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じんけいの修理日記

趣味とボケ防止を兼ねて古いラジオの修理を楽しんでおります。https://jinkei.sakura.ne.jp/

昨日の続きです。

今日は短波が受信できない原因を見つけて修理です。

症状は、SWにすると周波数カウンターの表示が消え、音声は全く無音になってしまいます。非常に珍しい症状です。全く受信できない場合でも何らかの数字がカウンターに表示されてもよさそうに思うのですが、、、

 

中波の場合は正しく周波数を表示しているのでカウンターモジュールが壊れているわけではなさそうです。バンドセレクタを0、10、20と切り替えても全く反応がありません。

 

シャーシを筐体から取り出して分解、回路を追って行くしかなさそうですね。

 

下の写真は取り出したシャーシを上方から見たところです。

本来結束されている線材がバラバラになっているところからすると、以前の持ち主がメイン基板を取り外したようです。

 

 

 

このままでは信号が追えないので基板の下方に付いているVFOブロックを切り離し、基板の裏側から信号を当たって行くことにします。

 

 

 

基板の裏側です。この状態で通電し、短波回路がなぜ動作していないのかを調べます。

 

 

 

 

本来であればSWのボタンを押すとSW回路に+5Vが印加されるのですが、ほとんど電圧は発生しません。

バンドセレクタの接触不良(スライドスイッチの接点不良)かと思ったのですが、接点はちゃんと導通していました。

 

ということは、SW回路の+5Vラインがどこかでショートしているということになります。

 

5Vラインをチェックするのには基板の部品面側に付いているプラスチックのカバーを取り外す必要がありそうです。

が、どうもこのカバーを取り外したような形跡がありました。

 

 

 

6800の場合はトランジスタ交換のためこのカバーを外すことが多いですが、6800Aはこれを外すような不具合に今まで出会ったことがありません。

 

しかし、今回はチェックのためにこのカバーを取りはずさなあかんのや。

 

 

で、取り外そうとカバーの爪の付近に目をやると

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     ・

あれっ?セラコンの頭が欠けとるやんけ。

 

 

 

 

自然に欠けることなない。きっと以前の持ち主がカバーを取り付ける際にセラコンの頭が欠損したに違いない。

 

 

 

 

取り外したセラコンの写真。

このセラコンはSWの+5Vラインの電源ーグランド間に挿入されていたコンデンサでした。

セラミックの円盤の両面に電極が付いているのですが、上部が欠損した際にその電極間でショートしたようです。

 

 

新たなセラミックコンデンサに置き換え、無事5Vラインが復活しました。

各部の信号波形、振幅も極めて良好。さすが6800Aです。めでたしめでたし。

短波に関してはあとは再調整をすれば何とかなりそうです。

 

 

今日はここまで。

 

残るはFMのメーター振れ異常の手直し、LEDライトの変更、FMの受信帯域拡張あたりでしょうか。

 

先月修理にやってきたソニーのBCL受信機ICF-6800Aです。

中波とFMは受信できるが短波が受信できないというご指摘のラジオです。

 

下の写真は受け取り後通電確認をしているところです。

 

 

 

いろいろ問題がありそうな個体です。

中波は受信でき、カウンターもメーターも正常動作しています。

ところが、SWにするとカウンター表示は消え、全く無音になってしまいます。FMにすると受信はしますが局の有無にかかわらずメーターはほぼ振り切った状態のままです。こんな壊れ方(壊し方)をした6800Aは初めてです。

ダイアルとメーター照明は白色LEDに交換されているようです。えらく明るいです。

 

 

 

下の写真はFMを選んだ時のメーター指針の様子です。チューニングをどこに選んでもほぼMAXあたりまで指針が振れます。中波では正しく振れるのでメーターは問題ないようです。

 

メモライトはというと、

 

ふたを閉めても消灯せず、また、蓋は完全に開ききりません。蓋の取り付け方を間違っているようです。

 

 

 

 

上部の蓋を開けたところです。シリアル番号は13681。電池室は比較的きれいです。

寸法違いのプラグが付いたACコードが同梱されています。

 

 

 

内部の点検スタートです。

 

 

 

 

裏蓋をはずしました。右側面上部が補修されています。落下させたのでしょうか。その割にはリアカバーには傷も破損もありません。

 

 

 

 

 

フロントパネルを外したところです。ネジの長さを考慮せずに適当に締めたようでネジ馬鹿になっている箇所がありました。

 

 

 

メーターとFMダイアル照明にどのようなLEDを使っているのか見てみました。

 

 

メーター用とダイアル照明用に1個ずつLEDが付いていました。

 

 

取り外したLED基板です。電流制限用に560Ωの抵抗も付いていました。

 

 

 

 

 

 

下の写真はフロントパネル側に付いているメモライトの基板を見ているところです。

 

 

基板自体に問題はありませんでした。取り付け方が間違っていただけでした。構造を理解せずに分解するとこうなるわけです。

 

 

 

これからが本番。シャーシを取り出し、短波が受信できない原因を探ります。

今日はここまで。明日時間が取れれば再開します。

 

受け取ったソニーのラジオICF-SW77です。

 

依頼人の要望は

・LEDが暗いので照明下でもある程度の明るさ確保

・ケミコンの液漏れ予防保全

・まれに音声が小さくなり、電源再投入で復帰することがあるが

 どこかに問題あるのか

といったところです。

 

 

シリアル番号は6万番台前半。電池室はきれいです。

 

 

 

 

このラジオに使われているLEDは電流を多く流している割には暗く、視認性が悪いです。相対比較のため、手持ちのICF-SW77と並べてみました。左側が依頼人のSW77,右側がワシのSW77(いろいろいじっているやつ。シリアル番号50031)。

 

 

どちらもLEDを点灯した状態です。依頼人のSW77はFMの感度が少し悪いようです。実用上は問題ないと思いますが、もう少し振れてもよいように思います。

 

今まで修理してきたSW77の大半の機種はFM受信時、ある程度電波が強い局で音楽を聴いていると低音が出ると音が歪む症状が出ましたが、本機は音の歪みが気になりません。珍しいです。

 

 

裏蓋を外して内部を見たところです。内部は非常にきれい、使用環境が良かったのでしょう。

 

 

 

フロントパネルを取り外したところです。ほとんどほこりが付いていませんね。あまり使用されていなかったのでしょうか。

電池を抜いても時計のバックアップは5分以上できていたと思います。大半のSW77はスーパーキャパシタが劣化していて数秒しか時刻をバックアップできなくなっている個体が多いです。

 

 

 

 

メイン基板(信号基板)を取り外したところです。

 

 

 

 

PLL回路周辺の部品には、これでもかと言わんばかりに蝋のようなものが塗布されています。防湿のためでしょう。

 

 

電解液が漏れ出して問題を起こすケミコン周囲を見ているところです。

 

 

この基板に関しては液漏れが発生していないようで非常にきれいです。

 

 

 

 

ケミコンのロット番号を見てみるとH726でした。

 

 

 

SW77やSW55など、液漏れで問題を起こす機種に関しては、途中から

・機種のシリアル番号

・信号基板の末尾

・ケミコン470µFのロット番号と液漏れの有無

・SW77に関してはメインICがCXA1376Sか1376ASか

などのデーターをとるようにしてきました。50台ほどのデーターから見ると今回のロット品(H726ロット)からは液漏れは発生してません。ロット番号がH6xx(600番台)あたりから液漏れがしないように改善されているようです。

4級塩のケミコンは液漏れさえしなければ高性能なケミコンなので交換は見合わせました。機種のシリアル番号が6万番番台後半になると四級塩ではなく普通のケミコンに変更されているようです。

 

 

というわけで、本機はケミコンの交換おこなわず、LEDの交換とFM受信回路の再調整、その他チェックにとどめることにしました。

 

 

 

本機はオリジナルの場合、点灯するとLED1個当たり20mA前後の電流が流れるようです。サービスマニュアルによると電流制限抵抗は120Ωとなっています。LED交換の際、1kΩの抵抗を追加し、流れる電流を押さえました。回路図で示すと下記のようになります。

 

 

 

取り外したLEDです。

 

 

 

 

FMの部分を再調整し受信感度はかなり上がりました。下の写真はNACK5(79.5MHz)をロッドアンテナで受信しているところです。交換したLEDを点灯した状態です。

 

 

なお、今回の調整でFMの感度はあがったものの、AMとFMの音量差が広がったため(もともとAMよりFMの方が音量が大きい)、下の写真の抵抗(820kΩ)は削除しました。この抵抗が付いているとAMの音量が小さくなる(感度が低下するわけではない)だけでなく、レベルメーターが振れ過ぎる(弱電界でも大きく振れてしまう)のです。なんでこの抵抗が付いているのか不明です。サービスマニュアルや初期のSW77にはこの抵抗は付いていないのです。FMの音ひずみ対策なのかもしれませんが、これが付いていても音が歪む個体は結構多いです。

 

 

 

 

ご指摘の一つに、通電していると音声が小さくなったとあるので、この症状が再現するのかどうかAMとFMの各モードでそれぞれ半日以上鳴らしていますが今のところご指摘症状は再現できていません。

 

2020年に修理したICF-6800ですが以下の症状で再修理に来ました。

・低温時にカウンター暴走、短波受信不能

・BAND SERECTORをSWで受信、途中で音途切れ発生する

 ことがある

・メーター指針固着

 

下の写真は受け取ったICF-6800です。

 

 

修理を進めるにあたり、チューニングメーターが動かないのは非効率なので先ずはメーター修理からです。

 

 

 

フロントパネルを外したところです。メーター指針はセンターあたりを指したまま止まっています。

 

 

 

これはピボット部分に遊びがなくなったのが原因です。ピボットのネジを緩めれば動くようになります。このネジは緩まないようにペイントでロックされているので、ラッカーシンナーでこのペイントを溶かしてネジを緩めます。たまに失敗してメーターがおしゃかになることもあります。

 

 

今回は上手く行きました。ICF-6800はメーター指針の固着がたまにあります。よく出くわすのはICF-5900ではないでしょうか。10台に1~2台発生しているのではと思います。

 

 

 

これでメーターが動くようになったので修理に取り掛かれます。下の写真は筐体から取り出したシャーシです。

 

 

 

このままで動作確認はできますが、底部に付いているVFOブロックを切り離した状態にすると、よりチェックしやすくなります。

こんな感じです。

 

低温時に短波受信ができなくなる原因は、トランジスタのhFEが低温になると下がってくることによります。常に受信できなくなっている場合はhFEがさらに小さくなってしまい、周囲の温度によらず信号が小さくなりすぎているのが原因です。

 

 

 

下の回路図はPLLループの回路の一部でアナログ信号をロジックIC2の3ピンに入力している部分です。

ロジックIC(緑で着色したIC)は約5Vで動作しており、約2.5V(電源電圧の約半分の電圧、スレッショルド電圧)を境にそれより低ければ「0」、高ければ「1」と判断します。そのため、入力端子(この場合3ピン)に加えるアナログ信号の振幅はできるだけ5Vp-pで振るのが良いのです。

では現物の波形はどのようになっているかと見てみると下の写真のようになっていました。IC2の3ピンの電圧波形

 

 

 

現在、室温が28度でかなり高温になっている状態下での様子ですが、この時すでに波形の下側は1.2V程度にまで上昇しており上側は4.6V程度になっています。温度が下がってくるとhFEが低下するので増幅度が下がります。そうすると全体的に振幅が小さくなると同時に波形が全体的に上方向にズレて行くことになります。その結果、波形がスレッショルド電圧(この場合2.5V)をまたがなくなり、デジタルICの出力に信号が出て行かなくなるのです。

 

 

トランジスタ交換のために基板の上に付いているパーツを取り除いたところです。右側のクリーム色の部品が取り外したパーツ。

 

 

 

 

何個かトランジスタを交換しました。交換後、同じ個所の電圧波形をみてみると、下のようになり、ずいぶん改善されました。この波形は30MHz受信時の時の波形で、条件的には一番厳しい状態(VCO-2が一番高い周波数で発振している状態)なので、この時にこの波形が得られていれば低温下でも問題ないと思います。

 

 

今回交換したトランジスタです。

 

 

 

修理完了、動作確認中の6800です。信号発生器から30MHzで信号を飛ばし、音途切れや受信不具合が発生しないかチェックしているところです。

 

問題ないようであれば、明日もしくは月曜日に発送いたします。

 

 

 

先日送られてきたソニーの小型2バンド(中波と短波)ラジオTR-714とTR-724です。

先ずはTR-714から。

 

 

 

ご指摘は

・音が小さい

・短波の感度が低い

・つまみがやや硬い

といったところです。

 

確かに中波、短波とも受信していますが、ボリューム最大でも音が小さく、そのためか、短波はあまり聞こえません。

 

下の写真は裏蓋を外したところです。

 

 

基板はシールド板で覆われています。

 

この板金をはずすと基板のパターン面が現れます。

 

 

 

 

 

フロントパネルに基板を固定しているビス(ネジ)をはずすと基板が外れるのですが、、、、

 

 

 

ビスがはずしにくいところにあります。それでも何とか外せたのですが、取り付けはさらに大変でした。製造時も大変だったことでしょう。

 

 

 

 

 

で、やっと基板が外れました。

 

 

 

劣化していたケミコンを交換し、結構大きな音で受信するようになりました。

ところが音が少し歪んでいる感じです。小音量ではあまり気になりませんが少し音を大きくすると歪が増えるようです。

 

 

動作させながらオシロで信号を見て行くと、どうも最終段(プッシュプル回路)の片方のトランジスタが動作していないようなのです。シングル動作をしていたわけです。トランジスタが死んでいたのかと思ったのですが、エミッター抵抗の半田付け不良が原因でした。

 

 

 

 

ということで、交換したケミコン4個、再半田付け箇所が1か所です。回路図で示すと下記の着色した箇所です。

 

 

 

取り外したケミコンです。

 

 

 

短波は付属のロッドアンテナで日経は十分受信できますが感度は中波に比べると低いようです。

チューニングつまみは指針が左右端に近づくにつれ固くなりますが、構造上、なんともなりません。

指針のズレは少しありますが、ほぼ合っています。不用意にコアを回すと破損しかねないので、大幅にズレてないため現状のままとしてあります。

 

 

 

続いてTR-724です。

 

 

 

 

右側(ピンク色)のTR-724は以前修理不能で修理をあきらめたラジオで今回はドナーとしての提供、左側(緑色)のラジオが今回の修理依頼品です。

ご指摘、ご要望は

・電池ボックスの蓋が破損しているのでドナーの蓋と交換希望

・ダイアルがズレ過ぎている

というものです。

 

 

背面の様子です。蓋のヒンジ部分が破損しています。

 

 

 

電池蓋の交換から始めます。

 

 

 

 

ピンクの裏蓋から電池蓋とばねを外して緑の裏蓋に取り付けました

 

シリアル番号は電池蓋の裏側に貼付されているため、交換によりシリアル番号が変更になりました。

  104058⇒87658

 

 

 

 

 

ダイアル目盛がズレていたので再調整しました。

 

 

 

これでほぼ、メモリが合うようになりました。

 

 

 

最終確認の後、明日発送予定です。