シンプルなバッキングにボーカルが乗っているだけなのに、やたら存在感があって心に引っかかりを残していく音楽があります。

シンプルなバッキングだからこそボーカルが映え、その隅々までがくっきりと浮かび上がるのかもしれませんが、ここでは声の存在感がとても重要な要素。

個性的で唯一無二の声の持ち主。
もちろん歌のうまさ自体も大きいんだけれど、天性の声が歌をより魅力的にみせる。

まずは以前もご紹介したことがある、シンガーソングライターの
Cass McCombs
ミュージシャンが敬愛する、ミュージシャンズ・ミュージシャン。

前作の Wit's End と同時に制作され、遅れてリリースされたのが今作、 Humor Risk

Humor Risk/Cass Mccombs

¥1,147
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Wit と Humor は、コンビアルバムですが、内容のトーンはまったく異なります。

Wit's End はシリアスで耽美的でスロー。
Humor Risk は明るめのトーンで比較的アクティブなロックンロールが中心。

共通するのは、彼の声とグッドメロディ。
そして独特の微妙な彩度をもった音空間。

どちらかと言えば、彼の声の魅力が強く映えるのは前作の Wit's End の方ですが、それは静かに歌いこんでいる楽曲が多いせいでしょう。

そして彼の歌には歌詞の魅力もあるそうです。
輸入盤しか売ってないし、英語の読解力にも難がある自分には、その良さがわかりません。
特にメロディも演奏においても同じフレーズが延々と繰り返されるような曲は、明らかに歌詞に重きを置いているので、その曲の本当の良さがわからんのですね。残念。
でも今回の Humor Risk ではそういった曲はほとんどありません。







彼の声の凄さを実感できるのは、前作。
楽曲の良さとともに、音楽を楽しめるのは、最新作。

これだけのアルバムを年に2枚もリリースできる彼の才能と創作意欲。
そして彼の声が産み出す魅力的な空気振動。

ノイズのたっぷり乗ったギターの音も大好きだけれど、やはり人間の声が産み出す音に勝るものはない。
人間の声は、そしてそれが産み出す歌は、最高の楽器だということをつくづく思い知らされます。



平日と休日では聴く音楽がけっこう違います。

平日は騒々しい環境の中、スピード感の速い仕事を中心とした日常のため、どうしても気ぜわしくなりがち。
ストレスも溜まるし、自分を鼓舞しなければならないし。
そうすると聴く音楽もシャッキリパッキリしたものが多くなり、轟音系や強い音やリズムがマッシブな音楽を選びがち。
特に外で聴くときはそんな感じがほとんどですね。

逆に休日は。
むしろそんな気分を払拭したいし、なによりもゆったりと過ごしたい。
音楽を聴いて刺激も受けたいけど、ホッとする気分にもなりたい。

別にイージーリスニングであったり、空気のような音楽を流したいわけじゃないんですよね。
やっぱり主体性を持って、存在感のある音楽を聴きたい。
その音楽につつまれると、自分の心持ちがニュートラルになるような、過度の悲観も行き過ぎた楽観も修正してくれるような、そんな音楽が最高。

最近、愛聴しているのは、 Wilco

彼らの音楽は、カントリーオルタナなどと言われたりしていますが、やはりアメリカンな空気感のあるロックをベースにしていることは確か。
カントリー色が色濃く匂う曲もたくさんあります。

Whole Love/Wilco

¥1,803
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でも、彼らの音楽、ジェフ・トゥイーディの書く音楽に特徴的なのは、ノイズの存在なんじゃないかと思ってます。

ギターの音だけでなく、ジェフの歌声も独特のノイズが乗っている。
しかもそのノイズが実に心地よく、独特の刺激になって彼らの音楽を特徴付けてる。

そして、もうひとつの特徴が繊細さ。
実に繊細に音を重ね、メロディラインにも繊細なノスタルジーの味付けがある。
たぶん、このノイズの存在と繊細さが、彼らの音楽の通底に流れる暖かさが重なり、癒しのノイズとして自分に機能してくれてるんじゃないかと思ってますね。

楽曲も行き過ぎないアバンギャルドさを中心としたものから、いかにもアメリカンロックの王道的な曲や、メランコリックな味付けが心地よいカントリー的なものまで、実に幅広い。

休日は、陽の光を浴びながら Wilco を聴きながら過ごすに限ります。





まさしくタイトルのとおり、これを聴きながらトロトロと・・



他にも、陽の光を浴びる古き良きアメリカの田園風景が似合うロックはたくさんあって、休日の自分の気分にぴったり。
それぞれに音楽のイメージにあった土地の風景や空気感のイメージがあります。

Band Of Horses のやるロックは、Wilco よりももう少し田舎の方。
Real Estate はもうちょっと素朴な地方。
Arcade Fire の The Suburbs は、もう少し街よりかな。
意外に Grizzly Bear もこの系譜にはまり、自然と融合した洗練された都市のイメージ。

そんな風に、アメリカンなロックを風土で色分けしてみて、その気分で聴くのも格好の気分転換。

昔は、こういった開放的なアメリカンなロックはそれほど好きじゃなくほとんど聴きませんでしたが、やはり年齢によるものか、それともアメリカンなロックが変わってきたのか。

いずれにしても、好きな音楽が拡がって楽しみが増えるのは、なによりです。



若さに対する憧れが特別に強い、ってわけじゃないですが。
でも、この音楽のエネルギーは、この音楽の魅力は、ミュージシャンの若さが創り得てるなあ、と思う音楽があります。

自分の中では、 AVI Buffalo が筆頭。
そしてGirls のデビューアルバム。
他にも、あまり好きじゃないけど、Smiths Westerns などもそうですね。

そこにもうひとつ加わりました。

ロサンゼルスからのUSインディ、 Grouplove
彼らのファーストアルバム、 "Never Trust A Happy Song"

Never Trust a Happy Song/Grouplove

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高揚感。

この言葉がピッタリくるかもしれません。
自分が生きている「今」への、これから先の自分への高揚感。
人生のこの時期だからこそ、強烈に感じる自分への肯定感。
若さがもたらす、高揚感。

そしてその感情から生まれる、緊張感という日本語は違うんだけど、ある種の強いテンションが感じられ、これが実に心地よい。

そのテンション感は曲によっては一本調子な側面を見せたりするけど、そんなことはこの強い磁力の前には些細なこと。

けっこう演奏も手慣れた感じで、男女が入れ替わりリードを取るボーカルも含めて、不安定感はありません。
曲のバリエーションもけっこう幅があります。
年齢的なものか、静かで穏やかな曲はありませんけどね。

印象的なフレーズでガツッと掴んでくる、強烈な個性を感じますね。








AVI Buffalo はピュアな煌めき。

Girls は、切なさともろさと強さのアンバランスなバランス。

Smiths Westerns は、強引な肯定感。

どれも、人生の中では一瞬に近い、ある短い一時期に顕著な心のあり方であり、永続的なものではありません(たぶん。人によってかも)。

だからこそ、花火のように強烈な光を放し、僕らはそこに惹かれ、魅力を感じるのか。

まあ、自分は失って久しいものだけど、ここに反応できるってことは、まだそれほどオッサン化していないということかな、と自分を慰めたりしてます。。




リマスターCDもいろいろとありますが、このKing Crimsonの40周年リマスターほど気合が入ったリマスターもないでしょう。

なにしろ、シリーズまとめてなんとなくリマスターするんじゃなくって、自らがミュージシャンでありクリムゾンファンでもあるポーキュパインツリーのスティーブ・ウイルソンが、1作品ずつオリジナルのマスターテープを探し出してトラックごとにリマスターし直す、って代物ですからね。
さらに5.1chサラウンドミックスまでやっちゃって。
(間違ってたら、ゴメンナサイ)。

音源が60年代~70年代と古いとはいえ、現代のデジタル機器を使ってここまでやれば、相当な音質改善がなされます。

ただ、以前もRedだか宮殿だかのリマスター聴き比べ記事で書いた記憶がありますが、音がクリアになって分離が良くなればいいってもんじゃありません。
アナログ信号が分離悪く混然一体となることのマジックも実は存在していて、特にクリムゾンのようなメタルでノイジーなロックほど、混然一体アナログ信号が音楽に深みと厚みをもたらすことばしばしばあるからです。

事実、最初にリリースされたRedのリマスターは、音の分離が良くなった分だけ、アナログLPと比較して音楽が華奢になって痩せてしまい、迫力不足になってしまった感がありました。
ただこれだけなぜか2004年版のリマスターなんですよね。
それだけ技術的には劣っているリマスターだからかもしれません。

なにはともあれ、Starless And Bible Black (邦題:暗黒の世界。実に大味な翻訳ですね。原題の味がないです。まあ、プログレらしくわかりやすいといえばそうなんだが)のリマスターです。

Starless & Bible Black/King Crimson

¥2,050
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なんといっても、天下のクリムゾンで一番好きなアルバムです。
LPの国内盤やオリジナル英国盤から始まってCDまで、何枚持ってるかわからんアルバムです。
それがさらに最新リマスターですと。
買わないわけがないでしょう。
楽しみにするなというのが無理ってもの。

しかしこのアルバムは7割がライブ音源で、そこにスタジオオーバーダブをかまして制作されたもの。
もとの音源がそもそもいかがなもんだ、という不安がありました。
やっぱりリマスターして音が輝くのは、原石が光ってる場合だろうから。

でも杞憂でしたね、この不安は。
どうして大したものです。このリマスター。
明らかに今までと音が違います。
デジタルのか細さを払しょくしながら、クリアに骨太に生き返りました。
音に奥行きと広がりが出ました。
今までの音はなんなの、と言っても過言ではありません。

これだけの音が出たら、オマケの曲や映像なんかなくってもいい。
そんな気にさせるデキ。

とはいえ、このアルバムの音楽自体の魅力が優れているからこそ、ですけどね。
自分はアルバムとしてRedへの評価はそれほど高くありません。
けっこう単調だし、クリムゾンの大きな魅力である繊細さがあまり存在してない。
Fallen Angel は素晴らしい曲ですが。

そういった意味でも、この Starless And Bible Black は最高。
暴力と繊細さ、コンビネーションとインプロビゼーションの絶妙なバランス。

その中でも、この曲。
中盤のフリップのギターソロの艶めかしさといったら。

もちろん Fracture も素晴らしいんですけどね、この曲も双璧です。




しかし、相変わらずなんなんだろう、国内盤の高価なこと。
輸入盤の倍以上しまっせ。内容ほとんど変わらずに。
輸入盤がDVD込で2000円ちょっと。国内盤が4700円です。
オリジナルLPを模した紙ジャケと帯、そして解説の対訳がついただけで。

もちろん輸入盤を買いましたよ。
でも自分が買った時よりも、さらに安くなってるし。
ほんとに国内盤の値段は馬鹿げてると思いますね。
大人買いができる自分たちが逡巡するんですからね。

こんな商売はそのうち立ち行かなくなること、間違いなし。


Coldplay には、大きなロックは似合わない。

クリスのボーカルを始め、繊細なメロディ、アコースティックな響きが似合うサウンドなど、やはりファーストやセカンドで見せてくれたバランスが、彼らの音楽のベーシックバランスなんだと思います。
静と動のコントラストラストを独特の繊細さで見せるのが、彼らのロックの本質。

イーノを迎えて制作された前作では、彼らのバランスが華美なサウンドの大洪水に飲み込まれました。
多幸感とともにガンガン突き進んでいくロック。
そして彼らのライブは、(観たわけじゃなく映像だけだけど)エンタテイメントに徹し豪快に演ってくれるぶんだけ、ベーシックバランスが失われている気がして仕方がなかった。

だから自分は、Coldplay の音楽にはスケール感や勢いを求めてません。
世の中が彼らに求めた音楽は、彼らが世界に応えようとして身にまとったスケール感は、彼らの音楽を見えにくくしてしまう。



しかし、一度広げたスケールは元のように小さく等身大に戻すことは難しい。
自分たちの意思とは関係なく巨大なセールスを求められるからね。
彼らも、自分たちを取り巻く環境の変化に、あまりにも巨大になった自分たちに、戸惑ったのかもしれません。

マイロ・ザイロト【MX】/コールドプレイ


彼らが今回のアルバムで選択したのは、一歩引いて、わかりやすく大きなロックという残像を残しながらも自分たちがやっていかれる音楽のバランスを探ることだったと思います。

前作ほどの過剰感を感じず、厚化粧感を感じずにこのアルバムを聴けるのは、それがある程度成功しているということでしょう。

今回のアルバムで、 Up Against The World や Up In Flames 、Up With The Birds (なぜか全部最初にUpがついてるなあ)などの比較的穏やかな曲が心地よく感じられます。

でも、スケール感を大きくしていく間に身に付けた妙な多幸感は、このアルバムでも蔓延してます。
そういった穏やかな曲でも多幸感が過多気味で、自分は居心地の悪さを感じてしまう。
ジャケットデザインでも、華美さを引きずっているし。

もうひとつこのアルバムでの変化として、過去のアルバムほとメロディが目だたたくなったというか、強く響いてこない気がします。
一概に悪いということではなく、その楽曲に、アレンジに溶け込む方向性を選択し、全体として鳴ることを目的とした結果なのかもしれません。

いずれにしても、変わろうとする意志を示し始めた彼ら。
少なくとも、前作よりも今作の方が、自分は好きですね。
今作では最初、アコースティックだけのアルバムを作ろうとした時期があったらしいですが、その気持ちがよくわかります。


声を張り上げないクリス、自然な響きのピアノ、そしてアコースティックギター。

やはりそれが彼らに一番似合ってる。今回のアルバムで一歩下がって自分たちの音楽を見つめたColdplay。
次のアルバムはドラスティックな変化を見せそうな気がします。
それとも長い休止期間が取られるか。

たっぷり時間をかけてもいいので、自分たちの思いを消化しきった音楽を創ってほしいと思います。


自分たちの原点と、自分たちが本当にやりたい音楽をわかっているのは、やっぱり彼らだろうから。


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う~ん、好きなグループのアルバムは、聴くと自然に言葉がでてきますね。

リハビリレビューにピッタリ。