ニッポンを元気にする英語!

ニッポンを元気にする英語!

日系企業で計4回10年超の海外生活を経験(注:その後外資系企業を経て独立起業)する中で、世界における日本のプレゼンスが年々落ちてきていることに強い危機感を覚えています。英語学習に資する情報発信を通し、少しでも日本人の実用英語力の底上げに貢献できれば幸いです。

"It's always darkest before the dawn."
「夜明け前は最も暗い(希望を持ち続けよ!)」


"As you start to walk out on the way, the way appears."「動けば、動く!」

前回の記事では、日本の「英文解釈」の約100年にわたる歴史を振り返りました。

 

山崎貞の時代から、伊藤和夫の『英文解釈教室』、そして近年の「構造を見える化する」英文解釈へ。

 

その歴史をたどった末に、私は一つの問題を提起しました。

 

「英文の構造を分析できること」と「英語を読めること」は、本当に同じなのか?

 

今回は、この問題をもう少し掘り下げてみたいと思います。

 

結論から言えば、私はこの二つはかなり違う能力だと考えています。

 

そして、この違いこそが、

 

「英文法はかなり勉強したのに長文になると遅い」

「難しい英文なら、時間をかければ読める。でも速く読めない」

「英文は読めるのに、同じ内容を音声で聞くと分からない」

 

という、日本人英語学習者によく見られる現象の一つの原因なのではないかと思っています。

 


■ 英文を「読んで」いるのか、「解読」しているのか?

まず、少し意地悪な質問をしてみましょう。

 

次の英文を読んでください。

 

The proposal submitted by the committee last month is expected to significantly reduce administrative costs.

 

意味は取れたでしょうか。

 

英文解釈を勉強した人なら、たとえば次のように分析すると思います。

 

The proposal
→ 主語(S)

 

submitted by the committee last month
→ proposalを後ろから修飾する過去分詞句

 

is expected
→ 主節の述語(V)

 

to significantly reduce administrative costs
→ expectedに続くto不定詞

 

したがって、

 

「先月委員会によって提出された提案は、管理コストを大幅に削減すると期待されている」

 

といった意味になります。

 

まったく問題ありません。

 

構造分析としては正しい。

 

しかし、ここで考えてみてほしいのです。

 

あなたは、本当にこの順番で英文を読んだでしょうか?

 

英文全体を一度見渡して、

 

「主語はThe proposalだな」

「submittedは過去分詞だな」

「主節の動詞はis expectedだな」

 

と分析してから意味を組み立てたのだとすれば、それは非常に高度な「英文解釈」です。

 

しかし、実際の英語はそんなふうにはやって来ません。

 


■ 英語は「完成した一枚の絵」としてやって来ない

文字で書かれた英文を見ると、私たちはつい忘れてしまいます。

 

英文は、本来、

 

左から右へ、時間とともに入ってくるもの

 

です。

 

特にリスニングでは、それがはっきりします。

 

音声なら、

 

The proposal...

 

と聞こえた瞬間には、

 

submitted by the committee last month...

 

も、

 

is expected...

 

も、

 

まだ聞こえていません。

 

つまり、読み手・聞き手は、まだ英文の全体像を知らない状態で処理を始めなければならないのです。

 

ここが非常に重要です。

 

英文を本当にリアルタイムで処理するとは、

 

完成した英文を後から分析することではありません。

 

入ってきた情報を使って、

 

その場その場で次の構造を予測し、必要なら判断を保留し、新しい情報が来たら確定し、予想が外れたら修正する。

 

この連続なのです。

 


■ では、頭の中を「実況中継」してみよう

先ほどの英文を、今度は左から右へ読んでみます。

The proposal ...

まず The proposal が入ってきます。

 

proposalは名詞。

 

文頭です。

 

この時点では、

 

「これが主語(S)になりそうだ」

 

と予測できます。

 

ただし、まだ断定はできません。

 

重要なのは、

 

この時点で、すでに予測が始まっている

 

ということです。

 


The proposal submitted ...

次に submitted が来ました。

 

ここで一瞬、判断が必要になります。

 

submitは動詞です。

 

では、

 

The proposal / submitted ...

 

で、

 

「その提案が提出した」

 

という主語+動詞なのでしょうか?

 

違いますね。

 

proposalは「提出する側」ではなく、普通は「提出される側」です。

 

しかもsubmittedの後ろに何が来るかもまだ分かりません。

 

そこで、

 

「submittedは主節のVではなさそうだ。proposalを後ろから説明する過去分詞かもしれない」

 

と判断します。

 

ここでは、最初の予測を維持します。

 

The proposal
→ まだS候補

 

submitted
→ Sの中に入っている説明部分らしい

 

という状態です。

 


submitted by the committee ...

by the committee が来ました。

 

これでsubmittedが受動的な意味を持つ過去分詞である可能性が一気に高まります。

 

つまり、

 

The proposal
「その提案」

 

submitted by the committee
「委員会によって提出された」

 

と、前から意味を積み上げていけます。

 

ここで大切なのは、

 

日本語としてきれいな完成文をまだ作らなくてよい

 

ということです。

 

頭の中では、

 

「その提案……委員会によって提出された……」

 

くらいで十分です。

 


last month ...

「先月」。

 

これはsubmittedを補足しています。

 

ここまで来ても、まだ主節のVは現れていません。

 

つまり頭の中では、

 

「Sが長い。でも主節のVはまだ来ていない。待とう」

 

という状態になります。

 

この「待てる」という能力が、実は非常に重要です。

 


is expected ...

来ました。

 

is expected

 

ここで初めて、主節のVが確定します。

 

つまり、

 

The proposal [submitted by the committee last month] / is expected ...

 

という大きな骨格が見えます。

 

S + V

 

です。

 

「先月委員会によって提出されたその提案は……期待されている」

 

ここまでを、後ろから前へ戻らずに理解します。

 


to significantly reduce ...

expectedの後ろにto不定詞。

 

「何が期待されているのか」という内容が続く、と予測できます。

 

reduce
→ 減らす

 

何を?

 


administrative costs.

「管理コストを」。

 

ここで、

 

reduce administrative costs

 

という意味のまとまりが完成します。

 

そして英文全体も完成します。

 


■ 実は、英文を読むとは「予測ゲーム」である

ここまでの処理を整理すると、非常に興味深いことが分かります。

 

私たちは英文を読むとき、

 

単に、

 

単語 → 単語 → 単語 → 単語

 

と意味を拾っているわけではありません。

 

むしろ、

 

予測する

少し待つ

新しい情報を受け取る

構造を確定する

次を予測する

 

ということを猛烈なスピードで繰り返しています。

 

私は、この感覚こそが「直読直解」の重要な部分だと考えています。

 


■ 難しい英文では「すぐ決めない」ことも能力

もう一つ例を見てみましょう。

 

The results of the study conducted by researchers at several universities suggest that the effects previously attributed to genetic factors may in fact be strongly influenced by environmental conditions.

 

少し難しくなりました。

 

でも、やることは同じです。

The results ...

「その結果……」

 

名詞。

 

文頭。

 

S候補だな。

of the study ...

「研究の結果……」

 

まだSの中。

 

Vはまだ来ていない。

 

conducted by researchers ...

conductedが来ました。

 

「実施した」?

 

いや、studyは「研究を実施する」のではなく「研究が実施される」。

 

したがって、

 

studyを説明する過去分詞だな。

 

at several universities ...

「いくつかの大学で」。

 

まだ説明が続いています。

 

ここまで主節のVはありません。

 

待つ。

 

suggest ...

 

来ました。

 

ここが主節のVだ!

 

The results ... suggest ...

 

S + V

 

が確定します。

 

「その研究結果は……示唆している」

 

何を?

 

that ...

 

that節が来ました。

 

suggestの内容がこれから来る。

 

the effects ...

 

that節の中で、新しい名詞。

 

今度はthat節内のS候補。

 

previously attributed to genetic factors ...

 

「以前、遺伝的要因によるものとされていた……」

 

effectsを説明しています。

 

まだthat節のVは来ていません。

 

待つ。

 

may in fact be strongly influenced ...

 

来ました。

 

ここでthat節内のVが確定。

 

「実際には強く影響されている可能性がある」

 

何によって?

 

by environmental conditions.

 

「環境条件によって」。

 

完成です。

 


■ 「分からないまま待つ」ことは、悪いことではない

ここで、英語学習者にとって非常に重要なことがあります。

 

英文を左から右へ読んでいる途中では、

 

まだ構造が確定できない瞬間が必ずあります。

 

これは読解力不足ではありません。

 

むしろ当然です。

 

まだ必要な情報が来ていないのですから。

 

ところが、英文を一語一語「完全に理解してから先へ進もう」とすると、この不確定状態に耐えられなくなります。

 

そして、

 

「今のsubmittedは何だ?」

「どこにかかっているんだ?」

 

と前に戻る。

 

これが「返り読み」の一因になります。

 

上手な読み手は、すべてを瞬時に確定しているわけではありません。

 

むしろ、

 

「今はまだ分からない。もう少し先を読めば分かる」

 

という状態を保持したまま、前へ進むことができます。

 

これは非常に重要な読解能力です。

 


■ 直読直解とは「何も考えずにスラスラ読むこと」ではない

「直読直解」という言葉から、

 

英語を見た瞬間に、ネイティブのように何も考えず意味が分かる状態

 

を想像する人もいるかもしれません。

 

しかし、少なくとも学習段階では、私はそう考えていません。

 

むしろ直読直解とは、

 

英文が左から右へ入ってくるのに合わせて、構造と意味について仮説を立て、それを更新しながら理解していく能力

 

と捉えた方が実態に近いと思います。

 

つまり、

 

予測 → 保留 → 確定 → 必要なら修正

 

です。

 

これが高速化・自動化されることで、最終的には本人がほとんど意識しないレベルになっていく。

 

その状態を、私たちは「スラスラ読める」と感じるのではないでしょうか。

 


■ 「5文型」は試験問題を解くためだけの知識ではない

ここで、私が英語指導において5文型を非常に重視している理由も見えてきます。

 

SV、SVC、SVO、SVOO、SVOC。

 

学校英語では、

 

「これは第何文型でしょう?」

 

という問題を解くための知識のように扱われることがあります。

 

しかし、本来もっと実践的なものだと思います。

 

英文を読みながら、

 

Sが来た。


ではVはどこだ?

 

Vが来た。

 

このVの後ろには何が来そうだ?

 

目的語か?

 

補語か?

 

それともここで文が成立するのか?

 

つまり5文型は、

 

完成した英文を分類するためだけのものではなく、これから来る英語を予測するための「地図」

 

として使えるのです。

 

ここは、従来の英文法学習とリアルタイム型直読直解をつなぐ非常に重要なポイントだと思っています。

 


■ 「Vを見つける」ことが特に重要な理由

そして、その中でも特に重要なのが「V(述語)」です。

 

なぜなら、Vが分かると、

 

「誰が・何が、どうするのか」

 

という英文の中心構造が一気に見えてくるからです。

 

さらに動詞によって、その後ろに来る要素もある程度予測できます。

 

たとえば、

 

give

 

が来れば、

 

「誰に?」「何を?」

 

が続く可能性が高い。

 

make O ...

 

なら、

 

「Oをどうする?」

 

というCが続くかもしれない。

 

suggest that ...

 

なら、

 

「何を示唆しているのか」という内容がthat節で続く可能性が高い。

 

つまりVは、

 

それまで読んできた情報を整理すると同時に、その先に何が来るかを予測する司令塔

 

のような役割を果たします。

 

だから私は、英文をリアルタイムで処理するうえで、Vの認識を極めて重視しています。

 


■ 「英文解釈」と「直読直解」は対立するものではない

ここは誤解のないように強調しておきたいと思います。

 

私は、従来の英文解釈を否定しているわけではありません。

 

むしろ逆です。

 

精緻な構造分析ができなければ、正確な直読直解もできません。

 

主語とは何か。

述語とは何か。

準動詞とは何か。

関係詞とは何か。

節とは何か。

修飾とは何か。

 

こうした知識は不可欠です。

 

問題は、

 

そこで学んだ知識を「完成した英文を分析するため」だけに使うのか、

 

それとも、

 

「流れてくる英文をリアルタイムで処理するため」に使えるところまで持っていくのか、

 

という違いです。

 

言い換えれば、

 

英文解釈は「設計図を読む訓練」。


直読直解は「その設計図を使いながら実際に走る訓練」。

 

両者は対立するものではありません。

 

むしろ後者は、前者の上に成り立つものだと私は考えています。

 


■ なぜ「読めるのに、聞けない」のか?

そして、ここまで考えると、もう一つ面白い問題が見えてきます。

 

それは、

 

なぜ英文なら読めるのに、同じ内容を音声で聞くと分からなくなるのか?

 

という問題です。

 

もちろん、リスニングには、

 

音の連結、脱落、弱形、アクセント、発音、語彙の音声認識……

 

など、リーディングとは異なる要素があります。

 

しかし、それだけでしょうか。

 

紙の英文なら、分からなくなったら前に戻れます。

 

主語を探し直すこともできます。

 

文末まで読んでから、文頭へ戻ることもできます。

 

しかしリスニングでは、

 

英語は待ってくれません。

 

一度発せられた音は消えていきます。

 

つまりリスニングでは、

 

左から右へのリアルタイム処理能力が、リーディング以上に容赦なく試される

 

ことになります。

 

もしそうだとすれば、

 

「英文を速く正確に読めるようになること」と、

 

「英語をリアルタイムで聞き取れるようになること」は、

 

私たちが思っている以上に深くつながっているのではないでしょうか。

 


■ 次回――なぜ「読める人」ほど英語が聞こえるようになるのか?

今回見てきたのは、

 

英文を読むとは、完成した文を後から解読することではない

 

ということでした。

 

英語は左から右へ流れます。

 

その流れの中で、

 

予測する。
保留する。
確定する。
必要なら修正する。

 

そして、その処理を止めずに前へ進む。

 

これが、私の考える「リアルタイム型直読直解」の基本です。

 

そして実は、この考え方を突き詰めていくと、

 

リーディングとリスニングは、まったく別の技能ではない

 

というところに行き着きます。

 

次回は、

 

「なぜ英文を読める人ほど、英語が聞こえるようになるのか?」

 

をテーマに、

 

リーディングとリスニングの奥にある共通のリアルタイム言語処理について考えてみたいと思います。

 

「TOEICでは高得点なのに、ネイティブの会話になると聞き取れない」

「英文なら分かるのに、音になった途端についていけない」

 

そんな経験のある方には、特に面白いテーマになると思います。

日本の英語教育には、昔から「英文解釈」という独特のジャンルがあります。

 

英文法でもない。
英単語でもない。
長文問題集とも少し違う。

 

一つの英文を取り上げ、

「主語はどれか」
「述語動詞はどれか」
「このto不定詞は何を修飾しているのか」
「このwhichの先行詞は何か」
「どこまでが一つの節なのか」

といったことを丹念に分析し、英文の構造を明らかにしていく。

 

大学受験で英語を本格的に勉強した人なら、一度は「英文解釈」という言葉に触れたことがあるでしょう。

 

しかし、考えてみると不思議です。

 

そもそも、日本ではいつから、こんなふうに英文を読むようになったのでしょうか?

 

そして、英文解釈という方法論は、この100年ほどの間にどう変化してきたのでしょうか。

 

改めて振り返ってみると、そこには日本人の英語学習そのものの歴史が見えてきます。

 


「英文解釈」は伊藤和夫から始まったわけではない

私自身、長い間、

 

1977年に伊藤和夫が『英文解釈教室』を世に出したことが、日本の英文解釈史における大きな分岐点だった

 

と考えてきました。

 

そして、この認識は、おおむね正しいと思っています。

 

『英文解釈教室』は1977年の発売以来、難関大学受験生を中心に読み継がれ、現在まで累計100万部を超えるロングセラーになっています。

 

ただし、一つ注意が必要です。

 

日本の「英文解釈」は伊藤和夫から始まったわけではありません。

 

その歴史は、もっと古いのです。

 

象徴的なのが、山崎貞の『公式応用 英文解釈研究』です。

 

初版が刊行されたのは、なんと1912年、大正元年。

 

その後、改訂を重ねて『新々英文解釈研究』となり、長い間、日本の受験英語を代表する参考書の一つとして読み継がれました。1912年の初版から約90年にわたって支持された本であり、後の「英文解釈」参考書の源流の一つと見ることができます。

 

つまり、日本には少なくとも100年以上にわたる「英文解釈」の伝統があるわけです。

 


第1段階――「英文を正しく日本語に訳す」

明治から昭和前半にかけて、日本の英語教育の中心にあったのは、いわゆる「訳読」でした。

 

英文を読む。

文法事項を確認する。

単語や熟語の意味を調べる。

難しい構文を解きほぐす。

そして最後に、正確な日本語訳を作る。

 

大ざっぱに言えば、

 

英語

文法・構文分析

日本語

 

という流れです。

 

もちろん、昔の英文解釈を単純に「訳していただけ」と片づけることはできません。

 

そこには長年蓄積された高度な文法知識、構文知識、熟語知識がありました。

 

ただ、その最終目的はかなり明確です。

 

「この英文をどう正確に日本語にするか」

 

だったのです。

 

言い換えれば、英文そのものをリアルタイムで処理するというより、

 

英文をいったん解析し、完成した日本語として意味を再構成する

 

ことに重点が置かれていました。

 


第2段階――伊藤和夫が「英文の構造」を読む方法を体系化した

そこに登場したのが、伊藤和夫です。

 

1977年の『英文解釈教室』は、日本の英文解釈における大きな転換点になりました。

 

伊藤和夫の画期性は、単に難しい構文をたくさん紹介したことではない、と私は考えています。

 

もっと重要だったのは、

 

「英文を読むとは、単語を日本語に置き換えることではなく、英文内部の構造的な関係を見抜くことである」

 

という考え方を、徹底的に体系化したことです。

 

主語はどこにあるのか。

述語動詞はどれなのか。

どの語句がどの語句を修飾しているのか。

関係詞の先行詞は何なのか。

何と何が並列になっているのか。

どこに省略があるのか。

節と節はどういう論理関係にあるのか。

 

英文を「単語の列」として見るのではなく、

 

構造を持った一つのシステムとして見る。

 

ここに伊藤英文解釈の核心があったのではないでしょうか。

 

ですから、私は伊藤和夫を、

 

「英文解釈を発明した人」ではなく、


「英文解釈を“構造分析の方法論”として完成に近づけた人」

 

と位置づけるのが適切ではないかと思います。

 


第3段階――英文解釈が「一部の上級者だけのもの」ではなくなる

ただし、『英文解釈教室』には一つ大きなハードルがあります。

 

難しいのです(笑)。

 

名著であることは間違いありません。

 

しかし、ある程度の英文法と語彙力をすでに持った学習者でなければ、そこで説明されている「英文の見方」そのものを理解することが容易ではありません。

 

その後、英文解釈の方法論を、もっと学習者が使いやすい形にした参考書が次々と登場します。

 

その流れの中で、西きょうじ氏の『英文読解入門 基本はここだ!』などが果たした役割は大きかったと思います。

 

現在流通する改訂版は2005年刊。品詞、主語と動詞、準動詞、動詞の型、節、比較、倒置、同格、挿入、省略など、英文を読むために必要な構造認識を、よりコンパクトに学習できる形になっています。

 

つまり、

 

高度な英文を精緻に分析するための英文解釈

 

から、

 

普通の高校生が英文を読むために使える英文解釈

 

への展開です。

 

これはかなり重要な変化だったと思います。

 


第4段階――「構造を説明する」から「構造を見せる」へ

そして、ここ10年ほどで、英文解釈の参考書はさらに大きく進化したように感じます。

 

その象徴の一つが、肘井学氏の『読解のための英文法が面白いほどわかる本』でしょう。

 

初版は2015年12月。その後ロングセラーとなり、2022年版ではすべての例文について、英文構造を視覚的に理解するための「英文図解」が前面に打ち出されています。

 

ここは非常に重要な変化です。

 

それまでは、

 

構造を文章で説明する

 

ことが中心でした。

 

それが、

 

構造を図として見せる

 

ようになった。

 

主語と動詞。

修飾関係。

節のまとまり。

省略。

倒置。

 

こうしたものを「見える化」することで、英文解釈の学習に必要な認知負荷を大きく下げることができるようになりました。

 

関正生氏の教材などでも、英文について「構文の解析」を明示しながら、読解ルールと音読を組み合わせる設計が見られます。

 

西きょうじ氏、肘井学氏、関正生氏、竹岡広信氏、岡崎氏など、現在はそれぞれ特色のある良質な英文解釈・英文読解の参考書が多数出版されています。

 

英文解釈という分野は、この10~20年でかなり「学びやすく」なったと言っていいでしょう。

 


第5段階――ついに「英文解釈の民主化」が始まった

そして最近、さらに興味深い変化が起きています。

 

英文解釈が、難関大学受験生だけのものではなくなってきたのです。

 

例えば、2024年に刊行された八澤龍之介氏の『八澤のたった7時間で英文解釈』。

 

タイトルからして象徴的です。

 

英文解釈という、かつては「英語がかなりできる人が最後に取り組む難しい分野」というイメージのあったものを、初級者に近い学習者にも届くところまで下ろそうとしています。同書はGakkenから2024年7月に刊行されました。

 

これは私には、

 

「英文解釈の民主化」

 

のように見えます。

 

英語が苦手だからこそ、

 

主語はどれなのか。

動詞はどれなのか。

目的語はどれなのか。

どこが修飾語なのか。

それを最初から教える。

 

考えてみれば、非常に合理的です。

 

英文の構造が分からない人に、

「とにかくたくさん長文を読みなさい」

と言っても、なかなか読めるようにはなりません。

 

英文を読むための「設計図の見方」そのものを、まず教える必要があるからです。

 


しかし、英文解釈はまだ「完成」していない

ここまでを見ると、日本の英文解釈はこの100年で驚くほど進歩してきたことが分かります。

 

ざっくり整理すると、

 

① 日本語に訳す

② 構文・公式を覚える

③ 英文の構造を分析する

④ 構造を図解・可視化する

⑤ 初級者にも構造認識を教える

 

という発展を遂げてきた、と考えることができます。

 

それでは、英文解釈はこれで完成なのでしょうか。

 

私は、そうではないと思っています。

 

まだ一つ、大きな課題が残されています。

 

それは、

 

「構造を分析できること」と「英語を読めること」は、本当に同じなのか?

 

という問題です。

 


「分析できる」と「リアルタイムで読める」は違う

例えば、次の英文を考えてみましょう。

 

The proposal submitted by the committee last month is expected to significantly reduce administrative costs.

 

従来型の英文解釈なら、

 

主語は The proposal

submitted by the committee last month はproposalを修飾する過去分詞句。

主節の述語は is expected

to significantly reduce ... はその後に続く不定詞。

 

……と分析します。

 

これは完全に正しい。

 

そして、この分析ができることは非常に重要です。

 

しかし、実際に英語を読んでいるとき、私たちは全文を最後まで読んでから、

「さて、主語はどれだろう?」

と考えているわけではありません。

 

英文は時間とともに、左から右へ入ってきます。

 

したがって実際の脳内処理では、

 

The proposal
→ 名詞。主語候補だな

submitted by the committee
→ 新しい述語ではなく、proposalを説明しているな

last month
→ submittedにかかっているな

is expected
→ ここで主節のVが確定

to significantly reduce ...
→ expectedの内容が続く

 

という具合に、

 

英文が入ってくる順番に、構造を次々と確定していく

 

必要があります。

 

ここが非常に重要です。

 


「静的な英文解釈」から「動的な英文解釈」へ

従来の英文解釈は、紙の上にある完成した英文を分析することに非常に強い方法論でした。

 

言ってみれば、

 

英文を「静止画」として解析する技術

 

です。

 

しかし、実際のリーディングやリスニングでは、英語は左から右へ流れていきます。

 

必要なのは、

 

英文を「動画」として処理する技術

 

ではないでしょうか。

 

この違いは決して小さくありません。

 

前者では、

「この英文の構造を説明できますか?」

が問われます。

 

後者では、

「英文が入ってくるそばから、その構造と意味を確定できますか?」

が問われます。

 

私は、ここにこれからの英文解釈の大きなテーマがあると考えています。

 


英文解釈100年史の「次」に来るもの

こうして振り返ってみると、日本の英文解釈史は非常に興味深い一本の線でつながります。

 

訳読

構文解釈

構造分析

構造の可視化

リアルタイム構造処理

 

1912年の山崎貞。

1977年の伊藤和夫。

そして、その後の多くの優れた英語指導者たち。

 

100年以上にわたり、日本の英語教育は、

 

「英文をどうすれば正確に理解できるのか」

 

という問いに取り組み続けてきました。

 

その蓄積は、決して否定されるべきものではありません。

 

むしろ、日本人が外国語である英語の構造を理解するために作り上げてきた、非常に貴重な知的資産だと思います。

 

しかし、これから必要になるのは、その資産をさらに一歩進めることではないでしょうか。

 

「英文の構造が分かる」から、


「英文の語順のまま構造と意味が分かる」へ。

 

つまり、

 

英文解釈からリアルタイム型の直読直解へ。

 

これが、日本の英文読解教育に残された次の大きなテーマなのではないか。

 

私はそう考えています。

 

伊藤和夫の『英文解釈教室』が登場した1977年から、まもなく半世紀。

 

ちょうど今は、英文解釈という方法論そのものを改めて見直すには、非常に面白い時期なのかもしれません。

 

「正しく分析できる英語」から、
「その場で処理できる英語」へ。

 

これはまた、昨今の英語資格試験(英検、TOEIC、TOEFL/IELTS、大学入試、など)の超難化傾向(=長文化、英文構造の複雑化)への対策にも直結するものです。

 

日本の英文解釈100年の歴史の先に、次のステージが見え始めているように思います。

「パラグラフリーディング」。

 

大学受験を経験した方なら、一度は耳にしたことがある言葉ではないでしょうか。

 

1990年代から2000年代にかけて、多くの受験参考書や予備校で紹介され、一時代を築いた読解法です。

 

しかし、いつしか話題に上ることも少なくなりました。

 

「結局、あまり役に立たない。」
「文法をしっかりやれば十分。」
「結局は一文一文を正確に読めばいい。」

 

そんな評価を耳にすることも増え、今では体系的に学ぶ人は少なくなっているように感じます。

 

ところが私は、その評価は半分正しく、半分間違っていると思っています。

 

実は、パラグラフリーディングは「効果がない」のではありません。

 

適用する文章を間違えていたのです。

パラグラフリーディングは、すべての英文に効くわけではない

例えば、

  • LINEのやり取り
  • SNSの投稿
  • カジュアルなメール
  • 小説や会話文

このような文章では、パラグラフごとに明確な論理構造があるとは限りません。

 

そのため、「段落の役割」を分析しても、大きな効果は期待できません。

 

一方で、次のような文章はどうでしょう。

  • 新聞記事
  • 雑誌記事
  • 学術論文
  • ビジネスレポート
  • TOEFL
  • IELTS
  • 英検準1級・1級
  • TOEIC Part 7 の Article や Review

これらには共通点があります。

 

高学歴のネイティブスピーカーが、論理的に書いた英文であることです。

 

このような文章は、「一段落=一つの主張(One Paragraph, One Idea)」という原則に従って構成されています。

 

だからこそ、パラグラフリーディングが非常に効果を発揮するのです。

今、再び脚光を浴びるべき理由

ここ数年、大学入試をはじめ、英検、TOEIC、TOEFL、IELTSなど、多くの英語試験で共通して見られる変化があります。

 

英文が長くなっていることです。

 

単に語数が増えただけではありません。

 

複数の段落から成る長文が増え、文章全体の論理構成を理解する力が、以前にも増して求められるようになっています。

 

一文ずつ正確に読めても、

 

「筆者は結局何を言いたいのか」

 

が見えなければ、高得点は難しくなっています。

 

つまり、英文を「木」だけではなく「森」として読む力が、これまで以上に重要になってきているのです。

パラグラフリーディングの本質

パラグラフリーディングとは、

 

「段落を一つの意味のまとまりとして捉え、その役割を理解しながら文章全体を読む」

 

という読解法です。

 

例えば、

  • 問題提起
  • 原因
  • 解決策
  • 具体例
  • 筆者の結論

このような流れを意識して読むだけでも、英文の見え方は大きく変わります。

 

さらに、多くの論説文では、各段落の最初の一文(Topic Sentence)がその段落の要点を示しています。

 

最初の一文をしっかり押さえるだけで、その後の内容が予測しやすくなり、読むスピードも理解度も大きく向上します。

「英語脳メソッド」との関係

私は以前から、「英語脳メソッド」の中で、英文を語順どおりに理解する「直読直解」の重要性をお伝えしてきました。

 

しかし、それだけでは長文読解は完成しません。

 

文を理解できるようになったら、その次に必要なのは、

 

段落を理解すること。

 

そして最後は、

 

文章全体(=パッセージ全体)の論理構造を理解すること。

 

つまり、

  • 文レベル
  • 段落レベル
  • 文章レベル

という三層構造で読めるようになって初めて、本当の意味で「速く、深く、正確に読む力」が身につきます。

 

パラグラフリーディングは、この「段落レベル」と「文章レベル」を支える重要な読解ツールなのです。

昔の手法ではなく、これからの武器へ

「パラグラフリーディングは昔の受験テクニック。」

 

そんなイメージを持っている方も多いかもしれません。

 

しかし私は、そうではないと考えています。

 

むしろ、英語試験の長文化・高度化が進んだ今だからこそ、その価値は以前より高まっています。

 

もちろん、万能ではありません。

 

すべての英文に適用できるわけでもありません。

 

しかし、論理的に書かれた英文に対しては、今でも非常に強力な読解戦略です。

 

そして、直読直解によって一文を正確に理解する力と組み合わせれば、その効果はさらに大きくなります。

 

「昔の読解法」ではなく、「これからの読解戦略」として。

 

私は、パラグラフリーディングをもう一度見直す価値があると考えています。

 

今後、このブログでは、実際のTOEICや英検、大学入試の英文を使いながら、パラグラフリーディングと「英語脳メソッド」をどのように組み合わせれば、より速く・より深く英文を理解できるのかについても、具体例を交えながら紹介していきたいと思います。

 

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【名著のご紹介】

 

こんにちは。

 

「英語求道士™」こと、加賀美 晃です。

 

私はこれまで30年以上にわたり海外で仕事をし、

英検1級、TOEIC990点、MIT大学院修了など

英語に関わる数多くの経験と実績を積んできました。

 

しかし、実は私自身もかつて大きな壁にぶつかりました。

 

それは――

 

「単語も文法も知っているのに、英語が頭から入ってこない」

 

という問題です。

 


英語ができないのではない

多くの日本人学習者は、

  • 単語を覚える

  • 文法を学ぶ

  • 問題集を解く

ことに膨大な時間を費やしています。

 

それなのに、

  • 読むのが遅い

  • リスニングについていけない

  • 英会話で言葉が出てこない

という状態から抜け出せません。

 

なぜでしょうか?

 

理由はシンプルです。

 

英語を日本語に変換しながら処理しているから。

 


「英語脳」がないと限界が来る

英語は語順が命です。

 

ネイティブは、

 

英語

理解

 

ですが、

 

多くの日本人は、

 

英語

日本語変換

理解

 

という遠回りをしています。

 

これでは長文になるほど苦しくなります。

 

TOEICでも英検でも大学受験でも、

近年は文章量が増え続けています。

 

従来型の学習法だけでは対応が難しくなっているのです。

 


私がたどり着いた答え

そこで私が30年以上の海外経験を通して体系化したのが

 

「英語脳メソッド」

 

です。

 

このメソッドでは、まずリーディングを通じて、

  • 英文を語順通り理解する

  • 構造を瞬時に見抜く

  • 日本語に訳さず意味をつかむ

というトレーニングを行います。

 

その結果、

 

読む力だけでなく、

  • リスニング

  • スピーキング

  • ライティング

にも大きな効果が現れます。

 


実際のレッスンを無料で視聴できます

今回、

 

私が主宰する

 

「英語求道士と学ぶ グローバルLIFEイングリッシュ」

 

オンラインサロンのライブレッスンの録画を、

 

期間限定で無料公開することにしました。

 

実際の受講生と行っているレッスンの雰囲気や、

英語脳メソッドの具体的な指導内容をご覧いただけます。

 

こんな方におすすめです。

 

✅ TOEICのスコアが伸び悩んでいる

✅ 英検準1級・1級を目指している

✅ 英文を読むのが遅い

✅ リスニングが苦手

✅ 英語を「勉強」ではなく「使える力」に変えたい

✅ 英語指導者として新しい指導法を探している

 


参加費は無料です

まずは実際のレッスンをご覧ください。

 

百聞は一見にしかずです。

 

私が提唱する「英語脳」がどのようなものなのか、

最も効果的かつ効率的な「4技能強化訓練」(本邦初公開!)とはどのような流れなのか、

 

きっと具体的にイメージしていただけると思います。

 

▼無料体験(ライブレッスン)のお申し込みはこちらから

 

 

※過去に実施したライブレッスンの録画のオンデマンド視聴も可能です。

https://www.kokuchpro.com/event/4e31e0c1fc2ffde52ecd6f236a864e5c/

 


最後に

英語学習には、

 

「もっと頑張る」よりも

 

「処理の仕方を変える」

 

ことが必要な場合があります。

 

もし今、

 

一生懸命勉強しているのに成果が出ないと感じているなら、

 

ぜひ一度この無料体験をご覧ください。

 

あなたの英語学習が大きく変わるきっかけになるかもしれません。

 

先日のブログでは、私が浪人時代に直接教えを受けた伊藤和夫先生の名著『英文解釈教室』について書かせていただきました。

 

 

『英文解釈教室』は今なお英文解釈本の最高峰の一冊として高く評価されています。

 

しかし、実は私はもう一冊、多くの英語学習者にぜひ知っていただきたい英文解釈本があります。

 

それが、

『八澤のたった7時間で英文解釈』(八澤龍之介 著)

です。

 

私はこの本を、

「基礎〜初級レベルの英文解釈本としては最高峰の一冊」

だと考えています。

 


英文解釈教室は誰に向いているのか

『英文解釈教室』は素晴らしい本です。

 

しかし、その内容を十分に理解するためには、

・高校英文法を一通り学習済み
・難関大学受験レベルの英文法知識がある
・ある程度長い英文を読める

という前提が必要です。

 

言い換えれば、

「まだ英語の基本構造が見えていない人」

には少し難しい本でもあります。

 


 

多くの学習者がつまずく本当の原因

私は長年英語を教えてきましたが、

英語が読めない原因の多くは、

「単語不足」

ではありません。

 

また、

「長文演習不足」

でもありません。

 

本当の原因は、

英文の骨格が見えていないこと

です。

 

主語はどこか。

動詞はどこか。

目的語はどこか。

補語はどこか。

修飾語はどこか。

 

これらを瞬時に見抜けないために、英文を前から理解できなくなってしまうのです。

 


英語脳メソッドとの共通点

私の「英語脳メソッド」では、

英文を「健康な身体」に例えています。

 

基本文型は全身の骨格。

動詞は背骨。

主語・目的語・補語は重要な手足の骨。

修飾語は筋肉。

 

まず骨格を見抜き、その後で肉付けを理解する。

 

これが英語を速く正確に読むための基本原理です。

 

『八澤のたった7時間で英文解釈』は、

まさにこの「骨格を見る力」を養うことに特化した本です。

 


なぜこの本が画期的なのか

英文解釈の世界では、

伊藤和夫先生の流れを受け継ぐ優れた中級・上級向け参考書が近年数多く出版されています。

 

例えば、下記が名著として知られています。

・「動画でわかる英文法[読解入門編]」(岡崎修平 著)

・「読解のための英文法が面白いほどわかる本[必修編]」(肘井学 著)

 

しかし、上記はいずれも、高校レベルの英文法知識を既にある程度身に付けていることが前提となっており、それ以前の初級レベルを対象とする

「基本5文型そのものを最短距離で習得するための本」

は意外なほど存在しません。

 

その意味で、

『八澤のたった7時間で英文解釈』

は非常にユニークな存在です。

 

 

英文法を学び始めた中学生。

高校英文法に苦手意識のある高校生。

英語を学び直したい社会人。

 

そのような学習者が、

英文を構造で読むために必要な知識だけを無駄なく「超」短時間で学べるよう設計されています。

 


私の講座体系における位置付け

私が提供している「英語脳高速インストール講座」では、

まず英文の骨格を見抜く力を養い、

その後に直読直解力を身につけていきます。

 

その土台となるFoundation(基礎〜初級)レベルの学習者に対して、

私が最も推薦したい参考書が、

『八澤のたった7時間で英文解釈』

です。

 


まとめ

『英文解釈教室』が富士山だとすれば、

『八澤のたった7時間で英文解釈』は、

その山を登るための最良の登山道の「第一歩」と言えるかもしれません。

 

英語を前から理解する力。

英語を構造で読む力。

そして「英語脳」の土台。

 

それらを身につけたい方には、ぜひ一度手に取っていただきたい一冊です。

 

私はこの本を、

「英文解釈本のもう一つの最高峰」

と評したいと思います。

「英語脳メソッドの原点は、50年前の『英文解釈教室』にあった」

 

1970年代後半、私は東大受験浪人生として駿台予備学校に通っていました。

 

当時の私は、「英語力だけが頼み」と言ってよい受験生であり、幸運にも、駿台英語科の伝説的講師・伊藤和夫先生の講義を直接受講する機会を得ました。

 

いま振り返れば、それは本当に贅沢な時間でした。

 

しかし――

 

その当時の私は、伊藤先生が語っていた「英文解釈」というものを、実は1ミリも理解できていなかったのです。

 

正直に言えば、

 

「何だか暗号解読みたいな難しい読み方をする先生だなぁ」

 

くらいにしか思っていませんでした。

 

もちろん、伊藤先生の授業は圧倒的でした。
ただ、その本質が見えていなかった。

 

結果として、私は伊藤先生の英文解釈体系を大学受験に活かすことはできませんでした。

 

もっとも、ありがたいことに東大には合格できましたので、その後長い間、伊藤先生の方法論について深く考えることもありませんでした。

 


それから、半世紀近い歳月が流れました。

 

社会人として海外業務に長く携わり、MIT留学や海外駐在を経て、私は独力で「英語脳メソッド」を開発することになります。

 

日本人がなぜ英語を読めないのか。
なぜ、単語や文法を知っていても英文を理解できないのか。

 

その問題を考え続ける中で、私は古今東西の「英文解釈方法論」を徹底的に読み漁りました。

 

そして、そこでようやく気づいたのです。

 

現在の日本の英文解釈方法論の“原点”の一つが、伊藤和夫先生の『英文解釈教室』にあることを。

 

そしてさらに驚いたのは――

 

自分が長年かけて構築してきた「英語脳メソッド」と、伊藤先生の思想とが、本質的に完全一致していたことでした。

 


伊藤先生は『英文解釈教室』の冒頭で、次のように述べています。

「英語自体から意味が分かること、つまり訳語が分かるのではなく、分かるから必要なら訳せることが学習の目的である」

これはまさに、私が現在「英語脳メソッド」で目指していることそのものです。

 

また伊藤先生は、

「英語→事柄→日本語」という図式での思考法を確立すること

を英文解釈の本質として語っています。

 

これもまた、私が長年提唱してきた「英語を日本語に変換する前に、まず英文構造から意味を直接把握する」という考え方と完全に一致しています。

 


さらに衝撃的だったのは、伊藤先生が1997年改訂版で述べている次の一節でした。

「どんな英文も文頭からスタートし、左から右、上から下へ1度読むだけで、その構造と内容の明確な把握に到達しようとする『直読直解』の読み方とは、何を手がかりにするか、どのようなアタマの働きなのかを具体的に示すこと」

私はこの文章を読んだ瞬間、鳥肌が立ちました。

 

なぜなら、私自身が「英語脳メソッド」で追究してきたものが、まさにこれだったからです。

 

英文を前から読み、
構造をリアルタイムで把握し、
英文を英文のまま理解する。

 

そのために頭をどう働かせるべきかを体系化する。

 

それが、私の方法論の核心だからです。

 


私は長い間、

 

「自分は独自の方法論をゼロから作った」

 

と思っていました。

 

もちろん、実際には独自に試行錯誤を重ねてきました。

 

しかし今なら分かります。

 

私は“ゼロから”作ったのではなく、若き日に出会っていながら理解できなかった恩師の思想に、半世紀を経てようやく再到達したのだ、と。

 


伊藤和夫先生は、すでにこの世にはいらっしゃいません。

 

しかし、『英文解釈教室』に込められた問題意識は、50年近く経った現在でも、全く古びていないどころか、むしろ今の日本の英語教育にこそ必要なのではないかと私は感じています。

 

「英語を日本語に置き換える」のではなく、
「英語を英語の語順のまま理解する」。

 

そのための“頭の働かせ方”を教える。

 

それこそが、本当の意味での「英語脳教育」なのだと思います。

 


私は、恩師・伊藤和夫先生への深い感謝と敬意を胸に、これからも日本人の英語力向上のために、英語脳メソッドの研究と普及に全力を尽くしていきたいと思っています。

 

もし伊藤先生が今もご存命なら、
ぜひ一度、直接お話を伺ってみたかった――

 

そんなことを、最近よく思います。

「英単語も覚えた。英文法も勉強した。
それなのに英語長文になると急に読めなくなる…」

 

これは、多くの日本人英語学習者が経験する現象です。

 

実はそこには、日本の英語教育で見落とされがちな“ある重要な訓練”が存在します。

 

それが、

 

「英文構造を前からリアルタイムで理解する訓練」

 

です。

 

今回は、英語リーディング力がどのような段階を経て発展していくのか、そして「英語脳メソッド」がその中でどのような役割を果たすのかについて整理してみたいと思います。

 


英語リーディング力の5段階

第1段階

語彙・英文法の基礎知識習得

まず最初に必要なのは、英語という言語を構成する「材料」を知ることです。

 

具体的には、

 

・英単語
・熟語
・品詞
・時制
・不定詞
・動名詞
・関係詞
・仮定法

 

などの基礎知識です。

 

しかし、ここで非常に重要なのは、

 

「知識を覚えたこと」と「英文を読めること」は別である

 

という点です。

 

例えば、料理本を読んだからといって、すぐに料理ができるわけではありません。

 

英語も同じです。

 

単語や文法を覚えただけでは、まだ「英文をリアルタイムで処理する力」は身についていないのです。

 


第2段階

単文レベルの英文構造理解訓練

ここが極めて重要な段階です。

 

そして、まさに「英語脳メソッド」の核心部分でもあります。

 

例えば、次の英文を見てみましょう。

 

When water freezes in the cracks of rocks, it expands.

 

この英文を読んだとき、

 

・どこまでが修飾語なのか
・主語は何か
・動詞は何か
・文の骨格は何か

 

を、前からリアルタイムで把握できるでしょうか?

 

多くの学習者は、

 

「文法知識の暗記」

 

は行っています。

 

しかし、

 

「その知識を使って実際に英文構造を解析する訓練」

 

が圧倒的に不足しています。

 

この段階で鍛えるべきなのは、

 

・返り読みをしない力
・英語を前から処理する力
・英文の骨格を瞬時に見抜く力
・S/V/O/C/Mを認識する力

 

です。

 

つまり、

 

「知識」を「処理能力」に変換する段階

 

と言えます。

 


第3段階

高難易度英文の構造解釈訓練

単文が読めるようになると、次はより複雑な英文へ進みます。

 

例えば、

 

・関係詞の多重構造
・分詞構文
・倒置
・挿入
・抽象的な学術英文

 

などです。

 

ここで重要なのは、単なる和訳ではありません。

 

必要なのは、

 

「英文の骨格を崩さずに読み続ける力」

 

です。

 

英文が長く複雑になっても、

 

「今どこを読んでいるのか」
「主節はどこか」
「修飾語はどこまでか」

 

を見失わないことが重要になります。

 

この段階で、英語脳の精度が一気に高まっていきます。

 


第4段階

中文単位の読解訓練

ここで初めて、

 

「文と文の関係」

 

を読む力が必要になります。

 

例えば、

 

however
therefore
in contrast
for example

 

などの論理マーカーを使いながら、

 

・筆者の主張
・具体例
・対比
・因果関係

 

を理解していきます。

 

実は、

 

「1文なら読めるのに、段落になると読めない」

 

という人は非常に多いです。

 

その原因の多くは、

 

「論理構造」を追えていないこと

 

にあります。

 


第5段階

長文単位の読解訓練

最後は、文章全体の設計図を理解する段階です。

 

ここでは、

 

・パラグラフ構造
・筆者の主張
・要約力
・情報整理力
・予測読み

 

などが必要になります。

 

そして、ここで初めて、

 

「速読」

 

が成立します。

 

本当の意味で速く読める人は、

 

「単語を速く見ている」のではなく、

 

「構造処理が高速化されている」

 

のです。

 


英語脳メソッドはどこを担うのか?

英語脳メソッドの本質は、

 

「英文を前から、構造に従って、リアルタイムで処理する能力」

 

を鍛えることにあります。

 

特に重要なのが、

 

第2段階
「単文レベルの構造理解訓練」

 

と、

 

第3段階
「高難易度英文の構造解釈訓練」

 

です。

 

多くの学習者は、

 

単語帳を何冊もやり、
文法問題集も何周もします。

 

しかし、

 

「英文構造をリアルタイムで解析する訓練」

 

を十分に行っていません。

 

その結果、

 

知識はあるのに読めない

 

という状態に陥ってしまうのです。

 


英語脳とは何か?

英語脳とは、

 

英語を日本語に変換してから理解するのではなく、

 

英語の語順のまま、
前から意味と構造を理解していく能力

 

です。

 

つまり、

 

「英語を英語のまま理解できる状態」

 

と言っても良いでしょう。

 


まとめ

英語リーディング力は、突然伸びるものではありません。

 

適切な順番で、適切な訓練を積み上げることで、

 

初めて、

 

「英語を前から理解できる状態」

 

へ到達します。

 

そして、その中核にあるのが、

 

「英文構造をリアルタイムで理解する力」

 

なのです。

 

英語学習に伸び悩んでいる方は、

 

「知識不足」

 

だけではなく、

 

「構造処理訓練不足」

 

という視点から、自分の学習法を見直してみると、大きな突破口が見つかるかもしれません。

「単語も覚えた」
「文法も一通りやった」
「問題集もこなした」

 

それなのに——

  • 英文を読むのに時間がかかる
  • リスニングが追いつかない
  • TOEFLやTOEICのスコアが頭打ちになる

こうした悩みを抱えている方は、非常に多いです。

 

しかし、はっきり言えます。

 

👉 原因は「努力不足」ではありません。
👉 問題は「学び方の構造」にあります。

 


英語力には「3つの段階」がある

私はこれまでの指導経験から、英語力の本質を次の3段階で整理しています。

 


(1)基礎的な英文法知識

まずは土台です。

  • 品詞
  • 文型
  • 時制
  • 受動態
  • 関係詞 など

これは言うまでもなく必要不可欠です。

 

しかし現在の学校教育では、
「コミュニケーション重視」の名のもとに、ここが軽視されつつあります。

 

結果どうなってしまったか?

👉 一見話せるが、中身が空っぽの英語になる「英語力のコアがない状況」

が生まれてしまっています。

 

これは非常に危険な状態です。

 


(2)英文法の「再構築」

ここが最大の落とし穴です。

 

多くの人は文法を「知識」として持っていますが、

👉 実際の英文の中で使える形になっていない

のです。

 

例えば:

  • 5文型で整理できていない
  • 文構造として瞬時に捉えられない
  • 「読む・聞く」中で機能していない

つまり、

👉 知識がバラバラに存在している状態

 

これでは実践では使えません。

 


では、なぜこの問題に気づけないのか?

ここで、非常に重要な「落とし穴」があります。

 

それが——

👉 「英検2級レベルでもある程度読めてしまう」という事実です。

 

英検2級レベルの英文は、

  • 構造が比較的シンプル
  • 高難度の複雑構文が少ない
  • 話題も身近で想像しやすい

という特徴があります。

 

そのため、

👉 単語さえある程度分かれば
👉 文構造を正確に理解できていなくても

「なんとなく意味が取れてしまう」

のです。

 


しかし、ここに大きな問題があります。

👉 それは「読めているつもり」になってしまうことです。

 

本来は、

  • 文の構造を正確に捉える力
  • 論理関係を理解する力

が必要であるにもかかわらず、

👉 曖昧な理解でも通用してしまう

 

その結果、

👉 文法を「使える形」に再構築する機会を失う

のです。

 


そして、この状態のままレベルが上がると——

  • 英検準1級以上
  • TOEIC 800点以上
  • 難関大学(例:東大、京大、早慶、GMARCH)入試

などで、

👉 突然、全く歯が立たなくなる

という現象が起きます。

 


英語脳メソッドが最初にやること

ここで登場するのが、私たちの

👉 「英語脳メソッド」

です。

 

このメソッドはまず、

👉 バラバラの文法知識を「使える形」に再構築する

ことに徹底的にフォーカスします。

 


(3)高速・高精度処理(英語脳)

そして最終段階です。

 

再構築された文法知識を使い、

👉 ネイティブ並みの「スピード」と「正確さ」で処理する

これが弊社が定義している「英語脳」です。

 

具体的には:

  • 英文を前から理解する
  • 構造を瞬時に把握する
  • 返り読みしない
  • 聞いた順に理解できる

ここまで到達して初めて、

👉 本当の意味で「英語ができる(=グローバルで通用する英語力が身に付いている)」と言える状態

になります。

 


なぜ上級者でも伸び悩むのか?

ここが非常に重要なポイントです。

 

実は、

👉(1)と(2)をある程度クリアしている人でも
👉大きな壁にぶつかります

 

それが、日本人英語学習者の大半が諦めにも似た悲鳴の声をあげている

「TOEFL 80点の壁」

です。

  • 英語圏の大学・大学院を目指すレベル
  • いわゆる「上級者」

ですら、この壁を超えられないケースが非常に多い。

 

なぜか?

👉 (高難度複雑英文構造の理解において)処理スピードと正確さが足りないからです

 


「その壁は越えられるのか?」

私自身、以前はこう思っていました。

👉 「これは日本人の限界ではないか」

しかし、その認識は覆されました。

 

それは、

👉 「ある英語教育機関の革新的な文法体系とその圧倒的な実績を目の当たりにしたこと」

がきっかけでした。

 

その実績を見て、確信しました。

👉 この壁は突破可能である

と!

 


そして完成した「英語脳メソッド」

その確信をもとに、

  • 文法の再構築
  • 処理スピードの高速化
  • 実践への完全接続

この3点を徹底的に追求し、

完成したのが——

👉 「英語脳メソッド」および高速インストール講座

です。

 


まとめ

英語力は、次の順番でしか伸びません。

 

① 文法を学ぶ
② 文法を再構築する
③ 高速処理できるようにする

 

この順序を外すと、必ずどこかで止まります。

 


最後に

もしあなたが今、

  • 頑張っているのに伸びない
  • 上級者なのに壁を感じている
  • 英語を「本当に使える力」にしたい

そう思っているなら——

👉 見直すべきは「努力量」ではなく「構造」です。

ここまでのシリーズで、

 

「英語は前から理解する」
「処理が重要である」

 

というお話をしてきました。

 

今回は、

 

👉 それを“実際に体感していただく”

 

ための内容です。

 


まずは、この1文を見てください

"I met a man yesterday who was talking with my teacher."

 

この文を読んだとき、

 

👉 どこで止まりましたか?

 

多くの場合、

 

👉 「who」のあたりで一度止まる

 

という方が多いのではないでしょうか。

 


従来の読み方(よくあるパターン)

この文を読むとき、

 

・最後まで読む
・文全体を確認する
・日本語に訳す

 

という流れになりやすい傾向があります。

 

その結果、

 

👉 途中で止まる
👉 何度も戻る

 

という状態が起こります。

 


では、処理を変えてみます

ここで、読み方を少しだけ変えてみます。

 

① I met
👉 私は会った

 

② I met a man
👉 ある男性に会った

 

③ I met a man yesterday
👉 昨日、ある男性に会った

 

ここまでで、

 

👉 すでに意味は確定しています。

 


ここがポイントです

ここで重要なのは、

 

👉 「一度、意味を確定させる」

 

ということです。

 


そのまま進みます

④ who was talking with my teacher
👉 (その男性は)私の先生と話していた

 

これを、

 

👉 「追加情報」として受け取る

 


全体像

I met a man yesterday
👉 昨日、ある男性に会った

 

who was talking with my teacher
👉 (その男性は)私の先生と話していた

 

👉 これで一度も戻らずに理解できます

 


何が起きているのか?

この読み方では、

 

👉 「構造に従って意味を積み上げている」

 

状態です。

 

つまり、

 

👉 英語を英語の順番のまま処理している

 

ということです。

 


ここが本質です

英語が読める人は、

 

👉 特別なことをしているわけではありません。

 

👉 「処理の順番」を変えているだけです。

 


そして重要なこと

この読み方は、

 

👉 センスではなく「再現可能な技術」です。

 


最後に

ここまでの内容で、

 

「前から理解する」とはどういうことか、

 

少しイメージしていただけたのではないでしょうか。

 

もしこの感覚が少しでも掴めたのであれば、

 

👉 英語の見え方はこれから大きく変わっていきます。

 

英語は、

 

👉 正しい処理で向き合えば、確実に変わります。