建築家 田口知子の日常をつづったブログ -3ページ目

「楓荘」がマロニエ建築優良賞を受賞しました。

私達の設計事務所で設計し、昨年9月に竣工した宇都宮簗瀬の集合住宅「楓荘」が、栃木県の建築賞、第32回「マロニエ建築優良賞を受賞しました。 施主の青木和也様、施工者のマスケン、3者での受賞になります。

http://www.pref.tochigi.lg.jp/h10/kouhou/h31maroniekentikusyokettei.html

 

 

 受賞講評の中で、「市街地のおける住民コミュニティを形成する建築のあり方として、また大谷石の外壁や井戸のある中庭など、地域性や土地の記憶も継承された建築である」と評価をいただきました。周辺環境に対して囲われた塀で区別することは閉鎖的ではないか、という意見もありましが、「交通量の多い街路に面する市街地形成の在り方としてのひとつの方法である」という講評もいただきました。

コミュニティーの形成というテーマで建築を考える際、周辺に対していかに開くか、ということがテーマになりがちですが、歩行者に対して快適でない街路に面していたり、就環境がまだ成熟していない場所であるとき、外に向かって開くことは住まいとしての安心感が損なわれると考えました。そこで今回は、外部に向かって開く住まいとして、囲われた中庭を共有し、それぞれの住まいが中庭に心地よく開くことができるメゾネット型の賃貸住宅を提案しました。

竣工後1年経った今、施主でありこの場所に住むご夫婦は、「賃貸ながら住民の方と飲みに行ったり、日常的なコミュニケーションもあり、顔が見えるほどよい関係が心地よい。」という感想をいただきました。

そのように無理のない範囲で住まいが開かれていくこと、そのプロセスや仕組みを作り、住まい手の方が自由に選択できる、そういう開かれた住まいについて、これからも探求し、設計していきたいと思いました。

 

 施主のご家族、そして工期が延びて苦労する中、最後まで根気よく協力してくれたマスケンさん他、ご協力いただいた各業者の皆様に深く感謝いたします。

 

台風の猛威と地球温暖化とグレタさん

 

最近の台風や豪雨の被害が甚大なことに、本当に驚かされる。そして、最近、テレビでグレタ・トウ―ンベリさんの国連演説を聞き、目が覚めるような気持になった。

 

「私達は絶滅しかかっているのに、あなたたちはお金の話をするのか。永遠の経済成長というおとぎ話を。子供の未来を奪っておいて、あなたたちは若者に希望を求めにくる。よくもそんなことを。」怒りにふるえる彼女の言葉は、誰に向かっているのか?各国首脳か、企業のトップ?財閥か?・・いや、聞いている私達に対してだ。

地球規模の問題について、個人がここまで真剣にコミットすることは、常識的な大人の感覚ではちょっと危ない、と感じるレベルだ。それでも、様々な彼女のスピーチを聞いてみると、データの正確さや、さまざまな科学的根拠を学んでいること、自分の頭で考えて子供の視点で、語られる言葉のひとつひとつに説得力があり、レベルが高いので驚いてしまった。

私達は、自分が解決できないほど大きな問題、関係が込み入って難しく、わからない、と思ったら、ひとまず考えるのをやめ、今まで通りの生活を続けることを選ぶ。今の環境は、誰かが作ったもので、自分ではないし変えることなんてできまい、と思っている。今起きている巨大な問題を考え、小さな一歩を取るよりも、日々の生活を送ることが優先すると信じている。そのことを彼女は「邪悪なこと」と断言しているのだ。

それでは、そもそも、社会のシステムの何が問題なのか?と私も、小さい頭で考えてみる。おそらく、根源にあるのは、「お金」のシステムだと思う。モノはお金に換算でき、お金は永遠に価値を保存でき、利子を生むので増え続ける。その結果、少数の人に巨額の富は貯蓄可能になる。しかし、その資金で地球全部を買い占める以上の富が蓄積される。そんな「お金の仕組み」の概念が、根本的に間違っているのだ。ある日突然お金の価値がゼロになる。という日が来るかもしれない。人間だけが快適に生きられるための架空のシステムは、間違っていたと認めるべきではないのか。生態系も人類も、絶滅させる恐ろしい社会経済のシステムを、私達は作ってしまったし、それを信じて生活しているという間違いを認めることだ。

 

私達は、この間違いを正そうとしても、取り返しがつかないくらい気候変動が起きているし、毎年巨大台風や災害に襲われ続け、人類が絶滅する未来がもうすこまで来ている、ことに、無力感を覚えている場合ではない。パニックを起こしてもいけないが、真剣に考えて小さな一歩を踏み出すなら、何ができるのかを、真剣に考える必要があるのだと思う。

 

 

 

上高地と飛騨高山の旅


最近、やるべきことの山に追われてあたふたとしているうちに、もう8月も終りそうで残念な気持ちになっていましたが、そうでした、今年の夏は、上高地と飛騨高山の旅に行ってきました。上高地は実は初めて体験でしたが、水も緑も、現実とは思えない不思議な透明感があふれ、心が洗われる美しい風景に出合うことができました。

 

 白川郷も良かったですが、この旅で一番の感動は、高山市にある「吉島家住宅」です。江戸時代の豪商の住宅である「吉島家」は、大きな町屋で、商いと住まいがいっしょになった家。

「どーじ」と呼ばれる土間空間から入って、高屋根のハイサイドライトから降り注ぐ光に浮かび上がる小屋組みが見事な構成美を見せてくれます。

大空間を障子や格子戸で仕切りつつ、どーじ、囲炉端の空間、主人の寝室、中庭、奥庭、炊事場の土間など、流れるようなどの場所に立っても、庭や光を感じる奥行きのある空間構成に感動します。

2階の和室は、なんとスキップフロアになっていて、1階の天井高さに変化を持たせつつ、遊び心もある楽しい空間です。

炊事場には光庭や井戸があり、半外部の土間空間、高窓の組み合わせでモダンで美しい空間です。

高い地位の人を招く奥座敷や、文庫蔵まであり、教養のある文化人でもあった、高山の承認の格を感じました。酒造や金融業など、活発な商売のなかにも、文化秩序を重んじる生活が、豊か生活のベースにあることにあらためて感動しました。

随所に、現代作家の篠田桃紅さんの作品が飾ってあることも素晴らしいセンスでした。吉島家と篠田さんには深い縁があるのかと思います。

 

上高地の自然や高山家のキリッとした空間を思い出すだけで、疲れた頭にエネルギーがチャージされるようで、素敵な夏の思い出になりました。