内なる熱を試すかのように

 

鳩尾(みぞおち)から腹部へはっていく

 

あるものはすっと一気に下腹部まで走り下る

 


奥なる漲(みなぎ)りを惑わすかのように

 

うなじから肩甲骨、そして背筋に沿って

 

まとわりつくように進んでは止まり

 

止まっては臀部の谷間にまで落ちていく

 

 

秘めたる疼(うず)きを誘うかのように

 

いつの間にか脇腹にも自(おの)ずと沸いていでて

 

柔らかな部分を弄(もてあそ)ぶように滴(したた)っていく

 


まるで自由を奪われて

 

巧みな舌遣いに身悶(みもだ)えしているように

 

言い得ぬ恥じらいを煽(あお)っていく

 

煽るだけ煽ったまま消えていく

 

 

 

また1つ星が消えていく

 

きっとどこかで消えている

 

けれど誰も気づきはしない

 

昨日と同じ空だから

 


空に瞬く星たちが

 

雲の波間に

 

人の波間に

 

そっと輝く

 


また1つ星が生まれていく

 

消えた星の分

 

けれども誰も気づきはしない

 

明日も同じ空だろうから

 

 

 

くりかえし

 

くりかえし

 

同じこともくりかえし

 

今度のくりかえしは

 

同じのことのくりかえしでなく

 

何か新しいくりかえしが始められたら

 

それでいい

 

 

 

生きるとは腐敗との闘いである

 

腐敗は生きることに決して媚びない

 

容赦もしない


全身総力を挙げ

 

細胞は死滅と再生を激しく繰り返すことで腐敗に抗い

 

たとえその身が闘いに力を使い果たしても

 

また新生し

 

戦列に加わっていく

 

その繰り返しにも

 

次第にすべて力尽きていく

 

 

腐敗は次への命に繋いでいく

 

命は腐敗に支えられている

 

だが

 

わが身の内なる死闘と

 

頭蓋の内は別とみえ

 

腐敗は命に不可欠であるのに忌み嫌い

 

腐敗から命を得ているというのに遠ざけようとする

 

腐敗を止めることは

 

生きることを止めることと同じであるというのに

 


腐敗することなく

 

焼かれる身の上であるのがわかっているから

 

腐敗を嫌うのか

 

身につまされるから腐敗を避けるのか

 

腐敗を養分に生きているというのに

 

腐敗はあらゆる命を支えているというのに

 

 

 

その一滴から始まった水の流れが

 

 

やがて河となり

 

 

淀みと流れをくり返し

 

 

海に注ぎ込む

 

 

けれど流れは

 

 

そこで終わるのではなく

 

 

そこから再び始まるのである

 

 

 

 

太陽が西の空に傾く頃

 

潮風も止まり

 

空も

 

海も

 

島(やま)も

 

波のひとつまでも

 

赤く色づいていく

 

 

狭い海峡を縫うように行き交う船

 

静かなざわめきにも似た

 

波の音を聞きながら

 

やがて満ちていく夕暮れに身を任せる

 

 

一番星が輝く頃

 

空に浮かぶ雲は

 

まるで紫陽花のように

 

次第に深く彩を移えていく

 

 

風は海へと次第に引きはじめ

 

月の光が青白く海に移し出す頃には

 

すべてを引いていく

 

夕暮れは夜へと誘っていく

 

 

 

 

壊れたモノを拾い集めて

 

つなぎ合わせてみても

 

元には戻らない

 

 

破れたモノを

 

取り繕ってみても

 

昨日のように戻らない

 

 

そんなことより

 

明日の風に吹かれてみよう

 

 

 

 

まるで血液が流れるように

 

河は下り

 

大海をなす

 

海流は混じり合い

 

流れに抗う魚(けもの)は互いに身をよじり

 

せめぎ合う

 

 

 

まるで息づかうように

 

空気は流れ

 

鳥(けもの)は翼を広げ

 

時に胞子を

 

種子を乗せて

 

舞い上がる風は

 

雲を孕み

 

そして雨へと還っていく

 

 

 

まるで鼓動のように

 

マグマは熱く深く流れ

 

プレートの押し引きは

 

地を震わせ

 

火を噴き

 

峰を頂く

 

形造られた山は連なり

 

阻まれた風は吹き下ろす

 

 

 

山を越え

 

谷を渡り

 

河を行き交い

 

海原を漂い

 

深海に潜み

 

地を這い

 

地中に潜り

 

木々を伝い

 

岩を砕き

 

砂を咬み

 

雨露を凌ぎ

 

氷雪をやり過ごし

 

極限の乾きにも耐え

 

その中で

 

雄は雌を求め

 

雌は選び

 

敵と戦い

 

巣を結び

 

食らい寝の日々は止めどない

 

いずれ朽ち果てる身であろうとも

 

休むことはない

 

止むこともない

 

 

 

昇る日はどこかでは日中(ひなか)を差し

 

または沈み

 

沈む太陽はいずこかでは昇っていく

 

月は満ち欠けを繰り返し

 

星は静かに瞬く

 

そうしてこの星は回っている

 

そこにあるべくしてあるわけではなく

 

されど当たり前としているわけでもない

 

ずっと今までそうしてきたように

 

ずっとこれからもそうであるように

 

 

 

けれど

 

人には国境がある

 

自らが課した枷として

 

まるで軛(くびき)のように

 

人には国境がある

 

 

 

 

言いたい言葉

 

 

幾度飲み込んだことか

 

 

幾度他の言葉を選んだことか

 

 

 

 

春は名のみの冷たさに

 

なごりの雪の降り納め

 

見飽きた雪が

 

春の便りにも降りかかる

 

 

 

出会いの頃に散る桜

 

先の涙をかき消して

 

春を起こして咲いてゆく

 

狂うことなく咲いてゆく

 

 

 

散る花を

 

追って咲く花さえも

 

季節のことわりどおりに散っていく

 

風の力を借りてまで

 

惜しむことなく

 

一つ残らず