その時は7
「九十二位。」
渋々。
「私たちより悪いじゃん。」
「そこまで悪いと思わなかった。」
佳代と莉沙以外は、それほど興味がなさそう。
「じゃあこれで終わり。早く仕事するぞ。」
比良は大分落ち着いたようだ。
「三組進んでる。」
一組で、文化祭の作業をしてるはずの良樹が、三組に来た。
「あっ、良樹君。てか久しぶりだね。」
佳代が、良樹と話し出した。
小学生のときは、俺、優汰、佳代、渡辺の四人で良く遊んでいた。
「良樹君も発表しなよ。」
佳代が提案した。
「えっ、何を。」
「皆で、先月の成績発表してたの。だから、優汰君も強制。」
「あぁそうなの、俺は二十七位だよ。」
すんなり答えた。
「へぇ、成績いいんだな。というか、成績優秀な人多いな。」
哲也が椅子から立ち上がり、窓に向かった。
「うん、優汰は凄すぎるけど。」
ほっとくと、余計なことを言いそうだ。
「そろそろ真面目にしないと、放課後終わっから。」
「えっ、優汰って成績悪いよね。」
莉沙に俺の声は届かなかった。
「いや、一位でしょ。悪いとか良いとか超えてるよ。」
教室が静まり返った。最初に声を発したのは結子。
「優汰くん一位なの。嘘つかなくても良いのに。」
妙に顔が近い。
「嫌、ま、真みたいになるのが面倒臭かったから。」
面倒臭いというのは、事実。真も多分、俺と同じ理由で言いたく無かったんだろう。その真は今、机に寝ている。哲也と真がこの話を聞いてなかっことが、幸いだ。
「一位ってすげぇなぁ。」
この雰囲気を嫌がってた比良も、話に参加してきた。
「家で勉強してるの。」
田所まで、俺に質問してきた。ただ、距離を縮めるチャンスかもしれない。
「まぁ一応。えと、田所は勉強しないの。」
「私は、テスト前とかしかしないよ。」
「じゃあさ、」
「一日どれくらいしてんの。」
莉沙が話しに割り込んできた。
「あ、一時間ぐらい。」
田所と距離を縮められたかもしれないのに。文化祭までの何十日間この九人と過ごすのだから、どうせなら仲良くしたい。だが、田所の距離は縮まらず、自分から莉沙を遠ざけようとしている。やはり、莉沙は好きになれない。
終了の時刻。俺が予想したより、成績については聞かれなかった。あれからすぐに話題が変わり、好きなテレビ番組、好きな音楽など、他愛のない話しをした。良樹は一組の作業が終わったといって、こっちの作業を手伝ってくれた。
「今日は先行ってていいから。」
「何で、先生に終わったこと報告するだけだろ。」
哲也がカバンを閉めた。
「いや、実行委員で軽く話し合いすっから。」
「ふーん。じゃあ、真と大地にも言っとくから。」
真と大地は、昇降口で待っている。
「あぁ、頼んだ。」
階段をかけ降りていった。
俺はゆっくりと、教室の電気を消した。
パチッ
渋々。
「私たちより悪いじゃん。」
「そこまで悪いと思わなかった。」
佳代と莉沙以外は、それほど興味がなさそう。
「じゃあこれで終わり。早く仕事するぞ。」
比良は大分落ち着いたようだ。
「三組進んでる。」
一組で、文化祭の作業をしてるはずの良樹が、三組に来た。
「あっ、良樹君。てか久しぶりだね。」
佳代が、良樹と話し出した。
小学生のときは、俺、優汰、佳代、渡辺の四人で良く遊んでいた。
「良樹君も発表しなよ。」
佳代が提案した。
「えっ、何を。」
「皆で、先月の成績発表してたの。だから、優汰君も強制。」
「あぁそうなの、俺は二十七位だよ。」
すんなり答えた。
「へぇ、成績いいんだな。というか、成績優秀な人多いな。」
哲也が椅子から立ち上がり、窓に向かった。
「うん、優汰は凄すぎるけど。」
ほっとくと、余計なことを言いそうだ。
「そろそろ真面目にしないと、放課後終わっから。」
「えっ、優汰って成績悪いよね。」
莉沙に俺の声は届かなかった。
「いや、一位でしょ。悪いとか良いとか超えてるよ。」
教室が静まり返った。最初に声を発したのは結子。
「優汰くん一位なの。嘘つかなくても良いのに。」
妙に顔が近い。
「嫌、ま、真みたいになるのが面倒臭かったから。」
面倒臭いというのは、事実。真も多分、俺と同じ理由で言いたく無かったんだろう。その真は今、机に寝ている。哲也と真がこの話を聞いてなかっことが、幸いだ。
「一位ってすげぇなぁ。」
この雰囲気を嫌がってた比良も、話に参加してきた。
「家で勉強してるの。」
田所まで、俺に質問してきた。ただ、距離を縮めるチャンスかもしれない。
「まぁ一応。えと、田所は勉強しないの。」
「私は、テスト前とかしかしないよ。」
「じゃあさ、」
「一日どれくらいしてんの。」
莉沙が話しに割り込んできた。
「あ、一時間ぐらい。」
田所と距離を縮められたかもしれないのに。文化祭までの何十日間この九人と過ごすのだから、どうせなら仲良くしたい。だが、田所の距離は縮まらず、自分から莉沙を遠ざけようとしている。やはり、莉沙は好きになれない。
終了の時刻。俺が予想したより、成績については聞かれなかった。あれからすぐに話題が変わり、好きなテレビ番組、好きな音楽など、他愛のない話しをした。良樹は一組の作業が終わったといって、こっちの作業を手伝ってくれた。
「今日は先行ってていいから。」
「何で、先生に終わったこと報告するだけだろ。」
哲也がカバンを閉めた。
「いや、実行委員で軽く話し合いすっから。」
「ふーん。じゃあ、真と大地にも言っとくから。」
真と大地は、昇降口で待っている。
「あぁ、頼んだ。」
階段をかけ降りていった。
俺はゆっくりと、教室の電気を消した。
パチッ
しょうねんき
「健人(けんと)、遊び行くぞ」
充(みつる)がプラスチックのバットを右肩に背負うように乗せ、左手にはプラスチックのボールを持って、健人の家に来た。
「ちょっと待ってろ。」
ランドセルの中から一つ、グローブを取り出す。ランドセルの中は空っぽ。
「行ってきます。」
地面は土。あるのは、サッカーゴールと野球のベース。人は誰もいない。
「行くぞっ。」
充が大きく振りかぶった。
健人がバットをかまえる。
左手から投げたボールは、真っ直ぐ飛んでいく。
健人はそれに合わせてバットを振る。
一直線に飛んだと思ったボールは、いきなり健人の胸元に方向を変えた。早めに振ってしまったバットは、方向を変えさせてはくれない。空振り。
充はカーブやフォークなど、ほとんどの変化球は投げられないのに何故か、カットボールだけは投げることが出来た。これがかなり手強い。胸元へ曲がったボールは、その勢いのまま、地面に落ちた。ころころと転がり、フェンスを支えているコンクリートに場所を置いた。健人はそれを拾い、充の元へ投げた。
二人だけの野球は、かなり辛い。ボールを見送るか、バットが空をきるなどして、バッターの後ろにボールが行けば、それをバッターが取りに行く。バットがボールに当たれば、ほとんどファールかヒットになる。アウトになることは、まずない。そのファールやヒットになったボールを、ピッチャーが取りに行く。
まぁまぁの当たりさえすれば、ランニングホームランは難しく無い。
七回の表。17対11。1アウト。1ストライク。
2アウト交代にしているものの、いつもは途中で飽きて、三回で終わることが多かった。だが、今日は飽きが来ない。三回の接戦が効いたのだろうか。五時でも明るい、この季節のおかげでもある。
充には、癖がある。二回連続でカットボールは投げない。つまり、カットボールをした次のボールは、必ずストレート。それを狙って打つ。ほとんどのヒットが、それに当たる。二球目、カットボール。
三球目、やはりストレート。健人はこれを待っていた。一直線に飛んだボールが、胸元へ曲がることは無かった。自信満々に振り抜いたバットに、ボールが正々堂々と勝負を挑んでくる。ボールが理屈に敵うわけはない。ボールは、充の頭上を悲し気に越えていった。サッカーゴールのネットに場所を置いた頃には、ひし形の三つ目の角を踏もうとしていた。ボールを拾った充が、だらだらと歩いてこっちに戻って来る。顔がはっきり見える位置に来たときには、四つ目の角をとうに踏みつけていた。
「もう終了。帰る。」
バットを右肩に背負うように乗せ、左手にボールを持ち、グローブを健人に向かって蹴りあげた。
「まだ裏残ってるよ。」
「うっせぇ、ギブだギブ。」
「これで七十三勝五引き分け、三十六敗ね。」
「いっつも何だそのノート。性格わりぃな。」
「このノートを、将来思い出話するときにお前に見せんだ。」
「はぁ、ほんと性格わりぃな。」
充は、自分の野球の癖に気付いた。でも、そんなことはどうでも良かった。少しの悔しさが沸いたが、すぐに冷めた。あの頃を懐かしむ時間は無いし、必要も無い。
充と野球をしなくなってから、何年経ったのだろう。何故しなくなったかも覚えていない。思い出そうとして、我に帰る。今はそんなことをしている時じゃない。一切の懐かしさを消そうとするが、心に違和感が残る。だがそれすらも消し去ろうとする。
何十枚もの資料を脇に抱え、革靴を鳴らす。ピシッとしたスーツと背筋に、だらしなさは微塵も見えない。
しょうねんきは、とっくにおわっている。
充(みつる)がプラスチックのバットを右肩に背負うように乗せ、左手にはプラスチックのボールを持って、健人の家に来た。
「ちょっと待ってろ。」
ランドセルの中から一つ、グローブを取り出す。ランドセルの中は空っぽ。
「行ってきます。」
地面は土。あるのは、サッカーゴールと野球のベース。人は誰もいない。
「行くぞっ。」
充が大きく振りかぶった。
健人がバットをかまえる。
左手から投げたボールは、真っ直ぐ飛んでいく。
健人はそれに合わせてバットを振る。
一直線に飛んだと思ったボールは、いきなり健人の胸元に方向を変えた。早めに振ってしまったバットは、方向を変えさせてはくれない。空振り。
充はカーブやフォークなど、ほとんどの変化球は投げられないのに何故か、カットボールだけは投げることが出来た。これがかなり手強い。胸元へ曲がったボールは、その勢いのまま、地面に落ちた。ころころと転がり、フェンスを支えているコンクリートに場所を置いた。健人はそれを拾い、充の元へ投げた。
二人だけの野球は、かなり辛い。ボールを見送るか、バットが空をきるなどして、バッターの後ろにボールが行けば、それをバッターが取りに行く。バットがボールに当たれば、ほとんどファールかヒットになる。アウトになることは、まずない。そのファールやヒットになったボールを、ピッチャーが取りに行く。
まぁまぁの当たりさえすれば、ランニングホームランは難しく無い。
七回の表。17対11。1アウト。1ストライク。
2アウト交代にしているものの、いつもは途中で飽きて、三回で終わることが多かった。だが、今日は飽きが来ない。三回の接戦が効いたのだろうか。五時でも明るい、この季節のおかげでもある。
充には、癖がある。二回連続でカットボールは投げない。つまり、カットボールをした次のボールは、必ずストレート。それを狙って打つ。ほとんどのヒットが、それに当たる。二球目、カットボール。
三球目、やはりストレート。健人はこれを待っていた。一直線に飛んだボールが、胸元へ曲がることは無かった。自信満々に振り抜いたバットに、ボールが正々堂々と勝負を挑んでくる。ボールが理屈に敵うわけはない。ボールは、充の頭上を悲し気に越えていった。サッカーゴールのネットに場所を置いた頃には、ひし形の三つ目の角を踏もうとしていた。ボールを拾った充が、だらだらと歩いてこっちに戻って来る。顔がはっきり見える位置に来たときには、四つ目の角をとうに踏みつけていた。
「もう終了。帰る。」
バットを右肩に背負うように乗せ、左手にボールを持ち、グローブを健人に向かって蹴りあげた。
「まだ裏残ってるよ。」
「うっせぇ、ギブだギブ。」
「これで七十三勝五引き分け、三十六敗ね。」
「いっつも何だそのノート。性格わりぃな。」
「このノートを、将来思い出話するときにお前に見せんだ。」
「はぁ、ほんと性格わりぃな。」
充は、自分の野球の癖に気付いた。でも、そんなことはどうでも良かった。少しの悔しさが沸いたが、すぐに冷めた。あの頃を懐かしむ時間は無いし、必要も無い。
充と野球をしなくなってから、何年経ったのだろう。何故しなくなったかも覚えていない。思い出そうとして、我に帰る。今はそんなことをしている時じゃない。一切の懐かしさを消そうとするが、心に違和感が残る。だがそれすらも消し去ろうとする。
何十枚もの資料を脇に抱え、革靴を鳴らす。ピシッとしたスーツと背筋に、だらしなさは微塵も見えない。
しょうねんきは、とっくにおわっている。
その時は6
「なにそれ。」
佳代が教室の入り口に向かって、声を飛ばした。
比良が三枚のすごく大きな紙を抱えて、教室に入って来た。二番目に人数が多い三組は、面倒くさい仕事を頼まれることが多い。
「これに、総陽文化祭って書いて、適当に色塗れだって。」
比良が何個か机を合わせて、その上に紙を置いた。
「大変そうだから、皆で囲んでやろうよ。」
田所が皆の顔を見た。一人足りない。机にうつ伏せになって寝てる、真を見つけた。
「真くん。」
あきれた声。何人かが、真のほうを見た。莉沙は、すぐに真の元へ行き、廊下にまで響くような音で、真の頭を叩いた。
「いってぇ。」
叩かれた箇所を、手で抑える。
「何すんだよ。」
椅子から立ち上がり、机を叩いた。
「早くこっち来て。」
そう言って戻って来ると、真が莉沙の後ろに付いてきた。これほど真を手なずけることが出来るのは、莉沙ぐらいだろう。一年の最初から二人はこんな感じだった。馴れ馴れしい性格のおかげだろうか。
「じゃあ皆でやろう。」
皆が、机の周りにイスを置いて囲んだ。
何故か、すぐ右隣が結子という最高で最悪の配置。
「どうしたの。震えてるけど、大丈夫。」
結子が俺の顔を覗いた。
「だ、大丈夫。」
大丈夫そうにない。
囲んで作業を行ったからか、たくさんの話しをした。いつの間にか、テストの話しになっている。
「やっぱ、結子さんって頭良いの。」
莉沙が馴れ馴れしく質問した。
「いや、別に良くないよ。」
遠慮がちに右手を振る。
「皆ってどのぐらいの成績なの。」
佳代が、莉沙に続いた。そう言えば佳代も莉沙みたいな性格だったな。
「じゃあ皆、先月のテストの成績発表しない。」
莉沙が佳代に乗っかった。
「それいいね。じゃあ誰からにする。」
莉沙と佳代が皆の許可も無しに、話しを進めていく。
「いいから作業やるぞ。」
陽のこざとへんを橙色で塗りながら、キレ気味に言う。
「比良くん、自分の成績悪いからおこるんでしょー。」
佳代が挑発してきた。
「うわっ、卑怯だね。」
佳代に乗っかる、莉沙。
「はぁ、別に言えっし。」
こんな挑発に乗るとは、比良も意外と単純だな。
「じゃあ、何位。」
莉沙と佳代が、ほぼ同時に聞いた。
「ご、五十一位。」
数秒の間が空いた。
「微妙。」
佳代が、多分比良以外、全員が思っていることを口に出した。
全校生徒、三百六十五人。その中で、三年は百二十四人。悪くもなく良くもない成績だし、実際そんなとこだろうとは思ってた。
「他の人も絶対全員言えよ。」
比良がキレて、先が橙色の筆を投げ捨てた。
「じゃあ、最初に木本と清水言えば、そしたらおいも言う。」
哲也も意外と乗り気だ。
「私は、八十七位。」
莉沙はこんなもんか。
「えっ、私も八十七。」
佳代も同じだった。気が合うとはおもっていたが、こんなとこで合うとは思わなかった。
田所、二十一位。
桐島、十八位。
哲也、五十五位。
美紀、三十五位。
結子、八位。
皆ほぼ、俺の予想通り。
でも、一人だけ予想と全く違う奴がいた。
「真、お前は。」
珍しく愚痴も言わず、文という字を青色に塗ってる真がいた。
「俺は別にいいよ。」
「いいから言いなよ。成績悪いことぐらい分かるから、何とも思わないよ。」
莉沙が、化を青色で塗っている。
「十一位。」
「百十一位なんだ。最下位だと思った。」
莉沙が化を塗り終えようとしている。
「何か予想した通りで、以外な成績の人いないね。」
ぼそりと渡辺が言った。
「だね。」
笑顔の結子。
「十一位って言ってるだろ。」
何故かもう一度言う真。
「何言ってんの。聞こえてるよ。」
莉沙が化を塗り終えた。
「あの、百十一位じゃなくて、十一位ってことだと思うけど。」
大地が祭を、青色に染めた。
「えっ。」
意外にも、一番驚いたのは哲也。
「うそ、マジで。」
「あぁ。」
「本当に。」
「うん。」
莉沙が机にうなだれる。
莉沙よりショックを受けたのは、真より下だと思わなかった、比良と田所と大地。
「本当か。」
「うんって言ってるだろ。」
怒る真
「何でそんな頭良いの。」
すぐに立ち直った莉沙。
「知らねぇ。」
文を全て青色に塗り終えた。
「授業中真面目だからじゃない。」
そう言えば、真が授業中にうるさくしたり、寝てたりしたところを見たことがない。田所は良くみてるな。
「へぇー、びっくり。じゃあ、最後優汰だね。」
真で驚いたまま、終われば良かったのに。また、莉沙を嫌いになりそうだ。
「嫌、いいよ。」
「いいからいいから。」
総を、俺と結子が橙色に塗り終えた。
「お前、絶対言えよ。」
比良と哲也が、陽を塗り終えた。
全ての文字が色に染まり、注目は、俺という一点に染まる。もう、逃れられそうに無い。
佳代が教室の入り口に向かって、声を飛ばした。
比良が三枚のすごく大きな紙を抱えて、教室に入って来た。二番目に人数が多い三組は、面倒くさい仕事を頼まれることが多い。
「これに、総陽文化祭って書いて、適当に色塗れだって。」
比良が何個か机を合わせて、その上に紙を置いた。
「大変そうだから、皆で囲んでやろうよ。」
田所が皆の顔を見た。一人足りない。机にうつ伏せになって寝てる、真を見つけた。
「真くん。」
あきれた声。何人かが、真のほうを見た。莉沙は、すぐに真の元へ行き、廊下にまで響くような音で、真の頭を叩いた。
「いってぇ。」
叩かれた箇所を、手で抑える。
「何すんだよ。」
椅子から立ち上がり、机を叩いた。
「早くこっち来て。」
そう言って戻って来ると、真が莉沙の後ろに付いてきた。これほど真を手なずけることが出来るのは、莉沙ぐらいだろう。一年の最初から二人はこんな感じだった。馴れ馴れしい性格のおかげだろうか。
「じゃあ皆でやろう。」
皆が、机の周りにイスを置いて囲んだ。
何故か、すぐ右隣が結子という最高で最悪の配置。
「どうしたの。震えてるけど、大丈夫。」
結子が俺の顔を覗いた。
「だ、大丈夫。」
大丈夫そうにない。
囲んで作業を行ったからか、たくさんの話しをした。いつの間にか、テストの話しになっている。
「やっぱ、結子さんって頭良いの。」
莉沙が馴れ馴れしく質問した。
「いや、別に良くないよ。」
遠慮がちに右手を振る。
「皆ってどのぐらいの成績なの。」
佳代が、莉沙に続いた。そう言えば佳代も莉沙みたいな性格だったな。
「じゃあ皆、先月のテストの成績発表しない。」
莉沙が佳代に乗っかった。
「それいいね。じゃあ誰からにする。」
莉沙と佳代が皆の許可も無しに、話しを進めていく。
「いいから作業やるぞ。」
陽のこざとへんを橙色で塗りながら、キレ気味に言う。
「比良くん、自分の成績悪いからおこるんでしょー。」
佳代が挑発してきた。
「うわっ、卑怯だね。」
佳代に乗っかる、莉沙。
「はぁ、別に言えっし。」
こんな挑発に乗るとは、比良も意外と単純だな。
「じゃあ、何位。」
莉沙と佳代が、ほぼ同時に聞いた。
「ご、五十一位。」
数秒の間が空いた。
「微妙。」
佳代が、多分比良以外、全員が思っていることを口に出した。
全校生徒、三百六十五人。その中で、三年は百二十四人。悪くもなく良くもない成績だし、実際そんなとこだろうとは思ってた。
「他の人も絶対全員言えよ。」
比良がキレて、先が橙色の筆を投げ捨てた。
「じゃあ、最初に木本と清水言えば、そしたらおいも言う。」
哲也も意外と乗り気だ。
「私は、八十七位。」
莉沙はこんなもんか。
「えっ、私も八十七。」
佳代も同じだった。気が合うとはおもっていたが、こんなとこで合うとは思わなかった。
田所、二十一位。
桐島、十八位。
哲也、五十五位。
美紀、三十五位。
結子、八位。
皆ほぼ、俺の予想通り。
でも、一人だけ予想と全く違う奴がいた。
「真、お前は。」
珍しく愚痴も言わず、文という字を青色に塗ってる真がいた。
「俺は別にいいよ。」
「いいから言いなよ。成績悪いことぐらい分かるから、何とも思わないよ。」
莉沙が、化を青色で塗っている。
「十一位。」
「百十一位なんだ。最下位だと思った。」
莉沙が化を塗り終えようとしている。
「何か予想した通りで、以外な成績の人いないね。」
ぼそりと渡辺が言った。
「だね。」
笑顔の結子。
「十一位って言ってるだろ。」
何故かもう一度言う真。
「何言ってんの。聞こえてるよ。」
莉沙が化を塗り終えた。
「あの、百十一位じゃなくて、十一位ってことだと思うけど。」
大地が祭を、青色に染めた。
「えっ。」
意外にも、一番驚いたのは哲也。
「うそ、マジで。」
「あぁ。」
「本当に。」
「うん。」
莉沙が机にうなだれる。
莉沙よりショックを受けたのは、真より下だと思わなかった、比良と田所と大地。
「本当か。」
「うんって言ってるだろ。」
怒る真
「何でそんな頭良いの。」
すぐに立ち直った莉沙。
「知らねぇ。」
文を全て青色に塗り終えた。
「授業中真面目だからじゃない。」
そう言えば、真が授業中にうるさくしたり、寝てたりしたところを見たことがない。田所は良くみてるな。
「へぇー、びっくり。じゃあ、最後優汰だね。」
真で驚いたまま、終われば良かったのに。また、莉沙を嫌いになりそうだ。
「嫌、いいよ。」
「いいからいいから。」
総を、俺と結子が橙色に塗り終えた。
「お前、絶対言えよ。」
比良と哲也が、陽を塗り終えた。
全ての文字が色に染まり、注目は、俺という一点に染まる。もう、逃れられそうに無い。