田舎からでてきた青年の大学での一年間が描かれる。どこかとぼけた味わいの、真っ直ぐな心を持った愛べきキャラの横道世之介。印象的なエピソードが満載で、そこが読みどころでもあるけれど、何より彼のキャラクター(と、その彼女)がこの物語を魅力的なものにしている。
どこにでもいそうだけれど、どこにもいない。それは、自分自身が今まで会ってきた全ての人に当てはまる。大学時代の友人知人。読みながら、そんな彼らとの何気ない会話をふと思いだす。この小説を好きな人が多いのは、そんな風に自分の過去と重ねながら読んでいるからだろう。
同じ学生生活を過ごした友人たちにとって、その過去は書き換えることなどできない。ときおり挿入される、大学時代に横道世之介に出会った人たちの回想が、この物語に奥行きを与え、全てのエピソードの面白さを倍増させている。気ままな世之介のキャラと、重みのあるエピソードの落差。学生の自由な生活と、社会に出た登場人物たちの厳しい現実の人生。出会いと、別れ。世之介がいることで、全てがかけがえのないものになる。
