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砂場

本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

本屋大賞ノミネート作を読む怒涛の日々も終わり、気ままな読書の日々に戻る。決められた本というのは、普段なら絶対に読まない本なので、そこに新たな発見は多いのだけれども、やっぱりちょっと疲れるわけで。好き勝手に選んだ、2月発売の気になる本を「砂場書店」にて更新。

叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)
梓崎 優
東京創元社
売り上げランキング: 592

けれどもすでに来年度の本屋大賞の候補になりえる小説はすでに出版されているので、完全に気を抜くわけにはいかない。現時点で、もっとも書店員(特にミステリー好き)に注目されているのがこの作品。デビュー作にして、各地で絶賛されている模様。やっぱり大型新人とかすごく気になるので絶対に読む!
横道世之介
横道世之介
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吉田 修一
毎日新聞社
売り上げランキング: 4371

田舎からでてきた青年の大学での一年間が描かれる。どこかとぼけた味わいの、真っ直ぐな心を持った愛べきキャラの横道世之介。印象的なエピソードが満載で、そこが読みどころでもあるけれど、何より彼のキャラクター(と、その彼女)がこの物語を魅力的なものにしている。

どこにでもいそうだけれど、どこにもいない。それは、自分自身が今まで会ってきた全ての人に当てはまる。大学時代の友人知人。読みながら、そんな彼らとの何気ない会話をふと思いだす。この小説を好きな人が多いのは、そんな風に自分の過去と重ねながら読んでいるからだろう。

同じ学生生活を過ごした友人たちにとって、その過去は書き換えることなどできない。ときおり挿入される、大学時代に横道世之介に出会った人たちの回想が、この物語に奥行きを与え、全てのエピソードの面白さを倍増させている。気ままな世之介のキャラと、重みのあるエピソードの落差。学生の自由な生活と、社会に出た登場人物たちの厳しい現実の人生。出会いと、別れ。世之介がいることで、全てがかけがえのないものになる。
新参者
新参者
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東野 圭吾
講談社 (2009-09-18)
売り上げランキング: 281


連作短編集。ミステリー色はうすく、人情話的な人間模様を中心に描いている。日本橋に赴任した新参者の加賀が、殺人事件の被害者や容疑者の足取りを追う中で、商店街の人たちに関わる謎を解いていく。それぞれの縺れた糸をほどいたとき見えてくる、人の優しさや温かさが胸を打つ。素直に楽しめる傑作だ。

「このミステリーがすごい」と「週刊文春ミステリーベストテン」で1位を取り、本屋大賞にもノミネートされている。この小説は東野圭吾でもっとも人気のある刑事・加賀恭一郎シリーズで、4月から阿部寛主演でドラマ化も決定している。ここまで確固たる評価を得る小説も珍しい。だがこれが東野圭吾の最高傑作かと言われたら、そうでもないという所が凄い。
1Q84 BOOK 1
1Q84 BOOK 1
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村上 春樹
新潮社
売り上げランキング: 230


1Q84 BOOK 2
1Q84 BOOK 2
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村上 春樹
新潮社
売り上げランキング: 194


女殺し屋の青豆と作家志望の天吾の物語が交互に描かれる。発売時には続編がでると発表されていなかったので、物語が断ち切られたような結末に不満の声があがっていた。確かに謎はいろいろと残っている。もちろん主人公たちも、その謎に関わることの、その不安がこの物語の原動力となる。

だが彼らは謎を解くことではなく、自分の人生と向き合うことを選ぶ。そして、全てを受け入れて歩みだす。そこに将来の不安はあっても、過去に対して思い残すことはない。リトル・ピープルとは何か、空気さなぎとは何か。大切なのか、その答えを見つけるこではなく、別にあるのだと知る。

人が人として生きていく世界。答の見えない世界で人間が生きていくということ。その困難と希望がここにある。そういう意味では「BOOK1」「BOOK2」は「人間の書」と呼べるかも知れない。続編の「BOOK3」、その続編「BOOK4」があるか分からないけど、きっとそこでは「世界」が描かれることになるのだろうと思う。それとも、シンプルに広げた風呂敷を丁寧に畳んでいくのだろうか。

着地点が見えない、そもそも着地するのどうかも分からないまま、読者は「1Q84」の世界に留め置かれる。きっと、この状況に宙吊りにされることが「1Q84」を読むということなのだろう。そんなの嫌だ結末が知りたい、といくら叫んでもどうしようもない。空にはもう月がふたつある。
粘膜人間 (角川ホラー文庫)
飴村 行
角川グループパブリッシング
売り上げランキング: 26271


ミステリーというよりホラー小説なのに第2弾の『粘膜蜥蜴』が2010年版このミス6位にランクイン。確実にファンを増やしている粘膜シリーズ。3人兄弟の上2人が弟を殺してくれと河童に依頼をしにいくという冒頭から始まるこの物語。明らかに読み手を選ぶエログロバイオレンス小説だが、このいびつに歪んだというか、ある意味真っ直ぐに突き抜けたとも言える、残虐な展開&描写は他の小説にはない求心力を持っている。

何も考えずに中二病的なセンスで楽しむこともできるが、著者は残虐シーンを嬉々として書いているだけでなく、意外に(?)構成も巧みなところが玄人筋の評価も高いのだろう。今後とも要注目の作家&シリーズ。