CDS - 信用とマーケット評価
ファニーメイ、フレディーマックの経営難に続き、リーマン・ブラザーズの破綻、そして連鎖的な世界金融不安が広がりを見せています。これは言い換えれば世界的な「信用の危機」といえます。この人にお金を貸して大丈夫なのか、この人に投資して大丈夫なのか?に大きな不安があるため、みながお金を手元に溜め込こむ。手持ちの株や債券を売る。すると価格が下がり、お金の流動性はなくなる。お金が動かなくなるためどんどん景気が悪くなってしまうわけです。
市場による自立回復が見込めない場合、政府が出動しマクロ的な市場調整が行われます。公的機関が支えるから大丈夫だ。心配しないで買ってくれ、信用を回復してくれ、とやるわけです。何も対象の会社だけを救うために政府は出動するわけではありません。それによって人々の不安感を拭い去り、市場全体の信用を回復させるのが目的です。ですが、マーケットの動向は人々の心理的要素が支配する割合も大きいので、政府といえどもそれを操作するのは非常に難しいわけです。
ファニーメイ、フレディーマックへの公的資金注入、FRBによるAIG救済策が発表されるたびにマーケットは信用を回復させるように見えます。しかしそれも一時的である場合があります。人々がこれしきの救済では足りないだろうと判断した場合は、信用はまたしても下降し危機は深刻になります。公的資金の注入から、空売りの禁止策まで、いろいろな手を打つのですが、それがどのくらい市場にインパクトを与えたのか、成功か失敗かを判断するのはこれもまたマーケットです。
マーケットは信用をどのように評価しているのか、それを調べる上で「CDS」をウォッチすることが役に立ちます。
CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)とは債券に対する保険のようなもので、債権者がCDSを買っておくと、債券がデフォルト(会社が破綻して債券が無効になる)したときに補償金が下ります。どのようなときにデフォルトと見なすのかは、CDSの契約の際にデフォルト条項というもので決めておきます。デフォルト条項には会社倒産だけでなく、負債の借入条件変更や、公的資金注入等の複数の条項を設けることが多いようです。このどれかにヒットするとデフォルトとみなし、債券の保有者は補償金を受け取ります。そして元本の損失分を保険金でまかなえるわけです。
CDSは保険ですから、保険を買った側(補償を受ける側)は保険料を払う必要があります。これはプレミアムと呼ばれます。保険を売った側はこれが稼ぎになりますが、もしデフォルトした場合には決められた補償額を支払わねばなりません。CDSの売り手(保険者)は買い手(被保険者)の信用リスクを引き受けることを意味します。
当然信用の薄い会社のプレミアムは高くなります。プレミアムは時々刻々と変化します。つまり会社の信用度も常に変化しているのですね。
そしてCDS自体も市場で常に売買されています。これから会社の信用度が上がると思う人はCDSを買うでしょうし、信用度が下がると読む人はCDSを売るでしょう。つまり、CDSを売買するということは「信用を売買する」ということです。CDSは世界中で取引され、取引額も流動性も高いので、世界の信用度がそのプレミアムにビビッドに現れてくるわけです。プレミアムが高くなることをワイドになる。低くなることをタイトになるという言い方をします。よくニュースでCDSがワイド化したというときは、プレミアムが上昇した、つまり信用が下がっているということを意味します。逆にCDSがタイト化したというときは、信用が回復基調にあることを意味します。
たとえば、日本の代表的なCDSを集めた「iTraxx Japan」というインデックス銘柄があります。これは株価に対する日経平均のように、日本の会社の信用がだいたいどのくらいあるかの目安になります。
CDX(米国)、iTraxx Europe(ヨーロッパ)、iTraxx Japan等、有名なCDS指標はMarkit社
のWebサイトで見ることができます。
http://www.markit.com/information/jp/close-up/iTraxxJP_PriceInfo.html
Comp Spreadというのがプレミアムです。今iTraxx Japanのプレミアムは149.60bpです。
今起こっている現象は、いまだかつて無い貴重な体験だと思います。よい勉強になります。
関連記事
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「生活維持省」が読める
故星新一氏のショート「生活維持省」のストーリーを小学館のコミックに盗作されたと公式サイトで訴えています。小学館は否定しているようでもめています。ところで、サイト内では、「生活維持省 」が全文公開されています(公開は期間限定3ヶ月間とのこと)。読んでとても懐かしい気分になりました。やはりよくできていますね。面白いです。
関連記事
http://www.asahi.com/culture/update/0919/TKY200809190330.html
http://internet.watch.impress.co.jp/static/yajiuma/2008/09/19/
筋肉ムキムキ牛
マイオスタチンとう筋肉を抑制するたんぱく質があります。この牛はマイオスタチンを作る遺伝子に欠損があるため、筋肉を抑制することができずムキムキになるということです。
逆にマイオスタチンの働きが強すぎると、筋肉が過剰に抑制されてやがては呼吸や心臓を動かす筋肉も衰えてしまうという筋ジストロフィーという恐ろしい病気の原因にもなるといわれています。
力仕事をすると自然に筋肉が増える。力仕事をやめると自然と筋肉が減少する。環境に合わせて常に微調整をして、最も効率のよい状態を保っているのです。体というのは絶妙なバランスの上に成り立っているのですね。
月 - 錯覚だらけの世界?
今日の中秋の名月は東京では曇っていて見えませんでしたが、昨日は旧暦で十三夜で見ることができたのでよしとしましょう。十三夜は日本だけの風習だそうです。完全な満月でない、少しかけた月を愛でることが日本人の感性にあっているからでしょうか。
昔は十五夜(旧8/15)にお月見をしたら、必ず十三夜(旧9/13)にもお月見をしないと縁起が悪いといわれていました。ですから、1回目のお月見にうまく誘えれば2回目の逢瀬も確実に得られるため、異性を誘うことが流行したということです。
昨日はビルの谷間に大きなオレンジの月がのっそりと覗いていました。大きな月を見るといつもドキっと動揺してしまいます。月には人の心を惑わせる何かがあるようですね。
実はほんとうに惑わされているのです。
地平線近くの月はどうしてあんなに大きく赤く見えるのでしょうか?赤く見えるのは、波長の長い赤い光が大気に吸収されずに届くからですが、大きく見えるのは実は錯覚なのだそうです。
多くの方は、地平線の月はより近くにあるのだとか、大気のレンズ効果などと思われているようですが、そんなことはありません。望遠鏡でみると確かに視直径は同じです。しかし人間の脳は地平線上の月(あるいは太陽)をより大きく感じてしまうのです。これは天頂をより低く見積もってしまう人間の空間認識によるものなのだそうですが、脳の不思議を感じますね。
それでは次の質問はどうでしょう?
質問①
あなたは1万円をもらった上で次の2つの選択肢が提示されました。
A.無条件に5千円もらう
B.コインを投げて表が出れば1万円もらえるが、裏が出れば何ももらえない
質問②
あなたはさらに1万円をもらった上で次の2つの選択肢が提示されました。
A.無条件に5千円取り上げられる
B.コインを投げて表が出れば1万円取り上げられるが、裏が出れば何も取り上げられない
質問①ではAを、質問②ではBを選びたくなりませんでしたか?実は質問①も質問②も確率的にはまったく同じです。人間は利益を得るときにはより慎重に、損失が避けられないときにはより投機的になるということです。ピンチのときは確率論をまったく無視して危険な賭けに出てしまうのですね。カジノの優秀なディーラーは人間のこうした性格をよく心得ています。気をつけましょう。
このように視覚だけでなく、心にも錯覚は存在するのです。ひょっとしたら人間の認識している世界なんて、まるででたらめな錯覚だらけではないのか?月を見上げるたびにふと、そんなことを考えてしまいます。
(※この記事は2005/04/24に他ブログで執筆したものの再掲です)
大型ハドロン衝突型加速器(LHC)
以前に載せた、ラップでLHCの概要を説明する大型ハドロンラップが好評を博しているというニュースがありました。
http://www.cnn.co.jp/fringe/CNN200809020022.html
また、GoogleのTopがLHCになっていました。いかにもGoogle社員が興味を持ちそうな装置ですからね。
そこでLHCについてもう少し詳しく調べてみました。といってもネットや本にあった情報をまとめただけですが。まずは素粒子の基礎知識から。
クォークとレプトン
すべての物質は原子からできています。原子は原子核と電子からできています。原子核は陽子と中性子からできています。陽子・中性子はさらに小さな素粒子が3つ集まってできています。素粒子は今のところそれ以上分解できないと考えられている最小単位です。この陽子・中性子を構成する素粒子はクォークと呼ばれます。クォークには6種類が存在するといわれています。
・アップ
・チャーム
・トップ
・ダウン
・ストレンジ
・ボトム
電子はそれ自体が素粒子でレプトンと呼ばれる素粒子の仲間です。レプトンも6種類が存在します。
・電子ニュートリノ
・ミューニュートリノ
・タウニュートリノ
・電子
・ミューオン
・タウオン
ゲージ粒子
さらに素粒子間の力の伝達を受け持つ素粒子、ゲージ粒子というものがあります。ゲージ粒子にも種類があって、例えば陽子の元であるクォークどうしをくっつけているのはグルーオンと呼ばれる素粒子です。例えば、2人でブーメランを反対方向に飛ばしてキャッチボールをすれば、互いに近寄る方向に力が働きますね。そういう原理でクォークはブーメラン式にグルーオンをキャッチボールして互いにつっくいているというのです。
他にも磁力や電気力や重力など離れた物質に影響を及ぼす力がありますが、これらもゲージ粒子が空間を越えて力を伝えていると考えられています。物体を加速するのには力が必要です。なぜ力が必要なのか。それは質量があるからです。
ヒッグス粒子の発見 - 質量の解明
なぜ質量があるのか。それは空間はヒッグス場というもので満たされていてその中を移動する際に抵抗を受けるからだそうです。ヒッグス場に波が立つと粒子の形状を取るときがあり、それがヒッグス粒子です。光はヒッグス場の影響を受けません。よって質量=0で、宇宙で最もスピードの早い粒子です。そして質量をつかさどるヒッグス粒子、重力をつかさどる重力子の2つはまだ実際には見つかっていません。
ヒッグス粒子を検出するのがLHCの大きな目的の1つです。これが具体的に調査できれば質量の原因を解明し、将来は質量を自在に操って無重力装置なんかが作れるようになるかもしれません。ホーキング博士はヒッグス粒子が「見つからない」ほうに100ドルを賭けたといいます。ホーキング博士は自分の理論に「保険」をかけることで知られていますから、ヒッグス粒子の検出はほぼ確実とみていいでしょう。
陽子の破片を検出しているのではない
LHCは加速した陽子どうしをぶつけて素粒子を検出しようとしていますが、陽子が壊れてその中の素粒子が出てくるわけではありません。陽子をぶつけると巨大なエネルギーが生まれますが、そのエネルギーが放射状に広がりながら素粒子に転換するのです。
「E = mc^2」によってエネルギー⇔質量の転換が起こります。巨大なエネルギーを一点に集約すると物質が生まれるのです。ですから、陽子の衝突だけであらゆる素粒子を生成することが可能なのだそうです。
より高いエネルギーで衝突させればより質量の大きい素粒子を生成することができます。強大なエネルギーを集約できることで、今まで作れなかった素粒子を作れるためにLHCは注目されているのです。
超対称性粒子の発見 - 統一理論の樹立
それぞれの素粒子(クォーク、レプトン、ゲージ)には対になる裏素粒子ともいえるものが存在します。それが超対称性粒子です。素粒子と何が違うかというと、スピン(自由度のことらしい)が違うとのことです。理論的には存在が予言されていますが、観測されていません。これを検出することもLHCの大きな目標のひとつです。
超対称性粒子はダークマターの正体だとも考えられています。宇宙において目に見える物質の5倍以上をダークマターが占めているといいますから、これが発見されれば宇宙物理学の大進歩になります。そして超対称性粒子が発見されると大統一理論(「電磁気力」、「弱い力」、「強い力」、「重力」の融合)の完成に近づきます。大統一理論が完成すれば自然界に存在するすべての力を1つの式で表現できるようになるので、まさに神の法則を理解した事になります。
ブラックホールの生成 - 空間第4次元の発見
LHCではブラックホールを作る実験も行われます。科学者たちはブラックホールを作って何を知ろうとしているのでしょうか。重力は物体同士が離れるほど弱くなりますが、この弱くなり具合が計算よりも大きいらしい。なぜ計算よりも弱くなり具合が激しいのかというと、それは重力子が第4次元(時間次元を除く)に逃げている可能性があるからだといいます。第4次元とは「縦」「横」「高さ」のほかにもうひとつの軸があることをいいます。
通常我々は空間を3次元でしか理解できません。地球の表面(2次元)しか知らなかった昔の人が地球は丸い(3次元)ことを理解できなかったように。しかし第4次元があるとして、重力子だけはこの4次元軸に移動することができると仮定すると上記の計算をうまく説明できるそうです。
ごく狭い領域にごく大量の質量(=エネルギー)を集めることができるならば、重力子が逃げていく隙を与えずに強大なパワーの重力をとらまえることができます。その結果ブラックホールが生成されるのです。ですから、(LHC程度のエネルギーで)ブラックホールが生成されたとなると、第4次元の存在の確証を得たということになるのです。
◆大きさ
一周27Km。山手線の一周と同じくらい。
地下100mに建設。
◆性能
加速粒子の最大速度 = 光速の99.9999991%
衝突エネルギー =
陽子を7TeVまで加速、逆方向からも7TeVでぶつけるので衝突時に14TeVのエネルギーを得る
(これまでの世界最高の7倍)
実験データ量 = 実験装置ATLASのみで年間4ペタバイト(1000兆バイト)
◆6つの実験装置
LHCの各所には6つの実験装置がついていて、それぞれの実験装置で粒子を衝突させることがでる。
・ATLAS(アトラス)
ヒッグス粒子の検出
超対称性粒子の検出
・CMS
同上
・ALICE(アリス)
鉛イオンを衝突させ、超高温・高密度の初期宇宙を再現する
・LHCb
B中間子の崩壊現象を調べ、反粒子の法則性を探る
・TOTEM
素粒子の弾性散乱や回折分離実験を行うことが目的。
・LHCf
宇宙線の大気中での相互作用のシミュレーションモデルの検証が目的。
<参考文献>
Wikipedia - 大型ハドロン衝突型加速器
WiredVision - 『LHC』最高/最悪のシナリオ
Newton
- 10月号
誰でしょう
21才で事業に失敗する。
22才で選挙に落選する。
24才で、またもや事業に失敗する。
26才で、恋人の死の悲しみを乗り越える。
27才で、ノイローゼになる。
34才で、下院議員に落選する。
36才で、またもや下院議員に落選する。
45才で、上院議員に落選する。
47才で、副大統領になりそこなう。
49才で、またもや上院議員に落選する。
これは、だれでしょう。
そして、
52才で、アメリカ大統領に就任する。
・ そうです。エイブラハム・リンカーンのお話です。
・ いつも、チャレンジすることの大切さを、いつも学んで
います。どこかであきらめていれば、リンカーンの話は
教科書にはのらなかったでしょう。
すべて引用
「Dr.テラのエピソード通信
」メルマガより

