建築家 田口知子の日常をつづったブログ

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「すみだ向島EXPO2020」体験型芸術祭に行ってきました。

先週の土曜日、墨田区の京島で開催中の向島EXPO2020、体験してきました。 

コロナ禍での芸術祭ということで、感染対策に気を使って、入場制限、各所での消毒(足踏み消毒スプレー機は地元工務店さんの作品)など、徹底した対策をされており、このような時期のイベント開催はあらためて大変だな、と思いました。

「向島EXPO2020」は、路地や長屋が残る墨田の向島界隈で、町全体を展覧会場にしたアートフェスティバルです。

 

仕掛け人は10年前から、京島に住み、さまざまな人がこの街に移り住むことをサポートされてきた、後藤大輝さん。たくさんのアーティストやカフェの経営者、ショップを開く人、など多様な人がここで暮らしながら仕事をしている町を作ってこられたようです。本人も映像系の作家活動をされているアーティストさん。

後藤さんの自宅兼仕事場兼作品の梅里

暮らしそのものがアートである、という表現者だそうで、まちづくりの仕掛人として、こんなにふさわしい人はいない、と感じます。古くからいる街の人たちともつながって、古い町がクリエイティブな人が集まる魅力的なエリアになる、そのようなことを実現してこられて、今、この向島EXPO2020が開催されるようになったということです。そういう10年以上の時空を超えて、長い時間を経て継続している暮らしを、リアルな街を同時に展示する、壮大なスケールの芸術祭である、というふうに思いました。

「ウラダナ」や「宿の家」、「梅里」といった家の古い家の改修したアート作品がとても素敵でした。

角田晴美さんのウラダナ

 

小倉屋の中にしつらえられた「だれかのいま/シアター 居間シアター」という作品も時宜を得た秀作で、本当にリアルな世界とアートの世界をいったりきたりできる異次元体験を楽しめます。

居間シアター

 

「爬虫類館分館」でランチをいただき、路地ダンスバトンを見て、ダンサーさんのパワーに、大満足で、長谷川逸子さんとのトークイベントにゲスト参加。

 

 古くから向島に住んでおられる方、建築関係の方もたくさんご参加くださり、とても充実したトークトークセッションになりました。その中で、普通に考えると問題かとも思う長屋暮らしの特徴である、隣の音がちょこっと聞こえ、住んでいる人の顔がみえることが、知らないうちに「お互いさま」を生み、「人の寛容さ」を育んでいる、というようお話があり、なるほど、と思いました。住む環境が人の性格に影響するというのは、現代社会のストレスは、実は遮音性能の高さだったのかも?など、いろいろな意見が出ました。芸術祭を通して、社会の問題、人の生き方や町の暮らしのリアルについて、深く考え、実体験を楽しむ素敵なイベントでした。10/11まで開催中です。「お隣さんに出会う旅」おすすめです。

 

地元産の木材を使った建築をつくること~富山の氷見杉を見学してきました。

今年の夏は設計中のプロジェクトの視察と称して、事務所メンバーで富山に行ってきました。

木造の保育園で地元産の木材を使えるか、どんな材があるのか確認するためです。

 とやま県産材需給情報センターにて↑


 富山県は東側の黒部・魚津のエリアと、西側の加賀藩につながりのある高岡、氷見、のエリアは、同じ富山県でも、気候や文化圏に違いがあることを発見しました。県産材の市場では、富山県材の流通している丸太を直に見学。次に氷見市の岸田木材様を訪問させていただき、氷見の里山杉の山を見学しました。樹齢60年以上の大木が、すくすくと育った里山には35mを超えるような杉林が連なり、建材として切り出してもらうことが可能とのこと。その豊かさにびっくりしました。

樹齢60年くらいの大木が育った里山杉 

木造を設計するときには、流通材のサイズを調べ、その寸法の中から必要な断面と長さを決める、という順番で通常は設計します。

しかし、最近、木材の流通や日本の山林の現状について学び考える機会が増え、その地域の地元材を使うことが、持続可能な山の循環を生み、環境負荷も低減しつつ、地域産業を維持する役割も持つ、ということを考えるようになりました。国産材なら、木造なら、いいだろう、という価値観を超えて、地元の材はどんなふうに成長しているのか、山を切り出す材木屋、製材乾燥させる製材屋さん、それぞれの状況を聞き、今ある材を調べて設計する、という方法に興味があります。


先月は秩父の金子製材さんで製材所を見学し、お話を聞きましたが、秩父はあまり大径材は得意ではないものの、集成材よりは地元産の製材を使ってもらうとうれしい、というお話でした。そして、今回は富山県の県産材情報センター、そして、氷見の岸田木材さんを訪問しました。岸田木材さんでは、浜林業さん所有の山に案内いただきました。35mを超えるような大木が大量に生えている杉林迫力の存在感。長尺で使うことで大径材の価値が生きるのだが、なかなかニーズがない、とおっしゃっていました。日本の山は、今50-~60年前に植えた杉やヒノキなどの針葉樹が大木に育ち、建築資材として使える状態ではあるのですが、木材の流通材として一般的な4mの長さの角材に切り刻まれて、あるいは合板や集成材に加工さて、安価な建材として流通することがほとんどです。本来の大木としては450φ以上、7mを超えるような材が大量に育っているのに、使う側の川下の私たちはそれをほとんど知らない、という状況を発見しました。
このように、川上側の生産者の事情を知ることで、基本設計から地元材の生産者の方と連絡を取り、その地域にある、活用できる価値のある材を尊重しながら設計に取り入れる、というやり方、初めてですが、挑戦してみたいと思っています。
その地域の山に生きていた状態から、切り出し、加工し、乾燥させて建て方をするまで、すべての流れに関りながら建築をつくること、の新鮮な喜びを感じます。建築をつくることが、地域につながり、貢献するきっかけになるような建築をつくりたいと思います。
 

「笑恵館」ってすごい・・。まちづくりの新しいかたち

世田谷の祖師谷大蔵駅から徒歩5分のところに、「笑恵館」というユニークなアパートメントがあります。

今日「笑恵館」に訪問し、運営会社理事の松村拓也さんにお話を伺いました。松村さんは、起業家支援活動家・地域活性化伝道師、というめずらしい肩書の持ち主です。

このアパートのオーナーは田名夢子さんという素敵な70代の女性。画家であるお父様から受け継いだ母屋と6軒のアパートメントという比較的大きな土地を相続することになり、相続税が払えない、ということで松村さんに相談されたのが始まりです。

建物はリフォームして、そのまま使っておられます。

画家のお父様のアトリエはコミュニティールームに。

 

 松村さんは、田名さんと一緒に社団法人を立ち上げ、その法人に、相続する予定だった土地を全部寄贈するという技で、アパートをリフォームし、コミュニティーハウスとして、小さなお店や多目的スペースがある住まい、「笑恵館」として誕生させました。

 このプロジェクトのポイントは、社団法人に土地を寄贈し、法人が運営を行っていく形態で、田名さん個人の財産としての権利は放棄する、という大胆なものです。しかし、オーナー会社としても、アパートメントのリフォームにお金をかけなかったため借金がなくアパート収入は多少変動しても暮らしには困らない、という持続可能なモデルです。家賃単価も抑えているので、お友達やお年寄りでも、この場所の考え方に賛同した方に、入居いただけるそうです。コミュニティールームやプリン屋さんなど、小さなお店も入って、人の出入りがあること、がんばって人を集めなくても暮らしていく環境があり、毎日の出会い出会いもある、家族のような他人と暮らす、のどかな場所でした。

死ぬまで暮らせる家、ということで、在宅介護や看取りも可能だとおっしゃっていて、老人ホームに入りたくないご老人の入居も歓迎、とのことでした。

 法人化するなら利益を上げなければ存在意義がない、と考えるのは、株式会社特有の意識ですが、土地が余って子供も減っている、という時代に、どうやって町を持続させられるのかは、土地のオーナーの考え方にかかっていると思います。持続的に手入れし、人が安心して暮らすことができる環境づくり、使い続けられることが大切でしょう。

 毎日、大家さんは庭の手入れやお掃除など、ちょっとしたお仕事をしながら住み続ける、利益よりも、コミュニケーションが大切、そんな大家さんが増えたら、町はおだやかで、楽しい場所になるのではないでしょうか。松村さんいわく、「相続税の仕組みは最悪だ。土地が分割され町が壊されていく。でも、土地はずっとそこにあり、町をつくるもの。親が幸せに暮らすために土地をどう使おうが、自由ではないか。相続されるべきものは財産ではなく、親が幸せに暮らし、その仕組みを相続していくのがよい。」親世代も、一人暮らしが不安になったら老人ホームにいくしかない、と考えると寂しいですが、死ぬまで、なじんだ家で暮らし、身近に友達がいる、子供に頼らずとも安心して好きなように暮らしていける、そんな田名さんの暮らしは、大家さんとして理想の暮らし方ではないでしょうか?

 

 初めて訪問した「笑恵館」、そこで出会った田名夢子さんの笑顔は、未来に希望を感じる出会いになりました。ありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

 

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