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ゆゆブログ

読書など

2023年8月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に良い Bかなり良い C普通に良い Dいまいち Eダメ)

 

『日本海 その深層で起こっていること』

(蒲生俊敬/講談社ブルーバックス/2016年)

地学の本。

日本海のことを書いた理系の本は珍しいと思った。(C)

 

『疒の歌』

(西村賢太/新潮文庫/2022年)

これまで読んだ西村賢太作品の中で、もっとも完成度が高かった。

全体の構成、表現力、登場人物の設定、悲惨さなど、良かった。

横溝正史の本に没頭するところや、田中英光の作品に出会う場面、最終盤に藤沢清造の名前が出てくるところも良い。(B)

 

以上、2023年8月は2冊。

2023年7月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に良い Bかなり良い C普通に良い Dいまいち Eダメ)

 

『「その他の外国文学」の翻訳者』

(白水社編集部〈編〉/白水社/2022年)

翻訳者たちの情熱と苦労が語られたエピソード集。

詩の脚韻を日本語にすることはあきらめたと残念がるベンガル語の翻訳者や、方言の翻訳に苦労するというノルウェー語の翻訳者の話などを読むと、外国文学は原文で読まないと伝わってこないものがあるんだろうなあと思ったりする。

イディッシュ語が専門なのに苦手なヘブライ語を翻訳している人、偶然が重なってバスク語の翻訳者になった人など、翻訳者それぞれの多様な生き方が印象に残った。(C)

 

『岬』

(中上健次/文春文庫/1978年)

評論家の斎藤美奈子さんが朝日新聞に月一回くらいのペースで連載している「旅する文学」という記事の「和歌山編」のときに中上健次が紹介されていて、それをきっかけに読んだ本。

斎藤美奈子さんによれば、中上を読まずに死ぬのは人生の損失、とのこと。

何がきっかけでどういう本に巡り合うかわからないが、今回は良い本に出会えた。(C)

 

『歴史のダイヤグラム〈2号車〉 鉄路に刻まれた、この国のドラマ』

(原武史/朝日新書/2023年)

朝日新聞土曜別刷り「be」の連載を新書化したもの。第2弾。

連載時にすべてを読んでいるはずだが、内容をほとんど忘れていることがわかってショックだった。

第五章の、『「はつかり」で夢の国へ』のタイトルで書かれている一文は、切ないような、郷愁感のある余韻を残す。(C)

 

以上、2023年7月は3冊。

2023年6月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に良い Bかなり良い C普通に良い Dいまいち Eダメ)

 

『皮革とブランド 変化するファッション倫理』

(西村祐子/岩波新書/2023年)

皮革製品の世界史、といった感じの内容。

皮革製品の歴史、ブランドの成立、動物愛護と皮革製品、植物由来の皮革製品の話、SDGs、皮革産業の今後のあり方など、内容は盛りだくさんだが、印象に残ったのは、職人に思いをはせること、モノに込められた文化や歴史を感じることの大切さに触れているところ。

修理ができる製品であることがぜいたく品の絶対条件、との言葉も出てきて、そうだよなと思ったりした。(C)

 

以上、2023年6月は1冊。

2023年5月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に良い Bかなり良い C普通に良い Dいまいち Eダメ)

 

『パリの砂漠、東京の蜃気楼』

(金原ひとみ/集英社文庫/2023年)

エッセイ集となっているが、私小説のようでもある。

友人というのが何人か登場するが、これは著者が創作した人物かも、と思ったりした。(B)

 

『清冽 詩人茨木のり子の肖像』

(後藤正治/中公文庫/2014年)

この後藤正治というノンフィクション作家の『スカウト』、『天人』を前に読んだことがあって、その本が良かったのでこの本も読んでみた。

飾り気のない文章が期待通りというか、それ以上の良さだった。(B)

 

『乳と卵』

(川上未映子/文春文庫/2019年)

大阪弁の語り口がテンポよく、それでいて暖かみとか、切なさみたいなものも感じさせる。

この本が海外で出版されているかどうか知らないが、翻訳するのは難しそうだと思った。

読点を多用して一文を長くする文体も独特で、引き込まれる。(B)

 

以上、2023年5月は3冊。

2023年4月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に良い Bかなり良い C普通に良い Dいまいち Eダメ)

 

『飛族』

(村田喜代子/2022年/文春文庫)

過疎が進んだ離島が舞台。

島に残った老婆二人の物語。

空き家があったり、雑草が繁茂していたり、終末感が良い。

終盤には台風の襲来もあり、破滅感もある。

老婆の達観した暮らしぶりも良い。

空と海の青さが印象に残る。(B)

 

『空中庭園』

(角田光代/文春文庫/2005年)

郊外に住む一見普通の家族の話。

登場人物一人ひとりの個性や事情に意外性や深みがあって、物語に厚みが感じられた。

エンタメと文学の中間の作品という感じで、そのバランスがちょうどよかった。(B)

 

以上、2023年4月は2冊。

2023年3月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に良い Bかなり良い C普通に良い Dいまいち Eダメ)

 

『ベースボールの夢 ――アメリカ人は何を始めたのか』

(内田隆三/岩波新書/2007年)

野球がどのようにアメリカで発展してきたのか、野球の誕生からベーブルース登場までの時代を社会学者が語る。

著者が社会学者というのがこの本の特色。

特に後半は社会学者としての本領が発揮されて、アメリカの階級社会とか、ミドルクラスの不安とか、都市と農村の関係性とかを野球と結び付けて語っていく。

少しわかりにくかったが、おもしろい切り口の本だと思う。

野球の起源について語られている部分は初めて知ることも多く、ためになった。(C)

 

『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』

(三浦英之/集英社文庫/2017年)

内容もすごいが、著者の情熱もすごい。

あとがきを読むと、著者の誠実さも感じる。

中国での取材の難しさと、危険さをあらためて知った部分もあった。(B)

 

以上、2023年3月は2冊。

2023年2月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に良い Bかなり良い C普通に良い Dいまいち Eダメ)

 

『瓦礫の死角』

(西村賢太/講談社文庫/2022年)

四話収録の短篇集。

この著者の作品には古書収集に関するエピソードがよくあるが、本書収録の「四冊目の『根津権現裏』」もそのひとつ。自分のような古書収集に縁のない者にとっては、未知の世界の話で、珍しくておもしろかった。

そのほかの三話もそれぞれ傾向のちがった作品が集められていて、印象に残る短篇集だった。(B)

 

『鯖』

(赤松利市/徳間文庫/2020年)

儲け話に翻弄される漁師たちの物語。

会社員とはちがって、粗野で、その日暮らし的な登場人物たちの生き方が、大変そうだが、ある種魅力的ではある。

著者に漁師の経験はないそうだが、漁の場面では、漁師たちの動作や掛け声が生き生きと描写されていて、臨場感があった。

終盤は一気に物語が展開し、エンディングとなって、すごかった。(B)

 

『夜のエレベーター』

(フレデリック・ダール/長島良三 訳/扶桑社ミステリー/2022年)

巻末の解説によれば、「フランス・ミステリーの隠れた傑作」とのこと。原書は1961年刊。

ミステリーはあまり読まないので、何とも言えないが、トリックは、「おお、そうだったか」と思った。(C)

 

以上、2023年2月は、3冊。

2023年1月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に良い Bかなり良い C普通に良い Dいまいち Eダメ)

 

『高架線』

(滝口悠生/講談社文庫/2022年)

人と人との、ゆるやかなつながりがよかった。(B)

 

『首里の馬』

(高山羽根子/新潮文庫/2023年)

現実感が薄いような、不思議な小説だった。(C)

 

『廃疾かかえて』

(西村賢太/新潮文庫/2011年)

短篇集。三篇収録。

どの作品の主人公も、怒ったときのセリフの語彙が良い。

「瘡瘢旅行」では、古書店とのやりとりがおもしろかった。(B)

 

以上、2023年1月は3冊。

2022年12月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に良い Bかなり良い C普通に良い Dいまいち Eダメ)

 

『日本近代短篇小説選 昭和篇1』

(岩波文庫/2012年)

16篇収録。

収録作のうち、北條民雄「いのちの初夜」はこの前にも読んだばかりだったので、今回読んだのが短期間に2回目。

再読するのは良いなと思った。もっと速く本を読めるなら、同じ本を繰り返し読みたい。

室生犀星「あにいもうと」は、激しくて良かった。

高見順「虚実」は、昔の文士っぽさがあってよかった。

中島敦「文字禍」は意外性があって、良かった。(C)

 

『君が異端だった頃』

(島田雅彦/集英社文庫/2022年)

中上健次や大江健三郎、安部公房など、いろいろな作家が実名で出てきておもしろかった。(B)

 

以上、2022年12月は2冊。

2022年11月に読んだ本

(個人的な評価 A最高に良い Bかなり良い C普通に良い Dいまいち Eダメ)

 

『敗れざる者たち』

(沢木耕太郎/文春文庫/1979年)

スポーツノンフィクション集。

6編収録。

取り上げられているのはボクサー、五輪選手、プロ野球選手など。

しかしその強さよりもむしろ、弱さ、脆さに焦点を当てているので、人の光と影が際立っている。

「クレイになれなかった男」は文学的な短篇小説を読んだような余韻が残る。(B)

 

『年月日』

(閻連科/谷川毅 訳/白水uブックス/2022年)

自然の脅威に立ち向かう老人と犬が健気である。(C)

 

『地図と領土』

(ミシェル・ウエルベック/野崎歓 訳/ちくま文庫/2015年)

主要登場人物の誰もが孤独を抱えている。

現代人のつながりの薄さ、淋しさを感じる。

前から気になっていた作家だったが、題名などから何となく敬遠していた。

ためしに読んでみたら、おもしろかった。(B)

 

以上、2022年11月は3冊。