ヒメギフチョウの観察(2022年~2023年)

 

№1,カタクリへの訪花♂、2022.4.17

№2,白花カタクリへの訪花♂、2022.4.18

№3,スミレサイシンへの訪花♂、2022.4.17

№4、落ち葉上で日光浴♂、2022.4.16

№5、セイヨウタンポポへの訪花くたびれた♀、2022.5.17

№6、ウスバサイシに産卵(図2№2株№17葉)、2022.4.21

№7、ウスバサイシに産卵、2022.4.20

№8、写真№5の産卵状態14卵を産付(№2株№17葉)、2022.4.21

№9、孵化当日卵(№2株№17葉)、2022.5.7

№、10,孵化(№2株№17葉)、2022.5.7

№11、1令幼虫(№2株№17葉)、2022.5.8

№12、1令幼虫の摂食状態(№2株№17葉)、2022.5.12

№13、1眠幼虫1個体,2令幼虫10個体(№2株№18葉)、2022.5.12

№14、2令幼虫の摂食状態

№15、2令幼虫の摂食状態(№2株№17葉)、2022.5.17

№16、2眠幼虫2個体、3令幼虫5個体(№2株№18葉)、2022.5.19

№17、3眠幼虫5個体、2眠幼虫1個体(№2株№18葉)、2022.5.22

№18、3令幼虫の摂食状態(№2株№18葉)、2022.5.22

№19、4令幼虫,4個体(№2株№12葉(4),2022.5.26

№20、4令幼虫5個体(№2株№12葉(5)、2022.5.28

№21、4令幼虫1個体(№2株№11葉)、2022.5.29

№22、4令幼虫1個体(№2株№13葉)、2022.5.29

№23、4眠幼虫1個体(№2株№21葉)、2022.5.29

№24、4眠幼虫1個体(№2株№19葉)、2022.5.29

№25、4令幼虫の摂食状態(№2株)、2022.5.31

№26、4眠幼虫(スミレサイシン)、2022.6.5

№27、5令幼虫(№2株№1葉)、2022.6.5

№28、5令幼虫(№3株№1葉)、2022.6.5

№29、5令幼虫(№243株№1葉)、2022.6.5

№30、5令幼虫(№4株№4葉)、2022.6.5

№31、5令幼虫の摂№食状態(№4№5葉)、2022.6.5

№32,5令幼虫の(№1株№7葉)、2022.6.8

№33、5令幼虫2個体(№4株№9葉)、2022.6.8

№34、5令幼虫1個体(№4株№7葉)、2022.6.11

№35、5令幼虫2個体(№4株№8葉)、2022.6.11

№36、5令幼虫1個体(№4株№10葉)、2022.6.11

№37、5令幼虫1個体(№3株№9葉)、2022.6.14

№38、5令幼虫の摂食状態(№4株)、2022,6,14

№39,飼育蛹(参考写真)2021.6.3

№40,蛹1、2022.6.16

№41、蛹化場所A,2022,6,16

№42,蛹2022,6,16

№43,蛹化場所B,2022,6,16

№44,蛹,2022,6,16

 

図1、図2の説明

図1はミズナラ生木を基点とした食草の位置図で、各食草株に№を付し、観察の手引きとしています。実際はミズナラを囲むように食草は点在しましが、今回は図に表した範囲内で観察ができ、他の不要部分は割愛しています。

図2の説明

図2は図1の各株を拡大し、各葉に№を付し斜線葉を摂食葉とし、観察の手引きとしています。

 

ヒメギフチョウの観察(2022年4月~2023年5月)

 

はじめに

平川市周辺の市町村は、本種の生息地として知られ、本種の生態観察はいつでもできると、無精な扱いをしていたところ、1996年ごろから姿が消え、観察を怠ったと後悔の念にさいなまれ23年が過ぎ、もう当地では絶滅を強く感じていた2017年に、再度生息を確認でき生息数の回復を願いながら、機が熟した2022年に観察したところ、最後の羽化を観察できず、無精扱いをした罰が与えられたと感じています。

今回は最も生長が早い幼虫を基準に生長記録をとり、生存数や摂食状態、幼虫の移動を主とした日記風の観察とし、図2№2株№17葉の卵群を対象に観察しています。各写真の説明は本文に記したので省略します。

 

成虫の習性

年に1度だけ春に姿を現すチョウを「春のチョウ」と呼んでいます、本種もその仲間で、大きさは羽を開いても5㎝ほどの可愛いチョウです。″春の妖精、春の女神″とも呼され親しまれています。当地では平地の桜の開花に合せるように現れ、花が散り始めると姿を消してゆきます。交尾後の♀には茶色の交尾袋が付着し、以後は交尾できなくなります。晴天であれば陽の移動と行動を共にし、それに伴い多少の移動は見られますが、行動範囲はほぼ決まっていて、日を違えても同場所で同時間に出会えます。林間を低く活発に飛び、時折カタクリの花で吸蜜したり、地表で羽を開いて休息しますが、曇天時は行動が控え目で姿が見えません。

 

産卵行動(4月21日)

観察日;4月21日

本県ではウマノスズクサ科のウスバサイシン、オクエゾサイシンが食草として知られ、交尾後の母チョウは地表を這うように飛び回り、食草で産卵ポーズを繰り返しますが、なかなか産卵してくれず、今回は2時間ほどど追いかけて、ようやく撮影できました。

 

産卵

観察日;4月21日

4月21日;腹部のに交尾袋に違和感があるのか、産卵に適した食草の選択は慎重で、写真№6,№7のような展開前の葉で、腹端が産卵部に触れやすい、適度に縮れた葉を好むようです。産卵は同日のAM,11:40:06~AM~11:43:07の3分ほどに、図1№2株№17葉に休まず14卵を産付(写真№8)(1度の産卵で通常4~20数卵を産付します)。

 

卵期、孵化(卵期4月21日~5月7日の17日)

観察日;4月21日,5月2日、5月7日

卵は径2㎜ほどの大きさで、黄緑色で真珠のような光沢があり(写真№8)、孵化

近づくにつれ、中の幼虫が透けて見えるようになります(写真№9)。やがて卵上部を食いちぎり孵化します(写真№10)。孵化は5月7日のAM、7:30:15~AM、10:43:57の3:13:45までに、14卵すべてが孵化ししました。

 

1令幼虫期間(5月7日~5月12日の6日間)

観察日:5月7日、5月8日、5月10日、5月12日

5月7日:孵化した幼虫の体色は薄墨色で、本種を特徴づける体側の黄斑列を欠く(写真№10)。孵化した14個体の幼虫は卵殻は食さず集団化、やがて2株№17葉(産卵葉)を葉裏端から摂食し始め(写真№11)、5月8日には幼虫が-1個体の13個体となり、5月10日には図№2株№17葉を1/3ほど食し1眠期になりました(写真№13)。5月12日には2個体が失われ、10個体が同株葉裏で脱皮し、2令幼虫になりました。(写真№14)。休眠期は次の生長に備える準備期間で、各休眠期の特徴は幼虫胸部が膨らみ、体色も鈍り静止状態を保ち通常は2~3日ほどですが、天候次第では日数を増します。

 

2令幼虫期間(5月12日~5月19日の8日間)

観察日;5月12日、5月14日、5月17日,5月19日,

;月12日:脱皮を終えた2令幼虫は、体側の黄斑列も現れ、5月17日には図2の№2株№17葉をわずかに食い残し(写真№15)、同株№18葉へ移り同葉裏で2令休眠期に入りました。この令期間に2個体が失われ、生存幼虫数は8個体になりました。

 

3令幼虫期間(5月19日~5月22の5日間)

観察日;5月19日、5月22日

5月19日;図2の№2株№18葉をわずかに残し、同葉で5個体の幼虫が脱皮し3令幼虫に、2個体が2令休眠期幼虫でいました(写真№16)。5月22日;前記株№19葉を1/5ほど食し、同葉裏で6個体の幼虫が3令休眠期に、1個体のが2令休眠中でいました(写真№18)。この期間には1個体が失われ、生存幼虫数は7個体になっています。この期間での摂食葉は図2№2株の№18葉、14葉、20葉の3葉でした。(写真№18)。

 

4令幼虫期間(5月23日~5月31日の8日間)

観察;5月23日、5月25日、5月26日、5月28日、5月29日、5月31日

5月26日;図2№2株№12葉で4個体が脱皮し4令幼虫に(写真№19)、5月28日;図2№2株№12葉で5個体の4令を確認(写真№20)。5月29日;№2株№11葉(写真№21)、№13葉(写真№22)、№21葉(写真№23)の葉裏で各1個体が4令休眠期中、同株№19葉で3令休眠期中の1個体を確認(写真№24)。この期間での摂食葉は№2株№19葉、14葉、20葉の3葉でした(写真№25)。

 

5令(終令)幼虫期間(6月4日~6月14日の11日間)

観察日;6月5日、6月6日、6月8日、6月11日、6月14日

5月31日から悪天候となり、天候が回復した6月5日には、図2№2株の№13葉~№23葉までの10葉が食され、幼虫は図2のスミレサイシン葉裏で4令休眠期中が1個体(写真№26)、図2№1株№1葉に5令幼虫1個体(写真№27)、同図№3株№1葉に5令幼虫1個体(写真№28)、同図2№2株№1葉に5令幼虫1個体(写真№29)、同図№4株№4葉(写真№30)、5葉(写真№31)、に各1個体ずつ6個体の5令幼虫をを確認。この頃には老熟幼虫が蛹化のため食草を離れるので、見失った1個体は蛹化に適した所を求め、食草から離れたと推測しています。6月8日;図2№1株№7葉で5令幼虫1個体(写真№32)、図2№4株№葉で5令幼虫2個体(写真№33)、3個体の生存幼虫を確認。見失った3個体の幼虫は、前記と同様に蛹化移動したと推測しています。

 

6月11日;図2№4株№葉(写真№34)、№4株№8葉で(写真№35)、同株№10葉(写真№36)で各1個体の5令幼虫3個体を確認。この間の摂食葉は図2№4株№5葉,№6葉,№8葉,№9葉,№10葉,№12葉の4葉でした。

6月14日;図2№3株№11葉で5令幼虫1個体を確認(写真№37)。この間の摂食葉はは図2№3株№1葉、№4葉、№5葉、№6葉の4葉でした(写真№38)。

 

幼虫最後の脱皮を終え蛹に変貌、蛹化直後は宝石の翡翠色(写真№42参考写真)をしていますが、徐々に獣糞色に変わってゆきます(写真№39)。6月16日;食草から幼虫を見いだせず、蛹化のために移動したと判断し図1№1株周辺の蛹化しそうな所を、途方もない量の枯葉に嫌気を感じながら、枯れ葉を丹念に探し続けたが見つからず、続いて№4株周辺を同様に探し、1時間半を過ぎた頃ようやく1蛹を見つけた。蛹化場所は図1№2株から140㎝離れた、朽ち木根元に溜まった落ち葉から1蛹(図1のA部,写真№43№45)、さらに1時間ほどしてから同図№3株から90㎝離れた、スゲ科植物下の枯れ葉で1蛹の(図1のB部、写真№46、№47)、2蛹を確認できた。蛹化場所は落ち葉や植物かクッションとなり、雪圧を和らげる効果があるように感じた。このまま蛹で来春を迎えるので、今後は蛹の生存確認をしながら、来春の羽化を待ちます。

幼虫の摂食葉数は幼虫数と生存数、食草の生長状態により変化するので、ここでは幼虫1個体あたりの平均摂食状態を記すます。幼虫の摂食葉数は1令幼虫期か~3令幼虫期までは1個体の平均が2/3葉ほど、4令幼虫期では1個体の平均が2葉強ほど、5令幼虫期では1個体の平均が4葉弱で、卵期17日間、幼虫期23日間、蛹期7ヶ月間ほどでした。

2023年開けた4月10日;観察地の雪解け状態を確認しましたが、道路上の残雪のためたどり着けず。4月16日;蛹化場所の残雪はなくなり、羽化も間近と思い蛹の生存確認のため、腹部を反り返して確認しましたが、2蛹とも反り返ったまま元に戻らず、死亡したと嫌な予感が横切りましたが、年一分の希望を託しもう少し計様子を見守ることにしました。5月5日;成虫が飛び交うなか、蛹を確認しましたが羽化しておらず、蛹を割り死亡を確認、今回は最後の羽化を観察できずに終了しました。思うような結果が得られないのも、自然観察の難しさです。それにしても残念!