敗するのが人間というもの。だから失敗から学べるといいね」というように、頭ごなしに否定する”Must”や”Should”ではなく、”May”や”Can”で現実を受け入れて、それを乗り越える”Will”を引き出そうとします。
ABC理論はその名前の通り、日頃の言葉遣いが私たちの行動を深いところで規定しているという人間心理の基本(ABC)を教えてくれます。