その一滴から始まった水の流れが

 

 

やがて河となり

 

 

淀みと流れをくり返し

 

 

海に注ぎ込む

 

 

けれど流れは

 

 

そこで終わるのではなく

 

 

そこから再び始まるのである

 

 

 

 

太陽が西の空に傾く頃

 

潮風も止まり

 

空も

 

海も

 

島(やま)も

 

波のひとつまでも

 

赤く色づいていく

 

 

狭い海峡を縫うように行き交う船

 

静かなざわめきにも似た

 

波の音を聞きながら

 

やがて満ちていく夕暮れに身を任せる

 

 

一番星が輝く頃

 

空に浮かぶ雲は

 

まるで紫陽花のように

 

次第に深く彩を移えていく

 

 

風は海へと次第に引きはじめ

 

月の光が青白く海に移し出す頃には

 

すべてを引いていく

 

夕暮れは夜へと誘っていく

 

 

 

 

壊れたモノを拾い集めて

 

つなぎ合わせてみても

 

元には戻らない

 

 

破れたモノを

 

取り繕ってみても

 

昨日のように戻らない

 

 

そんなことより

 

明日の風に吹かれてみよう

 

 

 

 

まるで血液が流れるように

 

河は下り

 

大海をなす

 

海流は混じり合い

 

流れに抗う魚(けもの)は互いに身をよじり

 

せめぎ合う

 

 

 

まるで息づかうように

 

空気は流れ

 

鳥(けもの)は翼を広げ

 

時に胞子を

 

種子を乗せて

 

舞い上がる風は

 

雲を孕み

 

そして雨へと還っていく

 

 

 

まるで鼓動のように

 

マグマは熱く深く流れ

 

プレートの押し引きは

 

地を震わせ

 

火を噴き

 

峰を頂く

 

形造られた山は連なり

 

阻まれた風は吹き下ろす

 

 

 

山を越え

 

谷を渡り

 

河を行き交い

 

海原を漂い

 

深海に潜み

 

地を這い

 

地中に潜り

 

木々を伝い

 

岩を砕き

 

砂を咬み

 

雨露を凌ぎ

 

氷雪をやり過ごし

 

極限の乾きにも耐え

 

その中で

 

雄は雌を求め

 

雌は選び

 

敵と戦い

 

巣を結び

 

食らい寝の日々は止めどない

 

いずれ朽ち果てる身であろうとも

 

休むことはない

 

止むこともない

 

 

 

昇る日はどこかでは日中(ひなか)を差し

 

または沈み

 

沈む太陽はいずこかでは昇っていく

 

月は満ち欠けを繰り返し

 

星は静かに瞬く

 

そうしてこの星は回っている

 

そこにあるべくしてあるわけではなく

 

されど当たり前としているわけでもない

 

ずっと今までそうしてきたように

 

ずっとこれからもそうであるように

 

 

 

けれど

 

人には国境がある

 

自らが課した枷として

 

まるで軛(くびき)のように

 

人には国境がある

 

 

 

 

言いたい言葉

 

 

幾度飲み込んだことか

 

 

幾度他の言葉を選んだことか

 

 

 

 

春は名のみの冷たさに

 

なごりの雪の降り納め

 

見飽きた雪が

 

春の便りにも降りかかる

 

 

 

出会いの頃に散る桜

 

先の涙をかき消して

 

春を起こして咲いてゆく

 

狂うことなく咲いてゆく

 

 

 

散る花を

 

追って咲く花さえも

 

季節のことわりどおりに散っていく

 

風の力を借りてまで

 

惜しむことなく

 

一つ残らず

 

 

 

 

 

 

 

会うは別れのはじめなら

 

 

人はなぜ出会いを求めるのだろう

 

 

会わなければ

 

 

別れの悲しみも知らずにすむというものを

 

 

 

 

 

 

生まれ来て

 

いまだに見つけぬ

 

身の置き所

 

まして

 

身の丈に合うねぐらなど

 

身に付かず

 

 

蜻蛉(かげろう)ごとくの身繕い(みづくろい)

 

人の姿に身をやつし

 

その身ひそめて

 

息苦しさを

 

例える術なく

 

身悶え(みもだえ)し

 

 

身もなくし

 

蓋(ふた)もなくして

 

空蝉に

 

聞く戯れ言(ざれごと)も

 

空耳紛い(まがい)に見失い

 

 

すがる縁(えにし)の見えぬ糸

 

見知った人ないこの世のことと

 

身につまされる肩身の狭さ

 

身の程を知る暇(いとま)さえない身の上か

 

 

現世(うつつよ)は

 

身ぎれいにすることなく死ぬまでの

 

暇つぶしと見切ったれば

 

浮き世の草とて本望だろうか

 

見もせぬ影絵と見限ろうか

 

 

 

 

街全体がその赤で染められていく

 

 

しだいに濃度を上げながら

 

 

足早に行き交う人も

 

 

夜の帳へ引きずり込んで

 

 

また別の1日が始まろうとしている

 

 

 

 

 

道は無数にある

 

広い道

 

狭い道

 

上りの道

 

下りの道

 

まっすぐな道

 

曲がりくねった道

 

滑らかな道

 

険しい道

 

いくつもの道を人は一度は通っていく

 

自分の選んだ道として歩いていく