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女性の戦ひ(1939年) 監督:佐々木康 

主な出演:川崎弘子 上原謙 森川まさみ 槇扶佐子 斉藤達夫 葛城文子 吉川満子 三浦光子 葉山正雄 木暮実千代

 

伊勢丹の新宿本店だろう、デパガ役の川崎弘子さん。この時代は、「ショップガール」と呼ばれていたようだ。そのショップガールのなほこ(川崎)が秋田(上原)の映画会社にスカウトされたのだから、普通なら舞い上がるのだろうが、川崎弘子さんだから?冷静に受けとめ丁重にお断りする。

セーブルの万引き事件や実の父親である貴族院の高澤(斎藤)とのご対面を機に秋田の会社に籍を置くこととなるが、秋田の妹・玲子のイジメや秋田に対する美代子(槇)の思いを知り、身を引くなほこ。しかし・・・ 秋田のことは感謝こそしているが、それほど愛しているわけではない感じか?そこら辺がハッキリしないのが、天然たる川崎弘子さんの魅力。

で・・・ 結局は元のショップガールへと戻っていくのだが、そこは原作の菊池寛らしい結末か?

 

玲子が言う「ヘップバーン」はキャサリン・ヘップバーンのこと。オードリーのほうはまだデビューすらしていない。

 


おヤエのママさん女中(1959年) 監督:春原政久

主な出演:若水ヤエ子 柳沢真一 武智豊子 森川信 髙田友子 関口悦朗 清川虹子

 

前回書いたように、かつては若水ヤエ子さんという女優に嫌悪感を覚えていた。

(あくまでも役柄の話で人物を誹謗中傷するものではない)

しかし、ブルーチーズやクサヤのように最初は抵抗あっても、次第に癖になり、終いには大好物となることは往々にしてあるもの。あるいは、子供の頃は嫌いだった食べ物が、大人になって好きになることも珍しくはない。

 

若水ヤエ子さんもそんな女優さんなのか、

Prime video の「おヤエさんシリーズ」を全部観てしまった。

ただ、どれもたしかに面白いのだが、エンディングがもう一つ締まらないというか、もうひと捻りあったほうが、観ている側としてはスッキリすると思う。

「おヤエさん、どこへ行く?」で次回に続くのだろうが、脚本や設定によっては、「男はつらいよ」のように長くシリーズ化できたかもしれない。初代「おいちゃん」もレギュラーで出演しているようだし。

 

それにしても、若水ヤエ子さん(1927〜1973年)は、45歳の若さで亡くなったのには悉く惜しまれる。

 

 

 

 

おヤエの身替わり女中(1959年) 監督:春原政久

主な出演:若水ヤエ子 藤村有弘 武智豊子 小泉郁之助 森川信 岡村文子 渡辺篤 神戸瓢介 

 

若水ヤエ子さんという女優。

渥美清さん主演の『喜劇 初詣列車』とか『拝啓天皇陛下様』、ドリフターズのシリーズなどにも出演していたと思うが、ガラガラ声で下品なズーズー弁のこの人が出てくると、何となくいや〜な気分になっていた。(純真な子供だったから)

さらに言えば、内田良平さんを女装させたような・・・ なんだ、この女!?

しかし今回、『おヤエの身替わり女中』を観て、これまでのイメージが一変した。

まず、あれ? 意外と甲高い可愛らしい声なんだ?

主役を張るほどの存在感だし、かつては、武智豊子さんと並んで「女エノケン」とまで言われたらしい。

おヤエさんシリーズは8本ほどあるようだが、主役のおヤエさん(若水)は、そこそこの器量という設定で、気立てもよく、頑張り屋さんのキャラクター。

役柄は全く異なるが、いま、朝ドラでやっている『虎に翼』の寅子にも通じるような・・・

「おトラさん」のシリーズもあるそうだが、ひょっとしていまの朝ドラは、これのオマージュかもしれない。

機会があれば観てみたい。

 

愛は降る星のかなたに(1956年) 監督:斎藤武市

主な出演:森雅之 山根壽子 浅丘ルリ子 二本柳寛 高田敏江 浜村純 金子信雄 天本英世

 

ゾルゲ事件に連座して逮捕・死刑になった尾崎秀実をモデルにした作品。尾崎役(映画では坂崎)を森雅之さんが演じている。

坂崎の秘書?くに子を演じる高田敏江さんは、これ以前の作品では女学生役が多かったような。

坂崎の後を追ってくに子が自殺したことを知った坂崎の妻・栄子(山根)の心境はきわめて複雑。しかし、夫への愛を貫くからこそ、衝動的に死ぬことはできない。

戦後になり、獄中からの坂崎の手紙を1冊の本にまとめて出版(この本の題名も『愛は降る星のかなたに』)するが、話はそこまで引っ張らなくてもイイと思う。本の出版には、娘・知叡(浅丘)がえらく熱心で、映画全体のトーンが一変する。

 


 

 

あの手この手(1952年) 監督:市川崑

主な出演:森雅之 水戸光子 久我美子 伊藤雄之助 望月優子 堀雄二

 

森雅之さんと久我美子さんの競演だが、シリアスな恋愛ドラマではなくドタバタのホームコメディ。久我美子さんが演じるアコちゃんは妻(水戸)の姪っ子。この頃の水戸光子さんは33歳で、きれいなお姉さん女優からいく分貫禄が出てきた3。翌年の『雨月物語』でも森雅之さんと水戸光子さんは出演する。そんな水戸光子さんが演じる妻を夫(森)は「奥さん」と呼ぶ。名前でも愛称でもお母さんでもなく、ただの「奥さん」だ。たまにそんな人があるようだが、誰の奥さん?自分の妻に「奥さん」と言うのはおかしい。

志摩から家出してきたアコちゃんのことを、水戸光子さんが「狐が馬に乗って走っているお嬢さん」と言う場面がある。そんな表現があるのかな?と思ったら、あるんだ。「落ち着きのないこと、いい加減で信用できないこと」の比喩だそうだ。この比喩の通り、夫妻はアコちゃんにことごとく振り回される。

それにしても森雅之さんのコメディはなかなか良い。これに伊藤雄之助さんが絡むと面白さが倍増する。

『はてしなき情熱』でパッとしなかった堀雄二さんも出てくるが、この人はやはりさえない。

「アコのアの字はアホウのアの字」・・・自身の哄笑とともに夫妻の元を去るアコちゃんだった。

 


白い悪魔(1958年) 監督:斎藤武市

主な出演:森雅之 野添ひとみ 清水将夫 渡辺美佐子 小林旭 下元勉 田中筆子

 

森雅之さんお得意の恋愛ドロドロ物。ただし今回のお相手は、養女の朝子(野添)だから、話はかなりややこしくなる。禁断の恋なのだ。克介(森)に父親を超えた熱い愛を寄せる朝子。実の父娘ではないから問題はないものの、養女との結婚となると世間の謗りは免れない。利害も損得もない、ただひたすらな純粋無垢な恋だけにアブナイ、アブナイ。だから白い悪魔なのだろう。

旅立とうとする朝子を青函連絡船の船上でつかまえた克介。「靴がないから帰れない」と言う朝子。 ??? 似たようなセリフをどこかで聞いたかなあと頭をよぎったのが、『マイ・フィア・レディ』でヒギンズ教授がイライザに言う「ボクのスリッパはどこ?」だ。結局、克介は朝子の想いを受け入れるのだが、いまどきのドラマなら、コンプラ重視で無難に終わらせるだろう。

何もかも事情を知りながら、克介との結婚を承諾する邦子(渡辺)の存在が印象的。

 


 

色ざんげ(1956年) 監督:阿部豊

主な出演:森雅之 北原三枝 田中絹代 三島耕 天路圭子 宍戸錠 菅井一郎 二本柳寛 芦田伸介 山岡久乃 坪内美詠子 高田敏江

 

『色ざんげ』とは何とも艶めかしいタイトル。なるほど、宇野千代の原作を映画化したもの。しかし、森雅之さんの主演映画は、ドロドロした恋愛劇が何と多いのだろう。

悪妻がはまり役の山岡久乃さん。その悪妻とようやく別れることができた湯浅(森)だが、湯浅との交際を親から反対されるつゆ子(北原)はアメリカへ強制留学。湯浅は仕方なく自分を支援する信光(菅井)の娘・とも子(天路)と結婚するが、とも子には国彦(宍戸)という間男が。とも子との別離と国彦の自殺の末、ついにつゆ子と再会するが、つゆ子はアメリカで別の男性と結婚したことを知る。湯浅とつゆ子は心中で決着つけようとするが、思いを遂げることができたのはつゆ子のみ。心中の片割れとして生き残った湯浅だが、それでもどことなくさわやかな様子?しかも、自分に想いを寄せる高尾(高田)への未練を匂わせる。うーん、湯浅は実に懲りない男。だからこそ、『色ざんげ』なのだろう。

そんな複雑怪奇なストーリーなのだが、若い夫(三島)を持つ田中絹代さんの役どころが良い。三島耕さんと言えば、1970年頃に俳優を引退したのが惜しまれる。ご健在なら96歳。この人、オードリーの春日に似ていると思うのは私だけ?

 


●女醫の記録(1941年) 監督:清水宏

主な出演:田中絹代 佐分利信 森川まさみ

 

戦地に赴く男性に代わり女性の社会進出を奨励する国策映画。予防医療の普及という点でも国策か?

清水宏監督の作品は、淡々とストーリーが展開する傾向がある。『有がたうさん』、『小原庄助さん』、『都会の横顔』などもそんな感じだった。観ていると途中からややダレる感があるが、現実の世界は派手なエピソードや事件なんて滅多にないわけだから、清水作品はドキュメンタリー映画として楽しむのがベター。

 


 

春雷(1939年) 監督:佐々木啓祐

主な出演:夏川大二郎 川崎弘子 木暮実千代 三井秀男 笠智衆 田中絹代
 

竹久夢二の絵から抜け出たような美人なのに、どこか天然なところのある川崎弘子さん。どのような苦境に直面しようと我が道を貫くところが弘子さんの強さなのだ。我がまま令嬢の英子(小暮)に振り回され、犯罪に手を染めた慎之介(夏川)。この映画のポイントは、彼の出所後の世話まで焼く志津子(川崎)にどこまで共感できるかだ。小悪党やちゃらんぽらんな役が多い三井秀男さんだが、唯一まともな人物として慎之介の弟を演じているところが救いかな?現代から見るとストーリーの甘さがあちこちに見られるが、この時代の映画はこんなもの。とは言え、特別出演の田中絹代さんが登場するが、英子の友達役なのだろうか、つながりがあまりにも唐突だった。本来は前・後編で構成される映画なので、私が観たバージョンはどこかカットされていたのかもしれない。

 


巷に雨の降るごとく(1941年) 監督:山本嘉次郎

主な出演:榎本健一 月田一郎 山根壽子 若原春江

 

エノケン主演だが喜劇ではなく恋愛・人情ドラマ。ヒロインみどりを演じる山根壽子さんはどことなく水戸光子さんに似ている。食堂の娘おふみの若原春江さんはアトムのママの声の人。

タイトルは、「巷に雨の降るごとく、我が心にも雨ぞ降る」というヴェルレーヌの詩に由来するのだろう。昔よく見た便所のクルクル煙突で始まりクルクル煙突で終わるところに、心に降る雨の悲しさが描かれている?

因みに風で回るクルクル煙突は正式には「臭突」という名称なんだとか。便所以外にも昔は工場の屋根に何台も大型のが備え付けられているのを見たことがあるから、この場合は、換気扇の役割を果たしているのだろう。昭和もだいぶ経つと風力に頼らなくても機能するモーター式の臭突が登場した。実家が汲み取り便所だった頃、このモーターが壊れて酷い思いをしたことがある。