家は約20年前に、一度引っ越しをしている。



父の生まれ育った家は、もうない。



現住所から、歩いて10分程度の距離なのだが、今ではビルになり様変わりしている。



「家に帰ろう!」と、日に何回も言う父にとって、うちとはどこ?



引っ越し前の家だとは思うのだが、そうとも限らないようだ。



「どこの家に帰りたいの?」と聞いても、地名はでてこない。



父を見ていると、本能で帰りたいところって、人には必ずあるような気がする。



それは、住んでいた家に限らず、それぞれに心のなか、記憶の中にある故郷なのだろう。



「帰ろう!」に対応するセリフは「明日帰ろうね。」



こうして先延ばしにされて、一向に帰ることができない父なのである。



お父さん、どこがあなたの故郷なんですか?









 お盆には必ずお墓参りにいく父。


お墓は、静岡にあるので、昨年までは母と二人で電車日帰りで行っていた。



今年は、すっかり忘れている。



レンタカーを借りて、今年は3人で行くことを提案。いざ墓参りに・・・・。



ゴルフや釣りを趣味にしていた父なので、車を持っていた頃は、運転はお手の物だった。

しかも、王道の道は通らない派。道も良く知っていた。



なので以前私が運転手の時には、後ろからあっちだ。こっとだ。と指図がうるさかった!




今回は、墓参りに行くことは何となくわかったようだが、方向はチンプンカンのよう。

とても静かに運転できた。


が、たまに


「前の車邪魔だな~。追い越しちぇえ!」と、元来の性格が顔を出す。



トイレにしょっちゅう行きたがるので、いつもは2~3時間もあれば余裕で行ける旅が、今回は5時間弱もかかってしまった。



静岡に着き、お墓参りも済ませ、友人にも会った父。



昨年とは違う父を、周囲は暖かく迎えてくれた。



父もとても嬉しかったようす。


最近はどこに行っても、すぐに「帰ろう。帰ろう。」と始まるのに、その言葉は出なかった。



父にとっては、休まる場所なのだろうな~。



母とは、今回の墓参りに行く、行かない、で少し揉めたけど行って良かったと思う。



昔のことでも何でも思い出す機会、環境を作ることが、とても大切なだろうな~。



パパ、来年も行こうね!!


 昼間は父とともに過ごす母。


毎日振り回されているのは、よ~く分かる。


私が帰ると第一声が、


「今日は大変だったの。」


「今日は」、じゃなくて、「いつも」でしょ。と心で思う。


今日の大変を聞いてみると、父と一緒に買い物に出ると、家にたどり着いても、中に入ろうとしなかったらしい。


仕方なく無理やり家に入れて、外からカギをしてしまったそうだ。


つい先日、徘徊防止ようになるカギを着けたばかりなのだ。


中からは開かないドア。


それでも父は諦めず、ドア叩いて訴えていたらしい。


ドアを開けようものなら、また、飛び出してくると思った母。


家のマンションはポーチ型になっていて、脇の部屋との境は鉄格子のフェンスで仕切られている。


それを、年甲斐もなく乗り越えたと言うのだ!そして、部屋から中に入ったと。


ひええぇぇぇぇぇ~~!!!


もしも足を滑らせて、下に落ちたらどうするの~~~!!(家は2階)

と私は怒った!!


母は78歳。


腰が痛い足が痛いと言っているのに。父との状況にとっさにやったことなのだろうが。


そんな時は、暫くほっておいて、落ち着くまで待つように。と言ったのだが・・・・。


「あの状況を見てないからそう言えるのよ!」ですと。。。。(ごもっとも)


とにかく、フェンス越えは今後しないでいただきたいな。


高齢者フェンス越え選手権などないだろうしね。。。。

危ない橋は渡らないでくださいね。



しかし、なぜドアを閉めるときに、一緒になかに入らなったのだろうか?!難解だ!













元々父は、こうと決めたら貫くタイプではある。


昨晩は、寝る時間になってもいっこうにソファに座ったきり動こうとせずテレビを眺めている。


「もういつも寝る時間だよ、寝ないの?」私


「まだ。」父


「そう、じゃあ着替えだけしちゃおうよ。パジャマのが楽だから。」私


「まだいい。」父


こんな時は、母のが強し。


「もう着替えちゃってよ!」母


しぶしぶ着替える父。(手の怪我により多少の助けは必要な状態)


着替え終わってもベットには行かず、またまたソファで横になるのである。


こうなると、テコでも動かない。


仕方なくソファで寝かせたまま、私たちも就寝。


暫くして再度挑戦したが、ダメ。


そしてまた暫くすると、トイレに行く音。


今がシャンス。


トイレの前で待ち構えて、ベットに誘導しようと思い、様子を見ていると、


自分で、ベットに入っていった。よしよし・・・・。


ベットに行くまで、5時間かかった。



今年は、暑さもあり熱中症にならないように就寝時の温度も気になる。


汗をびっしょりかく父。おやじ臭も気になるのよね~。




昨晩から、時間の観念が薄れつつあるようすの父。


夜中に起きだし、家じゅうウロウロ。


各部屋の電気をつけまくり、各部屋を除くの繰り返し。


私の部屋を開けて、

「こんにちは!」父


泊まりに来ているホテルとでも思っているようだ。


「どうしたの?」私


「どうしたらいいんだろう?何をしたらいいんだろう?」父


「今は夜だから、寝るんだよ。」私


「ふ~ん。」父


「今何時?」私 (父は必ず腕時計をしている)


「今、10時」父 (深夜の2時であるのに・・・・)


あらあら、時間もわからなくなったか~~。


それから、暫くウロウロウロウロ・・・・・・。


その後、自分のベットに収まりほどなくして寝たのでした。


先ほどやはり、母から助けてコール。


「午前中なのに、もう夕方だから家に帰ろうって言ってきかないのよ~。」母


父に代わる。


「そこに居てくれないと困るんだよ。私はそこに帰るんだから。」私


「そう。じゃあ早くきてちょうだい。」父。


「わかったよ。そこに居てね。」私。


「うん。ここにいるよ。」父。



私が幼いころには、父の背中で、「今日は早く帰ってくる?早く帰ってきてね。」

と言っていたことを思い出す。今はまったく逆になってるな~。

早く帰るよと言いながら、父は私の起きている時間には帰ってこなかったな~~(笑)