BOOKMAN -8ページ目

そのときは5

三年間同じだったのは、木本だけじゃない。哲也も同じだった。ただ、木本と同様小学校は違うし、仲が良かったわけでもない。別に嫌いではなかったが、仲良くなれそうにはなかった。今もそう感じる。
結子、田所、真とは二年間同じクラス。
結子が、中二のときに違うクラスだったのは、かなりショックを受けた。
田所は、小学校も一緒だったが、同じクラスになったことはない。俺の曖昧な記憶では、小学校でも学級委員をしていた気がする。
真は、実は幼稚園から一緒で、中学二年以外の十一年間一緒だった。幼稚園の頃から今まで、誰かとつるんだり、関わったりするのを嫌っていた。でも、元々これほどやる気の無い性格ではなく、中学に入ってからそうなった気がする。
桐島は小学校に一度、中学では今年初めて同じクラスになった。
桐島とは一度も喋ったことがなく、暗いというイメージしかない。だから、桐島が手を挙げて発言したことは本当に驚いた。
比良は、今年が初めて同じクラス。中一からずっと学級委員をしていたので、何となく存在は知っていた。人の空気を読むのが上手くて、話しやすかった。三年生になってから、すぐに打ち解けた。
佳代と渡辺は、小学校は六年間全て同じだった。中学は、今年初めてだが、女子の中では一番仲が良かった為、佳代の性格が目立たなければ、この二人は特に問題ない。
この居心地の悪いメンバーで、最高の最後の文化祭を目指すことになる。

放課後。
準備は、とてもスムーズに進んでいる。
ふと外を見ると、数十人の生徒が野球やサッカーをしており、端のほうでは、何人かがランニングをしている。文化祭実行委員と作業を手伝う人は、部活を休んで良いことになっている。
だが、サッカー部の比良と哲也、バスケ部の田所と木本と結子、バレー部の渡辺は、その日の仕事を終えると、部活ができる、ぎりぎりの時間まで練習をしていた。
俺は勘違いをしていたのかもしれない。
何も最後なのは、文化祭などの学校行事だけではない。部活だってそうだ。パソコン部の俺には分からないが、大事なことの一つだろう。
やる気がないと思っていた奴だって、文化祭ではなく、部活や他の何かに全力を注いでいるのかもしれない。
文化祭に全力を出せ、田所たちみたいに両立しろと思うのは、ただの自分勝手か。
それと、真が手伝いに来たのは、厳しい監督がいる野球部を、休めるからだったことにも気付いた。

「優汰、そのマジックとって。」
莉沙が俺の後ろに置いてある、マジックを指さした。
「ほら。」
莉沙にマジックを投げる。
「ありがと。」
何日か一緒に仕事をしたためか、段々とこの九人と打ち解けて来た。
ほとんど話したことが無いのに、最初から馴れ馴れしかったのは気になったが、嫌いだった莉沙とも話すようになった。
哲也や大地、真とも打ち解け、一緒に帰るようになった。哲也には、まだ違和感が残るし大地は、俺に怯えてるように見えるし、真は、あまり話しに入ろうとはしないが、皆、帰りは昇降口で待っててくれる。それに真が、愚痴を言う回数が半分に減った。
結子とも話すが、佳代や渡辺がいないと話さない。まともに話すのは気が退ける。でも、十分幸せ。
ちゃんと話したことが無いのは、田所だけ。性格が暗いわけではないが、一つのことに集中すると周りが見えないらしい。
「あのさ、田所って趣味とか何。」
話したことが無いのが、逆に気まずくなって、文化祭の作業中に唐突な質問をした。
「・・・。」
返事がない。
「田所、聞いてる。」
「・・・。」
「田所。」
少し声を大きくした。
「えっ、なに。」
田所が驚いた顔をしてこっちを向いた。
「あ、いや、何でもない。」
聞き返されたら、聞きづらくなった。田所と打ち解けるには、もう少し時間が必要らしい。
文化祭まで、まだまだ時間はある。

その時は4

「淳(あつし)君、折り紙持ってきたよ。」
「あ、どうも。」
「ねぇ、もっと丁寧に切りなよ。」
「いいんだって、誰もそんな細かいとこ見ねぇよ。」
「男子ってそういうことあるから嫌だし。」「出たよ、男女差別。」「それとこれとは違うでしょ。」
3-2からたくさんの雑音が飛んできた。文化祭に向けての準備は、クラスごとに役割を分担してやっている。それをするのは、実行委員とクラスで手伝ってくれる人を集めて行う。うちのクラスは俺も含めて十人。三学年の中では、二番目に多い。木本、学級委員の田所と比良、哲也、そして、結子とその友達の佳代と美紀。後から、哲也が桐島を連れて来た。
どういう風の吹き回しか、真も手伝いに来た。
3-4は、約半数の人が手伝っている。でもそれは、文化祭に向けてというより、友達と放課後残ってやるという楽しみの為だけでしかない。3-1と3-2はどちらも六人。1年と二年は、全てのクラスが半数以上。全員というクラスもある。

俺は、学級委員に手伝ってもらいながら皆に指示を出したり、まとめたりしている。
結子たち三人は、机を囲んで仕事に取り込んでいる。
真は愚痴を言ったり、度々手が止まっているが、一応働いている。
哲也に誘われた桐島は、不器用な哲也に丁寧に作業を教えている。
木本は、俺と学級委員の元に来て指示を煽ったり、結子たちと話したり、真の元に行って注意したり、桐島たちの進み具合を覗いたり、実行委員の俺よりも忙しそうにしている。
木本は、ずっと変わらない性格。いつも何にでも積極的。この中学は二つの小学校から入って来ており小学校は違ったが、中学の三年間は同じクラスだったから良く分かる。でも、ほとんど話したことはない。なぜなら、嫌いだから。俺の性格とは噛み合わなかった。俺にとってあいつはただのウザい奴。俺以外でも、そう思っている奴は少なくなかった。ただ、今は違う。逆に、あいつを羨ましいと思うようになった。あれだけ何にでも全力なら、後悔することはほとんどないだろう。俺は後悔だらけ。
でも変わった。
もう後悔したって遅いから、今に全力を注ごう。人を羨ましがってばかりでは、何も進まない。そう思うようにもなった。でも多分、俺はこれからも後悔したり、羨ましがったりするのだろうけど。

その時は3

文化祭について真面目に考えようとする人が増えた。だがやはり、良い意見は出ない。俺も考えて見たが、一切思い付かない。時間は止まるはずもなく、終わりの時間になった。終わって見れば、何も決まってない。本当に大事なのは過程だとしても、結果が見えなければ駄目なことだってある。

月曜日。
ぎりぎりまで考えたが、何も出ない。
「それでは文化祭についての話し合いをします。」
始めの挨拶はきちんとしていたが、先生がいなく実行委員の生徒だけで話し合ったせいか、和気あいあいとした中で行われた。
「これで、話し合いを終わります。」
元々、全校製作を何にするか決めるのが中心だった。だから、すぐに終わった。
俺は、具体的ことは決まってないが、いつもとは違うことをしようと言った。だが、他のクラスは皆、去年と同じようなことをしようとしていた。案もきちんとまとめてある。
「中身がないんじゃどうしようも無いしね。」
「3-2のが良いんじゃねぇ。」
「じゃあ、そうしよう。」
多数決の原理に俺は屈伏した。
その後は、これからの準備についてと役割を軽く説明し、倍の時間を使って雑談が行われた。
一所懸命に考えてくれた人を裏切ったような気持ちだった。特に、木本と桐島にはいうのが辛かった。俺はこんな性格だったっけ。他の奴が、ちょっと前の俺に見えた。どうしてだろう。多分だが、これが最後だから。全ての行事が最後。他の奴らは、知ってはいるが、分かってはいない。いつ、分かるのだろう。
俺は、皆に本気で心から謝った。桐島と木本はしょうがないと言ってくれたが、気分が変わるわけではない。
クラスの半分は、別にどうでもいいという顔をしている。
三学年に約半数いると思われる分かってない方々。もうすぐです。最後は。早く分かってください。そして、変わってください。僕のように。

「先生に聞いてみて。」
「マジックだったら三組にあるよ。」
「あんまり引っ張るなよ。」
今は、文化祭の準備の真っ最中。
約半数の分かってない生徒も、自分の役割をこなそうと、嫌々ながらも働いている。