2020年に修理したICF-6800 | じんけいの修理日記

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2020年に修理したICF-6800ですが以下の症状で再修理に来ました。

・低温時にカウンター暴走、短波受信不能

・BAND SERECTORをSWで受信、途中で音途切れ発生する

 ことがある

・メーター指針固着

 

下の写真は受け取ったICF-6800です。

 

 

修理を進めるにあたり、チューニングメーターが動かないのは非効率なので先ずはメーター修理からです。

 

 

 

フロントパネルを外したところです。メーター指針はセンターあたりを指したまま止まっています。

 

 

 

これはピボット部分に遊びがなくなったのが原因です。ピボットのネジを緩めれば動くようになります。このネジは緩まないようにペイントでロックされているので、ラッカーシンナーでこのペイントを溶かしてネジを緩めます。たまに失敗してメーターがおしゃかになることもあります。

 

 

今回は上手く行きました。ICF-6800はメーター指針の固着がたまにあります。よく出くわすのはICF-5900ではないでしょうか。10台に1~2台発生しているのではと思います。

 

 

 

これでメーターが動くようになったので修理に取り掛かれます。下の写真は筐体から取り出したシャーシです。

 

 

 

このままで動作確認はできますが、底部に付いているVFOブロックを切り離した状態にすると、よりチェックしやすくなります。

こんな感じです。

 

低温時に短波受信ができなくなる原因は、トランジスタのhFEが低温になると下がってくることによります。常に受信できなくなっている場合はhFEがさらに小さくなってしまい、周囲の温度によらず信号が小さくなりすぎているのが原因です。

 

 

 

下の回路図はPLLループの回路の一部でアナログ信号をロジックIC2の3ピンに入力している部分です。

ロジックIC(緑で着色したIC)は約5Vで動作しており、約2.5V(電源電圧の約半分の電圧、スレッショルド電圧)を境にそれより低ければ「0」、高ければ「1」と判断します。そのため、入力端子(この場合3ピン)に加えるアナログ信号の振幅はできるだけ5Vp-pで振るのが良いのです。

では現物の波形はどのようになっているかと見てみると下の写真のようになっていました。IC2の3ピンの電圧波形

 

 

 

現在、室温が28度でかなり高温になっている状態下での様子ですが、この時すでに波形の下側は1.2V程度にまで上昇しており上側は4.6V程度になっています。温度が下がってくるとhFEが低下するので増幅度が下がります。そうすると全体的に振幅が小さくなると同時に波形が全体的に上方向にズレて行くことになります。その結果、波形がスレッショルド電圧(この場合2.5V)をまたがなくなり、デジタルICの出力に信号が出て行かなくなるのです。

 

 

トランジスタ交換のために基板の上に付いているパーツを取り除いたところです。右側のクリーム色の部品が取り外したパーツ。

 

 

 

 

何個かトランジスタを交換しました。交換後、同じ個所の電圧波形をみてみると、下のようになり、ずいぶん改善されました。この波形は30MHz受信時の時の波形で、条件的には一番厳しい状態(VCO-2が一番高い周波数で発振している状態)なので、この時にこの波形が得られていれば低温下でも問題ないと思います。

 

 

今回交換したトランジスタです。

 

 

 

修理完了、動作確認中の6800です。信号発生器から30MHzで信号を飛ばし、音途切れや受信不具合が発生しないかチェックしているところです。

 

問題ないようであれば、明日もしくは月曜日に発送いたします。