手術から約2ヶ月後の外科受診時に病理組織診断結果の報告を受けました。

PC画面に画像等表示しながら口頭での報告でした。

中間報告で大体の情報は説明されていましたが、

術前に最も心配された門脈への浸潤が組織検査で確定しました。

報告書のサマリー部分のコピーをお願いし持ち帰りました。

 

帰宅後、「病理診断結果報告」と書かれた報告書をじっくり読みました。

 内容の主なものを以下抜粋しました(専門用語等一部平易に)

〇切除検体の断端の迅速診断(手術中実施):断端陰性=がん細胞取り残しなし。

〇肉眼所見 十二指腸粘膜、乳頭に癌浸潤なし、胆のう異常なし。

組織所見 浸潤性の膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC)、病巣最大径=1.9cm

リンパ管侵襲を疑う像あり、静脈侵襲あり、門脈壁にがんの浸潤あり。

神経周囲侵襲は認めない。

リンパ節転移 (資料10-12頁参照)

個陽性=リンパ節17a=病巣に最も近いリンパ節

(切除(郭清)リンパ節数14個 (膵頭部1群リンパ節3個、2群7個、3群4個)

に対して検査)

 

〇病理検査結果 =pT4(PV)N1M0 Stagea

   (膵癌取扱い規約第6版]による表記 資料参照)

  P=病理所見,T4(PV)=癌の浸潤が隣接する大血管(門脈)

    N1=リンパ節転移軽度、M0=遠隔転移なし、

 

        資料[膵癌取扱い規約第6版](案)(日本膵臓学会編)

              http://www.suizou.org/hp-old/stage/stage.pdf

        この資料は病理診断結果を読み解くのに必要な資料でした。 

  

組織所見の詳細をみると、

病変組織はIPMC (=がん化したIPMNであり、さらにその病変近傍には「上皮の腺管過形成PanIN-1Aを示す分枝膵管が散見される」、と書かれていた。(「PanIN-1A」は、浸潤性膵がんの前駆病変とされている。)

いうことは、手術が遅れた場合には、前駆病変が進行して通常の膵がんを発症したことになる。

術前の状態では、血液検査に異常値は全く出ない、内科の検査でもこのような病変はわからなかった。

上記病変は外科手術後の検査ではじめて明らかになった事実 に他ならない。

 

 人間ドックでの最初の膵管拡張指摘から1年毎計3回経過観察検査、油断して2年後検査で腫瘤に成長、内科検査から外科へ。早期手術を強く勧めた外科医には重ね重ね感謝している外科のお医者さんは、手術でいつも患部を直に観察されているので、

内科から提供された患部画像を見ただけで内部の状態、手術の難易度なども判断がつくのだろうと素人なりに思った。

 

IPMNの存在を指摘され、経過観察中の方、外科手術の時期を検討中の方、すでに情報をお持ちかもしれませんが、念のためということで次回以降参考になる医療情報を紹介したいと思います。

「膵臓がんについて」 全て視覚的に理解できるとても参考になるファイルを

ネットで見つけました。

http://www.tochigi-cc.jp/other/data/H23_suigannituite_hishinuma.pdf

栃木県立がんセンター外科 菱沼正一先生(現理事長)による市民公開講座の資料(2011.11.5)

発行がちょっと古い資料なので、統計の数字,手術方式,術後抗癌剤の種類等は当時のもの、医学の進歩で現状と異なる部分あるので要注意。

 

73枚の画像中心の説明図から構成されています。

ページを追っていくだけで以下のようなことがわかります。

膵臓がんはどこにある

膵臓の構造,膵臓の働きは?、

膵がんの症状,膵がんの大きさと初発症状、

がんには3つの特徴がある、

良性腫瘍の発育形態、がんの発育形態、

がんの転移(血行性、リンパ行性、腹膜播種)

膵がんの特徴神経浸潤

膵がんの進行度(ステージ):大きさだけで決まるものではない(20-31)

膵がんに対する手術

放射線治療の適応となる膵がん

術後の補助化学療法      

・・・etc.

 

 退院2回目の外科外来で先生より補助化学療法(抗癌剤治療)について

具体的な説明を受けました。

 

〇抗癌剤としてTS-1を使用(=服用)する。

20166月に論文発表があり、それによるとTS-1は生存期間及び再発率で優位との結果が得られている。

〇服用サイクルは週単位で、平日5日朝夕服用、土日2日休薬。このサイクルを6ヶ月続ける。

先生の説明によると、4週服用2週休薬はかなりの患者さんが副作用で続けられなくなるから当院ではこのサイクルを採用しているとのこと。

 

 夫は術後約2ヶ月頃から服用を開始、6週間は大きな問題無く続けた後、

下痢が続き、中4週間休んで回復、以後体重減はかなりで倦怠感もあったようでしたが大きな問題無しで12週間服用を続け、終了となりました。

 

  医療情報が容易に入手できる時代、ここに書き留めることもないのですが、

検査入院、膵頭部手術,病理検査結果等を通じて自らが重要と思ったことをまとめてみました。 

IPMN膵管内乳頭粘液性腫瘍について

(1) 良性の段階(過形成や腺種)から、悪性の段階(膵がん)まで様々な段階があり、良性から悪性へと徐々に変化していく。特に「主膵管型IPMNは分枝型IPMNと異なりがん化の頻度が高く、注意が必要、特に主膵管の太さが10mm以上は手術が勧められる。

(2) 悪性化していても膵管内にとどまるうちはよいが、ひとたび膵管外に「浸潤」すると、通常の膵がんと同様に悪性度の高い癌となる

膵管内乳頭腫瘍由来の浸潤がんといわれる。

(3) 良性の段階のIPMNを=膵管内乳頭粘液性腺腫(IPMA)

癌化したIPMN=膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC非浸潤性、微少浸潤性、浸潤性にタイプ分けされる。

(4) IPMNの発生は一か所だけでなく、膵臓の複数箇所に発生することがある

(5) 通常の膵臓がん(浸潤性膵管癌)より進行が遅く初期の発見が可能で、

予後がよい。 

(6) IPMNの治療法IPMNの進行を食い止めるような特効薬はなく、

手術が唯一の治療となる。

手術の最も良いタイミングは、ちょうどがんになり始めたとき、

ということになる。

がんになっても膵管の外にしみでるまでに手術すればよいので、多少の時間的余裕がある。

膵臓がん全般

(7) 転移しやすい 

     がんの転移にはリンパ節転移、血行性転移、腹膜転移等がある。

 ☆膵臓がんの多くは「膵管」に発生するが、その膵管はリンパ管や血管

 とつながっているため、

 リンパ節転移 (がん細胞が発生した部位からリンパの流れにのってリンパ節に

 たどりつきそこで増殖する)、

 血行性転移血液の流れにのって、他の臓器へたどり着き、そこで増殖する)

 が起こりやすい。

 膵臓のすぐ裏に大事な血管である門脈(上腸間膜静脈)動脈が通っており、

 その部位近くにがんができると成長につれすぐに血管と接しさらには絡みつく

 ようになる。 

☆膵臓は厚み2cmの薄い臓器のため,がんが増殖すると臓器外へ出て、

腹腔内に癌細胞が散らばりやすいので、腹膜転移 が起こりやすい。

 

  退院後最初の受診時に、摘出した腫瘍はがん化しており(IPMC)、膵管外に浸潤を始めた状態であったことが判ったので、病理診断の最終報告を受けるまで不安な日々を過ごしていた。

 

退院間もなくは、手術跡の痛みや食事後の胃腸の不調など訴えながらの日々でした。

術後1回目(退院3週間後)、初の外科外来に行きました。

術後外来を担当してくださった先生は診察当初からの肝胆膵外科医長先生で、手術をしてくださった先生方の1人です。

当日、病理検査結果の中間報告がありました。摘出物から「がん細胞確認」、腫瘍に一番近いリンパ節に転移あり、ステージⅣaと判定。

 よって、今後抗癌剤治療が必要。TS-1を薦められました。

抗癌剤治療の詳しい説明は1週間後の次回に受けることとなった。

 

そして「腫瘍は粘液産生性のがんでした」とさらっと言われた。

 

実は、消化器内科でEUS-FNAによる検査結果説明の際に、先生が組織画像を見ながら「この腫瘍は通常の浸潤性膵癌ではない」かもしれないです、と呟いていたことが気になっていました(検体採取量が少なくて結論先送り)。

腫瘍がIPMNであったことが外科手術の結果、判明したのでした。

 

私は以前から医療情報には興味があってネット検索もよくするのですが、どういうわけか、今回の夫の病気については、初期は余り心配せず、ネット検索もしなかったのです。病理検査結果が出るまでは。。。

腫瘍マーカーその他血液検査ではがんを疑う値が全く出なかったのです。自覚症状も全くない、だけど2cm弱に成長した腫瘤がある。。。

「癌」だとしてもスゴイ初期、がん治療の第一選択肢は手術、体内から癌細胞を摘出すれば万事OK位に思っていました。

 

術後、癌の種類がIPMN由来のがん、リンパ節転移、門脈浸潤という結果から、かなり早い発見であったにもかかわらず転移の可能性がゼロではない、と知って本格的な情報収集を始めました。