今朝5時半に目が覚めて、なんだよせっかく休みなのにもっと寝たかったな、などと思いながらひととおりの朝ルーティンをこなしたあとに、外の景色を見ながら Bon Iver を聴いてました。

リビングに開けた窓からは、東京ではあるけれどマンションの14階という高さもあり、空気の澄んだ冬には遠くの秩父連山が見えます。

周りのビル群に登り始めた朝日があたり、その向こうに秩父の山並み。
年末休暇にも入り、周囲には騒音もありません。

なんとも彼の紡ぎだす音楽を聴くにふさわしいひととき。

やはりこのアルバムは素晴らしい。

穏やかだけれど、予定調和されていない自然のような音楽。
自然をサウンドスケープしたかのような音楽。

こうしてみると、今年リリースされたアルバムには熱狂するほどの圧倒感があるわけではないけれど、熱い思いを向けるにふさわしい佳作がたくさんあるな、と改めて思いました。

どういう形になるかわからないけれど、2011年に自分に強く響いたアルバムたちを紹介すべく、年末年始にちょっと考えてみたいです。

それではみなさん、良いお年をお迎えください。

来年は、穏やかな日々を安心して過ごすことができますように。

最盛期のデビッド・ボウイのライブ・パフォーマンス。
最近発掘された38年前のVTRだそうです。

ジギースターダストとアラディン・セインの間くらいかな。

彼の歌が、色気たっぷりで瑞々しい。
姿に吸い寄せられます。

The Jean Genie


おまけ Starman (ちょっと前の時期)


デビッド・ボウイという才能が、噴出し、強く光り輝いている時期です。

彼の音楽はこの後にカタチを変えながら、それでも素晴らしい作品を次々とリリースしていきます。
ペルソナと音楽の方向性をドラスティックに変換しながら。

それでもボウイという人間が持つ純粋的な音楽への才能、ミュージシャンとしての輝きは、このころがピークだったのかも。

自由な空気。

このアルバムからは、そんなものが感じ取れます。

カナダのシンガー・ソングライター、 Sandro Perri
セカンドアルバムの "Impossible Spaces"

Impossible Spaces/Sandro Perri

¥1,670
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真偽のほどは定かではありませんが、Owen PallettやDirty Projector、Grizzly Bear のメンバーたちも絶賛してるミュージシャンだとか。

やや多国籍風のエキゾティックな香りや、ジャズっぽかったり、ボサノヴァ風だったり、ふわふわとしたボーカルだったり、そこには筋の通った流れがあるわけでもないのに、不思議と一本筋が通り、まとまっている。

隙間だらけの音空間に漂うサックスやギター。
軽やかなパッション。

このアルバムを買ってから2カ月ほどが経ちますが、これを聴くたびになんだか気持が軽くなります。

陽の光を浴びながら、地球がダンスしている。
そんなイメージが浮かんでくる音楽。





今年は、こういった新しさを感じられるような音楽との出会いが少なかったなあ。
ちょっとアメリカ、カナダの停滞を感じた一年でした。


年末恒例の年間ベストアルバム選び。
今年はどうにも座礁したまま先に進みません。


おそらく、自分にとっての今年のベストアルバムは、 R.E.M.Collapse Into Now だと思います。

Collapse Into Now/R.E.M.
¥1,557
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素晴らしい歌詞とメロディと、ロックのど真ん中で鳴っている音。

そしてマイケル・スタイプの心に響くボーカル。

駆け出しのミュージシャンには到達できない至高のロック。


しかし、このアルバムを1位に選び、手放しで褒めることができません。

解散したからじゃありません。
自分にとって、このアルバムには、あまりにも3.11東日本大震災の記憶が沁みついているから。

トップのDiscoverer のイントロが耳に入った瞬間に気持ちは揺らぎ、Everyday Is Yours To Win を聴くたびに涙が滲んでくる。

脳裏に浮かび上がる津波に押し流される家々の映像。
あの記憶の中にある、平穏だった時の三陸海岸の情景。
昨年の仙台旅行で見た、穏やかだった若林地区の海岸線の記憶。
どうにも悲しくやるせない気持ち。

素晴らしいアルバムなのに、心に沁みいる音楽なのに、この記憶と分かちがたく結びついているために、ハッピーな気持ちで聴くことができない。
そのアルバムを今年のベストアルバム、と手放しで褒めることが難しい自分がいます。

困ったもんです。


今年リリースされたアルバムは小粒なものが多かった気がします。

豊作だった2010年の印象が強いんでしょうかね。


年初、今年はビッグネームのリリースが多く予定されてるとアナウンスされていたため、たぶん年末には贅沢な悩みを抱えながらベストテン選びをしてるんだろうな、などと思っていたのに。

期待していたミュージシャンのアルバムがけっこう肩すかしでした。

方法論は認められてもそれが大いなる魅力にまでは到らなかったRadiohead 。
同じく刺激に溢れ、新しい音楽の息吹が感じられたJames Blake は、音楽としての魅力は今一歩で、聴きこむには至らず。
そして、思いっきり期待を裏切ってくれたGirls。


とはいえ、佳作、良作はたくさんありますが、いかんせんR.E.M.が障害となってリストアップに気持ちが入らないんですよね。

聴き込み不足のアルバムがたくさんあるし、買ったのにまだ聴き始めもいないものがあるってのも、原因のひとつかもしれません。


もう少し時間が経って気持ちと環境が整ったら、ベストテンを選べるのかもしれないな。


そいういえば、ブルックリン系の新作で響いてくるものが驚くほど少なかったかも。


これだから、本との出会いは、たまらない。


面白い本というのは自分の中で2種類あって、先を読みたくて展開を知りたくて、どんどん読み進んでいくものと、その世界にどっぷり浸かっていることが幸せで、ゆっくりと着実に読み進んでいくものとがあります。

比率としてはたぶん、前者が7~8割で、後者が2~3割といった感じかな。

先日ご紹介した ジェイムス・エルロイは確実に後者です。
まあ、あの世界に浸っているのが幸せかどうかは疑問の余地がありますけどね。

ところが、どちらとも言えないというか、どちらでもあるという本に出会いました。

素晴らしい物語です。
本に夢中になるとは、こういうことですね。


グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ作の「シャンタラム」。

シャンタラム〈上〉 (新潮文庫)/グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ
¥1,040
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厚めの文庫本3巻からなる長大な物語ですが、これだけストーリーにワクワクしながら、細部のディテールに酔いしれながら、登場する人物の魅力に翻弄されながら、時を惜しんで読み進める本はなかなかありません。

ヘロイン中毒から家庭も崩壊し、銀行強盗を起こして収監されたニュージーランドの刑務所を脱獄した主人公。

国際刑事警察に追われてインドのボンベイに逃げ込み、その街とその人々との深い関わりの中で、否応なく巻き込まれていく時の津波。

 

さらにはボンベイ・マフィアの一員となり、果てにはアフガン・ゲリラとして凍てつく彼の地での戦い。
それらが軸となり、若干のミステリーの要素と冒険小説の要素が加わった物語。


作者の体験に基づく実話をベースにした物語だそうです。
これほどまでに、めくるめく波乱万丈の人生を過ごす人間がいるのか。
ここまで魅力的な人に出会い、濃密な人とのつながりを持てるものなのか。

この本の魅力をあげよといったらキリがありません。


おそらく最大の魅力は、登場するヤツらが素晴らしく人間的で魅力的なこと、その彼ら彼女らの「愛」が素晴らしく深いこと。

ボンベイという街を中心とした、激動かつ濃密な時の流れ。

そして、主人公を中心に、思索が深く、紡ぎだす言葉が印象的であること。

さらにこの本を一層魅力的にしているのが、作家である主人公が哲学をベースに豊穣な言葉を持ち、作家の筆力を持っていることと、その日本語訳が素晴らしいことでしょう。

読んでいる最中に何度も感動の波に呑み込まれ、読み終わると同時に大きな暖かい感動の大波が襲いかかる。

それが、シャンタラムという本である。


ちなみに、この本はジョニー・デップが主演となり映画化されるそうです。



映画化。

まあ、ムリだろ。

この世界観は、絶対に映画では描ききれないよ。

ボンベイという街と、物語のダイナミズムは描けるとしても。

なにしろ、魅力の半分は、登場人物たちの思索にあるんだから。


前篇、中編、後篇くらいに分けて制作すれば描けるのかもしれない。

でも、それが映画として魅力的なものに仕上がるかは、別問題だし。


ただのインドを巡る愛と冒険の日々、にならないことを祈る。