月 - 錯覚だらけの世界?
今日の中秋の名月は東京では曇っていて見えませんでしたが、昨日は旧暦で十三夜で見ることができたのでよしとしましょう。十三夜は日本だけの風習だそうです。完全な満月でない、少しかけた月を愛でることが日本人の感性にあっているからでしょうか。
昔は十五夜(旧8/15)にお月見をしたら、必ず十三夜(旧9/13)にもお月見をしないと縁起が悪いといわれていました。ですから、1回目のお月見にうまく誘えれば2回目の逢瀬も確実に得られるため、異性を誘うことが流行したということです。
昨日はビルの谷間に大きなオレンジの月がのっそりと覗いていました。大きな月を見るといつもドキっと動揺してしまいます。月には人の心を惑わせる何かがあるようですね。
実はほんとうに惑わされているのです。
地平線近くの月はどうしてあんなに大きく赤く見えるのでしょうか?赤く見えるのは、波長の長い赤い光が大気に吸収されずに届くからですが、大きく見えるのは実は錯覚なのだそうです。
多くの方は、地平線の月はより近くにあるのだとか、大気のレンズ効果などと思われているようですが、そんなことはありません。望遠鏡でみると確かに視直径は同じです。しかし人間の脳は地平線上の月(あるいは太陽)をより大きく感じてしまうのです。これは天頂をより低く見積もってしまう人間の空間認識によるものなのだそうですが、脳の不思議を感じますね。
それでは次の質問はどうでしょう?
質問①
あなたは1万円をもらった上で次の2つの選択肢が提示されました。
A.無条件に5千円もらう
B.コインを投げて表が出れば1万円もらえるが、裏が出れば何ももらえない
質問②
あなたはさらに1万円をもらった上で次の2つの選択肢が提示されました。
A.無条件に5千円取り上げられる
B.コインを投げて表が出れば1万円取り上げられるが、裏が出れば何も取り上げられない
質問①ではAを、質問②ではBを選びたくなりませんでしたか?実は質問①も質問②も確率的にはまったく同じです。人間は利益を得るときにはより慎重に、損失が避けられないときにはより投機的になるということです。ピンチのときは確率論をまったく無視して危険な賭けに出てしまうのですね。カジノの優秀なディーラーは人間のこうした性格をよく心得ています。気をつけましょう。
このように視覚だけでなく、心にも錯覚は存在するのです。ひょっとしたら人間の認識している世界なんて、まるででたらめな錯覚だらけではないのか?月を見上げるたびにふと、そんなことを考えてしまいます。
(※この記事は2005/04/24に他ブログで執筆したものの再掲です)
