長い間更新をしていませんでしたが
久しぶりの更新です。

初めて読んでくれた方、最訪問してくれた方、
今後もちょくちょく自分のペースで更新していこうと思いますので
よろしくお願いいたします。




この2年の間、
このブログの更新をチェックするのは田中の日課になっていた。




「そうか、とうとう更新されたか」




そうつぶやくと田中はブログにコメントを書き始めた。


”長らくブログの更新がありませんでしたが、
このたび更新したきっかけは何かありますか?”


送信ボタンを押すとパソコンの電源を切る。





「田中、わかっているな。さぁ、出ろ。」



看守がそう声をかけると田中はゆっくり立ち上がり、
深呼吸をすると2年過ごした独居牟をあとにした。







「田中の死刑が執行されました。」

「そうか。」

所長は目をつぶってぽつりと言った。

「この平和な時代に死刑執行の決定は誰もが嫌がる。
そこで考えられたのがある種ギャンブル的なこのシステム。
死刑確定時に選ばれた任意のブログの更新日を死刑執行日とする。
執行日はその日になるかもしれないし、永遠に訪れないかもしれない。
要するに誰も死刑執行の決断をしなくていいシステムというわけだ。」


所長はパソコンの電源を入れると田中の死刑執行日のために選出されていたブログを開いた。
こんなコメントが書かれている。


”コメントありがとうございます。
このたびこのブログを2年ぶりに更新したのは例の政府の方針がきっかけです。
もしかしたら私のブログが選ばれているかもしれない。
そう思うと、悪いことをした奴に刑罰を!という正義感にかられて更新せずにはいられなかったのです。”



「皮肉なものだな。
誰もが自分の手は汚したくないからできたシステムなのに
誰もが正義については声高に主張するのだから」
あれは事故だった。
由佳が6歳のとき、夏休みを控えた終業式の日の放課後、クラスメイトとかくれんぼをしたときの事だ。

じゃんけんに勝った由佳と他の五人の友達は、あちこち隠れる場所を探し、校庭の隅にある体育倉庫に隠れることにした。
普段、体育倉庫には鍵がかかっているが、その日は鍵が開いていた。


「ここなら絶対に見つからないぞ。」


隠れてから10分ほどしたが、鬼は姿を見せない。

さらに10分たったが、まだ鬼は探しに来ない。
由佳たちは、はじめは見つからない事を楽しんでいたが、だんだん隠れているのにも飽きてきた。
ちゃんと探しているのだろうか?

そこで痺れを切らした由佳は、他のものに奥で隠れているように言い、ひとりで鬼の様子を見に行く事にした。


由佳はそっと倉庫から出た。


すると、前から鍵をジャラジャラさせた担任の先生が歩いてくるではないか。

「おう、どうした?まだ帰らないのか?そんなに学校が好きなら明日からも夏休みとは言わずに学校に来てもいいんだぞ?」

担任の教師は冗談っぽく由佳に言った。

「・・・今、友達と遊んでいたんです。」

「ははは。そうかそうか。でもな、体育倉庫では絶対に遊んだらだめだぞ。ここは危ないからな。いいか?」

「はい・・・さようなら」

そう答えると由佳は走ってその場を去った。







五人の子供の遺体が体育倉庫から発見されたのは9月の事だった。





「先生、先生!」


生徒の呼びかけに由佳は我に返った。
20年たった今でも、気がつくとあの日の事を思い出している。
しかし、
そう、あれは事故だったのだ。


「はい、ごめんね。できたかな?」


いつまでもあの日の事を引きずっていてはいけない。

由佳はあのような事故を起こさぬよう、放課後に近所の子供を預かる図画教室を開いていた。


「うん。お友達を描いたよ。」


その子供が手渡した絵には、いるはずのない五人の子供が描かれていた。

20061114001439.jpg



「それで先生、この絵のどこがおかしいのでしょうか?
4歳にしてはよくかけていると思うのですが・・・」


図画教室の教師はこの絵の作者の母に答える。


「今日は生徒に教室の中のものを描くようにいったんです。」

「はあ、それで・・・?お友達ではだめだったのですか?」

「いえ・・・そうではなくて・・・今日教室に来たのは息子さんだけだったんです・・・」


田中は迷っていた。

学生時代に必死に勉強し、議員になってからも一年365日泥まみれになって駆けずり回り、やっとの思いで外務大臣になった田中だったが、そんな田中にもさすがに今回の件は荷が重かった。

田中は悩んだ。
ある国との侵略的外交。
この外交を実施することは自分の信念に反する。
しかし、国の未来を考えれば、たとえ汚いやり方であろうとも仕方がないことだ。

「いったいどうすればいいんだ・・・」



そんな田中のもとに、一人の男が尋ねてきた。
それは田中の上司、大統領であった。


「今回の件、考えてくれたかね。」

「はぁ。しかし、なかなか決心がつかないのです。」

「そうか。この件は難しいからな。君の意に反する決定をしなくてはならないことになるかもしれんしな。まぁ、まだ時間はまだある。じっくり吟味してくれ。」


大統領はそう言うと席を立った。
そして、去り際にこう言った。

「悩むのはいいが、
いいかね。君はひとりじゃない。これまで君は誰かに頼って結論を出すことはしなかったが、ほかの人に頼るということも時には必要だぞ。」

「はい。わかりました・・・」



一週間が過ぎた。
田中は寝ることも忘れて考えにふけっていた。
そして、この外交は中止するという結論に至った。
外交に関する決定権は自分にある。
たとえ国の利益になろうとも、自分の意に反するような汚い外交はしたくない。
田中は大統領に決定を報告することにした。



「大統領、結論が出ました。この外交は行いません。」

田中はハキハキとそういった。
総理は黙ってうなずいた。

「そうか。決心は固いのかね?」

「はい。例えそれが国の利益になったとしても侵略的外交はまちがっています。私は誰がなんと言おうと、この決定は変えるつもりはありません。」


大統領は目をふせ、小さく息を吐くと部屋の警備員にそっと合図をした。



警備員は田中の背後から田中を射殺した。


「それを片付けて、新しいのを。」


大統領は警備員に命じた。
そして、動かなくなった田中につぶやく。

「君の言うこともわかるが、国の利益には変えられん。
しかし、君は外務大臣だからな。外交に対する権限は君にある。
でもね、君はひとりじゃない。」


警備員に連れられて田中のクローンが部屋に入ってきた。


「じゃあ、新しい田中君。例の件、頼んだよ。」





その国ではその年に国の平和に貢献した個人を次の年の平和のシンボルにする風習があった。


この年は暴力団撲滅に取り組んだ田中という男が翌年の平和のシンボルに選ばれた。



その年の年末、田中は平和のシンボル任命式に参加していた。
この任命式は一年の締めくくりとして盛大に行われており、数千人の観客が見守る中挙行される。
そのため、田中への警護も徹底されていた。


この年の任命式は、平和のシンボルが暴力団撲滅運動によって平和のシンボルに選ばれたこともあり、観客の中には鼻息の荒い連中も多く混じっていた。


そのため、田中が壇上でスピーチしている間も観客席の中からは荒々しい野次が飛び、その都度ガードマンが対応していた。


そんな時、事件は起きた。
田中がスピーチを終わらせ、壇上からおり、席に着こうとしたとき、観客席から一人の男が飛び出し、田中に飛び掛ろうとした。

すかさず数人のガードマンが男を取り押さえつけた。
そしてそのうちの一人が男のこめかみに拳銃をあてがった。


「ま、まて!撃たないでくれ!大人しくする!だから撃たないでくれ!頼む!」


男はガードマンに命乞いをした。


しかし、ガードマンは男の訴えを聞くことなく引き金を引いた。
男は無抵抗の中死んでいった。




事のいきさつをすべて目撃していた観客達は口々に言った。


「乱入したやつは死んだようだ。よかったよかった。
まったく、任命式に田中さんに襲い掛かるとは、なんという男だ。
平和のシンボルをなんだと思っているのだ。」
人里離れた孤島のバンガローで一人の男性が殺された。

動かなくなったその男を見下ろす五人の男女。
その中の一人の女性が叫ぶように言った。

「次に殺されるのは私よ…!!」

残りの二人の男と三人の女が振り返り彼女を見た。
男が聞く。


「なぜそう思うんだい?」


すると彼女は震えながら言った。


「だって、みんなが彼を殺している間、彼を助けようとしたのは私だけだったから・・・」




一人で登山に来ていた田中は山頂に続く山道の途中で一台の携帯電話をみつけた。

誰かの忘れ物であろうか?

だとしたら持ち主はきっと困っているに違いない。

田中は電話を手に取った。
どうやら壊れてはいないようだ。
が、画面を見ると「圏外」と表示されている。


「しょうがない。下山したら警察に届けるか。」


田中はリュックに携帯電話をしまうと、山頂を目指した。





その晩、
田中は山頂にある山小屋にいた。
山小屋といっても、壁と天井があるだけの掘っ立て小屋。

昨夜は数人の登山者が利用したようだが、今夜は田中一人だ。


「することもないし、明日に備えてもう寝るか…」


田中は寝袋に包まると時計を見た。
ちょうど夜の10:00を回ったところだった。
ランプを消すと、
山小屋の中はいっそう静まり返った。




自分が呼吸をする音しかしない。



登山の疲れから、田中はすぐにうとうとしてきた。




…その時だ。





「プルルル プルルル…」 




田中のリュックの中から電話の鳴る音がする。
田中は慌てて起き上がると、ランプの明かりを付け、リュックの中を探った。
鳴っていたのは自分の携帯電話ではなく、登山の途中に山道で拾ったあの携帯電話だった。

田中は携帯電話を開くと、受話ボタンを押そうとした。
が、そのとき田中はハッとした。





ここは電波がないはずだ。






田中はゾッとした。



しかし、電話はなり続ける。


電話の主を見るため、鳴り続ける電話の画面を見た。
そこには、




「非通知設定」




という文字が表示されている。


田中は恐る恐る電話に出てみることにした。




「…もしもし。あの、この携帯、拾ったんですが…」




しかし電話の向こうからは何の返事もない。
やっぱり電波がよくないのだろう。
田中は少し待ってから切ろうとした。
すると、



「今から、向かいます。いま、山道の入り口です。」



電話は切れた。
男とも女とも知れぬ声。

田中は電話の「つーっつーっつー」という音を聞きながら、呆然としていた。


「この展開は…知っているぞ…」


田中はつぶやいた。


「きっと次の電話では、“今山の中腹にいる”と言うんだ。次が山頂。次が山小屋の前。そして次が…俺の後ろに立っていると言うんだ…!
ど、どうすればいいんだ!!」


田中は電話を投げると、反対側の壁まで後ずさりした。
どうすればいい…どうすればいい…
田中はパニックになっていた。
これはいたずらじゃない…だとすれば、俺はどうなるんだ…



「プルルル プルルル…」 



田中の恐怖心に反して、携帯電話は再びなり始めた。
田中は動けずにいた。
しかし、携帯はなり続ける。
田中は勇気を出して携帯を取り、電話にでた。


「も、もしもし…ど、どこにいるんだ!?」


田中は既に自分の声にさえもビクついていた。





「おまえ…知ってたな…?

じゃあ、話が早い…

今はな…お前の後ろだ…!!!」






「うわぁあああ!!!」






田中は気絶してしまった。








山小屋の外で物音がする。

小屋のドアが開けられ、入ってきたのは何頭かのたぬきだった。
たぬき達は気絶した田中の横の携帯電話を囲んだ。
すると、携帯電話は小さな子だぬきに姿を変えた。
子だぬきは自慢げに言った。

「ね?言ったでしょ?現代人を脅かすには携帯電話に化けるのが一番なんだって。お父さん達も古臭いのはやめて次からは僕みたいに携帯電話で化かしなよ。時代はITなんだからさ。」




一人で山にハイキングに来ていた田中は山頂に続く山道の途中で一台の携帯電話をみつけた。

誰かの忘れ物であろうか?

だとしたら持ち主はきっと困っているに違いない。

田中は電話を手に取った。
どうやら壊れてはいないようだ。


すると、突然、

「おい!!」

という声がした。
声は携帯電話から聞こえてくる。

田中は携帯に耳を当てると丁寧に言った。


「もしもし、持ち主の方ですか?今、山道でこの携帯を拾ったんですけど。」


しかし、どういうわけか電話の向こうの相手は怒っているようだ。


「こらぁ!!おまえぇ!!俺をあんまりなめるんじゃねぇぞぉ!!」

「いえ、私はこの電話を拾っただけなんですが…」

「はぁ!?てめぇ、俺の恐ろしさを教えてやるぞぉ!?」


とても話にならない。
こちらは好意で拾ってあげたのに、いったい電話の向こうのやつはどんなやつなのだ。どうせ誰が拾ったかなんてわからない。こうしてやれ。
田中は今だヤイヤイ言っている携帯を谷底に放り投げてしまった。





「いててて…」

谷底に投げられた携帯電話はたぬきに姿を変えた。
ほかのたぬき達が駆け寄る。

「だからいったろ?携帯電話の姿じゃあ人は脅かせないって。」




ある王国の姫が他国にさらわれてしまった。


王は国の勇敢な男達に姫救出を呼びかけた。
しかし、王の想いは届かず、姫は殺されてしまった。



姫の死が伝えられた1ヵ月後、王はあるお触れを出した。
それはこのような内容だった。


「勇者募集。
皆の知るように、我が姫は他国によりさらわれ、殺されてしまった。
二度とこのような事が起こらぬように、この国の兵力を強化する。
そこで、来る私の誕生日に剣術大会を開く。
腕に自身があるものは参加せよ。
ただし、姫救出に携わったものの参加は認めない。
大会の優勝者は、王の権限により特別な待遇で迎える。」



このお触れが城下町に伝わるやいなや、町は大騒ぎとなった。


そして、大会の日を迎えた。
参加したのは20人の屈強な男達だった。

剣術大会のルールはトーナメント形式で、組み合わせで決まったふたりがどちらかが死ぬまで戦うというものであった。


一人死に、二人死に…


とうとう残るは二人になってしまった。

決勝戦は長丁場になった。


一時間ほどの戦いの末、片方の男が倒れると優勝者が決定した。


王はぼろぼろになった優勝者に歩み寄ると試合を監督していた兵にこういった。




「この者の首をはねよ」




優勝者は驚いていった。

「ご冗談でしょう?私はこの大会の優勝者。
言わばこの国で一番強いものなのです。その私を殺すと言うのですか?」

すると王は言った。

「この大会に参加したものは皆腕に自身はあるが、姫の救出には手を貸さなかった者達。お前以外の罪人達ははお互いに処刑しあった。
残るはこの国で一番の剣の腕を持ちながら我が姫を見殺しにしたお前の処刑だけだ。
わが国の処刑は火あぶりであるのは知っておろう?
しかし、お前はこの大会に勝ち進む為に十分苦しみを味わった。
だから特別待遇として、苦しみが少ない首はねによる処刑にしてやる。」




家に帰ると金持ちだった。

家を出た時には確かにアパート住まいだったのに、今は豪邸の主である。
高級車に何人もの使用人。なに不自由ない生活。
シャンパンの風呂に入り、ふかふかのベッドに寝る。





目が覚めると貧乏だった。

寝る前は確かに豪邸住まいだったのに、今は狭いアパートの住人である。
カビの生えた壁に、害虫。とても耐えられない生活。
部屋に風呂はなく、汗臭い布団。





ふと振り向くと既婚者だった。

さっきまでは確かに独身だったのに、今は3人の子供を抱える父親だ。
家庭をもつ責任感と充実感。満たされた生活。





気付くと刑務所の中にいた。

さっきまでは確かに幸せな家庭にいたのに、今は囚人だ。
絶望感・脱力感。閉ざされた生活。











スイッチが切られ、マシーンのふたが開けられると、大統領は目を開け、ゆっくりと仮想生活体験マシンのなかから出てきた。

「なるほど…こういう事態が現実に起こりうるという事だな。これは恐ろしい事だ。自分に都合の良い人生を作り出す輩が出てくると、他の人間の人生も狂ってしまう…
即刻、タイムマシンの使用・製造を規制しろ。」