前回分
小俣尚(コマタ ナオ)はある日、営業から会社へ戻ってくると、自分のイスがこつぜんと無くなっていた。
え? 何で?
近くを探すけれど、尚の座るべきイスは無くなっていて見つからない。
誰だ? 誰だ? 見回しても判らない。
誰も彼もそんな気がしてならず……
尚は何となくすぐまた会社を出てから、1番信頼出来る幡山のスマホへ電話した。
幡山はすぐ電話に出る。
「今、どこにいる?」
『あー今、戻っているところですけど、どうしました?』
「あのさ、俺のデスクのイスが無くなってて……」
『え? イス? 誰のですか?』
「俺の……」
『ええっ!?』
「その分じゃ知らないね」
『はい……』
そして幡山も見ると、やっぱり尚のデスクのイスは見当たらず……
会社のゴミ捨て場に行くと、なんと無造作に尚のデスクのイスが捨てられていた。
なのに誰も何も言わないので、他から使わないイスを引っ張ってきて使うことに。
何もしてないし、何の為かも判らず……
なのでずーとモヤッとしていた。
そこにあのモヤモヤ解消商会のお店が見えたというわけだった。
あんなに大きく店名が出ているのに、コンビニと間違えてふらふら~~と入ってしまったのだ。
そして翌日、会社へ行くと……
日栗(ヒクリ)部長もやってきてイスに座った途端、日栗部長の座ったイスがいきなりぐにゃんと曲がると、
ジャーマンスープレックスをそのイスは生きてるかのように部長を脳天から落とし込んだ!
「何だよ~~いて~~な~~」
日栗部長は立ち上がりその振り落とされたイスにまさかのまた座ると、またもやぐにゃん!
またイスに落とされて頭から落ちた!
さすがに2回目はみんなプププ……吹き出しそうになる人が続出。
「何だ~~!?」
2回も振り落とされたイスにまたもや性懲りもなく座る部長!
やっぱりまたそのイスは、ぐにゃんと曲がりジャーマンスープレックスを部長にお見舞いさせた!
もうさすがに3回もジャーマンにされたので、みんなはドッと一斉に笑い出す!
日栗部長はだんだん腹立たしくなる。
そこへ尚は行くと、
「部長、俺のイス、どうして勝手に捨てたんですか?」
「……なぜ小俣君がそんなこと……」
「イス、捨てたの部長ですよね?」
「……いや、わたしは知らんぞ」
日栗部長はシラを切りながら、また勝手に他の社員のイスを交換して座った。
すると、またぐにゃん! ジャーマンされてしまった!
「何だー! このイスは~~!」
さっきから同じ言いようで尚更その場にいた人達は大笑いしていた。
何と日栗部長が座ると他のイスも部長にジャーマンスープレックスをくらわすようになっていた。
その代わり、他の人が座ってもなんともない。
そして日栗部長は観念して、尚のイスがあまりに汚いのが目について勝手に捨てたと自白した。
それでもその日は、日栗部長はどのイスに座ってもジャーマンスープレックスをされてしまい、とうとう外へ逃げ出す。
車のシートは無事だったらしく、そこでしのいだとか……?
翌日は何とも無くなったらしい。
そのことがあってから、小俣主任のイスの呪いとしばらく囁かれてプチ伝説となった。
続き