建築家 田口知子の日常をつづったブログ -92ページ目

「空を感じるキッチン」~千駄木の家 アフターレポート

先日、私の事務所で設計した、「千駄木の家 」におじゃましました。今年の10月に完成したばかりなのですが、早速トラブル発生。(ノ゚ο゚)ノ



田口知子が日常をつづったブログ 「千駄木の家」外観です。

モルタルの外壁の塗装(リシンという素材です)が、雨の日の後、ぽっこり膨らんでいることが発見されました。


田口知子が日常をつづったブログ 玄関の脇に大きなたんこぶが・・

田口知子が日常をつづったブログ アップ。こぶがしぼんでいます。


原因解明のために施工した工務店と塗装屋さんも一緒にお伺いすることに。モルタル壁にリシン吹き付け、というのは日本の木造住宅ではとても古くからある一般的な外壁仕上げです。私の事務所でも何軒も採用してきましたが、今までこんなたんこぶみたいなものが出たことはありませんでした。どういうことだ?。(´д`lll)


田口知子が日常をつづったブログ 原因究明のため、ふくれた周辺も塗装をはがしている塗装屋さん。中庭側の見上げです。


 外装のアイカ工業に問い合わせたところ、「従来のリシンだと、モルタル外壁のクラックが目立つので、クレームになりやすい。そこで伸び縮みする弾力性のあるリシンを開発したのですが、その場合そういうふくれが起きる場合があります。」とのこと。

 

従来の透湿性のあるリシンでクラックが出るのと、ヒビ割れは見えないけど水ぶくれが起き易い、どちらかいいか、と言われると・・?ひび割れが起きても、建物的には問題ないので、従来のほうがよいのでは?ん・・業者の「クレームはできるだけ避けたい」精神がここでも現れているなあ、と感じました・・・。


 とはいえ、久々にご訪問したおかげでうれしい報告もありました。


奥様が、「このキッチンに立って作業していると、あの窓からとてもきれいな月が見えるんです。空の変化も感じられて、いいんですよー。」とうれしそうにおっしゃってくださいました。


建築は、本当にいろいろな問題が起きますが、こういう瞬間にはとても大きな喜びがあります。

 


「アンパンマン」と「マネー資本主義」

テレビの話題です(‐^▽^‐)


昨日の夜のNHKでやっていたマネー資本主義。見られた方も多いと思いますが、マネーに姿を変えた巨大なモンスターが暴走するお話で、とても興味深い番組でした。


さて、それとは別にアンパンマンのやなせたかしさんのプレミアム8、だいぶ前に放送していたものを見ました。やなせさんと言えばアンパンマンの生みの親で有名な方ですが、90歳のご高齢であることにびっくりしました。あの明るさと元気さはまさに人生の達人ですね。日本の偉大な人は漫画家に多いですね。手塚治虫氏や水木しげる氏なども尊敬しています。


 その達人、やなせさんが語る正義について、とても印象に残ったので引用させてもらいます。

「正義というのは本来格好いいものじゃない。スーパーマンが悪者を倒す、というような正義のあり方は胡散臭い。世の中で言われる悪は、立場を変えれば簡単に善にもなるということを戦争で学んだ。あいつは悪だから倒さねばならん、というやり方は本当は正義ではない。正義とは、目の前にお腹をすかせた人がいたときに、その相手に食べ物を提供する、という行為である。そして正義を行うときには、自分も何かしらの犠牲や痛みを伴うものである。」

 初期のアンパンマンの作品で、砂漠でおなかをすかせた旅人に、アンパンマンは自分の頭を差し出して食べさせる、というシーンがあります。食べられて顔が半分なくなって空を飛んで帰るアンパンマンはちょっとした衝撃です。それを見た大人の読者や出版社は「子供の話として残酷だ」と、大変非難されたそうです。以降、そういうシーンはあまり書かなくなったらいしですが、ヤナセさんの深い洞察の核心は、顔を食べられるアンパンマンにある、ということを初めて知りました。

 さて、先ほどのマネー資本主義のシーンで、クリスマス前のニューヨーク。1万人を超える人が食べ物をもらうための炊き出しに並んでご飯をもらっていました。このご飯を配るボランティアには、ゴールドマンサックスなどの金融会社の社員がいたそうです。ボランティアをやることは人間的な行為ですが、この番組には皮肉が含まれていました。正義とは、本当にわかりにくいですね。

 現代の正義は「自分の安全を守ること・身内の利益を確保すること」がベースにあることによって混乱が生じるのでしょう。

アンパンマンの話の中にヒントが隠されているように思いました。



田口知子が日常をつづったブログ ごはんください(りょうま)




 


日本的なエコロジーとパッシブデザイン~小玉祐一郎氏に聞く環境建築


先日、JIA建築家セミナーで建築家の小玉祐一郎氏をお呼びして講演いただきました。

小玉先生は、25年くらい前から環境共生、パッシブデザインの建築を推奨されてご自身も建築をデザインされて多くの著書も書かれ、活躍されている方です。

  パッシブデザインというのは、訳すと受動的なデザインという意味。パッシブというのは、環境からの影響を受け入れるという意味です。風を通す、太陽の熱を土間に集めて暖かくする、打ち水の気化熱で涼しくする、等、日本の文化の中に古くからある快適さを作る知恵の多くはパッシブデザインです。パッシブデザインはCO2を出さない手法ですから、環境にもよくサステナブル。その反対はアクティブデザイン。エアコンを駆使して機械的に快適な室内環境をつくる方法です。

 環境意識の高いヨーロッパは、閉鎖型の高断熱・高気密な空間をつくることで、省エネルギーを実現するのがエコロジーだ、という概念がうまれました。そのような環境建築を①閉鎖型と呼びます。でも、気候風土が違えばエコロジーの考えも方法も違うのです。日本は夏の暑さは熱帯並みで、雨も多く、冬はヨーロッパ並みに寒い。かなり変化の激しい亜熱帯性に近い気候です。そして、緑が豊かで四季の美しいユニークな気候の国です。このような亜熱帯のような気候の地域では、②「選択型」の開いた系をデザインするべき、というのが話のテーマでした。

窓を開けたり閉めたり、かぶせたり、移動したり、さまざまな人間の行為によって成立することで快適さを作り出すことができる、というのが選択型のデザイン。そういうものは数字で効果を測るのが難しいので、今のところマイナーな手法です。

でも、おもしろかったのは、風や光の変化を感じる環境で仕事をすると、知的労働の生産性を高める、といったデータがあるそうです。人の健康や幸福感、知能の発達と、環境とのレスポンスは深い関係にあることがわかっています。

エコロジーには、科学や数字よりも、風土や人、文化的なものに軸を置く考え方があり、日本人のエコロジーは本来そちらのほうにあるべきなのでしょう。アジア全般も同じです。エアコンをがんがんにすることがステータスだった時代は、もうそろそろ終わりにしようという動きが始まっています。

エコロジーのポイントは、「意識の広がりを作り出すデザイン」です。



田口知子が日常をつづったブログ あーいい陽だにゃあ。(りょうま)