MONECCO5時代
のちの橘かえでさんに初めてお会いしたのは2015年の7月の天草アイドルフェスタだったと思う。
このときはMONECCO5も研究生合わせて10人以上いるときで、しかもぼくはMONECCO5をダブルセンターと最年長ぐらいしか知らなくて、のちの吉川りおさんを見て初見なのに光る子いるなあと思った記憶しかない。この日、正規メンバー昇格最初のステージだったかえでさんは、自己紹介も最初にしていたが、そこまで強い印象は残ってなかった。
次に見たのが熊本でのくまCan主催のイベントだった。9月の話だ。
このイベントは、ゆーまんのくまCanの推しが卒業するイベントだったが、ゆーまんは推しとの別れを切り替えるように「もねっこに○○○(熊本の昔のゆーまんの推し)に似てる子がいる」とはしゃいでいたのだ。
そこで、のちの橘かえでさんの存在をぼくは覚えた。ただ、そのレベルだった。
ところが、ゆーまんのはしゃぎようを裏付けることがすぐに起こった。
ぼくが三回目にかえでさんに会うことになったのが10月の菊地夢空間、ショッピングセンターでの野外イベントだった。熊本のご当地アイドルが三組集まっていた。MONECCO5は天草外のイベントということでヲタクさんたちもかなり気合いが入っていた。そして、他のアイドルグループよりもそこで光るステージを見せていた。もともと、当時のMONECCO5のホームだったスマイルパークが野外であり、更に天草市内でのお祭りの出演など野外イベントをこなしていたMONECCO5は、他の熊本アイドルに比べて得意な環境のステージだったこともあるだろうし、他の二組より人数も多かったこともあっただろうが、この日いちばん激しいステージをやったのがMONECCO5だった。くまCanのヲタクとしてイベントに行っていたぼくは、そこでのMONECCO5のステージの迫力に圧倒された。
そして、その中でひときわ声援を浴びていたのが「みやび」ことのちの橘かえでさんだった。歌割がないのに、他のメンバーがソロを歌ってるときでも「みやびー」とコールされていたほどだった。
MONECCO5といえばダブルセンターと最年長とりおちという認識だったぼくに、かえでさんは強くインプットされた。また、当時はまだ5erと呼ばれていなかったMONECCO5のヲタクたちを見ていて、ゆーまんが言っていた通り、熊本ではすごい人気なんだなと感じた。
この頃、なにかのきっかけでみなみぶちょーがおすすめのアイドルを教えてくれというから、「MONECCO5がいいよ」と言ったこともあった。メンバー全員のアー写を見せたら「緑の子かな」と言われ、「緑の子の基本情報くれ」と言われたので、当時かえでさんが書いてたブログを送ったら自己紹介に「とりあえずバカです(*`・ω・)ゞ」と書かれていて絶句したということもあった。
そのくらいかえでさんは、知れば知るほど強烈な個性が浮かぶ存在感はあった。
2015年12月のスマイルパークでのクリスマスイベントでは、ゆーまんが「やっぱりみやびかわいい」と言いまくっていた。ぼくはブログの「とりあえずバカです」のインパクトもあったので、この子は他のアイドルにはない強烈な個性を持っているかもしれないと思いながら見ていた。
たしかにやばかった。
この頃にはMONECCO5のMCは最年長とりおちに固定されていて、そのふたりが話しているためにステージで個性を発揮することはそうなかったが、それでもなにかを言いたそうにきょろきょろしたり、他のメンバーと話したりしてる自由な姿が印象に残ってる。
たしかこのとき初めて物販に行った。当時はまだ12歳。のちの橘かえでさんを想像すると無口な、というより写真にサインを書いてるとあまり話せない初々しさがあったと記憶している。でも、しっかり「ありがとうございます」「応援よろしくお願いします」と言うのが気持ちいい子という印象は強かった。
そうこうしているうちに、ぼくはこのクリスマスイベントのときは研究生だった子が正規メンバーに昇格するや、推しになっていた。
推しに会いに行こうと出かけたのが2016年5月のスマイルパークでのチャリティーイベントだった。
この頃の物販の並びは、ぼくの推しのとなりがかえでさんということが多かった。
当時のMONECCO5の物販で列ができるのはダブルセンターや最年長、りおちぐらいで、そのほかのメンバーは当時はかなりゆるい空気で物販をやっていた。
そのとき、空いてるメンバー同士で話してファンを楽しませたり、時にはとなりのメンバーの物販に割り込んだりして話しているのが、のちのかえでさんだった。物販に行ったことはなくても、ヲタクみんなに愛されてる、また、かえでさんのほうも何度かMONECCO5に来たことのあるヲタクならたいがい覚えてる、そんな感じだった。そしてそれがMONECCO5の親しみやすい空気を作っていた。
新規の人が来たときは「物販、迷ったらみやびに行けば間違いない」と、どのヲタクも口を揃えて言うほどだった。
この頃、ぼくはかえでさんにこう言われたことがある。
「たきびさん、○○〇ちゃん推しなんでしょ。二推しはわたしよね」
それでこの話にはオチがあって、2016年からMONECCO5は年賀状を始めたのだが、このときぼくは推しさんとりおちとかえでさんを申し込んだ。
んで、2017年最初のイベントの物販でかえでさんから「たきびさん、年賀状ありがとう。びっくりした。なんでわたしなんかの頼んだの」と言われたので「二推しだからから」と言ったら、微妙に照れたような笑いをしてくれたのを覚えている。
また、この頃、かえでさんは物販のあとにハイタッチをやるというサービスを始めた。
交流してタイマーの音が鳴ったら「弱・中・強、どれにしますか?」と訊いて、ヲタクが強さを返事したら、両手で「ハイ、ハイ、ハイ」と叩く。「強」がおすすめだったらしいが、「弱」でも結構痛かった。ヲタクとしては一回やられただけでも痛いのに、並んでるヲタクすべてにやってたのだから普通にすごいなあと感じていた。アイドルとしてできるアイデアをすぐに実行に移す。そのアイデアもとにかく人と違ったこと。これがかえでさんの最大の魅力だった。
そのような強力なパーソナリティーでマンツーマンでも楽しませてくれるから、かえでさんとの思い出はついつい物販交流会が多くなるが、ステージでも活躍の場は増えていた。
2017年、2018年はMONECCO5の飛躍の年だったけど、それと同時にいちばん飛躍していたのがかえでさんだったと思う。
歌割りも増え、2018年発表された「Ifの向こう側へ」ではセンターに抜擢された。冗談でも「二推し」というのが申し訳ないほど、かえでさんを推してる人も増えてきていた。
そして2018年10月に最年長のリーダーが卒業すると、チャンスの順番が回ってきた。
これまで最年長とりおちでほぼ固定化されていたMCやラジオ出演が、他のメンバーにも回ってきたのだ。
水面下では物販でヲタクを楽しませていたかえでさんが、ついに表に出る。
独特の世界観、突拍子もない発想、ちょっぴり舌足らずな素朴な口調。
かえでさんが発言するところでは、他のメンバーのあきれたような突っ込みとともに笑いが生まれていた。
ライブのMCなどでも話がぐちゃぐちゃになりかけたら、かえでさんが発言して更にぐちゃぐちゃにして笑いに変えるのが定番化していた。
実際にはかえでさんの高度な観察力と、すぐに言葉に変えることができる言語力がそれらを作っていたのだが、かえでさんご本人はその自らの努力を鼻にかけることも、期待を裏切ることをすることもなく、時にはいじられキャラとして道化に徹してくれていたので、非常に楽しいものになっていた。
ステージでもぐんぐんと歌唱力を上げ、ライブ中は「みやみやみやみやみやびーぬ」というかえでさん専用のコールまで生まれていた。それほどヲタクにも愛されていた。
2019年、2020年は一転、MONECCO5は卒業ラッシュとなる。
何人ものメンバーの卒業を見送る中、「それでもMONECCO5にはみやびがいる」というのはヲタクにとって救いだった。
かえでさんがいるだけで、ステージが明るくなっていた。ヲタクだけでなく、他のメンバーもかえでさんが明るくしていたように思う。
そして2020年にMONECCO5は解散。
すでにりおちが卒業していたこともあって、解散ライブのマスターMCもかえでさんに託されていた。
MONECCO5を代表して最後に
「解散はしたくなかったけど、決めたことだから解散して、また新たにがんばります」
と泣きながらかえでさんが挨拶をしてMONECCO5は幕を閉じた。
そのときにはすでにかえでさんがグループの中心になっていた。
あきことよしことじゅんこ時代
MONECCO5が解散したとき、日本ははじめてのコロナ禍での冬を迎えていた。
主に配信が活動の中心となり、なぜかかえでさんは「よしこ」という名前になっていた。
のちの柊わかばさんである「じゅんこ」は受験でほとんど活動がなく、基本的にはのちの椿まりあさんである「あきこ」とのふたりでの配信が多かった。
あとは熊本CLEAR'Sとの合同ユニット、ARK FANTASIAで「霖雨のファンタジア」を歌われていた。
おそらくこの頃の経験がRe:fiveで活かされていくのだろうけど、配信では、MONECCO5時代の自由さを残しながらも、まとめ役をかなり意識されていたように感じる。
女の子ふたりがしゃべるだけの配信も、ヲタクなら見るのは楽しい。でもそれだけじゃコンテンツとしてはまだまだ。まず、そもそも話している内容がなになのかは、同世代の女の子が見ればわかることでも、中年のおじさんにもわかるように説明しないといけない。話の進む方向だって、あんまりぐちゃぐちゃにならないようにセーブする。そしてなにより見てる人に楽しんでもらう。
そのあたりに結構神経を使われているように感じた。そして、そのときの経験がその後のRe:fiveに活かされることになる。
ぼくはコロナが落ち着いた2021年の4月に一度だけ、「かえでとまりあ」として出演したアイドルイベントのステージを福岡で見たことがある。
このときはovertureもまだMONECCO5のものを使っていて、ふたりでMONECCO5をやるというステージだったけど、六年半MONECCO5をやってきたふたりにはなんの問題もない素晴らしいステージだった。
このままいけば新しいグループも楽しみだと思っていた。
Re:five時代
コロナ禍が深刻になっていた2021年4月にRe:fiveがデビューした。
新曲「君とRestart」に「霖雨のファンタジア」、そしてMONECCO5の楽曲を中心に活動拠点を天草から熊本に移しての再スタート。
うまくいけばいいなと思ってたけど、まずコロナ禍でアイドルイベントに足を運ぶ人が減っていた。
ライブに行けば相変わらず楽しいし、新曲もすごくいい。
なのにコロナ禍がファンをライブ会場から遠ざけ、どのグループも試行錯誤していた。そんななかRe:fiveもうまくいってないように見えることが2021年は続いた。
結果的にこの時は三人研究生がいたのだが、三人とも2021年に辞めている。
また、かえでさんと何度もダブル生誕をしたこともある、あきことよしこのときはあきこであり、まさにかえでとまりあの相棒とも言える椿まりあさんも卒業された。
柊わかばさんの復帰、新劇場の開設と明るい話題もあったが、世の中のコロナ禍の閉塞感に飲まれているような雰囲気だった。
この空気を打開するためなのか、10月にタレント活動を再開した吉川りおさんが期間限定でRe:fiveに加入した。
個人的にここが橘かえでさんにとって、めちゃくちゃ幸運だったんじゃないかと思う。
MONECCO5のときから一緒にやってきたおふたりだけど、初期の頃から副リーダーだった吉川さんと、自由な年少組だった橘さんでは求められるものがまったく違ったのだろう。
そこで、あきことよしこの配信ではリーダーシップを求められ、それをうまく発揮されていたとは思うが、配信でできてもステージにはステージの難しさがあり、うまく発揮できてなかったのかもしれない。
もしくは当座はそのようなことは吉川さんに任せることで肩の荷が降りたのかもしれない。
もともと橘さんは、物販ではひたすらに明るく、裏で悩んでいる姿などヲタクにはおくびも見せない方なので推測でしかないけど、吉川さんが加入したことでRe:fiveの雰囲気はがらりと変わった。それはやはり橘かえでさんが、吉川りおさんにサポートされることで輝きを増したからだと思う。いつも以上にステージを楽しみ、ヲタクに元気を与える橘かえでさんを見ることができた。
この頃に劇場でカフェが始まった。
定着はしなかったが、カフェの時間に「橘かえでが落語をやってる」「怪談をやってる」と話題になった。
「時そば」で一文を「いちぶん」と読んだり、「まんじゅうこわい」でお茶が出てこなかったりとめちゃくちゃだったらしいが、それでもヲタクを楽しませるためにいじられてもなにかやる、というかえでさんの勇気が伝わるエピソードだと思う。
2022年もはじめの頃はコロナ禍で、1月に予定されていた生誕祭も4月に伸びたが、一年前のようにグループの空気はコロナ禍に飲まれることはなかったと思う。
まずは5月に開催されたRe:five劇場ワンコイン対バンイベント。
ホストとして影アナから司会をこなし、イベント全体を盛り上げていたのは橘かえでさんだった。
ただ、どんなに盛り上げても自分に称賛を集めないのがお人柄なのか、素敵だった。リーダーシップと言えばそうなのだが、常に他のメンバー、グループを引き立てていることをいちばんに動かれていたと思う。
たとえば、橘さんがJunior flavor熊本の曲に参加するというコラボをしてみせても、「若い子がいいなあ」とヲタクはJunior flavor熊本を褒め、橘さんには苦笑していた。ただ、ヲタクにそういわせるほど愛されていることが、さすが橘かえでさんと感じた。
ゴールデンウイークが終わると、吉川りおさんのサポートメンバー期間が終了した。
正直、吉川さんから「来月でサポートメンバーやめる」と聞いたとき、ぼくは唖然とした表情を吉川さんの前で浮かべた記憶がある。
大丈夫かな? と心配になった。
ただ、吉川さんと入れ替わるように西園寺つきさんと東雲ういさんがまずは研究生として加入する。
そしてぼくはこの東雲ういさんを一目見たときから推そうと決めていた。顔が好きだったのだ。ヲタクとはそういうものだ。
そしてぼくは行かなかったのだが、このつきさんとういさんを加えた撮影会が終わったときにぼくは「ういちゃんの写真もっとないですか?」とツイートした記憶がある。
その翌週がモネリンピックだった。ぼくがつきさんとういさんに初めて会った日だ。
その日、かえでさんはぼくのそのツイートを見ていたらしく、すかさず「たきびさんはういちゃんを推すんですか?」と言われた。
おそらくMONECCO5やRe:fiveを応援した経験がある人なら頷いていただけると思うが、かえでさんはヲタクのこともよく把握している人だった。基本的に物販交流会に行けば、まずは「たきびさん、このあいだツイッターであれやってたでしょ」などとヲタクの話題で切り出してくれるような方だった。そういう方だからこそ、ステージでも他のアイドルを引き立てることを得意とされていたんだと思う。
さて、かえでさんに「ういちゃんを推すんですか?」と聞かれ、馬鹿正直に「そうだ」とぼくは答えると、かえでさんはまたぼくにこう言われたのだった。
「じゃあ、わたしは二推しで」
実際、ぼくもそうだけど、MONECCO5やRe:fiveに推しがいても、二番目に物販に行っているのは橘かえでさんという人は多いと思う。
それはひとえに、かえでさんの個性的なキャラクターが疑似恋愛対象というよりも、話してて楽しい女の子という側面が強かったからだと思う。
でもそういう存在は本当に貴重だ。
推し被り敵視、同担敵視なんて言葉もあるが、恋愛対象となればわたしだけ愛してほしいしあなただけ愛されたいという独占欲が付きまとうが、かえでさんはそういうアイドルではなかった。みんなに愛され、またヲタクたちみんなを愛する。
だからぼくにとって、MONECCO5のときからずっと二推しなのは変わらなかった。
さて、そのつきさんやういさんを迎えて四人体制になったRe:five。
2022年の5月中旬からの活動になったが、その活躍はすごかった。
もともとダンスを激しくグループでパフォーマンスには妥協がないから、研究生が加わったことで演じられるレパートリーは結果的に減っている状況も秋ぐらいまではあったが、それでもステージのメンバーからは、常に楽しいオーラがあふれていた。
メンバーが本当に仲良さそうで、本当に楽しそうにステージをする。
それはまさに、みんなから愛され、みんなを愛す橘かえでさんが理想とするアイドルグループだったからだと思う。
7月につきさんとういさんが短期間で正式メンバーに昇格する。
毎週のようにステージをぼくを見たが、真剣に楽曲をやるときもかなり楽しそうで、その幸せオーラがヲタクにもやってくるようなステージを見せていた。MCや企画ではヲタクと一緒になってメンバーも楽しんでいたようにも見えた。
そしてその中心には橘かえでさんがいた。
とはいえ、秋ごろから、お仕事が忙しくなったのか、橘かえでさんの休演が増えていた。橘さんがお休みの時は、遺影のように橘さんの写真がステージに置かれるのも定番になっていた。
ある意味、いなくても存在感があり、やはり橘かえでというリーダーがあるからこそのRe:fiveだとぼくは感じていた。
2023年1月18日、その橘かえでさんのRe:five卒業が発表された。
運営も受け入れきれていないとツイートしていたが、ヲタクも当然受け入れきれていないのが正直なところだ。
もちろん、いままでこれだけ素敵な体験をさせてくれた橘かえでさんには感謝しかないし、ありがとうと言いたい。
橘さんが選んだ道だから、それを否定する権利はない。
これからの橘さんの未来もRe:fiveの未来もぼくは応援したい。
ただ、振り返ると失われるものの大きさに気づかされて愕然としてしまう。
「St…you」で歌われている通り、「私だけを愛してほしい」が普通のアイドルの世界で、みんなから愛され、またヲタクみんなを愛してくれた橘かえでさんのようなアイドルにはもう会えないかもしれない。
そう考えると寂しい。
だから、残り二か月、できるだけお会いしたいと考えている。
会えるのは今だけだよ!
昨日は、会場で見るのは一昨年の12月以来の「ネバスト。」に行ってきました。
少子化とはたぶんまったく関係ないでしょうが、アイドルブームの市場がここ数年縮小傾向にあるのは、数字的なエビデンスがなくても、現場に通われている方は肌で感じてらっしゃると思います。
その要因に、高齢化社会や若者のアイドル離れというキーワードが新聞記事風に浮かぶ方も多いでしょうが、ぼくは遠因のひとつには、かつての携帯電話と同じようにガラパコス化が進んでいるからというのもあるのではないかと考えます。
各運営さんにとってはマーケティング戦略として、ブームが終焉を迎え、パイが少なくなっている以上、その少ないパイを自分のところが多く得られるように作戦を練るのは当然のことです。
そこでこれまではアイドルが新規のファンを増やすきっかけとして有効だった対バンイベントも変わってきている気がします。同じ事務所や同じ地域のアイドルだけで常連ヲタクを囲い込むように行うのが最近は主流になっているように感じるのです。もちろん地域に関しては、予算的に遠征が厳しいグループが多くなったという経済的な事情もあるんでしょうが。
そしてヲタク的にも実は囲いこまれることによるメリットも少なからずあります。常連客ばかりの飲み屋のようにおまいつのヲタクだけで集まった方が居心地はいいし、逆にそういう空間にTwitterなどをきっかけに新規のファンが入ってくれば、常連のおまいつは大歓迎して、更に居心地が良くなり、ヲタクにとってはそれはそれで楽しい空間になってしまっているのです。
顔見知りのヲタクたちと沸きかたを熟知してるアイドルを見る。それはそれで楽しいものです。
また運営にしても、江戸時代の吉原の遊郭ではなじみの女郎ができた客が他の女郎に浮気をしたら茶屋の女性陣でその客を折檻したなんて怖い話もありますが、常連ヲタクが新しい別のアイドルに目移りするのはなるべく避けたいのも本音でしょう。
そういうわけで、ひとつの事務所で固まってイベントをやり、その現場現場で常連が居心地のいい空間を作り上げ、ガラパコス化していっているんではないかと考えるのです。
ただ、そうなると新しいアイドルさんとの出会いは減ってしまいます。ヲタクの世界も更に閉ざされたものになってしまいます。それはちょっと悲しい気が、DDおじさんのぼくはします。実際、数少ないアイドルしか推してなくて、そのアイドルが卒業したら他の趣味に移行するヲタクって結構います。その積み重ねがアイドルブームを終わらせた気がしないでもないのです。
たしかに、ブームの頃もメジャーなところはそういう傾向がありました。
10年ほど前には「アイドルには興味はないけど、ももクロだけは別」「アイドルはももクロだけしか聴かない」ということを言う他称ヲタさんがたくさんいましたし、AKB48のヲタクさんはその後SKE48以降、各地で生まれた同じ系列のグループと、次々加入する新メンバーを追っかけるのが精いっぱいで、48以外のアイドルには手が回っていない人も多かったです。中には「48以外はアイドルにあらず」と平家みたいなことをおっしゃるヲタさんもいらっしゃったように記憶します。
もちろんそれはそれで結構なことだと思いますが、各地で新しいアイドルがまだ生まれ続け、まだ知らないアイドルが活動してるのに、それに出会えるきっかけが失われるのは、やはりもったいないことと思うのです。
その新たな出会いを生み出す機会として、定期的に各地からアイドルを集めて行うネバストのようなイベントは貴重だし、これからもたくさんのアイドルが出演して続けてほしいと感じています。
しかも、一昨年の12月に行ったときはラジオの公開収録しかしていませんでしたが、昨年よりネバストは2部のライブのみYOUTUBEで配信しています。これも非常にありがたいことと感じています。
それで昨日は1部と2部、通しで入ったのですが、結論から言うとこのイベントは通しで行くべきです。
アイドル側も2部は配信されることを念頭に置いてセットリストを組んできているように感じました。
たとえば、秘密のJOKERやanomalyは常連ファンが好む古めの曲を1部に持ってきて、2部ではいま見せたい曲をやってました。逆にRe:fiveは1部では攻めたセットリストをやって2部で安定の定番曲をやってました。
こういう楽しみ方ができるのも二部が配信という特殊な条件があるからでしょうし、配信されない一部を見てから二部を見ると更に楽しめました。
そんな中で、昨日はたっぷり六組を楽しむことができました。
まずは1部のトップバッターで出演したRe:five。地元熊本のアイドルですが、普段やっているワンマンや主催と違い、一曲目から、普段通っているぼくからすればよそ行き感があって、まるで遠征に行ってるかのような攻めの姿勢でした。
二部は先ほども言ったように高いレベルを維持するために定番曲をやっていましたが、メンバー全員が髪型をツインテールに揃えてきたスタイルは攻めてました。ショートボブの西園寺つきさんも、一部ではひとつ結びだったのが二部ではふたつ結びに変えているこだわりでした。
何度かネバストには出演していることもあって、二部では配信にも慣れた様子で遠隔操作されているカメラにレスを投げ込む余裕もかなり感じられましたが、やっぱり特筆すべきは一部。トップバッターで地元熊本のアイドルらしく、ヲタクの声出しも誘い、その後のステージの熱気を作るきっかけとして暴れていました。
二組目はCandy Cross。残念ながら田島莉奈さんが休演でしたが、ひとりで出演された小鳥遊朱寿さんが熊本出身ということもあって、「熊本県を背負って盛り上げに来ました」と小鳥遊さんが言われるほどの凱旋ステージになってました。まさにCandyというようなお人形さんのようなかわいいルックスと曲中に誰もをしあわせにする笑顔を全力で振りまく姿はさすが。
たくさんのイベントを告知しながらときおり天然ボケを見せるMCも素晴らしかったです。
三組目のSwampは初見のはずでしたが、なんどか拝見したことある百戦錬磨のお二人でした。有瀬愛美さんはTIFにも出演されたことがあるほどのアイドル。竹内優里亜さんは抜群の歌唱力に磨きがかかっていました。
一部はイントロが流れるだけでヲタクが叫び声を上げるようなセトリでまさにやりたい放題。二部もその勢いそのままに、かわいい曲も入れてきて変幻自在。フロアを全力で楽しませるライブアイドルの真骨頂で、初見でも楽しめる強烈なステージでした。
四組目はネバストではおなじみの秘密のJOKER。アイドルヲタク的にはどうでもいいかもしれませんが、Hirokeyが広島カープとの日本シリーズでホームランを打った秋山幸二のようにバック宙してました。ただ、どうでもいいとか需要がないとかはあくまで冗談として、このHirokeyのバック宙が、秘密のJOKERが活躍し続ける原動力なのかと感じました。
ステージをよくするために、Hirokeyさんが新しいことにチャレンジする。ヲタクがステージに向けるカメラや視線はAIMIさん、大津ひよりさん、舞音さんに向けられているかもしれませんが、今日のステージよりも明日のステージが良いものになるようにHirokeyさんが率先してチャレンジする。昨日は懐かしの曲もたくさん披露してくれましたが、それぞれが完成度がさらに上がっているのはこのチャレンジが続けられているからなのかなと感じました。
フロントの女性三人も相変わらずぐいぐい来てて大迫力でした。
五組目は/NOVA。KinoさんがロックボーカリストのようにPAのモニターに足をかけてステージがスタート。個人的にシーモールホールでしか今まで見たことがなかったのですが、ヴィジュアル的にライブハウスのほうが似合うなと素直に感じました。
メタル風、プログレ風、時にボーカルがパンク風になるロックナンバーの連続がノンストップで繰り広げられる唯一無二の世界観を作っていました。
他のアイドルには絶対できない強い個性。そのインパクトはやはり凄まじいです。
六組目はanomaly。トリだった1部の1曲目で、ぼくが生で聴くのはそれこそ一昨年のネバスト以来の「パズル」が流れたときには鳥肌が立ちました。
優れた楽曲、これぞ正統派アイドルらしい清楚なヴィジュアル。数年前福岡のアイドルシーンに一石を投じ、TIF最終予選まで登りつめた実力は昨日も如何なく発揮されていました。
そんなすごいパフォーマンスを見せながらも、「ありがとう」から始まるMCは等身大の女の子というのがアイドルらしくて楽しかったです。
秋元康がセンターポジションという概念を作り、日本のロックバンドのボーカリストが特に愛されるような仕組みをアイドルにも持ち込みましたが、このグループはそれを否定するようにほぼ均等に歌割をされて、メンバーさんひとりひとりが目移りするほど輝いていました。
それは、四人のメンバーがファンに均等に愛されるようなビートルズ的な構造を、作り上げている印象で好感が持てました。ジョン・レノンやポールマッカートニーが他のメンバーよりちょっと多く愛されたように、メンバー間での人気の差はあるかもしれませんが、桑田佳祐と他のサザンオールスターズのメンバーほどの極端な差ではなく、四人そろってのanomalyというスタイルにぼくは好感を持ちました。その四人だからこそ、これだけのパフォーマンスなんだと感心しました。
というわけで好きなRe:fiveから、北九州や本州が多くて距離的になかなか頻繁に見れないCandy Cross、Swamp、/NOVA、なぜか熊本でもネバスト以外ではなかなか見れない秘密のJOKER、そして相変わらずすごいanomalyが、通しだと2ステージ見れて、しかも帰りの車の中ではYOUTUBEのアーカイブで、見たばかりのライブの音源が聴けるネバスト。
かつて、毎月定期開催とYOUTUBE配信を佐賀で行っていたGABAIが、まともなロコドルがいなかった佐賀を九州アイドルのメッカにしたように、ネバストから新たなブームメントが起きないかと期待しています。
2022年は結局一度も天草に行きませんでした。
それが今年は新年早々Re:fiveが天草でライブをしてくれました。
本当に久しぶりの天草。
ライブ会場のスタジオ5に行く前に、MONECCO5思い出の地、スマイルパークでヲタさんたちと盛り上がり、懐かしの銀天街商店街を歩きながらいざスタジオ5へ。もうそれだけでテンションが異様に高まってました。
スタジオ5のフロアは、以前とは違い椅子が設けてありました。かつては立ち見でライブハウスのようにぎゅーぎゅーと見てた頃もありましたが、数年来なかった間にコロナ禍を感じました。
少々音響トラブルがあり、開演が遅れました。
そこで時間をつなぐように最初に登場したのが、吉川りおさんと橘かえでさんでした。
準備が整うまでトークという感じでしたが、このスタジオ5でこのふたりを見られただけで満足でした。
このあとにRe:fiveのライブが見られるなんてなんと贅沢な事でしょう。
ライブは「君とRestart」からスタート。
この曲、天草で聴くと歌詞の「六年半ありがとう」が心にしみます。特に橘さんと柊わかばさんを見ると、本当に活動を続けてくれてありがとうという気持ちになります。
そこに東雲ういさんとかれんさんの新しい風。
まだまだRe:fiveが続く幸せを感じます。というか今年もたくさん楽しませてもらいたい! と思いました。
天草にアイドルファンを呼び込もうと歌われ続けた「君を待ってる」、天草のポルトで初披露された「St…you」、スマイルパークでりおさんが声掛けを呼び掛けて定番化した「ラクガキアクセル」、これらの曲を天草で聴くと、他の場所で聴くのとは一味違うなと感じました。
もともとMONECCO5は、天草の人たちを楽しませ天草を元気づけるために結成されたご当地アイドルだと聞いたことがあります。
ただ、そのグループが天草を飛び出して多くの人たちに愛されるRe:fiveとして生まれ変わらなければならなかった必然には、天草以外のファンの存在が大きいはずです。
ぼく自身、佐賀県から一時期は毎週のように通っていました。昨日は年に数回のことだからと松橋インターまで高速に乗って片道三時間弱で到着しましたが、通っていたころは節約しようと菊水インターから県道501号を使って片道三時間半、下道で片道五時間近くかけて行ったこともありました。
そしてそういうぼくらにとっては、たしかに通うのはしんどかったけど、天草は旅行の行き先のような非日常の特別な場所でした。アイドルのいる非日常の夢の島だったんです。
その夢の島の特別感を思い出させてくれる天草のライブはやっぱりいいなと感じました。
もちろん、まだまだ続くからそんな懐かしい気持ちばかりに浸るのももったいないです。
推しの東雲ういさんが導入するメンバーの自己紹介。Re:five劇場のワンマンライブを思い出すような緩い企画。楽しい時間がメンバーや吉川りおさんと一緒に進みます。
橘かえでさんは久しぶりでしたが、やはり橘さんがいてこそのRe:fiveだなとその存在感は圧倒的でした。
ダントツの歌唱力に誰からも愛されるキャラクター。長いキャリアでそれだけのアイドル力を培っているのに、年下のメンバーからもいじられる人間力も魅力です。お仕事などでお忙しく、2022年はなかなか会えないこともありましたが、橘さんのペースでいいので、今年もたくさんお会いしたいと感じました。
2022年いちばんRe:fiveのステージに立たれたのは柊わかばさん。去年の年初は妹的立ち位置だったのに、新メンバーが増えるやグループ内の年齢的にもお姉さんポジションに代わってきたら、思わぬ大人の色気も兼ねそろえた美人に変貌されて素敵です。ばっち、というニックネームとともに、今年はなぜか「陽キャ」感を出している感じが面白く、これまでのかわいい妹キャラでは見えにくかった個性が出てきて、どんなばっちが見れるんだろうと楽しみが続きます。
年末に毎日showroom配信で、着実にファンを増やしている東雲ういさん。showroomを見ていて、まだまだ引き出しがありそうなのも楽しみだし、Re:fiveの雰囲気の中で、何をやっても自由な感じという空気を作っているので、なにかやらかしてくれるかと期待しかありません。また、東雲さんは推しだから感じてるのかもしれないですけど、本当にアイドルをやっているのが楽しそうなのがいいんですよね。
ソロパートで思わぬ歌唱力を見せているのが研究生のかれんちゃん。去年末のクリスマスライブで歌いだしぼくらを驚かせてくれましたが、この日はもう堂々としたものでした。場を重ねるごとにどんどん良くなるのが見ていて楽しいです。
これに西園寺つきさんも加わる、今年のRe:five。
一年前には感じられなかったわくわくが天草の地で感じられたことが非常にうれしい一日でした。
最終形態クルトの頃から続いているBargringoでの新春ライブ。
今年もお屠蘇気分真っ最中の正月二日「新春着物初詣ライブ」として、宇城ありささん、ローズさん、Iaraさんの去年と同じ安定の闇鍋メンバーでの開催でした。
まずはローズさん。
アイドルとしては昨年はフォティプロでの活躍もありましたが、熊本の人にとってはやはりそれよりもこしまきさんとの漫才ユニット「火の国おやこ丼」が愛されてることもあって、アイドルとしてのイベント出演に「今日はピンで登場ですか?」と客席からいじりまくられながら登場。「ソロです。アイドルです」と返すお約束はお見事。
フォティプロの「All together 限界を越えよ!」で客席にフリコピを強要しながら、楽しい盛り上がりでした。客席も、ここにいる人のほとんどが「毎年、一番最初に見るアイドルのステージはローズさんだよな」と自分たちも限界を越えていることに気づき最高でした。
こしまきさんの本気度から「火の国おやこ丼」が割とがちに活動していることもあって、アイドルされているときのローズさんも更に表現の力強さに磨きが買っているように感じました。
年齢なんて関係ない、人はいくつになっても成長を続けなければという大事なことを、新年早々教えてもらえるステージを、毎年新年最初に見せていただけてるのはいいなと感じました。
次に出てきたのは成長盛りのIaraさん。
Iaraさんは毎年、見るたびに成長していて本当に驚きです。
Iaraさんは今年17歳になられるらしく、MCで「ローズさんとありささんと同い年になるんですよ」と客席を笑わせてくれました。
数年前、福岡で何度かIaraさんを見たことあるんですが、熊本と違い、客席に黄色やピンクのサイリウムが光るステージで歌うIaraさんは遠征の地だからか、客席を引っ張るような攻める姿勢がありました。
ただ熊本に関しては地元ということもあり、Iaraさんをよく知っているファンの人も多いから、Iaraさんも割とリラックスして客席の反応を見ながら、客席と一緒にステージを作ることが多かったのです。
それがこの日は、かつて福岡で見たような攻めのステージで客席を引っ張ってました。
Iaraさんも17歳。
ゆるーい熊本の空気もいいけれど、アイドルとして今年は攻めていく姿勢を感じられてよかったです。
そして宇城ありささん。
まさに真打登場という雰囲気で、昭和のアニメソングのイントロに乗って登場。
なんだかんだ言って、客席の予想を斜め上にずらして、客席の空気を全部自分の世界にしてしまうのが相変わらずすごいなと感じました。
熊本弁の混じった軽快なMCに「Navi」と「ハチドリ」を立て続けに披露。永遠の17歳としてかわいいをなりきる姿もさすがです。
ラストは「最近、この曲をやっていないとクレームをいただいているので、今日はやります」と宇城ありさワールドのMCで自虐的に楽しませながらの「チャリできた」。ローズさんもIaraさんも楽屋から飛び出しての新年早々のお祭り騒ぎでした。
そのまま三人で、これまた客席の予想の斜め上の選曲で二曲をコラボしてフィナーレ。
とにかく客席を飽きさせない、来てくれた人を満足させる、その宇城ありささんの気持ちの伝わる楽しい時間でした。
物販のあとは恒例のようにファンとメンバー一緒に初詣。
宇城ありささん曰く毎年恒例の「ヲタク行列」で熊本城近くの稲荷神社に初詣しておみくじを引くプチオフ会。
アイドルというと本来手の届かない偶像であるべきなのですが、宇城さん、Iaraさん、ローズさんとこうして毎年初詣に行くと、不思議とこの三人とこの場にいるファンの人がみんな仲間のように感じられるのがうれしいです。
ここで新年早々感じた仲間意識が、別の場所でIaraさんや宇城さん、火の国おやこ丼やローズさんを見たときに応援したくなるきっかけにもなるのかと感じました。そしてそれを毎年仕掛けてる宇城ありさはさすがです。