暇老身辺雑記 -28ページ目

鎮痛剤から解放

 帯状疱疹を発症してから3か月、漸く痛みを殆ど感じなくなった。毎日3回欠かさずに飲み続けて来た鎮痛剤だが、今日の受診で今後は疼痛を感じた際にだけ頓服として飲むようにと指示された。神経修復のためのビタミンB12は今後も1日3度服用するようにとの事だった。このビタミンは直径6mmほどの固い球状の錠剤で、プラスティックのパッケージから取り出す際につまみ損ねる事が多い。テーブルに落ちると跳ね飛んで床の上を何mも転がってしまう。製薬会社はなぜもっと扱いやすい錠剤を作ろうとしないのだろうか。たとえば、薄いゼリー状の皮膜でくるむとか、多角形状にするとか、直径をもっと大きくするとかすれば随分扱いやすくなるのに。

第66期囲碁本因坊戦七番勝負第5局

 昨日と今日の二日間に行われた本局は、今日の午前中までは山下本因坊が圧倒的な勝勢を築き上げたように見えた。ところが攻め方に誤算があったらしく、結果は羽根挑戦者の中押し勝ちとなった。通算成績は山下の3勝2敗となったが、この碁に勝った事で羽根のタイトル奪取の可能性も出てきたように感じられる。

冲方丁著「天地明察」角川書店刊

 冲方丁(うぶかた とう)が吉川英治文学新人賞と2010年本屋大賞を受賞した時代小説である。主人公は囲碁棋士の安井算哲で、三代将軍家光から七代家継に至る時代を生き抜いた。彼が本業以外に数学、暦学、神学、朱子学及び測地学に深い知識を有している点が見込まれ、幕府の特命を受けて改暦の大事業に挑む。当時は文化を大陸からの伝来に依存していた時代で、暦も中国からのものが用いられていた。しかし、日食や月食の時刻の予測が外れたり、夏至の日が実際と異なったりする事から正確な暦を作り出そうと言う機運が高まって来たである。

 彼は大きな挫折にも耐えながら22年の歳月を掛けて、大和暦を完成する。それにより貞享元年に改暦が実施されるに至る。この偉業により、算哲は暦学者としての渋川春海の名で後に知られるようになる。

 この小説には天才数学者の関孝和、水戸光圀、本因坊道策、山鹿素行、会津藩主の保科正之、大老酒井雅楽頭など大勢の有名人が登場し、それぞれが個性豊かな人物として描かれていて面白い。

ピーター・フォークの訃報

 「刑事コロンボ」シリーズでコロンボを演じていたピーター・フォークが、23日83歳で亡くなられたとの事。

 よれよれのレインコートを身にまとい、いつもボサボサ頭で一見すると冴えない刑事に見えるが、実は抜群に高い知能の持ち主と言う役柄を見事にこなしていた。懐かしい風貌が目に浮かぶ。ご冥福を祈るのみである。(

第36期碁聖戦五番勝負第1局

 今日、坂井秀至碁聖に対する羽根直樹九段の挑戦手合の第1局が関西棋院で行われた。序盤から中盤に差し掛かる辺りで、碁聖の凄まじい攻めが始まった。凌ぎにかけては定評のある羽根がどこかで受け損じたようで、わずか124手で羽根の大石が死んで碁聖の中押し勝ちとなった。タイトル戦は両者とも慎重に打ち進めるので対局が長引くのが普通なのに、珍しい1局となった。

久し振りの碁会所

 体調不良が続いたため、暫く遠ざかっていた碁会所に顔を出した。何度も打った事のあるM5段とO5段と二局ずつ打ち、結果は全勝だった。久し振りに打つとなると、ポカを避けるために慎重に着点を選ぶようになり、その事が幸いしたのだろう。

原発の「安全宣言」には呆れた

 一昨日、海江田経済産業相が『各原発ではシビアアクシデント(過酷事故)対策が適切に取られている』として、休止中原発の再稼働を地元自治体に要請する考えを示した。

 実に無責任な、根拠に欠ける考えではなかろうか。確か、福島第一原発が見舞われた規模の津波に耐えられる原発は一基も日本にはなかった筈だ。その後100日余りの短時日に防潮堤が整備される筈もない。単に非常用電源を高い場所に用意したのが対策の実態だろう。それで適切だとの判断は、国内はもちろん国際的にも受け入れるとはとても思えない。さらに、シビアアクシデントであるテロに対する備えは何かされたのだろうか。国内法規上、原発に武器を置き原発職員が使う事は出来ない。そのため2、3人の熟練した武装テロリストだけで原発を制圧する事は十分に可能だろう。テロに対処するためには自衛隊の原発常駐しか手段がないように思われるが、その動きは全く見られない。

 また、福島原発の事故収束作業も遅々として進まない中で、臆面もなく「安全宣言」を出す無神経さには不気味ささえ感じる。

 政府が十分な根拠もなしに安易に「安全宣言」をして再度原発事故が起こっても、「想定外」で済まそうとするのだろうか。近畿の水がめの琵琶湖と敦賀原発および若狭原発との距離は20km前後と短い。琵琶湖が放射性物質で汚染されたら滋賀、京都、大阪および兵庫の広い範囲にわたって何十年もの間壊滅的な被害が続く事になる。

 今日IAEA閣僚会議で、海江田経産相が出席し日本の取り組み状況を報告したが、各国の閣僚から手厳しい批判を浴びたようだ。これを機に、国民よりも電力業界を大事にする姿勢を改めて欲しいものだ。(11.6.20)

第66期囲碁本因坊戦七番勝負第4局

 昨日と今日の2日間にわたって石川県で行われた本局は、山下本因坊が攻め、羽根挑戦者が凌ぐと言うこれまで通りの展開となった。しかし、山下の攻めに誤算があったようで、羽根が凌ぎ切った時点で勝敗が決まったようだ。その後も打ち進められ午後8時過ぎに終局となった。結果は羽根の半目勝ちと言う意外な微差となった。これで山下の通算3勝1敗となり、第5局は羽根の出身地である三重県で戦われる予定となっている。

福島の酪農家の自殺に思う

 東日本大震災に伴う数多くの悲劇を、マスコミの報道で知らされてきた。しかし、福島の酪農家自殺のニュース程やり切れなさを感じさせたものはない。40年間ひたすら酪農に勤しんで来た50代男性が、県内全域の放射能汚染による牛乳出荷停止命令を受けて酪農を続ける事を断念し廃業した。フィリピンから来た奥さんは男性との間に出来た二児とともに放射能汚染を恐れて母国に避難中だそうだ。その男性は出荷出来なくなっても絞らねばならなかった牛乳を泣きながら棄てていたそうだが、昨日自殺体で発見された。黒板に白墨で書かれた遺筆には「原発さえなければ」、「生きていく気力を失いました」などと記されていたそうだ。

 酪農以外の生きていく術を高年になってから見出す事は至難であっただろう。愛する家族とは別居を強いられ自死以外の途を選べなかったこの男性の哀れさに思わず涙した。

その男性と対照的な人生を送っている自民党の石原伸晃代議士は反原発の動きを「集団ヒステリー」と言い放った。彼の原発は必要なものだと言う信念は、酪農家の自死によっても、悲痛なダイイング・メッセージによっても、いささかも揺らぐ事はなかったのであろう。それほど彼にとって必要な原発でも、東京湾岸に造るとなると石原は真っ先に反対するのではなかろうか。

雫井脩介著「犯罪小説家」双葉文庫刊

 新進作家・待井・涼司の出世作「凍て鶴」が奇才・小野川充の監督・脚本・主演で映画化される事になった。小野川は自らのモチベーションを高めるため、待井に近付き、この小説を書くに至るまでの精神遍歴や物語の背景を知ろうとする。しかし、自分の世界に立ち入られるのを好まない待井と小野川のせめぎ合いが、意外な展開につながると言うあらすじだ。

 この小説の大半が饒舌な小野川と口数の少ない待井との会話で構成され、女性のフリーライターが言わば狂言回しの役割を務める。

 読み終わって強く印象付けられたのは、著者の優れた頭脳と緻密な構成力であった。