大型ハドロン衝突型加速器(LHC) | 木下英範のブログ

大型ハドロン衝突型加速器(LHC)


LHC

以前に載せた、ラップでLHCの概要を説明する大型ハドロンラップが好評を博しているというニュースがありました。
http://www.cnn.co.jp/fringe/CNN200809020022.html


また、GoogleのTopがLHCになっていました。いかにもGoogle社員が興味を持ちそうな装置ですからね。


そこでLHCについてもう少し詳しく調べてみました。といってもネットや本にあった情報をまとめただけですが。まずは素粒子の基礎知識から。


クォークとレプトン


すべての物質は原子からできています。原子は原子核と電子からできています。原子核は陽子と中性子からできています。陽子・中性子はさらに小さな素粒子が3つ集まってできています。素粒子は今のところそれ以上分解できないと考えられている最小単位です。この陽子・中性子を構成する素粒子はクォークと呼ばれます。クォークには6種類が存在するといわれています。
・アップ
・チャーム
・トップ
・ダウン
・ストレンジ
・ボトム


電子はそれ自体が素粒子でレプトンと呼ばれる素粒子の仲間です。レプトンも6種類が存在します。
・電子ニュートリノ
・ミューニュートリノ
・タウニュートリノ
・電子
・ミューオン
・タウオン


ゲージ粒子


さらに素粒子間の力の伝達を受け持つ素粒子、ゲージ粒子というものがあります。ゲージ粒子にも種類があって、例えば陽子の元であるクォークどうしをくっつけているのはグルーオンと呼ばれる素粒子です。例えば、2人でブーメランを反対方向に飛ばしてキャッチボールをすれば、互いに近寄る方向に力が働きますね。そういう原理でクォークはブーメラン式にグルーオンをキャッチボールして互いにつっくいているというのです。


他にも磁力や電気力や重力など離れた物質に影響を及ぼす力がありますが、これらもゲージ粒子が空間を越えて力を伝えていると考えられています。物体を加速するのには力が必要です。なぜ力が必要なのか。それは質量があるからです。


ヒッグス粒子の発見 - 質量の解明


なぜ質量があるのか。それは空間はヒッグス場というもので満たされていてその中を移動する際に抵抗を受けるからだそうです。ヒッグス場に波が立つと粒子の形状を取るときがあり、それがヒッグス粒子です。光はヒッグス場の影響を受けません。よって質量=0で、宇宙で最もスピードの早い粒子です。そして質量をつかさどるヒッグス粒子、重力をつかさどる重力子の2つはまだ実際には見つかっていません。


ヒッグス粒子を検出するのがLHCの大きな目的の1つです。これが具体的に調査できれば質量の原因を解明し、将来は質量を自在に操って無重力装置なんかが作れるようになるかもしれません。ホーキング博士はヒッグス粒子が「見つからない」ほうに100ドルを賭けたといいます。ホーキング博士は自分の理論に「保険」をかけることで知られていますから、ヒッグス粒子の検出はほぼ確実とみていいでしょう。


陽子の破片を検出しているのではない


LHCは加速した陽子どうしをぶつけて素粒子を検出しようとしていますが、陽子が壊れてその中の素粒子が出てくるわけではありません。陽子をぶつけると巨大なエネルギーが生まれますが、そのエネルギーが放射状に広がりながら素粒子に転換するのです。


「E = mc^2」によってエネルギー⇔質量の転換が起こります。巨大なエネルギーを一点に集約すると物質が生まれるのです。ですから、陽子の衝突だけであらゆる素粒子を生成することが可能なのだそうです。


より高いエネルギーで衝突させればより質量の大きい素粒子を生成することができます。強大なエネルギーを集約できることで、今まで作れなかった素粒子を作れるためにLHCは注目されているのです。


超対称性粒子の発見 - 統一理論の樹立


それぞれの素粒子(クォーク、レプトン、ゲージ)には対になる裏素粒子ともいえるものが存在します。それが超対称性粒子です。素粒子と何が違うかというと、スピン(自由度のことらしい)が違うとのことです。理論的には存在が予言されていますが、観測されていません。これを検出することもLHCの大きな目標のひとつです。


超対称性粒子はダークマターの正体だとも考えられています。宇宙において目に見える物質の5倍以上をダークマターが占めているといいますから、これが発見されれば宇宙物理学の大進歩になります。そして超対称性粒子が発見されると大統一理論(「電磁気力」、「弱い力」、「強い力」、「重力」の融合)の完成に近づきます。大統一理論が完成すれば自然界に存在するすべての力を1つの式で表現できるようになるので、まさに神の法則を理解した事になります。


ブラックホールの生成 - 空間第4次元の発見


LHCではブラックホールを作る実験も行われます。科学者たちはブラックホールを作って何を知ろうとしているのでしょうか。重力は物体同士が離れるほど弱くなりますが、この弱くなり具合が計算よりも大きいらしい。なぜ計算よりも弱くなり具合が激しいのかというと、それは重力子が第4次元(時間次元を除く)に逃げている可能性があるからだといいます。第4次元とは「縦」「横」「高さ」のほかにもうひとつの軸があることをいいます。


通常我々は空間を3次元でしか理解できません。地球の表面(2次元)しか知らなかった昔の人が地球は丸い(3次元)ことを理解できなかったように。しかし第4次元があるとして、重力子だけはこの4次元軸に移動することができると仮定すると上記の計算をうまく説明できるそうです。


ごく狭い領域にごく大量の質量(=エネルギー)を集めることができるならば、重力子が逃げていく隙を与えずに強大なパワーの重力をとらまえることができます。その結果ブラックホールが生成されるのです。ですから、(LHC程度のエネルギーで)ブラックホールが生成されたとなると、第4次元の存在の確証を得たということになるのです。



◆大きさ
一周27Km。山手線の一周と同じくらい。
地下100mに建設。


◆性能
加速粒子の最大速度 = 光速の99.9999991%
衝突エネルギー =
陽子を7TeVまで加速、逆方向からも7TeVでぶつけるので衝突時に14TeVのエネルギーを得る
(これまでの世界最高の7倍)
実験データ量 = 実験装置ATLASのみで年間4ペタバイト(1000兆バイト)


◆6つの実験装置

LHCの各所には6つの実験装置がついていて、それぞれの実験装置で粒子を衝突させることがでる。


・ATLAS(アトラス)
ヒッグス粒子の検出
超対称性粒子の検出


・CMS
同上


・ALICE(アリス)
鉛イオンを衝突させ、超高温・高密度の初期宇宙を再現する


・LHCb
B中間子の崩壊現象を調べ、反粒子の法則性を探る


・TOTEM
素粒子の弾性散乱や回折分離実験を行うことが目的。


・LHCf
宇宙線の大気中での相互作用のシミュレーションモデルの検証が目的。



<参考文献>
Wikipedia - 大型ハドロン衝突型加速器

WiredVision - 『LHC』最高/最悪のシナリオ

高エネルギー加速器研究機構

Newton - 10月号