碁会所紳士録3.Oさん
棋力5段のOさんの打つスピードは人並外れて速い。特に、序盤はポン、ポンとリズミカルに打つので相手も早打ちになる事が多い。実はOさん、序盤は退屈で仕方がないようだ。ところが中盤から終盤に掛けて石が混み合って来ると、目が光ってくる。彼には特別な才能があるようで、ごちゃごちゃした局面で相手の弱点を見つけるのが得意なのだ。相手が自分の領地だと思っていたところを蹂躙したり、相手が活きていると思い込んでいる大石を葬り去ったりする事が実に多い。される方は堪ったものではない。怒りを抑えて渋面を作りながら石を片付ける事になる。中には、『ウワーッ、悪徳弁護士にまたヤラレターッ』と叫び声を上げる輩もいる。そう、Oさんは大阪市内に事務所を構える現役の弁護士さんなのだ。盛業のようで、土曜と日曜の午後3時以降だけ碁会所に姿を見せる。悪徳弁護士などと面罵するのは明らかに名誉棄損なのだが彼は全く動じず平然と受け流す。彼と知り合って8年余りになるが怒った顔をするのは未だ見た事がない。
碁会所紳士録2.Tuさん
従業員数百人の中堅企業の社長を長く務め。今は息子に後継を託して会長と言う立場にある。経営者として数々の修羅場を越えて来た筈なのに、彼の穏やかな顔にはそれを感じさせるものは微塵もない。物腰も丁寧かつ穏やかで、常に笑顔を絶やさない。
彼は無類の碁好きで、いつも実に楽しそうに打っている。しかし、打つ手にミスが多くインストラクターや対局相手から悪手を指摘されると、有難うございます、勉強になりましたと丁寧に謝意を表する。ところが次の瞬間に同じようなミスを繰り返す。余りの事にみんなが絶句して静かになると、伸び伸びとマイペースで悪手を連発しながら打ち進める。
そんな調子だから、彼が勝つのを目撃した事は殆どない。
彼は自分の時代に企業を大きく発展させた成功者であり、碁に負ける事で人生の貸借表のバランスを取っているように思えてならない。
ちなみに彼の棋力は5級位だが、上達しようと言う気はさらさらないように感じられる。
碁会所紳士録1.Iさん
格闘技の選手のような風貌と身体付きなので、初対面の時は近寄り難い感じがしたのを覚えている。しかし見た目と内面とは大違いで、優しい少々気の弱い性格の持ち主だと気付くまでに大分時間が掛かった。彼の優しさに感心したのは、慢性肺炎が悪化して碁会所に来られなくなった人のお宅を訪問して碁の相手をしている事を偶然に知った時であった。
碁打ちには楽観派と悲観派があり、楽観派は形勢が良いと思って気分が緩んで負ける事が多い。一方悲観派は形勢が悪いと思って思い切った勝負手を放ち、それが裏目に出て負ける事が多い。彼は典型的な楽観派で、勝負の途中で形勢が良いと思うと相好を崩して喜んでしまう。その瞬間から坂道を転がるように敗戦へと突き進んでしまう事が多い。それでも彼はめげず、次は勝つと信じていつも楽しそうに碁を打っている。彼を見ていて、同じ碁打ちなら楽観派の方が幸せだと感じるのが常である。
彼の本業は画商であり、棋力は初段格といったところである。
カルロス・エレータ・アルマランの他界
カルロス・エレータ・アルマランが一年前に他界していたのを知った。享年94歳であった。彼の名前を知る人は少ないだろう。しかし彼の作曲した「ある恋の物語」は殆どの人が耳にした事があるだろう。彼についての記事を4年前にアップした。以下に再掲する。
中南米音楽の作曲家Ⅵ カルロス・エレータ・アルマラン
パナマの作曲家であるカルロス・エレータ・アルマランCarlos Eleta Almaranの名前は知らなくても、彼の作詞・作曲したボレロ「ある恋の物語(Historia de un Amor)」を知らない人は殆どいないのではなかろうか。トリオ・ロス・パンチョス、アイ・ジョージ、フリオ・イグレシアス、ナナ・ムスクーリ、ザ・ピーナッツ、布施明などの多くの歌手が歌い、また、ペレス・プラードがマンボに編曲して大人気を博した。
インターネットでアルマランを検索していたら、とんでもない記事に出会い仰天した。「The PANAMA NEWS Volume 12, Number12,June18-July8,2006」に次のように記載されていた。拙訳を添えて引用する。
Octogenarian composer charged with sex with minor
Carlos Eleta Almarán, an 88-year-old musician and composer and former boxing manager, has been accused of having sexual relations with a 14-year-old girl by the teenager's family. On June 8 he was called before prosecutors for formal interrogation in the case.(80代の作曲家が未成年者との性交渉で告発さる―88歳の音楽家、作曲家、前ボクシング・マネージャーのカルロス・エレータ・アルマランが14歳の少女と性交渉を持ったとして、少女の家族から告訴されていた。6月8日にアルマランはこの事件に関する公式尋問のため検察庁に召喚された。)
その後どうなったかは調べたが分からなかった。しかし、世界的大ヒット作「ある恋の物語」の作曲家が88歳でこんな事件を起こすとは、呆れ果てると言うか、凄いと驚嘆するべきか。
さらに検索を続けると、コカインの密輸・密売での逮捕歴があるとか、1989年の米国によるパナマ侵攻事件の頃にはCIAのエージェントをしていたとかの記事が見つかり、アルマランの黒塗りの後半生が浮かび上って来た。
動画はスキャンダルを耳にした事がないギリシャの歌姫ナナ・ムスクーリが囁くように透明な声で歌う「ある恋の物語」。
『人間のくず発言』
東京都知事選の際、特定候補の応援演説で百田尚樹が他の候補者は『人間のくず』だと述べた。この事に私は大きな衝撃を受けた。彼の著書を今までに3冊読んで、すべて感動的な作品だとブログに記載したからだ。自分の支持する候補者以外は『人間のくず』だと表現するような著者の作品に感動した事が恥ずかしいし情けない。それにしても何という傲慢さだろう。何冊かの著書がベストセラーになり、世間に名を知られただけで思い上がってしまったのだろうか。それとも、もともとそんな男だったのだろうか。何れにしろ、今後彼の作品を読む気はしなくなった。
個人がどんな思想・信条を抱こうと自由である。しかし、自分の信じる内容を公言する事には制限が課せられる。極端なヘイト・スピーチは社会的に受け入れられず、また、特定の個人や団体への誹謗・中傷は犯罪行為となる。『人間のくず』呼ばわりされた候補者達には名誉を棄損されたと損害賠償を要求する権利があり、くず発言を見聞きして不快に感じた人達には慰謝料を請求する権利があると考える。
百田尚樹著「影法師」講談社
この著者の作品を読むのは「永遠のゼロ」と「海賊と呼ばれた男」に次いで3冊目だが、私にとっていずれ劣らぬ感動作であった。
本書の舞台は江戸時代の茅島藩(架空の藩)で、下士の出ながら文武両道に優れ、先を読む才に恵まれた一人の武士のサクセスストーリーである。ネタ晴らしになるので詳しい事は書けないが、彼が破格の出世を遂げた蔭には友人の凄まじいまでの協力があったと言う話だ。
北陸の小藩の下級武士や農民の暮らし振りが活き活きと描かれているのも興味深かった。
自然数を1から無限大まで足せば
友人とワインを飲みながら四方山話をしている時に、『自然数を1から無限大まで足せばいくらになると思う?』と訊かれた。大分前にTVで紹介されていたのを思い出し、『1/2だったかなあ』と答えると、『答は-1/12だ』と教えてくれた。TVで観た際にも疑問に思ったのだが、今回改めてこの答に大いに疑問を感じ、後でネットで調べてみた。すると、丁寧な解説が見付かった。それによると、ある解法によれば答は-1/2になるが、その解法をこの問題に適用するのは誤りであり、正しい答は「無限大に発散する」だそうだ。正の数を無限大まで足してマイナス2分の1になるとは到底理解し難いが、無限大になると言うのは当然のことと納得できる。小手先の弄で一般人を驚かす数学者にも腹が立つが、それをまことしやかに伝えたTVはもっと腹立たしい。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1412924439
参照
コンパイ・セグンドとシャルル・アズナヴールの共演の続き
youtubeの音楽関係の動画はよく削除される。しかしまた、誰かがアップし、また削除されると言う繰り返しが続く。まるで「もぐら叩き」のようだ。
コンパイ・セグンドとシャルル・アズナヴールの共演
コンパイ・セグンドは15歳から音楽活動をしていたが、革命後表舞台から遠ざかっていた。1972年にブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブが発足する際に参加し、セカンド・ヴォーカル及びギタリストとして活躍した。ソロ歌手としてのCDも何枚か出している。
シャルル・アズナヴールは愛をテーマにしたシャンソン歌手として有名である。
MORIR DE AMORは「愛の終わり」の意。少し濁った声の方がコンパイ・セグンド。
近況報告
アッと言う間に今年も12日目が過ぎようとしている。去年大手術を受けてから半年が過ぎた。幸いと言うべきか、悪運強くと言うべきか、とにかく予後は順調で、軽い登山が出来るまでに回復した。5回に分けて食べていた食事も3回で済むようになり楽になった。