暗さを大切にすること
昨日は、新しくお会いした若い建て主のご夫婦の方と話をする機会がありました。お仕事で作曲をされている方で、日常的にも小さな音にすごく敏感である、というお話をされていて、聴覚が普通よりも鋭い方なのだろうな、と感じました。その方が、私の建築のコンセプトの「あえて暗い部分をつくる」
というのがとてもおもしろい、とおっしゃっていました。
明るいこと、日当たりのよいこと、というのは家づくりでとてもよく出てくる要望です。日本には「南側信奉」のようなものがあって、マンションでも家でも、南向きの部屋が価値が高い、と信じられています。私自身も、「南向き」は好きで、植物を育てたり、猫が昼寝をしたり、といった自分の生活には、お日様は欠かせない、と思っています。
一方で、自分の建築のコンセプトは、「明と暗、その両方を体験できること」を大切にします。一つの家の中に、明るい部屋と暗い部屋を積極的につくることを、一人暮らしの賃貸住宅でも実現するように努力しています。
暗さには「落ち着き」「静けさ」「眠り」「集中」「優雅」など、人間の活動において必要不可欠で、豊かな奥行きを創り出す効果があります。それを積極的にデザインすることはとても大きな喜びです。
北向きの書斎(三角地の家
)
その日お会いした方も「音楽をつくるときに、サビの前に短調の暗い部分をわざと入れたりして、単純に明るいだけの音調にならないよう工夫したりします。建築でも同じことを考えているんですね。」と言われて話がもりあがりました。
この世界には、何でも2極が存在していて、明-暗、静-動、表-裏、上昇-下降 勝-負など、どんなものにも必ず反対のものがあります。そして、人は意識の上で、「どちらがよいか」と考える癖があるようです。でも本当は、どちらか一方を信奉することはとても不自然で、自然の摂理に反しています。裏と表は両方で一つの世界をつくっているので、どっちがよい、ではなく、裏も表も両方いとおしむ、そういう価値観がこれからの時代に必要なのだとろうな、思っています。
建築家 菊竹清訓氏の自邸「スカイハウス」の見学会
先週の土曜日、建築家の菊竹清訓氏の自邸、スカイハウスの見学会に行ってきました。50年前に建ったものですが、今みても新しく、明快な空間構成を持った斬新な自邸です。
随所に、日本的美意識と世界に通用する近代メタボリズムの建築の幸せな合致を見ました。菊竹氏が九州の水天宮の御子息であったことも、この建築の寺社風の縁側空間が生まれたことに関係があることを、初めて知りました。
この住宅が建った当初は、家の下が5mのピロティー(軒下外部空間)になっていて、そこで客人を呼んでバーベキューをしたり歓談をしたりされていたようです。当時のビデオを見せていただいて、とてもにぎやかに歓談する風景の中に、今は大御所になられた建築家の方々が数多く映し出されていて、おもわず微笑んでしまいました。
その日、81歳の菊竹先生がいらして、お話を伺うことができました。家について、語っておられたのですが印象的だったのは、「建築は、いつも社会的なものです。たとえ個人の家であっても人を招きいれる座敷がなければその建築は十分でない。日本の家は座敷を失ったときに駄目になった。家には30セットの食器を用意してあるべきなのです。」とおっしゃっていて、実際に長い間そのような生活をされていたことを伺い知る自邸、「スカイハウス」でした。おもてなし、をするのは奥様や女性達だったのでしょうし、そのような文化をささえた女性たちに深い敬意を表しつます。
社会や人、公共に対して、開かれた意識があるかどうかが、「建築家である」というあり方の根底なのだと認識し、81歳の菊竹氏のお元気な笑顔を見ながら深い感動を覚えました。
千駄木の家 オープンハウスを行いました。
先週の日曜日の午後に、クライアントのご厚意で、千駄木の家のオープンハウスを行うことができました。午前中には雨が降っていましたが、午後にはやんで、曇り空ながらなんとかお天気がもちました。
工事が遅れていて、3日前に、近しい方だけにメールでご案内したのですが、50人以上の方がお越しくださり、大盛況でした。
お越しくださった皆さん、ありがとうございました!
夏の涼しさ、風をつくる建築、というテーマでしたので、暑い日が体験できるとよかったのですが、昨日は、窓をあけると少し寒いくらいでした。
風を感じる建築について来られた方と話しをしましたが、「風向きは変化するので、いつも風を入れるのはなかなか難しいようだ」等、日本の建築家にとってはとても興味のあるテーマのようで、体験談で話がもりあがりました。
「外からは閉じているのに、中に入ると、なんだか外にいるみたいな開放感ですね。」という感想をいただき、うれしかったです。ドイツ人の方もいらして、「なんでこんなに窓が多いのか?」と言われ、「日本の夏は蒸し暑くて風が大切なのです。」と説明したら「なるほどー」と新しい発見をしたように喜んでおられました。
「インテリアは抑制の効いた上品な雰囲気ですね」という感想が多く、これはクライアントさんの人柄を反映しているのかな、と思いました。建築をつくる際、建築家はクライアントの要望や個性にシンクロします。建築家の村野藤吾氏が「建築家の個性は5%くらい、どうしてもにじみ出てしまうようにあらわれればよい」と言われていたことを思い出しました。
自分は、まだまだエゴの強いところがありますし、表現も大好きですが、同時に使う人や土地、条件に呼応しながら、「インフラ」のように、普遍性を持つ建築をつくれるようになりたい、と願っているのかもしれません。






