春が開けていく
 

吹くように開けていく
 

何一つ人の手を貸りずに
 

咲いていく
 

桜に気を取られた人たちに
 

踏みつけにされた足許の花にも春
 

どこ吹く風で
 

咲いて


どこででも咲いて
 

散っていく



夏が湧き上がってくる
 

入道雲が沸き立つように
 

同じ夏という季節でも


1つとして同じ雲はない


きつい日差しと競うように

 

むせ返る蝉の声が


あふれるように鳴き続けても


とめどなく暴れる草木の触手は


あらゆるところに忍び込む


油断なくはびこっていく



秋が降りてくる


山の上から舞い降りてくる


同じ秋という季節でも


空にも抜けていく


夏の熱をすっかり忘れたように


まるで身代わりのように


落とした枯れ葉が


風とともに舞い踊る


色付きが冬を呼び込む


そして姿を消していく



冬が忍び寄ってくる


同じ冬という季節でも


地の底からも這い上がり


空雲からも舞い降りてくる


雪は静かに降り続く


ただひたすら音を消して


すべての結晶が示し合わせたように


人に気取られないように


悟られぬように


閉じ込めていく

 

 

 

眼を閉じれば
 

空も飛べる
 

深い海にも潜っていける
 

誰も行けないような山の頂にさえも容易く行ける

 

欲しい物もカードの支払も気にせずに買える
 

食べたいモノも太ることなんか気にしないで食べられる
 

飼いたかった犬とも遊べる


長いお風呂も、アロマも、BGMもいらない
 

逢いたい人にも会える


さよならを言わずに別れた人にもさよならが言える

 

悲しくても笑っていられる
 

寂しくても誰かがいてくれる
 

苦しくても楽しい夢が見られる

 

目を閉じるだけで
 

それだけで幸せになれる
 

そう、今はそう思いたい

 

 

 

(再掲)
 

 

僕には好きな人がいる

 

僕の好きな人を好きな人もいる
 

僕の好きな人を嫌いな人もいる

 

僕には嫌いな人がいる
 

僕の嫌いな人を好きな人もいる
 

僕の嫌いな人を嫌いな人もいる


 

ただ、それが誰だかわからないだけ



私を好きな人がいる
 

私を好きな人を好きな人もいる
 

私を好きな人を嫌いな人もいる


私を嫌いな人がいる
 

私を嫌いな人を好きな人もいる


私を嫌いな人を嫌いな人もいる


ただ、それが誰だか見分けがつかないだけ


 

僕のことを知らない人がいる
 

僕を知らない人を知っている人はいる
 

僕を知らない人を知らない人もいる


私のことを知っている人がいる
 

私を知っている人を知っている人はいる
 

私を知っている人を知らない人もいる


ただ、それが誰だか気がつかないだけ

 

 

 

いってきます
 

ただいま
 

お帰りなさい
 

おやすみなさい
 

おはようございます
 

こんにちは
 

こんばんは
 

じゃあね
 

また今度
 

これは好きだ
 

あれは嫌いだ
 

残念だったね
 

何食べる?
 

いただきます
 

ごちそうさま
 

この前ね
 

ひさしぶり
 

元気だった?
 

元気ないね
 

これ見てよ
 

良かったね
 

聞いたことある?
 

どうしたの?
 

良い色だね
 

どう思う?
 

どっちがいい?
 

おめでとう
 

ごめんなさい
 

ありがとう
 

さようなら


こんな言葉が
 

人生から消えていくことをいう

 

 

 

ふるさとは今頃雪の中だろうか
 

ふるさとの海は今日くらいは穏やかだろうか
 

ふるさとにまだ冷たい風が吹き下ろしているだろうか
 

ふるさとはこの日だけでも昔に戻っているのだろうか
 

ふるさとは今も雑踏の中にいるだろうか


帰る言い訳を見失った者は
 

帰らずに済む理由をさがして
 

また帰りそびれる
 

それでも
 

ふるさとはじっと佇み
 

何も言わず待っている
 

積もる話を抱えて待っている
 

つのる思いで待っている
 

すべてを拭い去っていくように陽は昇る
 

 

 

(再掲/一部修正)

 

 

駅の改札を出て
 

イルミネーションで浮かれた街の装いを横目に
 

背中を丸めて急ぐ足
 

誰が待っているわけでもない家は
 

今日も暗がりの中にたたずんでいるだろう
 

来た道も行く道も冷え切ってはいても
 

他人行儀なイルミネーションが途切れたこのあたりまで来れば
 

街のざわめきも追ってはこなくなる
 

会いたい人も
 

会いたいと思ってくれる人もいない帰り道
 

ビルの間から不意に現れる月だけが
 

凍えた肩をそっと静かに抱きしめてくれる
 

いつまでも見守っていてくれる

 

 

 

 

胸にかかげたものは
 

他人からすれば
 

お笑い草かもしれない
 

生きていることを
 

確かめる術だったのかもしれない


それでも
 

止まらぬ足取りは
 

内にあふれ出す力と信じて
 

少しでも前に
 

少しでも上に
 

そこから頂を捉えて

 

あの日友輩と目指した今日がここに輝いしている
 

いま目の前に輝いている
 

 

 

 

取るに足らない理由をかざし
 

自分たちの正統を声高にふれ回らないと崩れそうな論理
 

他者と比較しないと見えなくなる理論
 

百歩譲って
 

異端の誹りは甘んじるとして
 

ただ
 

果たして自分だけで自分たり得ているのか
 

そのことをわかった上での理屈なのか



自分たちの中に
 

その忌み嫌う異端がないと
 

本当に問うたことがあるのか
 

ただ信じようと
 

自分にしがみついているだけではないのか
 

ないと信じようとして
 

他者を異端と糾弾して
 

誤魔化しているだけではないのか
 

ましてや
 

指弾に夢中で自分が見えているのか
 

本当に
 

本当に己が性根の中に芽がないと言えるのか



まぁどっちでもいい
 

どんな恥辱の言葉で罵倒されようとも
 

俺たちは
 

私たちは
 

変わることはない

 

そんなことで
 

俺たちの
 

私たちの
 

根元は変わらない
 

変えられない

 

俺たちは俺たちだけで自分たり得ている
 

私たちは私たちだけで自身でいられる
 

そんな
 

俺たちを
 

私たちを
 

変えるより
 

お前たちが変わる方が早い気がするが、
 

そんなに自分たちが変わるのか怖いのか
 

この臆病者めが

 

 

 

苦しい思い 砂の山


悲しい気持ち 雪だるま


つのる心は行き止まり


二人の時間は闇の中


二度と戻れぬ闇の中 

 

 

 

(再掲)

 

 

 

梅雨明けの青い空
 

照りつけるグラウンド
 

泥まみれの姿に
 

クラリネットの練習をバックに
 

校庭の木陰でスケッチ
 

夢を追いかければ遠ざかり
 

ひとつ覚えの帰り道



風は秋を連れてきて
 

叶わなかった夢は駆け抜けた後
 

グラウンドにその姿はなくなっても
 

コンクールに向けてのデッサン
 

キャンバスに描くのはあの姿
 

流せるだけの汗
 

誰もが通り抜ける熱い季節
 

明日も晴れるといいね