田中は迷っていた。

学生時代に必死に勉強し、議員になってからも一年365日泥まみれになって駆けずり回り、やっとの思いで外務大臣になった田中だったが、そんな田中にもさすがに今回の件は荷が重かった。

田中は悩んだ。
ある国との侵略的外交。
この外交を実施することは自分の信念に反する。
しかし、国の未来を考えれば、たとえ汚いやり方であろうとも仕方がないことだ。

「いったいどうすればいいんだ・・・」



そんな田中のもとに、一人の男が尋ねてきた。
それは田中の上司、大統領であった。


「今回の件、考えてくれたかね。」

「はぁ。しかし、なかなか決心がつかないのです。」

「そうか。この件は難しいからな。君の意に反する決定をしなくてはならないことになるかもしれんしな。まぁ、まだ時間はまだある。じっくり吟味してくれ。」


大統領はそう言うと席を立った。
そして、去り際にこう言った。

「悩むのはいいが、
いいかね。君はひとりじゃない。これまで君は誰かに頼って結論を出すことはしなかったが、ほかの人に頼るということも時には必要だぞ。」

「はい。わかりました・・・」



一週間が過ぎた。
田中は寝ることも忘れて考えにふけっていた。
そして、この外交は中止するという結論に至った。
外交に関する決定権は自分にある。
たとえ国の利益になろうとも、自分の意に反するような汚い外交はしたくない。
田中は大統領に決定を報告することにした。



「大統領、結論が出ました。この外交は行いません。」

田中はハキハキとそういった。
総理は黙ってうなずいた。

「そうか。決心は固いのかね?」

「はい。例えそれが国の利益になったとしても侵略的外交はまちがっています。私は誰がなんと言おうと、この決定は変えるつもりはありません。」


大統領は目をふせ、小さく息を吐くと部屋の警備員にそっと合図をした。



警備員は田中の背後から田中を射殺した。


「それを片付けて、新しいのを。」


大統領は警備員に命じた。
そして、動かなくなった田中につぶやく。

「君の言うこともわかるが、国の利益には変えられん。
しかし、君は外務大臣だからな。外交に対する権限は君にある。
でもね、君はひとりじゃない。」


警備員に連れられて田中のクローンが部屋に入ってきた。


「じゃあ、新しい田中君。例の件、頼んだよ。」