仕事にかける情熱~「千駄木の家」 現場レポート20090829
木曜日に、また現場に行ってきました。この日は、山崎工務店の現場監督の上司である沢崎さんが現場視察をされていました。その際に、本当に細かいチェックが入り、それを解明するには、壁を剥したりする必要があるので普通は見逃したくなるような、そんなチェックポイントまで、容赦なく追求してきます。実際、金網とシートをはがしてチェックすることになり潔いその姿勢に感動しました。この人はこの仕事に本当に情熱を持っているのだな、と感心するような、見事な仕事人魂。男の人の、仕事にかける情熱を見るのは、とてもうれしいです。(もちろん女もですけど・・)
さて、そんな情熱の賜物のひとつが、庇の先端に現れています。玄関の庇は、この家の顔ともいうべき存在です。その先端部分の納まりが甘いと、家全体がだらしなくなる、ということで、庇の樋のカバーに厚さ2mmのステンレスへアラインの板を取り付けました。美しい水平ラインを見せつつ、内側の横樋を隠していて、軒の天井は板厚2mmで受けています。さらに、正面側にビスを見せない納まりにまでこだわっています。これは、建築家としてわがままを通した、というわけでなく、工務店側の提案でサビなどが出てこないように、という配慮のもとに決められたディテールです。その心意気には頭が下がりました。意匠はデザイナーだけのものではありません。工務店の担当者の心意気、職人のこだわり、そういうものが美しいものを作り出すのだな、と思わせる現場です。
ルーフテラスでたたづむ建て主のKさん。こまめに現場に来てくださり、ありがとうございます。
建て主のご夫妻が現場の来てくださることで、現場の情熱も高まります。
ハウスメーカーVS建築家~エコロジー住宅の可能性
先日、ハウスメーカーで長年設計に携わっておられるS氏とお茶を飲みながらざっくばらんな話しをする機会があり、いろいろ考えさせられました。ハウスメーカーと建築家の違いや長所、短所について、あらためて考えてみました。
最近の環境への意識の高まりに加えて、長期優良住宅制度の開始など、わかりやすい宣伝文句が広がって、どのハウスメーカーも主力商品としての長期優良住宅+エコ住宅を売りに出しています。太陽電池や、さまざまな付加機能もついたゼロCO2住宅が2500万円台とか、この価格でこんな家が買えるのか、と思うと、敵陣ながらあっぱれ、と思ってしまいました。圧倒的な着工数を誇る大手ハウスメーカーは、買い手にとって、コンセプトや価格が明快で、できあがったものもモデルルームでイメージできるし、品質も安心できそう、という感覚は、大きな買い物だけに安心感を与えてくれます。・・・とはいえ、多くの場合、実際に建てられるものは、予算も土地も、設計も、モデルルームとは違います。契約前に「間取り」を決めて契約を取るシステムのため、担当の設計士や営業マンが短時間に、お客様の要望をできるだけ満たして図面をつくる、いわゆる「間取り設計」になっています。家づくりの一番大事な「肝」である設計には、時間とエネルギーを使えないシステムです。もちろん、メーカーごとの決まりごとがあって、自由な設計ができないというじばりもあるでしょう。そして、設計料という名前ではお金は取れないものの、広告費や営業経費、モデルルーム代などの固定費が、購入価格のなかの3~4割程度含まれているというのがハウスメーカーの実態のようです。
また、メーカーに相談に来る人のなかで、建築家のつくるユニークで「空間」のある家に住みたいという、目の肥えた住まい手が多くなっているとS氏。メーカーは品質には信頼をもたれているようだが、設計に対して自由度が低いという難点、設計者一人で年間数百棟設計しないといけない、という現実があって時間に制限がある。そこのあたりで、もうちょっとなんとかできないか?ということで試行錯誤されている印象をうけました。
自分としてもエコロジーな家づくりにはコミットがあります。でも、エコロジーな家づくり、といったときに、イコール太陽電池、緑化屋根などのエコ設備を装備しても、そこに住む人の体験として何も変化していなかったら、本当の意味でエコロジーな生活は生まれないと思ってしまいます。
暮らしの中で、空や緑、風のにおいなど、自然を感じるような瞬間の多い空間、夏はほとんどエアコンなしでも暮らせる、冬は、足元から暖かい輻射熱暖房などでエアコンなしで快適。ちょっと手間がかかっても庭に植物を育てたり、無垢の木をオイルで磨いたりしてみてはと思う、自然や環境に向かって意識がひらかれてくる家づくり、というのが私の考えるエコロジー住宅です。もちろん、太陽電池も燃料電池も、経済的に余裕のある家庭なら大いにつけてほしいですし、そのためのサポートもしたいと思っています。でも、最初に考えることは、家の性能としてきちんとした断熱性、通風、直射日光の制御、空間の快適さ、それらの基本的なことをクリアするのは、敷地の条件、周辺環境を配慮した設計をすることです。その上で、そこに住む人の幸せな暮らしに必要なものの優先順位をつけながら、無駄なものを省き、目に見えない基本性能や、人の体験に影響を与える部分にお金をかける、それらの知恵に対する対価として、設計料という認識が広がってほしいな、と思います。
空の鳥をながめる竜馬。
保坂猛さんの「屋内の家+屋外の家」
昨日は、知人の建築家、保坂猛さんのオープンハウスに行ってきました。「屋内の家+屋外の家」というタイトルで、延べ面積70㎡の小さな家ですが、生活空間としての屋内の家と、同じくらい密度と空間のある屋外の家が、二つ、隙間(外部空間)を隔てて並んでいます。
道路側から見たところ。木造とは思えないディテールです。
奥に屋外の家があります。写真左。
屋内の家も屋外の家も、ひとつひとつの部屋は小さいのですが、そのスケール感がなんともいえずつつましく、そして同時に大胆な作り方だとが印象に残る作品でした。家、というと床面積がどのくらい、というふうに部屋数や坪数で家をイメージしますが、保坂さんの建築では、建物同士の隙間の部分、屋上、外壁に囲われているけれど屋根が無い空間、屋根があるけれど外気につながっている空間、等等、屋外空間のさまざまな部分を「家」としてデザインしていました。
屋外で本を読んだり、ちょっと趣味の自転車いじり、といったことが、日常の風景の中にとけこみ、空や風や緑や虫や鳥の存在がもっと身近になり、気持ちが開かれてくる感じです。床面積ではない、空間の質によって、ものすごく大きな家が、意識な中に立ち上がってくる、そういう空間の作り方を実現していると思いました。
とりわけ気持ちよかった、ハンモックのための屋上の部屋。白い壁に切り取られた空を見ながらハンモックに揺られていると、時間が経つのも忘れてしまいそうです。
壁にはられたワイヤーと周辺の植物の選定など、ひとつひとつの選択に心をこめ、丁寧に行っている様子が、保坂さんやパートナーの方の人柄やコンセプトを表していると感じました。窓がキマドさんの木製サッシであることも、この建築の魅力を倍増させています。
甘くない、骨太な繊細さが、とても魅力的でした。




