昔に比べるとYouTubeを含めて試聴環境が整っているので、はずれのアルバムを買う確率はかなり減っていると言えるでしょう。
それでもまあ、レビューに値するアルバムばかりかと言えば、たまには失敗した~というのも出てきますね。

そんなアルバムは、何度か聴けばきっと良さが出てくるだろう、あばたもエクボになるんじゃないか、などと思って繰り返し聴くことも多くて、むしろ好きで気に入ったアルバムよりも、結果的に聴いた回数は遥かに多かった、なんてこともあります。

ところが稀に、こんなアルバムを買ってしまった自分に腹が立って仕方がない、と思うアルバムがあるんですよね。

これはそんな1枚です。

Brent Cash "How Strange It Seems"

ハウ・ストレンジ・イット・シームズ/ブレント・キャッシュ

¥2,415
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アメリカはジョージア州アセンズ出身のシンガー・ソング・ライターです。
自分は最近、味のあるSSWに目が無く、アルバムレビューにもそんなミュージシャンのアルバムが多くなっています。
いろんなサイトで聴く音楽も、どうしてもSSWに目が行きがち。

どこでどうなったのか、どこかのサイトで聴いてこの人の曲が気に入ったらしい自分は、アルバム購入予定リストにこのアルバムを入れたんですね。
そしてタワレコの店頭で見つけて買ったわけです。
オシャレ過ぎるジャケットと、帯に記された「ソフトロック」という言葉に一抹の不安を覚えながら。

そして。

なんだこりゃ。
これのどこがいいと思ったんだろう。
聴くに堪えない。

締まりのないリズム。
甘ったるいメロディ。
ゆるい、贅肉だらけのアレンジ。
脳天気で、予定調和的な展開。
ムードミュージックや、ディズニー音楽のようなストリングス。
聴くためでなく、流すための、意味のない音のかたまり。

一聴してカラダが拒否反応です。







聴いてるだけで体調が悪くなりそうなので、ほとんど聴いてません。
何度か聴いて少しでも好きになろうという努力も、はなから放棄。
どの曲を聴いて勘違いしたんだろうと、探そうにも全編通して聴くことができません。
だからレビューも印象のみ。

踏み込んではいけない場所に間違って入り込んだんだな、きっと。
明らかにポピュラーとかムード音楽なのに、ソフトロックなどとカテゴライズするなー!
そしてロックの棚に置かないでよ、タワレコさん。

ちくしょう、くやしいなあ。
Radiohead のアルバム OK Computer に Exit Music という曲があります。
負の感情が極まったような、狂おしさ。
実に素晴らしい曲です。
そして、それに次ぐ Let Down 。
この2曲のつながりを聴くたびに、未だに体が震えます。
これが音楽を聴くことの至福であると。
Radiohead の産み出した作品の中で、この部分でエモーショナルを極めていると感じます。

この Exit Music という言葉をグループ名に冠したグループが登場しました。

ブルックリンの男女デュオ、 Exitmusic
彼らのデビューアルバム、 "Passage"

Passage/Secretly Canadian

¥1,242
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Exit music 、この言葉を聴いて反応しないわけにはいきません。
CDジャケットもいい雰囲気。
取りあえず聴いてみようと思ったら。

のっけから感情が抑えきれずに溢れだしているようなロックが展開されます。
ある種、異形のロック。
生々しい、狂おしい、エモーション。



Let Down 好きなら、ぜひ。




たまらん。


彼らの音楽が持つ一種の過剰さをまったく生理的に受け付けない人もいるでしょう。
なんだ、このねばりつくようなうっとおしさは、ってね。
でも、自分としては中身がスカスカよりも過剰な方が遥かにいい。

Exit Music から Let Down での Radiohead だったり、Perfume Genius だったり、心の中をえぐってくるかのような音楽。
聴き流すことはできません。

その世界に思いっきり浸るか、遠ざけ切り捨てるか。

もちろん、浸るだけです。
Norah Jones の最新作、 "Little Broken Hearts"

Little Broken Hearts/Emm/Blue Note

¥1,574
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こちらをプロデュースしたのは、Danger Mouse です。
Danger Mouse といえば、実は自分にとってちょっと苦手な側面も持つプロデューサー。

彼のプロデュースした Dark Night Of The Soul 。
自分にとって特別なミュージシャンであるマーク・リンカスとの共作であり、彼の遺作ともなったこのアルバム、自分にとってのマーク・リンカスの世界観とうまくリンクせず、大いに不満の残るデキになってしまいました。

今から思えば、アルバムのコンセプトとDanger Mouseのプロデュースはベクトルが合っていたのだけど、そこにマーク・リンカスの世界観をはめることに無理があったんですね。

その後リリースされた、Danger Mouse プロデュースの "Rome" はエキゾティックでなかなか素晴らしいデキのアルバムで、いまだに時々聴いてます。

その流れで聴いた、Norah Jones の最新作。

結論から言ってしまうと、見事な作品に仕上がりました。
あくまでも主役はノラの歌であり、彼女が創った楽曲です。
その世界観を崩さずに、バランスの取れたプロデュースがなされたと思いますね。

むしろ、彼にしては控えめとも言えるプロデュース。
彼の色が出てはいますが、あくまでも抑え目に。

Rome 系のプロデュース色が出ている曲。




彼女の声のトーンが満喫できます。




Norah の歌う、芯のある歌。
その歌とややかすれ気味の声を核にした音楽。
曲のできも素晴らしい。

音楽の核を磨き上げながら、その輝きを増すためのプロデュース。

ややダークなトーンを中心としているだけに、地味目に感じるところもあり、万人向けではないでしょう。
しかしながらその音楽は自分に強く響いてきます。

やはりプロデューサーとミュージシャンの相性はあるんでしょう。
しかしプロデューサーは、話題作りや自分のクリエイティブ欲を満足させるためだけでなく、ミュージシャンが創ろうとしている音楽の魅力度を高めるために、その芯を強化するために、機能してほしいものです。

実はこの記事は連作です。

どちらを先にするか迷いましたが、まずはこちらから。

久々のUSブルックリン勢、しかもトム・ヨークを初めとした Radiohead メンバーもお気に入り、グラストンベリーではナイジェル・ゴッドリッチまでも感銘したというグループ。
最新アルバムには、そのゴッドリッチをプロデューサーとして起用。

こりゃ、期待が膨らむのを抑えろというのが無理ってもの。

Here We Go Magic "A Different Ship"

Different Ship/Secretly Canadian

¥1,242
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音は細部まで磨かれ、音空間は緻密に気を配られています。
サウンドクオリティは素晴らしく、ローファイが目的化した音楽のバカバカしさが良くわかる。
ミニマルで複層的な音楽は Radiohead の最新作を彷彿とさせます。

しかしなんだろう、聴いても聴いても心に響いてこない。
フォーマットを磨き上げることに全力を注いで、そのフォーマットの重さに潰され、音楽の魂がどこかに行ってしまったかのよう。

メロディやボーカルが自分の好みではないのもあるかもしれませんが、聴いていても気持ちが動かされないので、何度もリピートしたくなりません。
理性的で細かいリズムも、Radiohead最新作での消化不良がそのまま残っている感じ。





以前の彼らの音楽を聴くと、この系統が本来の彼らかも。


メンバーがゴッドリッチの名前にビビッて、自分たちの個性を出し切れなかったのか。
これは、彼らが本当に創りたかった音楽じゃないでしょう、きっと。
プロデュースによって、音楽にとって一番大事なエモーショナルなものがスポイルされてしまったかのようです。

最初にネットで聴いた時に悪い予感がしたんですよね。
でも、ゴッドリッチプロデュースのブルックリンが悪いわけないじゃないか、アルバム全部きいたら杞憂だったということだろう、と期待したんですが。。

思ったよりもゴッドリッチって人は許容度が狭い人なのかもしれませんね。

カタチを創るのはプロデューサー、中身を創るのはミュージシャン、という単純化した図式で考えると、カタチを創ることにバランスが傾き過ぎたプロデューサー偏重の作品、ということかもしれません。

最近好みの傾向が狭くなってきました。
琴線に触れる音楽の選択肢が狭い。

電子楽器中心ではないこと。
ボーカルの存在感がしっかりしていること。
メロディが優れていること。
音創りにゆるぎない哲学があること。

どうやら、このあたりの条件をクリアしないと自分に響いてきません。
だから聴いてこれいいじゃんという感想を持つ音楽がどうしても似てくる。

そんな中、改めてその良さを見直してるアルバムがあります。

The Walkmen "Lisbon"

Lisbon/Walkmen

¥1,159
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すでに最新作がリリースされた直後ではありますが、2010年にリリースされたこの前作がとても良いです。
すっかりレビューを忘れてました。
新作が出るんで改めて聴いたら、やっぱり良い。

構成はシンプルながら、歌ごころに溢れた素晴らしいロック。
じわじわと沁みてきます。
体の芯からエネルギーが出ます。
彼らは本当にこのロックを演りたいんだろうなあ、と伝わってきます。

できれば都会の真ん中じゃなくて、広々とした郊外で聴きたいなあ。







やはり音楽の好みというものは、重ねた年月や置かれた状況、心情により変わってくるものですね。

昔から好き嫌いははっきりしてましたけど、どうやら自分には最近、瞬間芸的なきわどさや、インパクトやビートの強さ重視の音創り、憶えやすさや分かりやすさだけを重視したアレンジメント、そういったものに対して、ネガティブに反応するセンサーが脳内に備わってきているのかもしれません。

芯がしっかりしているか。
軸はどこにあるのか。
音楽として強くそこに在るのか。

鳴っているだけでミュージシャン自身がリアルに見える音楽。
そんな音楽しか聴きたくない。
でもそんな音楽にはなかなか出会えないので、今日も試行錯誤の繰り返しです。

さて、会社のそばには売ってなかった The Walkmen の新譜を買いに行ってくるか~

Heaven/Walkmen

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