「赤朽葉家の伝説」昭和史としてもおもしろいかも | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

赤朽葉家の伝説/桜庭 一樹

壮大な親子三代記:おいしそうおいしそうおいしそう /5
一気読み:ワクワクワクワクワクワクワクワク /5

桜庭一樹さんの「赤朽葉家の伝説」を読みました。

以前、ジュードさんに頂いたコメント中でタイトルを

拝見し、興味を持ったので。



赤朽葉万葉が空飛ぶ男を見たのは

製鉄を営む旧家赤朽葉家へ輿入れする前のことだった。


万葉は”辺境の人々”と呼ばれている山に住む者たちに

紅緑村に置き去りにされた。

肌色や体格の全く違う万葉はしかし親切な夫婦に

育てられ、赤朽葉家に嫁ぐ。


万葉には千里眼の能力があり、幼い頃より

様々な未来や見える筈のないものを”視た”。

しかし空飛ぶ男の意味するところは知れない……


万葉の孫娘である瞳子が綴る、赤朽葉家の

50年の変遷の物語。



壮大な物語でした。

全然ジャンルが違うのですが、佐々木譲さんの「警官の血 」とか

紫式部さん(?)の「源氏物語」とか思い出してします。


「警官の血」は親子三代警官になり、三代を通して続く事件の謎や

時代の変遷を見事に描いた超大作で、とてもオススメなのです。

そしてこの「赤朽葉家――」は女性と家、戦後からの時代の変遷を三代にわたって

書いています。


たたら製鉄、山に住む人、千里眼など民俗学好きな人が

釣られそうなキーワードも満載です。


物語は現代の瞳子という22歳の女性が、

祖母の万葉に聞いた家の話を語るという目線で進みます。


これがまた何ともないような家の事件なのですが、

入り込んでしまうおもしろさがあります。


万葉が赤朽葉家に輿入れし、旦那のお手付きの女中が

狂って裸踊りをしたり、長男を出産した万葉が

その子が同性愛者で若死にすることまで千里眼で見てしまったり、

娘の毛鞠(語り手の瞳子の母)がバイクを乗り回すレディースの頭になったり……


悲しいことも嬉しいことも時代に流されてどんどんと変化して、

たくさんの人が死んで、たくさんの人が赤朽葉家にやってきて、

何だか悲しいような、虚しいような、

でもそんな気分も一緒くたに味わえるのがいいような……

そう、そんなところが「源氏物語」を思い出したのです。


千里眼の祖母が見たものの謎を解き明かす、ちょっとした

「犯人探し」的な要素もあり、最後まで楽しめました。


ジュードさんありがとうございました。