受け取ったソニーのラジオICF-SW77です。
依頼人の要望は
・LEDが暗いので照明下でもある程度の明るさ確保
・ケミコンの液漏れ予防保全
・まれに音声が小さくなり、電源再投入で復帰することがあるが
どこかに問題あるのか
といったところです。
シリアル番号は6万番台前半。電池室はきれいです。
このラジオに使われているLEDは電流を多く流している割には暗く、視認性が悪いです。相対比較のため、手持ちのICF-SW77と並べてみました。左側が依頼人のSW77,右側がワシのSW77(いろいろいじっているやつ。シリアル番号50031)。
どちらもLEDを点灯した状態です。依頼人のSW77はFMの感度が少し悪いようです。実用上は問題ないと思いますが、もう少し振れてもよいように思います。
今まで修理してきたSW77の大半の機種はFM受信時、ある程度電波が強い局で音楽を聴いていると低音が出ると音が歪む症状が出ましたが、本機は音の歪みが気になりません。珍しいです。
裏蓋を外して内部を見たところです。内部は非常にきれい、使用環境が良かったのでしょう。
フロントパネルを取り外したところです。ほとんどほこりが付いていませんね。あまり使用されていなかったのでしょうか。
電池を抜いても時計のバックアップは5分以上できていたと思います。大半のSW77はスーパーキャパシタが劣化していて数秒しか時刻をバックアップできなくなっている個体が多いです。
メイン基板(信号基板)を取り外したところです。
PLL回路周辺の部品には、これでもかと言わんばかりに蝋のようなものが塗布されています。防湿のためでしょう。
電解液が漏れ出して問題を起こすケミコン周囲を見ているところです。
この基板に関しては液漏れが発生していないようで非常にきれいです。
SW77やSW55など、液漏れで問題を起こす機種に関しては、途中から
・機種のシリアル番号
・信号基板の末尾
・ケミコン470µFのロット番号と液漏れの有無
・SW77に関してはメインICがCXA1376Sか1376ASか
などのデーターをとるようにしてきました。50台ほどのデーターから見ると今回のロット品(H726ロット)からは液漏れは発生してません。ロット番号がH6xx(600番台)あたりから液漏れがしないように改善されているようです。
4級塩のケミコンは液漏れさえしなければ高性能なケミコンなので交換は見合わせました。機種のシリアル番号が6万番番台後半になると四級塩ではなく普通のケミコンに変更されているようです。
というわけで、本機はケミコンの交換おこなわず、LEDの交換とFM受信回路の再調整、その他チェックにとどめることにしました。
本機はオリジナルの場合、点灯するとLED1個当たり20mA前後の電流が流れるようです。サービスマニュアルによると電流制限抵抗は120Ωとなっています。LED交換の際、1kΩの抵抗を追加し、流れる電流を押さえました。回路図で示すと下記のようになります。
取り外したLEDです。
FMの部分を再調整し受信感度はかなり上がりました。下の写真はNACK5(79.5MHz)をロッドアンテナで受信しているところです。交換したLEDを点灯した状態です。
なお、今回の調整でFMの感度はあがったものの、AMとFMの音量差が広がったため(もともとAMよりFMの方が音量が大きい)、下の写真の抵抗(820kΩ)は削除しました。この抵抗が付いているとAMの音量が小さくなる(感度が低下するわけではない)だけでなく、レベルメーターが振れ過ぎる(弱電界でも大きく振れてしまう)のです。なんでこの抵抗が付いているのか不明です。サービスマニュアルや初期のSW77にはこの抵抗は付いていないのです。FMの音ひずみ対策なのかもしれませんが、これが付いていても音が歪む個体は結構多いです。
ご指摘の一つに、通電していると音声が小さくなったとあるので、この症状が再現するのかどうかAMとFMの各モードでそれぞれ半日以上鳴らしていますが今のところご指摘症状は再現できていません。