ゆゆブログ

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読書など

2024年6月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に良い Bすごく良い Cなかなか良い D普通に良い Eいまいち Fダメ)

 

『70年代日本SFベスト集成4 1974年度版』

(筒井康隆編/ちくま文庫/2015年)

1974年に発表されたSFのアンソロジー。

50年前のSFということになるが、さすがにベスト集成というか、普遍性のある作品が集められており、古さを感じることはあまりなかった。

とくに筒井康隆「佇むひと」は、今読んでもまったく古さが感じられない。(D)

 

『闇を裂く道』

(吉村昭/文春文庫/2016年)

トンネル工事の話。

難事業を成し遂げた人たちの姿が描かれていて、著者の「戦艦武蔵」「深海の使者」「高熱隧道」などを彷彿とさせる。

資料の精査と入念な取材の跡が感じられ、吉村昭の本領が発揮された作品と思った。

簡潔な文体が全体を引き締めている。(C)

 

以上、2024年6月は2冊。

 

2024年5月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に好き Bすごく好き Cなかなか好き D普通に好き Eいまいち Fダメ)

 

『雪の花』

(吉村昭/新潮文庫/1988年)

天然痘の話。

天然痘禍の福井の街の描写が緊張感があった。

後半の苦労話は同じことのくり返しみたいな感じではあった。(D)

 

『天使たちの探偵』

(原尞/ハヤカワ文庫/1997年)

典型的な、普通の私立探偵もので、そこがよかった。(D)

 

以上、2024年5月は2冊。

2024年4月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に良い Bすごく良い Cなかなか良い D普通に良い Eいまいち Fダメ)

 

『土に贖う』

(河﨑秋子/集英社文庫/2022年)

養蚕業、ハッカの生産、レンガ製造業など、さまざまな職業を題材にしている短編集。

時代や環境に翻弄されていく人々の姿が胸を打つ。

とくに、ミンクの飼育業を題材にした「頸、冷える」は、人生の急変、地道な労働の尊さ、子供の残酷さ、時の流れなど、さまざまなことが盛り込まれていて、印象に残った。

(C)

 

以上、2024年4月は、1冊。

2024年3月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に好き Bすごく好き Cなかなか好き D普通に好き Eいまいち Fダメ)

 

『イギリス人の患者』

(マイケル・オンダーチェ/土屋政雄 訳/創元文芸文庫/2024年)

主人公四人が暮らす廃墟の静寂さと、爆弾処理の場面の緊張感がよかった。(D)

 

『安部公房とわたし』

(山口果林/講談社+α文庫/2018年)

山口果林の自伝的な部分が思っていたより多かった。

安部公房のプライベートな面を知ることができてよかった。

安部公房の主宰した劇団「安部公房スタジオ」について知ることができたのもよかった。(C)

 

『くっすん大黒』

(町田康/文春文庫/2002年)

「くっすん大黒」と「河原のアパラ」の二篇収録。

両作品とも、文体も展開もテンポがよく、疾走感があった。

「河原のアパラ」は悪い夢をつなぎ合わせたような不気味な場面の連続で、印象に残った。(C)

 

以上、2024年3月は3冊。

2024年2月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に好き Bすごく好き Cなかなか好き D普通に好き Eいまいち Fダメ)

 

『感染症の歴史学』

(飯島渉/岩波新書/2024年)

著者の専攻は医療社会史。

医学史としての視点からコロナ禍を振り返った本。

コロナのほか、天然痘、ペスト、マラリアについても疫病の世界史的な感じで簡潔にまとめられていて、良かった。

「です・ます」調で書かれた新書。

ほとんどどうでもいいことであるが、「~である・~だ」で書く場合との意識のちがいというか、編集方針のちがいとか、そういうのはあるのかと、ちょっと思ったりする。

(D)

 

2024年2月は1冊。

2024年1月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に好き Bすごく好き Cなかなか好き D普通に好き Eいまいち Fダメ)

 

『海賊たちは黄金を目指す 日誌から見る海賊たちのリアルな生活、航海、そして戦闘』

(キース・トムスン/杉田七重 訳/東京創元社/2023年)

海外のノンフィクションを読みたい気分になって、読んだ本。

17世紀の海賊の話。

当時の時代背景や国際情勢、世界史における海賊の位置づけ、みたいな部分は少なかった。

悪党ではあるが、終盤、海賊団を解散する場面や、海賊船が廃船となる場面は淋しさがあった。(D)

 

『少女架刑 吉村昭自選初期短篇集1』

(吉村昭/中公文庫/2018年)

文体、情景描写、言葉の使い方などにハードボイルド的なものを感じる。

自分が吉村昭の作品に惹かれるのは、そのあたりに理由があるのかもしれない。

物語の意外性、不気味さなど、収録作のどれも素晴らしかった。(C)

 

以上、2024年1月は2冊。

 

2023年12月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に好き Bすごく好き Cなかなか好き D普通に好き Eいまいち Fダメ)

 

『旅路の果て』

(寺山修司/河出文庫/2023年)

競馬エッセイ。

盲目の競馬予想屋が出てくるあたりに、寺山修司らしさを感じた。(D)

 

『阿久悠と松本隆』

(中川右介/朝日新書/2017年)

1970年代から1980年代にかけての、歌謡界の年代記。

ヒット曲のランキングの動向を年代順に追っていくという、あっさりした記述方法であるが、そのぶん読みやすく、しかも、さまざまな興味深いトピックが盛り込まれており、最初から最後までおもしろかった。

歌謡界の栄枯盛衰も感じられる。

情報量が多い。(C)

 

『寺山修司 その知られざる青春』

(小川太郎/中公文庫/2013年)

寺山修司の評伝。

親族への取材など、貴重な証言が多かったように思う。(D)

 

以上、2023年12月は3冊。

2023年11月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に好き Bすごく好き Cまあまあ好き D普通に好き Eいまいち Fダメ)

 

『紫外線の社会史 -見えざる光が照らす日本』

(金凡性/岩波新書/2020年)

書店で手にしたとき、ヤギに紫外線を照射しているへんな古い写真が目に留まって、それで読んでみた本。

著者も、小学生がゴーグルをして紫外線を浴びている昭和初期の奇妙な写真を見たのが本書を書くきっかけの一つになったという。

ラジウム餅、ラジウム煎餅、ラジウムドリンクなどの言葉も出てきて、昔の科学はちょっと怖さを感じる。

著者の専門は科学史で、史料・資料を駆使した内容だった。(D)

 

『教養としての建築入門 見方、作り方、活かし方』

(坂牛卓/中公新書/2023年)

「入門」とタイトルに付く新書は案外、入門向けではない、と思うことがあるが、この本は建築士の仕事のことなども書いてあって、入門的だったかもしれない。(D)

 

『祐介・字慰』

(尾崎世界観/文春文庫/2019年)

青春の挫折物。

若い人の共感を呼びそうな内容。

終盤のスラップスティック的な場面がおもしろかった。

この著者の文章を新聞で前に読んだとき、表現力がいいと思ったので読んでみた本。(D)

 

以上、2023年11月は3冊。

2023年10月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に良い Bかなり良い C普通に良い Dいまいち Eダメ)

 

『詰むや、詰まざるや 森・西武 VS 野村・ヤクルトの2年間 完全版』

(長谷川晶一/双葉文庫/2023年)

約30年前の日本シリーズを振り返った本。

30年も前のことなのに、当時を語る関係者の証言がすごく生き生きとしているのが印象に残る。

今だからわかること、語れることなど興味深い話が多く、時代を振り返る面白さを感じさせる。

「悠久の時間によって、物語は発酵し、やがて熟成する」と著者はあとがきに書いている。

30年経過して書かれたことに意味があった。(C)

 

『ハイチ革命の世界史 -奴隷たちがきりひらいた近代』

(浜忠雄/岩波新書/2023年)

大国からの世界史ではなく、「小国」、「弱者」、「マイノリティー」から近代世界史を語ることを目指し、著者は世界史を研究してきたという。

著者がこういう研究に進んできたことを語る部分が熱かった。

植民地からの世界史なので、フランス革命やリンカーンの悪い面なども書いてあって、おもしろかった。(C)

 

『日没』

(桐野夏生/岩波現代文庫/2023年)

社会派エンタメ。

生き地獄のような話。

すごかった。(B)

 

以上、2023年10月は3冊。

2023年9月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に良い Bかなり良い C普通に良い Dいまいち Eダメ)

 

『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』

(コ―マック・マッカーシー/黒原敏行 訳/ハヤカワepi文庫/2023年)

ハヤカワepi文庫から出ているので文学系の本かと思って読みだしたら、終盤近くまでアクションのエンタメという感じだった。

登場人物のそれぞれに孤独感があった。

簡潔な語り口がいい。(C)

 

『ぼっけえ、きょうてえ』

(岩井志麻子/角川ホラー文庫/2002年)

ホラーの短篇集。四篇収録。

怖さもあるが、嫌な話という感じだった。

とくにコレラ禍を扱った「密告箱」は、コレラ菌による見えない恐怖に加えて、人の欲、村の閉鎖的なところなど、悪いものが詰め込まれていて、本当に嫌な話だった。

「あまぞわい」のラストもかなり怖かった。(B)

 

『芝公園六角堂跡 狂える藤澤清造の残影』

(西村賢太/文春文庫/2020年)

作家の内面を知るような一冊。

余計なことまで書いてしまったと後悔していたりして、プロの作家でもそうなんだと思った。(C)

 

以上、2023年9月は3冊。