2016年4月下旬に膵頭十二指腸切除術をうけ、やっと術後5年の節目を迎えました。

先月、術後経過観察のための定期検診(3ヶ月毎)の最後のCT・血液検査を受けてきました。

その結果、再発転移の兆候無し、との診断結果が出ました。

主治医からは、ここでの診察は終わりにしましょう、次回、紹介状を書きますから、服用している薬は「かかりつけ医」から出してもらってください、異常が出た場合は来院ください、との話がありました。

 

これを機会に、術後の経過をまとめてみました。

手術直前の外科医説明

膵頭部腺がん、腫瘍サイズは2cm弱、ステージは上腸間膜静脈に腫瘍が接しているようなので浸潤があればステージⅣaなければⅠ。

手術名は亜全胃膵頭十二指腸切除術、静脈に浸潤の場合は静脈合併切除をする。

         

手術終了直後の執刀医説明

患部はきれいに切除できました(切除断端陰性)。静脈は合併切除をしました。

 

術後病理検査の結果

術後の病理検査で、初めて腫瘍がIPMN由来の癌であることを知りました。

肉眼所見=十二指腸側への癌浸潤無し、胆のう異常なし。

組織所見=浸潤性の膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC),腫瘍サイズ=1.9×1.8×1.7cm

静脈侵襲あり、リンパ節転移1箇所(17a=病巣に最も近いリンパ節)、癌の悪性度は高い。

ステージⅣa

 

術後補助化学療法

リンパ節転移、門脈浸潤が確認されたので、半年間を目処に抗癌剤(TS-1)を服用した。

TS-1(OD錠25mg×2)を朝夕2回、平日服薬、土日休薬の1週間サイクルで実施。

実際の服薬は合計16週間分 (途中副作用で下痢の期間があり休薬6週間)、TS-1服用による体重減は約6kgでした。

 

術後~現在までの体調など

手術跡の痛みは術後3ヶ月位続いていたようですが、その後痛みの訴えはなくなった。抗癌剤終了後からは食欲もあり、体重は術前の9割方に戻り、標準体重+αに落ち着いています。

ただ、後遺症として現在も続いている症状は、食後のゲップ、胃酸の戻り感(特に就寝中)だそうです。食べ過ぎの後がひどいようです。

術後の診察は当初から手術でお世話になった外科の先生に診ていただいた。3ヶ月毎に血液検査(時々エコー検査)、6ヶ月毎にCT検査を受け、その結果を聞くのが主な内容でした。腫瘍マーカーを含む血液検査値は術前術後を通して全て基準値内,変化も殆ど無しでした。

 

その他

術後の経過観察中に知ったことですが、夫の場合、手術時に膵管空腸吻合部および胆管空腸吻合部にロストステントチューブを計2本留置する方法が行われたそうです。ステント留置の目的は吻合部の狭窄防止や膵液瘻防止等のためで、通常は約1年後位には自然脱落し下から排泄されるそうです。(下図はお借りしました。プラスして胆管ステントも留置

    

  ところがこの2本のステントが長期に脱落せず(エコーやCTの画像に映る)、約4年経ってやっと膵管吻合部と胃吻合部の間のスペース(輸入脚)に脱落したことが判明、そのうち1本が小腸の出口につかえて小腸炎を起こし入院などしました。つかえていた1本も4年半後には体内から排泄されました。

 ステントのお陰かどうか判りませんが、術後の膵液瘻も胆管炎も一度も起こすことなく過ごすことができました。

 

術後服用している薬

     

     ①~④の薬を飲みつづけています。

 服用中の胃酸を抑える薬②について、術後1年半の頃、主治医からの提案で服用を止めたところ、その1週間後位から鳩尾の下辺りが痛くなりだし、予約外受診、胃カメラ検査で胃と空腸との吻合部に潰瘍がビッシリできてしまったことが判明、タケキャブ服用で全快した。それ以降、この薬は飲み忘れ厳禁の薬として注意しています。

 ①について、術後ずっとリバクレオンカプセル錠を飲んでいましたが、主治医から、病院を変えるに際して現在の服用量位なら止めても変わりませんよと言われ、私から栄養吸収が不安なので続けたいと申し出たところ、では、よりポピュラーな薬ということでベリチーム顆粒を処方され飲み始めました。ところが、顆粒なので飲みにくくむせることもあり、薬価は前者32.4円、後者10.9円と安価ですが、服用を続けるか、リバクレオンに戻すか思案中です。

 

 以上長くなりましたが 術後5年間の経過をまとめてみました。

 IPMNに併存する膵がんについて調べていたところ、今回紹介する資料を見つけた。

 

この資料は、国内の医学系8研究施設共同による研究成果で、「IPMNから膵がんが発生する仕組み」の解明に関するものです(=米国の科学雑誌の掲載に先立ち、国内に2018.11.15付でプレスリリースされたもの)

 

資料:https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/docs/181115-1.pdf

遺伝子変異解析により新たな膵がんの発生経路を発見

-膵がんのリスク評価や治療法開発に期待-

 

研究の全体像を示すイメージ図が載っているので、それを参照すると、研究成果の概略が理解できると思います。概略以下の通り。

 

研究チームの成果: IPMN関連膵がん形成の新規ルートを発見

 (資料中のイメージ図参照のこと)

研究の対象となった試料は30人のIPMN関連膵がんで外科切除を受けた患者の手術材料から168か所の検体を採取、それら検体につき病理学的評価を行い解析した。

その結果、膵臓にできる腫瘍性の嚢胞「IPMN」患者にみられる膵癌の形成において、良性と悪性の中間的な状態を示す前駆病変が多彩な性質や特徴をもつ病変へと枝分かれしながら進化する、新しい発がん経路を発見した。

 

 従来、IPMNを背景とする膵がんはIPMNが直接がん化するIPMN由来がんと、IPMNとは別の場所の病変ががん化する併存がんという2種類に分けられていた。

今回研究チームはIPMNと同一起源の前駆病変が「枝分かれ」して、独立した病変を形成する新しい発がん経路(Branch-off)を発見した。

これにより、これまで臨床的に知られていたIPMNに隣接する併存膵がんの成り立ちが説明できるようになった。

そしてBranch-off経路で形成された膵がんでは無病生存期間が長く、再発までに要する時間が有意に延長していることがわかった。

    以上、ご紹介まで。

 IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)は、将来がん化する可能性もある膵臓の腫瘍、

通常の膵臓がんを併存しやすいという特徴も持つため、

良性のIPMNがみつかった場合は、定期的に経過観察を行い

異変がないか確認することが重要、と言われています。

 

医療現場におけるIPMN の治療,経過観察の方針はIPMN国際診療ガイドライン」に沿って行われているそうです。

初版のガイドラインは2006年刊行、その後、2012年に改訂され、以前は切除適応とされたIPMNでも,治療方針をより保存的な方向に転換することとなったそうです。最新の改定は2017年に行われ、主に分枝型IPMNの切除基準と経過観察法が修正されたそうです。

情報源は下記URL、一部転載しました。

 

https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=11366

[特集:膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の診断と経過観察法]

日本医事新報社 20181229日発行)

経過観察の対象となる膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)とは

膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasmIPMN)の治療,経過観察の方針決定に関して,2017年に「IPMN国際診療ガイドライン」(以下,GL)が改訂された1。悪性度を評価する際に考慮するhigh-risk stigmataHRS=ハイリスクの兆候)とworrisome featuresWF=悪性の疑いを示す所見)の内容が見直された。HRSは,「造影される結節」が「造影される5mm以上の壁在結節」に変更された。またWFは,「造影されない結節」が「造影される5mm未満の壁在結節」に変更されるとともに,「血清CA19-9の高値」および「2年間で5mm以上の囊胞径の増大」が付加された。これにより,経過観察とすべき病態もIPMNの形状に応じて細かく設定されている(図1)。

1 主膵管型IPMN

悪性の頻度が高い(36100%)とされ,原則手術が考慮される。主膵管径が59mmで,ほかの悪性予測因子を持たない場合は慎重な経過観察を許容されるが,観察の間隔を頻回とすることで,外科的治療の時期を逸することがないよう注意する。

2 分枝型IPMN

悪性の頻度が比較的低率(6.346.5%)とされ2017年のGL改訂では切除適応の基準がさらに厳格となり,経過観察が選択されることが多くなっている。拡張分枝径が小型の場合は,観察期間を1年以上とすることも許容されているが,国内では通常型膵癌の併存を考慮し,6カ月に1度の経過観察を行う施設も多い

 

                                            以上

 

 

引き続き情報源のURLをクリックしてご覧になればと思いますが、特に大事と思う部分を転載してみました。

(IPMNは「術前は勿論手術後も継続して経過観察が必要」と解説されている。)

 

情報2 https://medicalnote.jp/contents/170724-002-YI 

         (Medical Note 2017/07/24掲載)      

IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)の手術方法

            -適応基準やリスク、術後管理」

 

膵臓にできる腫瘍、IPMNの治療選択肢は経過観察か外科手術です。

現在のところ有効な薬物治療はありません。

 

IPMNの治療選択-経過観察と手術

良性で手術適応とならない場合でも経過観察は継続する

IPMNの多くは発見された時点では良性ですが、症例によっては20年~30年といった長い時を経てがん化することがあります。4050歳で診断され、痛くも痒くもないから放っておいたらかなり進んだがんになっていました」といわれる6070歳代の方に時々お会いします。仮に悪性のIPMNとしても他の膵臓がんに比べてややおとなしい性質を持っているので、進行する前に手術で摘出できれば「膵臓がんのなかで唯一外科手術のみにより治すことが可能ながん」です。

・・・中略・・・

検査を受け続けても、生涯IPMNが悪性化することなく天寿を全うされる方もいれば、発見後5年や10年といった年月が経ち、定期的な受診をやめてしまわれた後、悪性化して亡くなってしまう患者さんもおられます。後者のようなケースを減らすためにも、どうか定期検査にかかる手間を惜しまないでほしいとお伝えしたいです。

 

腹痛や背中の痛みを頻繁に起こすIPMNは手術が必要

ただし、IPMNのうち、急性膵炎を頻繁に起こす場合は、がん化率も高い傾向があり、また、腹痛のため日常生活に支障を来すため、良性のIPMNと判断されても手術の適応としています。

IPMNとは粘り気のある粘液を産生する腫瘍です。この粘液が膵管に詰まることで急性膵炎が引き起こされ、激しい痛みの症状が現れます。

IPMNの診断を受けており、頻繁に腹痛や背中の痛みがあるという場合は早期に主治医に症状を伝えましょう

 

術後の経過観察の目的とは?  IPMNは膵臓の別の部位に起こる可能性がある

膵臓の切除術を行ったとしても、別の部位にIPMN併存がんが生じる可能性はあります。

そのため、IPMNの手術を受けた患者さんは、その後も生涯にわたり経過観察が必要になります

なかには、人生で二度三度膵臓の手術を経験し、最終的に膵臓をすべて摘出する患者さんもいらっしゃいます。

しかし、適切な検査を受け、正しく診断を受け、経過観察を受けることができていれば、仮に再発や通常の膵臓がんを発症しても治療可能な段階で介入することができます。

通常の膵臓がんの多くは発見が難しく、既に手遅れとなってからみつかることも多々あります。

IPMNは、このような死亡率の高い膵臓がんを早期に発見し、治療するためにも極めて重要な疾患といえます。

最後に改めて、医療者の方には適切な検査を行なうことを、患者さんには経過観察を受け続ける重要性をお伝えしたいと思います。          以上

           

 

IPMNが原因で、経過観察中、手術検討中、術後管理中の方々、それぞれにとても参考になる情報として以下2件を見つけました。いずれも現職の肝胆膵外科専門の名医が書かれた情報です。

著者:羽鳥隆先生(国際福祉医療大学三田病院消化器外科教授)

情報源のURLをクリックして全文ご覧になればと思いますが、

主題、副題,内容のさわり部分等転載してみました。

 

情報1 https://medicalnote.jp/contents/170724-001-VQ 

                 (Medical Note2017/7/23掲載、2018/11/09更新)

「膵臓の腫瘍IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)の検査

-併存しやすい膵臓がんの早期発見のために」

 

IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)とは、将来がん化する可能性もある膵臓の腫瘍です。通常の膵臓がんを併存しやすいという特徴も持つため、良性のIPMNがみつかった場合は、定期的に経過観察を行い、異変がないか確認することが重要です。

IPMNを早期に発見・診断するために有効な3つの検査と、通常の人間ドックなどでは発見に至らないケースもある理由について、国際福祉医療大学三田病院消化器外科教授の羽鳥隆先生にお話しいただきました。

 

IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)とは-種類と特徴

がん化する可能性もある膵腫瘍

IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)とは、粘液と呼ばれる液体を産生しながら乳頭状の形の細胞が膵管内に増殖し、徐々に膵管が太くなっていき、将来がん化する可能性もある膵腫瘍です。・・・ 一部省略 ・・・

分枝型のIPMNの多くはおとなしい腫瘍であり、発見されたとしても治療を必要とせず、経過観察となります。しかし、確定診断にはいくつかの条件があることや嚢胞状(袋状)の形態をとることから、単に膵嚢胞として扱われ軽視されやすいという問題を持っています。

 

IPMNは通常の膵臓がんを併存しやすい

がん化してもおとなしいIPMNの持つリスクとは?

 たとえがん化したとしても進行が比較的おとなしいという性質をもつIPMNは、適切な時期に発見することができれば、外科手術のみによって治すことができる唯一の膵がんと表現することができます。

手術のタイミングを逃すと、外科手術と併せて抗癌剤治療などを行なう必要があります。

しかしながら、IPMNはそれ自体にがん化するリスクがあるだけでなく、IPMNではない通常の膵臓がんを併存しやすいという危険性を持っています。

 

IPMNの発見と経過観察が併存がんの根治につながる

 ただし、IPMNの診断を受けており定期的な経過観察を行っている最中に初期の併存がんを発見できた場合は、手術と抗がん剤を組み合わせて治癒することも可能です実際に、この方法により救命できた患者さんもいらっしゃいます。したがって、膵嚢胞と診断された場合、IPMNであることが少なくないとしっかりと認識し、定期的な経過観察を行うことは、極めて重要であるといえます。

 

注)赤字で書かれたところ:我が夫の場合は、IPMNの摘出手術の際に「併存膵がんの前駆病変(=いずれ通常膵がんに変化する病変)」 が偶々近傍に存在していてIPMNと一緒に摘出された、というラッキーな手術をしてもらった(病理組織検査より判明)。

IPMNには通常の膵臓がんが併存しやすい」ということの実証となった。

 

定期的に検診を受けていてもIPMNが発見されない理由とは?

  IPMNの代表的な画像検査は、以下の3種類です。

1.造影CT検査 2.MRI検査(MRCP) 3.EUS(超音波内視鏡検査)

以下検査内容の説明等あり 転載省略

                                以上

  次回、情報2を載せます。