そのときは5 | BOOKMAN

そのときは5

三年間同じだったのは、木本だけじゃない。哲也も同じだった。ただ、木本と同様小学校は違うし、仲が良かったわけでもない。別に嫌いではなかったが、仲良くなれそうにはなかった。今もそう感じる。
結子、田所、真とは二年間同じクラス。
結子が、中二のときに違うクラスだったのは、かなりショックを受けた。
田所は、小学校も一緒だったが、同じクラスになったことはない。俺の曖昧な記憶では、小学校でも学級委員をしていた気がする。
真は、実は幼稚園から一緒で、中学二年以外の十一年間一緒だった。幼稚園の頃から今まで、誰かとつるんだり、関わったりするのを嫌っていた。でも、元々これほどやる気の無い性格ではなく、中学に入ってからそうなった気がする。
桐島は小学校に一度、中学では今年初めて同じクラスになった。
桐島とは一度も喋ったことがなく、暗いというイメージしかない。だから、桐島が手を挙げて発言したことは本当に驚いた。
比良は、今年が初めて同じクラス。中一からずっと学級委員をしていたので、何となく存在は知っていた。人の空気を読むのが上手くて、話しやすかった。三年生になってから、すぐに打ち解けた。
佳代と渡辺は、小学校は六年間全て同じだった。中学は、今年初めてだが、女子の中では一番仲が良かった為、佳代の性格が目立たなければ、この二人は特に問題ない。
この居心地の悪いメンバーで、最高の最後の文化祭を目指すことになる。

放課後。
準備は、とてもスムーズに進んでいる。
ふと外を見ると、数十人の生徒が野球やサッカーをしており、端のほうでは、何人かがランニングをしている。文化祭実行委員と作業を手伝う人は、部活を休んで良いことになっている。
だが、サッカー部の比良と哲也、バスケ部の田所と木本と結子、バレー部の渡辺は、その日の仕事を終えると、部活ができる、ぎりぎりの時間まで練習をしていた。
俺は勘違いをしていたのかもしれない。
何も最後なのは、文化祭などの学校行事だけではない。部活だってそうだ。パソコン部の俺には分からないが、大事なことの一つだろう。
やる気がないと思っていた奴だって、文化祭ではなく、部活や他の何かに全力を注いでいるのかもしれない。
文化祭に全力を出せ、田所たちみたいに両立しろと思うのは、ただの自分勝手か。
それと、真が手伝いに来たのは、厳しい監督がいる野球部を、休めるからだったことにも気付いた。

「優汰、そのマジックとって。」
莉沙が俺の後ろに置いてある、マジックを指さした。
「ほら。」
莉沙にマジックを投げる。
「ありがと。」
何日か一緒に仕事をしたためか、段々とこの九人と打ち解けて来た。
ほとんど話したことが無いのに、最初から馴れ馴れしかったのは気になったが、嫌いだった莉沙とも話すようになった。
哲也や大地、真とも打ち解け、一緒に帰るようになった。哲也には、まだ違和感が残るし大地は、俺に怯えてるように見えるし、真は、あまり話しに入ろうとはしないが、皆、帰りは昇降口で待っててくれる。それに真が、愚痴を言う回数が半分に減った。
結子とも話すが、佳代や渡辺がいないと話さない。まともに話すのは気が退ける。でも、十分幸せ。
ちゃんと話したことが無いのは、田所だけ。性格が暗いわけではないが、一つのことに集中すると周りが見えないらしい。
「あのさ、田所って趣味とか何。」
話したことが無いのが、逆に気まずくなって、文化祭の作業中に唐突な質問をした。
「・・・。」
返事がない。
「田所、聞いてる。」
「・・・。」
「田所。」
少し声を大きくした。
「えっ、なに。」
田所が驚いた顔をしてこっちを向いた。
「あ、いや、何でもない。」
聞き返されたら、聞きづらくなった。田所と打ち解けるには、もう少し時間が必要らしい。
文化祭まで、まだまだ時間はある。