一人で山にハイキングに来ていた田中は山頂に続く山道の途中で一台の携帯電話をみつけた。

誰かの忘れ物であろうか?

だとしたら持ち主はきっと困っているに違いない。

田中は電話を手に取った。
どうやら壊れてはいないようだ。


すると、突然、

「おい!!」

という声がした。
声は携帯電話から聞こえてくる。

田中は携帯に耳を当てると丁寧に言った。


「もしもし、持ち主の方ですか?今、山道でこの携帯を拾ったんですけど。」


しかし、どういうわけか電話の向こうの相手は怒っているようだ。


「こらぁ!!おまえぇ!!俺をあんまりなめるんじゃねぇぞぉ!!」

「いえ、私はこの電話を拾っただけなんですが…」

「はぁ!?てめぇ、俺の恐ろしさを教えてやるぞぉ!?」


とても話にならない。
こちらは好意で拾ってあげたのに、いったい電話の向こうのやつはどんなやつなのだ。どうせ誰が拾ったかなんてわからない。こうしてやれ。
田中は今だヤイヤイ言っている携帯を谷底に放り投げてしまった。





「いててて…」

谷底に投げられた携帯電話はたぬきに姿を変えた。
ほかのたぬき達が駆け寄る。

「だからいったろ?携帯電話の姿じゃあ人は脅かせないって。」