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君が好き

アイドルの話でもしようず。

いま熊本のアイドルシーンは熱いのか?
1月14日のPOTIONのデビューイベントが前売りチケット完売。
そして昨日のLIKE!も前売りでチケットが完売していた。

 


コロナ禍の入場者規制時は別にして、入場者制限がなくなった昨年に、ぼくも熊本の現場には何度も通ったが、昨年はこのような前売り完売ということがほとんどなかったように記憶している。
それが今年は1月ですでに二件も完売が発生。
この結果だけを見るとまさに「いま熊本のアイドルシーンは熱い」と言わざるを得ないだろう。

ここまで読んで熊本の現場を知っているヲタさんでも「そんな実感はないなあ」と思われた方もいるかもしれない。
申し訳ないが、これを書いているぼくでもそう思うので、それが普通です。
だが数字は人格、売上は正義だ。
いま熊本のアイドルシーンは熱いのだ。

要因はなんだろうと考えて、何年も熊本現場に通っているぼくが感じるのは、ぼく自身もそうなのだが、ここ一年で熊本県外の人が増えたという印象だ。
炭坑ガールズやRe:fiveの熱心なファンが必ずしも熊本県民ではなくなっているのだ。
つまり地元のアイドルだからとご当地アイドルを応援する人ばかりではなく、熊本のアイドルを見たいからとわざわざ熊本に通う人が増えている。

2010年前後から各地で巻き起こったローカルアイドルブームは、2013年にはNHKの朝の連続テレビ小説に取り上げられるほどの一大ブームとなった。
ローカルアイドルには、いわゆるメジャーアイドルにはないサブカルチャー的な面白さがあった。ローカルアイドルは、クリエイターが集中している東京で生まれたものが日本全体のトレンドとなるのが普通だったこれまでの概念とは違う文化を生み出していたのだ。
まだ2010年当時は、インターネットはあったものの現在ほど動画投稿や各種SNSが発達していなくて、流行や文化が、サブカルチャーも含めてテレビやラジオ、新聞や雑誌の東京で作られたマスメディアからしか生まれていなかった。そんなときに、もともとは東京から仕掛けられたブームに乗った形ではあるが、地方で新たな文化が生まれ、場合によってはそれが全国に注目されるということが起こっていたからこそ、このブームは面白かった。
ぼくの周りでも、たとえば、LinQは東京にはないコンテンツを提供し、九州どころか関西や東京からも、劇場のエントランスに旅行カートが並ぶほど、他県の人を集めていた。
もっと身近な例をあげれば、ピンキースカイも、アイドル離れした歌唱力を武器に、佐賀に県外の人を集めていた。
ローカルアイドルが他県から人を集める理由は、東京やそれ以外の県にはないものが、そこにあるのが前提である。そしてLinQもピンキースカイもそれを持っていたのだと思う。
ピンキースカイが絶頂期の頃、東京のネット配信番組に出演したときに「いつかは東京で勝負したいですか?」とインタビュアーに質問され、ピンキースカイは「わたしたちは佐賀が大好きなので佐賀を拠点にしたいです」と答えていた。
そのとき、インタビュアーは不思議な顔をしたように見えたが、ぼくは感心したものだ。
みんなが東京を目指しているのとは違うベクトルに力を入れることが、結果的にローカルアイドルの強みになるからだ。

ローカルアイドルの目標が東京アイドルフェスティバルになって久しい。いまでも夏が近づくと東京アイドルフェスティバルを目標にしたアイドルを目にする。どうしても文化や芸能の中心が東京だからそれは当たり前のことだとは思う。東京で作られたローカルアイドルブームは2013年をピークに先細りになり、終焉を迎えたのだ。2010年当時と比較しネット配信は進化したものの、その配信は既定のアイドルやタレントという枠組みにさえとらえられない新しいスタイルの人たちが人気を集め、アイドルにとってはそこまで恩恵はなかった。
ただ、そんなななか、熊本のアイドルシーンはある意味時代に取り残されていたのかもしれないが、もともと福岡の影響力が弱い土地柄もあって、独自に進化を進めていたように思う。
POTIONのデビューイベントのときに、長崎の老舗アイドル・ミルクセーキの運営さんとお話をする機会があったが、その方は「久しぶりに聞いたコールもあった。熊本の空気はやはり特殊」と言われていた。
ただ、そのように特殊な空気の中で独自に進化をしていたからこそ、いま熊本のアイドルは県外の人を集めて、熱くなっているようにぼくは感じている。

そんなことを考えて昨日は今年初めての「LIKE!」に行ってきた。
ジュニアアイドルの炭坑キューティーズから幕を開け、熊本アイドル界の最長芸歴ながら本当に17歳のIaraさん、トーク主体のまったりステージで空気を和ませた私世界、オレンジのペンライトで強烈に盛り上がった今西ゆうたさん、全国展開アイドルなのにらしさをしっかり持っている熊本Flavor、先週お披露目で30人集め現在の熊本アイドルシーンの話題の中心chem LiLy、少人数ながら大分の洗練された空気と沸き曲を持ってきたSPATIO、ステージのレスポンスを回収しステージに昇華するMonster Factory、ストイックなダンスをキャッチーな楽曲に乗せ実力を披露したMeeL、もともとコスプレだった白衣装で「St…you」「朝までカツカレー」「ダンデライオン」「なんてんまんてん」でこれまでの熊本アイドルシーンを牽引してきた力を見せたRe:fiveがトリを務め、あっという間にたくさんのアイドルを堪能させてもらった。
計10組。天海の異様ともいえるステージとフロアの距離の近さ、一部で沸きながらも全体的にまったりした空気、昨日もそんな県外の人をも虜にする熊本の特殊な空気を堪能できた。その中で素敵なアイドルさんや推しの笑顔を十分に楽しめた。
来月、2月18日のLIKE!は出演アイドルが6組なので、今回のようにチケットが完売することはないかもしれない。
ステージの近さやまったりした空気で、逆に本当に「いま熊本のアイドルシーンは熱い」のか? と思ってしまうようなゆるさがあるかもしれない。
しかし、東京が生み出したステレオタイプの盛り上がりではない、熊本で独自に進化してきたアイドルシーンが確実にここにはある。

 


 

それはまさに事件だった。

2023年12月3日、熊本のアイドルヲタク界隈に衝撃と動揺が走った。

1月14日にデビューする熊本の新アイドルグループPOTIONのXのポストだった。

 

「1/14(日)のPOTIONデビューライブイベントに関しまして
先日チケットが設定枚数を完売いたしました✨」

 

ぼくもこのポストに動揺したひとりだ。

2024年の1月14日で会場も熊本ではそこそこ広いライブハウスNAVARO。

チケットの発売開始は11月11日だったが、ライブは2か月も先の話である。

Re:fiveの出演が決まっていたのでぼくもこのライブには行きたいなあと思っていたが、現在の熊本アイドル界隈の感覚としては、そんなに急いでチケットを取ることもないだろうと余裕をかましていた。

11月30日に「残りわずかです」というポストもされていたが見逃していた。

そもそも今の熊本のアイドル現場で1か月以上も前からチケットを取らないと入れないことなんてないのだ。

幸い、ぼくはなんとかこのポストに気づいて追加分で前売りのチケットを取ることができたが、この動揺は年が明けても続き、古参の熊本アイドルヲタさんの中でも、結局なんとか当日券が出たので入れたという人も何人かいた。

 

そんなわけでチケット発券から異様な盛り上がりを見せていたPOTIONデビューライブイベント。

開場は11時半でぼくは11時15分ごろに会場のNAVAROに到着したが、すでにNAVAROの入口には人があふれていた。

そのあふれている人の列整理をしている女性スタッフらしき人がいた。

AKB48などの地上系のアイドルの場合、女性スタッフが列整理することが多いので、そんな感じかなと思って女性を見ていたら、ぼくも整理される側になり、その女性の顔を見て驚いた。

そのときはすぐに名前は出てこなかったのだが、仙台のアイドルグループPOEMの上野あいさんだったのだ。数年前に佐賀の656広場で何度かPOEMを見たことがあったので、なんとなくそうなんだろうなと感じた。並んでいる間に同じPOEMの水咲爽さんがPOEMのアー写がプリントされたポケットティッシュを配ってくれたので、それは確信に変わった。

どうやらPOTIONはPOEMやペペロンチーノが所属するOncePromotionのアイドルだったらしい。

ローカルアイドルで成功した実績を持っている事務所が本気で熊本にアイドルを作る。

だからこそ、これだけの人がこのライブを訪れているんだと思った。そして、来てくれたたくさんの人を事務所全体でおもてなしする姿勢として、POEMのメンバーにスタッフ的な役割を任せていることにも好感が持てた。

実はライブの後に、会場が物販に転換するため、ライブハウスの外で待たなければいけない時間があったのだが、そのときもPOEMの永瀬愛瑠さんが会場入口でたむろしているヲタクにXのフォローを呼び掛けていたりして、こういうわずかなチャンスも生かす姿勢も上に行くグループは違うなと感じさせた。

 

話をPOTIONに戻そう。

この日のライブは、前物販→ライブ→後物販というスケジュールになっていた。

熊本ではこの前物販というのも大変珍しい。

ぼくはこの前物販で今年初のRe:fiveの推しとチェキを撮ったりして、うはうはしていた。

どこのグループも通常の物販をやっている中、お披露目ということでPOTIONがやったのは無料の握手会だった。

ぼくも無料ならばと参加させていただいた。

握手をするとき、これからステージが控えていることもあり、かなり緊張されていたように感じた。もっとも、ぼくのようなヲタクという特殊な人種のおじさんと話すのが怖かったのかもしれない。

話してみた感想は、率直に「初々しい」だった。

普段ヲタクをやっていると気づけないが、普通に考えて十代の若い女の子が父親よりも年上かもしれないおじさんと会話するなどほぼほぼキセキみたいなものなのである。

普通にびびってしまうだろうし、なにを話をしていいのかもわからないものだろう。

それなのに、ちゃんとまず名前を言って、こっちの名前を聞いて、「緊張してます」「楽しみよりも怖いです」みたいにライブへの意気込みを言われる姿は初々しくて、好感が持てた。

 

ライブはオープニングアクトとして、POEMとPOTIONのトークからスタート。

POEMがたくさんのヲタクで埋まったフロアを見渡し、ひとりでも多くの人にPOTIONを知ってもらおうと質問を投げかけたりする姿はさすがの一言だった。

その質問に膝や唇を震わせて、答えるPOTIONの初々しさも初ライブおめでとうって暖かい気持ちになれた。

熊本に限らず、長崎や鹿児島からもゲストが駆け付け、POEMが最後に締め、暑い熱気の中でこの日のゲストのステージが終わった。

残すはPOTIONの御披露目ステージのみ。

会場のボルテージは最高潮に上がっていたが、クールダウンするように十分ほど休憩を挟んでいよいよPOTIONのステージが始まる。

入口で配られたサイリウムも白だったが、グループのコンセプトカラーが白らしく、白い衣装に身を包んだPOTIONのメンバーが、話しているときの初々しさからは感じられない堂々とした姿でキラキラ輝きながら登場。

Youtubeでも公開されていたデビュー曲「スキスギスキス」は、そこで予習をしていたのか、ヲタクのミックスも初見なのにきれいに入り、またもや会場は熱気に包まれる。

曲はいかにもな好き好き歌詞の王道アイドル曲。振りに関しても舞台端にメンバーが集まってフロアに手を振るような、王道アイドルっぽさが随所にあった。

ぼくのイメージだと、しっかりもののリーダー浦田のこさん、キレのあるダンスが魅力のKUREHAさん、天真爛漫な笑顔が魅力のくしやまみらいさん、美人なのに天然キャラの岩本ここなさんという印象で、その四人の個性がぶつかりあうことなく、調和して楽曲に溶け込んでいるような、これも「THE 王道アイドル」のスタイルだった。

MCに関してはまだまだ浦田のこさんがひとりで引っ張ている感じだったが、これはSHOWROOM配信に力を入れているらしく、そのような配信をやっているうちに他のメンバーの個性もステージ上で見れるようになっていくだろう。

また「THE 王道アイドル」の曲のステージに関しても、いまでもある程度は完成しているのだが、これからどんどん良くなるのは間違いないだろう。それは単純に楽しみだ。

 

ぼくは主現場が熊本のヲタクなのだが、熊本のアイドル界隈というのはある意味ガラパゴス化している。

これは熊本の芸能全般に関してそうなのかもしれないが、九州第二の人口を抱える県だからこそ、仕組み的にそうなりやすいのだ。

たとえば、ローカルのテレビ番組にしても、九州第一の人口の福岡県の番組だったら、福岡で人気が出れば九州全域でネット中継されることが多い。

ただし、熊本のテレビ番組はそうはならない。

福岡の人が熊本の面白さを認めるのはプライドが許さない。そしてここがガラパゴス進化の根拠なのだろうが、その逆に熊本も他の九州各県のように素直に福岡のものを受け入れるのには抵抗があるのだ。そういう県民性なのである。

だから熊本のローカルテレビ番組は独自の進化をしている。

これはアイドルも同じで、他の九州各県のアイドルがまず福岡を目指すのに対し、熊本のアイドルは熊本の中で独自に進化を進めている印象をぼくは持っている。

だから、熊本の現場はおもしろいとぼくは常々思っているが、そんなガラパゴス化している熊本に、東北で全国的な活躍をするアイドルを生み出した事務所が新グループを立ち上げた。

これはだからこそ非常に大きなことだと思う。

折り畳み式の独自の携帯電話がどんどん高性能化しているところに、iPhoneがやってきたような状態なのだ。

もちろんPOTIONの今後の活躍も期待だが、熊本アイドル界隈全体に、このグループがどんな影響を生み出すか。それらも含め、POTIONの今後の活動は見逃せないとぼくは感じている。

 

ヘヴィメタルは1978年、ジューダス・プリーストの「ステンド・クラス」というアルバムによって誕生した。

このアルバムが日本に紹介されたとき、ライナーノーツを書いたのが伊藤正則である。

ステンド・クラスも傑作と名高いが、このライナーノーツも傑作と名高い。

引用しよう。

 

ジューダス・プリーストよ、僕は歩兵でいい。

喜んで最前線に切り込んで行こう。

今更遠慮なんてするなよ。

かまうことはない、この僕の体を踏み越えて、さあ栄光の王冠を握ってくれ。

君たちの栄光は僕の誇りでもあるのだから。

もう僕は君たちにこの身の全てを委ねた……!

 

このライナーノーツはヘヴィメタルだけに限らず、その後の音楽シーンでオーディエンスに与えた影響は大きい。

栄光の王冠に向かって闘うアーティストを、オーディエンスは歩兵として支える。

そのような構図は今でも音楽シーンでたまに見られる。

 

空前のアイドルブームで沸き立った2010年初頭、アイドルヲタクも歩兵だった。

むしろ他の音楽ファンに比べると、身を削るという意味では最も優秀な歩兵だったのではないか。

グループ内でメンバー間の序列を決める選挙があれば推しのために投票券を集め、グループが他のアイドルとのコンペティションをやると課金をする。CDに特典が付けば、同じCDを何枚も買う。

すべては推しの夢のため。

そしてアイドル側も、ちょっとしたローカルなアイドルでも「武道館のステージに立ちたい」「東京ドームでライブをしたい」と夢を語っていた。

 

それから約10年。

現在でもそのような歩兵が闘っているアイドルもいるが、ブームが沈静化し、そのような光景は珍しいものになってきたように思う。

一番の要因は、若い少女の夢を応援するというアイドルとファンの関係が、アイドルはステージでファンを楽しませる、ファンはエンターテイメントとしてそれを楽しむという関係性に代わってきたからだと思う。

また、文化的に見ると2010年代後半からサブカルチャーの主役に君臨したYoutuberの存在も大きいだろう。

Youtuberは動画の後に「この動画が良かったら、グッドボタンとチャンネル登録をよろしくお願いします」と言うことが多い。

このグッドボタン(高評価ボタン)とチャンネル登録の数が、Youtuberの人気、すなわち実力を示す指標になっているらしく、ぼくは「15.5万」とか書いてある人気Youtuberのそれらの数字を見ると、冒頭に上げた伊藤正則よろしく、その数字が歩兵の数のように見えてしまう。関ヶ原の戦いで家康率いる東軍7万、毛利輝元率いる西軍8万、このYoutuber15万か、みたいな感じだ。

ただしである。

アイドルファンに比べるとこの歩兵はそこまで優秀ではないと思う。

それは「この動画が良かったら」と、リスナーがアクションを起こす前に一言添えているからだ。

動画が良くなければ、すぐに隊列を離れる気楽な歩兵なのである。

 

愛を分析した哲学者・エーリッヒ・フロムは「愛するということ」で、愛の類型として「母性愛」と「父性愛」というものをあげている。

これは性別的に女性は母性愛を持っていて、男性は父性愛を持っているというような話ではなく、性別に関係なく人間が抱く愛の性質を、家庭に例えて分析している。

そこでフロムは母性愛を「無限の愛」、父性愛を「条件付きの愛」と書いている。

すなわち、十か月間、自らの身体の中に命を宿し、お腹を痛めて産んだ母親は、生まれた子供には無限の愛を抱いている。なにがあっても、最後まで子供を守る。そのような無限の愛が母性愛なのだ。

対して父親は子供を社会に通用するように育てなければならない。そこで父性愛は子供に「私が望むように成長してくれれば愛してあげよう」という条件付きの愛になってしまうと。

フロムはこの愛は子供が大人になる道筋でどちらも必要だと述べ、特に幼少期は母性愛、青年期は父性愛を受けるものだと語っている。つまり、母性愛は「とてもかわいい」となにもしてなくても愛が生まれるのに対し、父性愛は「ちゃんと勉強してくれているから愛してる」といったような条件付きの愛であり、それはどちらが素晴らしいとか優劣の話ではなく、どちらも必要なことなのだと。

さてここで話を戻そう。

Youtuberは「この動画が良かったら」と条件付きの愛を求めている。Youtuberは、ファンからは条件付きの愛しか与えられないことを知っているのだ。

2010年初頭のアイドルヲタクたちは、曲がどんなに良くてもCDなんて一枚あればその機能を満たすのに、投票券のために何枚もCDを買い、無限の愛を与えてきた。

だからアイドルヲタクは優秀な歩兵だったのだが、そのトレンドはもう終わりつつあるのではないだろうか。

「コスパ」なんていうコストパフォーマンスを略した言葉も最近よく聞く。

そして2020年代に入り、アイドルもそのトレンドに気づきつつあるのだろう。

 

結果としてそのことを実感するのは、アイドル側が「武道館のステージに立ちたい」「東京ドームでライブをしたい」といった夢を語らなくなったからだ。

その代わり、一回一回のステージで目の前のファンを精一杯に楽しませようとしているように感じる。

阪神タイガースの優勝を自分のことのように喜んだファンのように、アイドルとファンが同じ夢に向かうのはもう古いのだ。むしろ寄席で落語家が御贔屓を見つけるために高座で全力を演じるように、来てくれたファンのためにアイドルが全力を尽くすように変わってきているのだ。

いつになるかわからない、叶うのかもわからない未来を追いかけるのに付き合うのはタイムパフォーマンス、すなわちタイパが悪いというのが今の時代のトレンドかもしれない。

夢を一緒に追うほどの余裕がファンにもなくなったのもあるかもしれない。

成長を見続けるというのがアイドルの魅力のひとつにあるのもたしかだが、成長する姿に付き合うぐらいなら、すでに完成したものを見たほうがコスパもタイパもいいという時代なのだ。

そこでアイドルは「楽しいステージをやるからファンになって欲しい」という方向にベクトルが進んでいる。

Youtuberが動画が良くなければチャンネル登録も高評価ももらえないように、一回一回のステージで良いと思われないとファンになってもらえないと、アイドル側も覚悟を持っている方が増えたように思う。

その結果として、歩兵として支えるファンは減り、エンターテイメントとしてステージを楽しむファンが増えたように思う。

近年、リフトや騒ぐなどヲタクの行動が過激になってきたり、何十万円もするカメラを持ってるヲタクも増えたが、それも一回一回のライブを積極的に楽しもうとしているファンが増えた結果だと思う。

そして、アイドルもそうやってこつこつと少ない人数でも目の前の人を最大限に楽しませること、せっかく来てくれた人に満足してもらうことに全力を尽くすことが、結局は栄光の王冠の近道になるようにぼくは思う。

強力な歩兵が身を削って下駄を履かせても、その下駄を脱いだら意味がない。正直、そんなアイドルもちょこちょこ見てきた。

だからこそ、条件付きの愛にこたえられるようなアイドルが結果的にホンモノになれる気がぼくはしている。

来年もそんな素敵なステージをたくさん見たい。

 

それはふと目にした高園なぎささんのポストからでした。

「一緒にたこ焼き焼きしよー」というオフ会の告知だったんですが、そこで引用RTされているフライヤーの場所を見て、目を疑いました。

「佐賀市愛敬町4-8紅屋館2F」

紅屋館2Fには9年前まで小さな劇場がありました。

主に佐賀の若手劇団がお芝居をやることが多かったみたいですが、2014年の夏ごろから、ピンキースカイが定期ライブを始めます。

すでにコミュニティFMの番組を持ち、アイドルの中ではいち早くYoutubeチャンネルを持って活動し、佐賀では多少は名の知られた存在でしたが、当時のアイドルヲタクの中ではまだまだ知名度はあまりありませんでした。

結局、この定期ライブと並行するように2014年の秋に、九州各地のアイドルを集めた対バンイベント「GABAI」が佐賀で始まり、そのイベントに毎回出演しているうちに、その圧倒的な歌唱力からたくさんのファンを増やし、その後の656広場の伝説までつながっていくのですが、残念ながらピンキースカイの定期ライブはこの紅屋館2Fの劇場が閉鎖されることで終了してしまいました。

その場所でまた高園なぎささんと会える! しかもクリスマスイブに!

ぼくは妙にそこに魅力を感じ、この日ふたつめのイベントとして、熊本県宇城市の天海でのRe:fiveと熊本Flavorのクリスマスライブを見た後に、佐賀に向かっていました。

 

聞くところによると、紅屋館2Fの劇場後にオープンしたBAR「OVER LAP」は佐賀の業界人やアイドルヲタクには有名なところみたいでしたが、9年前のピンキースカイの定期ライブ以来の紅屋館2Fはそれだけでぼくは興奮しました。

しかし、このオフ会、帰るころにはその場所の重さを忘れさせるぐらいすごかった。

そもそもアイドルによってオフ会の定義って色々あるとは思いますが、「たこ焼きオフ会」と聞いてどんなイベントを思いつきます?

ぼくは何度か行ったことがあるそういうオフ会は、何人かのヲタクごとにテーブルを囲み、そこにアイドルが顔を見せてちょこちょこたこ焼きを食べながら話をするというイメージでした。

熊本県宇城市からの回しということもあり、しかもクリスマスイブの渋滞もあって、ぼくが会場に着いたのはオフ会の開始時間から20分ほど遅れてでした。

そして会場のドアを開けると、高園なぎささんともう一人の主役RENさんが歌ってました。

オフ会用に特別にBARなのにカラオケが設置してあり、そのカラオケで、高園なぎささんがあの水晶のような声を出し惜しみせず、どんどん歌ってくれているのです。

普段のライブではまず聴けないピンキースカイが歌っていたカバー曲なんかも歌ってくれていました。

その高園さんやRENさんの素敵な歌声をBGMに、ここの現場じゃ新参者のぼくはぺーぺーらしくたこ焼きを焼いていましたが、作業しながら生歌が聴ける贅沢。たまりませんでした。

なお、希望があればアイドルさんとデュエットできるということも。

ちなみにぼくは運営のNAOさんと「二人は枯れすすき♪」と「昭和枯れすすき」をデュエットして、この曲のひどい暗さとぼくの歌の下手さに圧倒されたNAOさんに「誰がこの人連れてきたとー!」とお褒めの言葉をいただきました。

 

NAOさんが運営されていたRENさんが以前いたグループ、LuCifeRの現場はアットホームでめちゃくちゃ楽しいと聞いたことはありました。

ただ、熊本が主現場であり、なかなか見る機会がなく、あまり深く絡んだことはありませんでした。

結局、RENさんとその前にお会いしたのは三年前の熊本での最終形態クルトの現場であり、高園なぎささんは今年の10月にお会いしましたが、それも藤崎みくりの生誕祭でした。

そんなぼくはふらっと行ったクリスマスイブのたこ焼きオフ会。しかもこの日は高園さんもRENさんも佐賀でライブをされていたのに、ぼくはそのライブは干して、オフ会だけふらっと参加しました。

だから、ぼっちでぼーっとして、とりあえず食べるもんだけいただけて、高園さんと紅屋館のことをちょっとでも話せたらいいかなというぐらいの期待で向かっていたのですが、そんな新参者をあたたかく迎えてくれる運営さん、アイドルさん、ヲタクさんのアットホームな空気は、高園さんと紅屋館の思い出話をすることを忘れるほど、つまりいまこの時間を楽しむことを夢中になるほど楽しかったです。

そしてその楽しい場に高園なぎささんとRENさんがいることで楽しさも倍増。

最強のオフ会でした。

 

クリスマスイブという特別な日のオフ会だから、この日のイベントが超レアなイベントで、特別にめちゃくちゃ楽しい企画だったのはわかっています。

でも、こんな楽しい企画を体験したからこそ、高園なぎささんやRENさんのステージももっと行きたいと思ってしまうのがヲタクじゃないですか。

佐賀のみなさん、来年はよろしくお願いします!
 

今年のクリスマスイブはなんと日曜日ってわけで、各地でたくさんのレアなイベントが開催されたみたいです。

イブを好きなアイドルと過ごせるとはなんてすばらしいことだろうというわけで、楽しまれた方も多いと思います。

ぼくも数年ぶりに二現場回してしまいました。

一現場目は、推しの東雲ういさんのいるRe:fiveの出演する天海でのクリスマスライブ。

出演はそのRe:fiveと熊本flavorというおなじみのメンバー。

なんだかんだで今年一番見ているアイドルがRe:fiveで、それと変わらないぐらい何度も見てる熊本flavor。

それだけでぼくにとっては楽しいことは間違いないのですが、更にクリスマスライブとの特別感がよかったです。

 

アイドルのクリスマスライブのお楽しみと言えば、やっぱりメンバーさんのクリスマスのコスプレでしょう。

そして見慣れているアイドルだからこそ、そのアイドルさんの個性や好みがそのコスプレに反映されているのがファンにとってはうれしいです。

ステージに登場するRe:five。

まず目を引いたのは柊わかばさんでした。

吉川りおさんから借りた、と言われてた大人っぽい肩出しのサンタコスに、スカートから覗くのは色っぽい網タイツ。これまでのアイドル活動では、天真爛漫なスポーツ少女というイメージの強い柊さんが、このような大人っぽい恰好をしてきたことに驚きましたし、それがおそろしく似合っていたことに驚きました。

考えてみれば柊さんも来年の三月で18歳、新成人です。小学校の頃からアイドル活動をやっててくれたおかげでなかなか気づけなかったけど、いつのまにか少女は大人になっていたんだと感動するほどきれいでした。そういえば昨年のクリスマスライブで、強烈なリーダーシップを見せていたななんてことも改めて思い出しました。そしてそれからの一年でさらに女性らしさに磨きがかかっているのを感じました。

昨年はこの天海でのクリスマスライブは出演できなかった西園寺つきさんは黒いサンタコス。以前柊わかばさんがカフェで着られたこともあった感じの黒サンタですが、柊さんが着られていたときは普通にかっこいい感じだったのに、西園寺さんが着ると深みのあるなんとも言えない空気が漂っていたのがさすがでした。髪の色がインナーメッシュは目を引くものの全体的には黒に戻り、デビュー当時からたぶん一番今が髪が長いだろうというぐらい肩まで髪を伸ばして、一見するとどこにでもいるアイドルのような髪色、髪型になっているからこそ、生誕のときにも思ったけど美人度が増してます。その美人が黒いサンタコスを着てるだけなのに、普通じゃないのが西園寺つきでした。ただの美人じゃない、西園寺つきらしさとしか言いようのないらしさがある。それがいつもと違う衣装だからこそ際立ってました。

空豆かれんさんは安定の赤サンタ。去年も同じような雰囲気の衣装でしたが、だからこそ一年でずいぶんと大人っぽさが増しているのも感じさせていただきました。ふわふわのぬいぐるみのような赤サンタなのに、すらりと伸びた手足が激しいダンスにあわせて踊る姿は素敵でした。デビューして一年ぐらいは声と歌が結構いいなと個人的に思っていたのですが、最近はその恵まれた手足から繰り広げられる空豆さんのダンスはRe:fiveのステージのひとつのハイライトになってます。そのダンスをサンタコスでも見せつけるところがさすがでした。

去年はチェック柄の赤サンタコスだった、われらが東雲ういさんは、トナカイのフード付きの衣装でした。「暑かった」とライブ後にXでポストされてましたけど、暑そうでした。ただ、この衣装のチョイスが、コミカルな妹という東雲さんのキャラクターにはかなりマッチしてるなと感じました。黙ってりゃかわいいのに、と東雲さんの顔から入ったぼくは東雲さんを見てて思うこともあるのですが、そこで黙らず、余計なことを言って周りを混乱させる、そこがいいのです。それに拍車をかけるようにかわいいサンタコスではなく個性的なトナカイコス。すごく似合ってたし、それが東雲さんらしく見えるのがいいなと感じました。

ライブは衣装は特別でもステージは全開でした。いつもの「君とRestart」からのスタートではなく、「オトナと僕の」でライブがスタートしたり、セットリストもレア感が増すように工夫されてました。

特筆すべきはMONECCO5時代に冬に歌われていた「This summer」を「This winter」で歌うのを四年ぶりに聞けたことでした。見慣れた安定感のあるライブでも、ところどころに変化を加えてくれるところも楽しかったです。

 

熊本Flavorは水無月あやかさんとJunior Flavor Kumamotoのミサキさんのふたりでした。

あやかさんは赤サンタコス。もともと王道アイドルのオーラがあるあやかさんが赤サンタを着ると、これぞThis is Idolと言いたくなるほどの王道クリスマスアイドルでした。

対するミサキさんは、トナカイ衣装。やんちゃっぽくてすごく似合ってました。

熊本Flavorのライブも、天海が今年最後ということもあって、その総決算的なライブで、「シエスタ」から始まり、「NO.1スター」「コイマチ」「OMG」「スイートストーリー」「ロストジェネレーション」「キャッチマイハート」「LOVE無限大」と定番のわくわくするような曲の連続。

今月東京Flavorの選抜メンバーにも選ばれて活躍の場が増えているあやかさんと、去年の今頃はそのあやかさんの受験の影響でひとりでステージに立つことも多かったキャリアをもつミサキさんのステージは、それだけの安定感もありながらも、思わぬハプニングが生まれいつも予想外の楽しさがスパイスのように加わって、やっぱり楽しかったです。

 

一年を振り返るこの季節。

ぼくは面倒くさいヲタクなので、例年クリスマスライブは、来年はこのグループどうなっているんだろうと期待と不安を入り混じらせながら見ていた時期もありました。

しかし、去年の天海でのクリスマスライブから一年、今年一番多く見たRe:fiveとその次に多く見ている熊本Flavorが、最高に楽しいクリスマスイブを用意してくれたので、そんなことを考える必要もありませんでした。

とにかく、楽しいクリスマスイブを過ごせた。それだけで大変満足なライブでした。

もちろん、去年から一年間で、このふたつのグループがこのイブ以外にもたくさん楽しませてくれたから、こんな気持ちになれたのだとは思います。