1980年のアルバム(その15 Setting Sons / The Jam)
1980年のアルバム・シリーズ
ブリティッシュ勢が続いたところで、もう1つ・・・
The Jam
パンク・ムーブメントの中、モッズ・スタイルで登場
トリオという最小の編成ながら、3枚目のアルバム All Mod Cons
パンク・ロックの領域を越えた音楽性と、その過激ともいえる歌詞で高い評価を
The Police、The Clash、The Boomtown Ratsと並び・・・
パンク・ムーブメントから生き残った・・・
ブリティッシュ・ニュー・ウェイヴ四天王といえる存在となっていました。
そんなまさに昇り調子の The Jamが、'70年代最後に発表したのが・・・
やはり歌詞内容が問題視される The Eaton Rifles
そしてこのナンバーを含む4枚目のアルバムが・・・
Setting Sons
最初は、3人の幼馴染みの成長をテーマにした、コンセプト・アルバム
そのように制作され始めたようですが、完成作品はそれだけでもないとのこと
印象的なのはアルバム・ジャケット写真
メンバー3人と思いきや・・・
Benjamin Clemensという彫刻家が、1919年に制作した・・・
The St John's Amblunce Bearersというブロンズ像
ロンドンの帝国戦争博物館に所蔵されています。・・・
アート・ディレクション、デザインは、Bill Smith
写真撮影は、Andrew Douglas
尚、裏ジャケット写真撮影は、Andrew Rose
内ジャケット、裏ジャケットのイラストレーションは、Robin P. Richardsです。
レコーディングは、1979年8月15日~10月10日
ロンドン、シェパーズ・ブッシュ Townhouse Studiosにて・・・
The Jamメンバーは・・・
Paul Wellerヴォーカル、ギター
Bruce Foxtonベース、ヴォーカル
Rick Bucklerドラムス
その他のミュージシャンは・・・
Merton Mickピアノ🎹
(後にPaul WellerとThe Style Councilを結成する Mick Talbotのこと)
Rudiサックス🎷
Pete Solleyストリングス編曲
The Jam Philharmonic Orchestraチェロ、ティンパニ、リコーダー
エンジニアリングは、Alan Douglas、Vic Coppersmith-Heaven
アシスタント・エンジニアリングは、Geroge Chambers他
プロデュースは、Vic Coppersmith-Heaven
オリジナル曲は、ほぼ全曲、Paul Wellerの作品です。
A面1曲目、電話の呼び鈴()から、勢いよく始まる・・・
Girl On The Phone、ギターのカッティングに合わせて、Paulが熱唱
途中、Bruceのベースもフィーチャー、ギターとのかけ合いも・・・
典型的なパンク・ロック・ナンバー、邦題は「電話のあの娘」です。
2曲目、パワフルなドラムスから、ベースも響いてノリよく・・・
Thick As Theives、ここでもパワフルにPaul、バックアップする Bruce
モッズの先輩格、The Whoを思わせるハードなロック・ナンバー
邦題は「引き裂かれぬ仲」です。
3曲目、ベース音が激しく刻まれ、そこからアップ・テンポに
Private Hell、曲調はマイナーですが、ノリよく歌う Paul
途中、転調するところもあり、ポップな面もあるナンバー
・・・ですが、意味ありげなシニカルな歌詞、全般的にベース音が印象的です。
4曲目、ギターのピッキングに合わせて歌い出すPaul
Little Boy Soldiers、曲調はノリのいい展開に、Bruceが歌をバックアップ
途中、ドラムスをブリッジに、戦争の状況・・・
マーチ風のリズム、そしてストーリーを語るように、Paul
曲は色々展開して、最後はドラマチックにフィナーレ
3分半のロック・オペラ
本アルバムが、コンセプト・アルバムであったことが伺えます。・・・
邦題はそのまま「少年の兵士」です。・・・
5曲目、ドラムスが力強くリズムを刻んで、リコーダーの音色・・・
Wasteland、Paulが歌い、Bruceがバックアップ
ニュー・ウェイヴ・ロックに共通しているテーマ
力強く響くベースをバックに、リコーダーの音も効果的に入ります。・・・
邦題は「不毛の荒野」です。
B面1曲目、ギターによる効果音、ベースも響いて・・・
Burning Sky、軽快なリズムで、パワフルに歌うPaul
ポップなロックのミディアム・テンポのナンバー
Bad Companyとは、同名異曲ですが、こちらは「暴動」を感じます。
邦題は「燃え上がる空」です。
2曲目、なんとストリングスが奏でられ・・・
Smithers-Jones、Buruce Foxtonの作品、リード・ヴォーカルも Bruce
全編、ストリングスをバックに、ドラマチックに歌われ・・・
ここではPaulは、バックアップ側、最後は力強い曲調に
Bruceのバンド From The Jamでは、勿論、プレイされています。
3曲目、ギターのカッティングに合わせて、カウベルも入り・・・
Saturday's Kids、文字通り、「悪ガキ」を歌っただけに・・・
曲調も当時のニュー・ウェイヴの典型と言える軽快なビート
Paulの歌をBruceがバックアップ、コーラスもキマって・・・
途中、メロディアスな曲調が入るところも彼ららしいと思います。・・・
4曲目、ギターがジャーンとその間にベースが刻まれ・・・
The Eton Rifles、早口でストーリーを語るように歌うPaul
そう、文字通り、英国のエリート「イートン校」での悲劇を歌ったナンバー
力強いロック、途中でオルガン(Mick Talbot)も効果的に入り・・・
ギターとベースのかけ合いのリフレインで盛り上げていきます。・・・
全英 No.3、全英で初のTop10入り、シルバー・ディスク獲得
オーストラリアでは、No.70、The Jam初の世界的なヒット曲といえるでしょう。
5曲目、エレクトリック・ギターのイントロから・・・なんと・・・
Heat Wave、言うまでもなく、Martha And The Vandellasの大ヒット曲
(1963年、全米 No.4)、作者は、Holland-Dozier-Holland
Linda Ronstadt(1975年 No.5)、Phil Collinsのカバーでも知られる
スタンダード・ナンバー
ここでは、Paulがノリのいいロック・ナンバーに、Bruceがバックアップ
Mick Talbotがノリのいいピアノ🎹、ホーン・セクションも効果的に入り・・・
盛り上げて、LPレコードはここで幕を閉じます。
「恋はヒート・ウェイヴ」と邦題が付いたこともありました。
尚、このようにMotown ナンバーを取り上げるところからも、初期のBeatlesとの共通点を感じることがあります。・・・
カナダ盤、米国盤は、収録曲が異なり・・・
カナダ盤は曲順が少し異なり・・・
Strange Town、The Buttefly Collectorが収録された全12曲
米国盤は、英国オリジナル盤とは、AB面が逆
B面2曲目に Strange Townが収録された全11曲となっています。
またCDの時代になり、2001年にリリースされたリイシュー盤には・・・
次のシングル Going Underground等9曲が追加され、全19曲となっています。
アルバムの方、全英 No.4、全英ゴールド・ディスク獲得
これまでで最高のチャート・イン
全米 No.137、全米アルバム・チャートで初のTOP200入りとなりました。
その他、カナダ No.75、オーストラリア No.70、ニュージーランド No.14
本作から、本国以外のチャートにも登場するようになり・・・
まさに世界的に人気急上昇といった状況でした。
コンセプト・アルバムではなかったものの、幅広い音楽性を感じ・・・
パンク・ロックから抜きん出て、初期のBeatlesを思わせるようなところも・・・
The Jamは、大きく飛躍
日本でも、この Setting Sons辺りから、ファン層を大きく広げ・・・
1980年、初来日公演を果たしたのでした。
「本物は最後にやって来る・・・」
そんな宣伝文句も記されていたように思います。
ただ自分としては、来日公演に行くほどまでは・・・
そんな感じでした。(笑)
「ブリティッシュ・ニューウェイヴ四天王」とは、自分が勝手に付けたのですが・・・
それぞれの中心人物・・・1980年が明けた時点では・・・
Sting28歳、Bob Geldof28歳、Joe Strummer27歳
今風に言えば、アラサーなのですが(苦笑)・・・
Paul Wellerは、何とこの時点で、まだ21歳
それだけ若さも漲っていたわけですが・・・
その一方で、自分と年もあまり変わらないことで、「若僧」といったイメージで・・・
他の3バンドに比べて、この当時、過少評価だったことは否めないでしょう。(苦笑)
・・・ということで、The Jamに関しては、この当時からもっとしっかり聴いておけばよかった
後になって少し後悔しているのでした。(苦笑)・・・
(参考までに)