しかし手を変え品を変え、出してきますな。
King Crimson はフリップ御大による、旧作リマスター、リミックス、ボックスセット、未発表ライブ大攻撃。
もちろん全部どころか特に箱モノには付き合っていませんが、中には押さえておかなければならない作品もあるので、まったく無傷ってわけにはいきません。
今回は、10月にリリースされた、スティーブン・ウイルソンによる
"Red" の40周年リミックス盤のCD。
Red/Dgm / Inner Knot ¥1,864
Amazon.co.jp
前回(2009年)の40周年リミックスDVDはサラウンド盤なので、DVDオーディオ+サラウンドシステムがないと意味がありませんでした。DVDオーディオの再生機はあるんだけど、一体型コンパクトシステムなので音質的には期待できるはずもなく。
サラウンドも持ってないし。
そして同梱のCDは、30周年リマスター盤と同じもの。
その40周年リミックスDVDについているCDは30周年リマスターCD、今回の2013年版についているCDはボックスセットに合わせて制作された40周年リミックスCD。
更に、今回の40周年リミックスCDは2枚組で、もう一枚が Original 1974 Album 30th Anniversary Remaster と書いてあります。
これって、40周年リミックスDVDに付属してた30周年リマスターと同じもの?
ええい、ややこしいなあ。
まあ、そんな状況ではありますが、とりあえずお約束の聴き比べをやらなければということで。
ちなみに前回、40周年リミックスDVDがリリースされた時の、30周年リマスターに関するレビューは
こちら 。
まずは、比較試聴するバージョンを再整理。
① 自分が持ってる一番リリースが古いCD(1989年リマスターのDifinitive Edition)
② 40周年リミックスDVD(2009年リリース)に付属の30周年リマスター(2004年バージョン)
③ 40周年リミックスCD(2013年リリース)に付属の30周年リマスター(Original 1974 Albumとクレジット)
④ 40周年リミックスCD(2013年リリース)
もうこれだけで混乱しますね。
本当はアナログレコードととも聴き比べしたかったのですが、そもそも昔のアナログレコードはイギリス盤と日本盤で音が違うので、混乱の極みになりそうなのでやめ。
始める前の想定では、前回のレビューで高評価だった①が、やはり高評価であろう④と音質は違いながらも健闘。基本的に同じ音と思われる②と③はそこよりはちょっと落ちるだろう、というもの。
聴いたのは、Red と One More Red Nightmare の2曲です。
早速結果をお伝えすると、やっぱり④の最新リミックスはよい仕事になっていました。
思ったよりも②との変化は少なかったけれど、ドラムスを中心に音像がくっきりし、楽器の定位も明確になった印象です。
意外だったことがふたつあります。
ひとつは、最初のレビュー時よりも、①への評価が高くならなかったこと。
おそらく、最初のレビュー後に宮殿を初めとしたスティーブン・ウイルソンによるリミックスが続々とリリースされて、デジタル化に対して持った違和感が無くなってきたということがあるでしょう。
分離や解像度がきれいになる分、アナログマジックが薄れることへの不満が少なくなったのかな、と。
そしてもうひとつが、②と③に大きな違いがあったということです。
ともに30周年リマスターだから同じ内容であるはずなのに、明らかに音質が違います。
④や①との違い以上に感じた、②と③の差。
明らかに③の音質が悪い。
音圧レベルが低いということもあるのだけれど、どうも音がこもっています。
アナログレコードのイメージを残して記録されたのか、同梱の④との差をはっきり出すために意識的にレベルを下げたのか。
理由はわかりませんが、明らかに②よりも劣る音質の③でした。
結果、自分の好みでは、④>②=①>③ ということに。
とは言っても、④と②には、細かい評価内容を書くほどには違いがなかったのが正直なところ。
それだけリマスターにしてもリミックスにしても、クオリティアップの限界に近付いているということでしょう。
今回のRedで、スティーブン・ウイルソンによるリミックスシリーズは打ち止めです。
まだ残ってるアルバムもあるけれど、それは自分は買いません。
一連のリミックスを聴いて思ったこと。
それは、リミックスという作業はリマスターと違い、その作業をする人がどういう意識でいるかによって、結果が変わってくるのだということです。
原盤(オリジナルマスター)が持つ音質をいかに落とさずにCD化するのがリマスターだとすると、リミックスは個々の素材まで遡って素材感のバランスやトリートメントに手を加えて作品を仕上げ直すのがリミックスです。
そこには、King Crimson の音として音楽としてあるべき姿のイメージを作業者が持っているのかどうか。
明確なフィロソフィーを持ってリミックスを完成できる人物なのかどうか。
スティーブン・ウイルソンは、この作業に最適な人物でした。
混然一体となったアナログマジックという、70年代にリリースされたオリジナルアナログ盤の良さを生かしながらも、デジタルにふさわしい解像度と分離を加えて、新たな質感の作品に仕上げてくれた。
それも、我々(自分だけ?)がクリムゾンに求める音像を曲げない形で。
グッジョブ、と賞賛させてください。