大型新人と呼ばれるだけあって、今後の活躍が期待できる素晴らしいデビュー作だった。
世界各地を飛び回る雑誌ジャーナリストの男性を中心とした連作短編集。サハラ砂漠の商隊からアマゾンの少数民族、貧困国の内戦など、今までの国産ミステリーでは決して取り上げなかった状況で起きる事件の数々。その事件の謎だけでなく、その舞台が抱え込んだ世界観そのものに読み応えがある。ロマンティックな文体が描きだす厳しい世界の現実。これぞ本物のセカイ系ミステリーと呼べるのかも知れない。
過酷な世界の現実を描きながらも、それがステレオタイプなものに留まっているのが少し物足りなく感じたが、それは些細な部分。この短編集の魅力はその叙情的な文体、ナイーブな視線にこそある。そこに何があるかではなく、そこにあるものから何を読みとるのか。その奇抜なトリックで読者を物語の先へと導きながらも、その傷つきやすい優しい視線が、ミステリーという枠を超えた小説の世界へ僕たちを連れて行ってくれる。次作も必ず読む。






