すみません、今回の話は少し退屈かもしれませんが・・・
技術協力プロジェクトというのもJICAの国際協力の一つのスキームです。略して「技プロ」と呼ばれています。別に特に変わったものでなく単なるプロジェクトと思えばよいのですが、一言でいうと、「一つのチームが形成され、何年かの間に必要に応じて必要なメンバーが必要な期間現地に派遣されてプロジェクトを遂行していく」というものです。それまで行われていた開発調査もほとんど形は同じですが、開発調査は調査が目的なのに対し、技プロは何らかの技術移転をすることが目的です。
前回まで紹介した「世界アンケート」の後、一連の太陽光発電のプロジェクトが「開発調査」で行われました。ほとんどの開発調査では、太陽光発電をパイロットプロジェクトとして試験導入し、その結果から導入計画を立てて先方政府に報告するというような形をとっていました。
しかし太陽光発電の導入計画を立てるには、その国の電化計画や地方電化計画、太陽光発電導入や維持の化計画、他の再生可能エネルギー発電との関係、資金計画の方法など検討項目が多くあります。従ってこれらを総合的に捉え、先方政府とともに計画づくりすることで技術移転を行っていく方がうまく行くと思われます。これはまさに「技プロ」の形であり、太陽光プロジェクトを「技プロ」で行うようになったのだと思います。
実は、世界アンケートの後の開発調査プロジェクトも回数を重ねるにしたがって、その内容は技プロのような総合計画的なものにだんだん変わってきていました。2000年代はこのような変化の時代であったと思います。変化があったのはプロジェクトだけではありませんでした。
東南アジアの国々は経済発展が進み、JICAの支援対象ではなくなってきました。2000年代に入ってからプロジェクトの対象は東南アジアからアフリカへと変わっていきました。
先進国の間でもドイツのFITが始まりPVのマーケットが急激に広がって、日本のメーカーはますます途上国プロジェクトに関心を示さなくなってきました。
一方、途上国太陽光発電プロジェクトとしてよく用いられたソーラーホームシステムは、なかなか維持が難しいということが分かってきて、だんだん下火になってきます。
JICAも太陽光発電プロジェクトの難しさを認識してきたのか、前述のような総合計画的な技術協力プロジェクトに変えてきたり、太陽光発電の技術教育や制度整備のプロジェクトなど新しいことを取り入れようとしたりしていました。
変わったところでは「環境プロジェクト無償」という系統連系型のプロジェクトも行われ始めました。私も「コミュニティソーラー」などという少し変わったものを提案してみたりしていました。これらについては別途紹介しようと思っています。
いずれにせよ、その後の太陽光発電の国際協力は、なかなかプロジェクトの形が決まらないまま今を迎えているのではないかと思います。今では太陽光発電のプロジェクトがずいぶん減ってしまいました。
ODA自体も難しくなっているのではないかと思います。中国などは自国の利益をむき出しにしたODAを掲げて途上国に進出してきています。日本ももう少しそういう面を強くしても良いように思えます。
安倍政権は国際協力強化のために軍事協力をODAに取り込む方針のようですが、そこまでいかなくても自国の会社の進出を助けるのにいろいろやることがあるのではと思います(もっともそうなるとJETROとどう違うのかという問題もありますが)。太陽光発電国際協力プロジェクトも自国利益を考えると新しい取り組み方法があるのかもしれません。