盛り上がった場所も、いよいよ千秋楽。
各段優勝
十両優勝は斉須。あの斉須さん。のちにYOSHIKIを怒らせた世話人の。新入幕では跳ね返されたが、十両では2場所前と同じ11勝。序盤下位相手に3敗したが、中盤以降は筆頭の高望山に敗れたのみ。本割で幕内経験豊富な舛田山との相星対決を制し、高望山を決定戦で下した。翌年には幕内上位から中位で推移するが、全盛期は短かった。
十両以下の各段優勝力士表彰式。スラリとした斉須を先頭に、下の段の優勝者ほど太くなる気がするのは気のせいかもしれないが、なんと彼らはすべて決定戦を制してこの場にいる。
幕下は3戦勝ち抜いた筆頭の若瀬川が制した。決勝の相手は、1回戦で北尾を破った出羽の洲。のちに3度幕下を制すが、6勝1敗での決定戦に通算4回も進出。幕下決定戦通算10勝2敗の怪記録を残している。観衆が多いほど力を発揮するタイプ?
幕内前半戦
幕内緒口は、7−7同士の入替戦。神幸が、十両魄龍をはたき落として勝ち越し。2枚目魄龍無念の負け越し。この前後数年、十両上位に定着して何度も筆頭、2枚目に名を連ねながら、ついに入幕できなかった。幕内力士と4番組まれて五分に取ったこの場所で決めたかった。
左肩から当たった十両の榛名富士は半身で頭をつけるが、攻めを繰り出せないうちに右上手を引き付けた大豊に寄り切られた。
いきなり叩いた青葉山。決まらなかったが、飛騨ノ花が戸惑う隙に右四つ左上手。廻しを引き付けて寄り切った。再出場後4勝3敗と頑張って6勝したが、その後も調子は戻らず秋場所で引退する。
聞き間違い必至の新入幕同士が、千秋楽の顔合わせ。真っ向勝負となったが、右四つ十分の多賀竜が低さ勝ちして玉龍を寄り切って勝ち越し。玉龍は10敗で転落濃厚。
激しく当たった騏乃嵐、得意の左を深々と差すと、右もコジ入れて両差し。がぶって前に出て、右をぐいっと返し、鳳凰を圧倒した。いかにも怪童といった出で立ちの20歳は、2桁勝利なしで十両を2場所通過する幸運の持ち主。この一番で幕内でも連続の8勝、これまた番付運良く名古屋場所で上位挑戦する。この場所で隆の里、さらに秋には北の湖を破る活躍で、三役目前まで迫ったところでの怪我が惜しまれる。近年になって照ノ富士、宇良が序二段から復活したが、三段目まで落ちてから再入幕した初の力士として、もう少し讃えられてもよい。三角形の額といい体躯といい、千代鳳を見たときにイメージが重なったが、若くして金星を取りながら早々に陥落して幕下以下で苦しむところまで重なってしまった。
高見山は大潮の牽制的な突きをものともせずに押出し。二桁に乗せた。
7−7対決。立ち合いで両前ミツに掛かった蔵間。左四つに組み止めて、青葉城を上手投げに下した。とはいえ7枚目で8勝はもの足りないか。
低く鋭い当たりの富士櫻、おっつけから少しいなし、もう一度押してからの叩きで給金のかかる巨砲を下した。同僚高見山に負けじとベテランが二桁。巨砲の拳で土俵を叩いて悔しがる姿は、もはやお約束?
胸で当たり合って、盛んに右前ミツを探る黒瀬川。突き放そうとする魁輝。ついに左差し右前ミツの形を作った黒瀬川が寄り切りの勝ち。
大錦が捕まえようとするのを、喉輪で防いで突っ張った栃剣。さらにハズにあてがって押し出した。27歳の小兵は、入幕2場所目で初めて勝ち越し、9番まで伸ばした。
幕内後半戦
右差して一気に走る佐田の海だが、右入るとしぶとい栃光に残された。それでもさらに引き付けて吊り気味に寄って5勝目を挙げた。2枚目栃光4勝止まり。
天ノ山がよく見て突いて出ると、東洋消極的に引いて大きく下がり、最後の突き落としに天ノ山が踏み出しそうになったが、先に東洋がかかとから踏み出した。両者5勝10敗。
嗣子鵬両差し、外掛けで崩して出るが、土俵際右で首を巻いて捻りながら打っちゃった大寿山に軍配。物言いなし。ようやく5勝目。13敗を喫した嗣子鵬はまた十両から出直し。
さあ、ここで首位の一角朝潮登場、勝てば13勝2敗で決定戦進出。負ければ即V逸。朝潮、出足駆っていきなり左差し成功。右で引っ張り込む癖がある若の富士、小手に振って回り込みたいが、朝潮の直線的な攻めに果たせず。朝潮は左を突きつけて一気の寄り。新鋭を圧倒して自己新の13勝目。3場所ぶりの決定戦進出だ。
先制は栃赤城。突き放していったが、麒麟児の突っ張りに遭い、組んでも突き押しの麒麟児から右四つに。最後は栃赤城の小手投げが決まった。小結麒麟児2勝13敗。
闘竜右を固めて当たったが、左前ミツから左差し、右も浅く覗かせた若島津が、素早く前に出て左膝で切り返し気味に寄り倒した。7勝で三役には残留。
三役揃い踏み。後ろを見ながら丁寧に合わせる出羽の花。
鋭く当たりつつ右前ミツの琴風、左、右と差すと、得意のがぶり寄りで北天佑を圧倒。まわしを取らずともがぶれる琴風強し。
左前ミツ狙いの出羽の花。阻まれると手を引っ込めたが、その拍子に隆の里バッタリ。あっけない相撲だったが、両者11勝4敗と健闘。
結びの一番。朝潮との決定戦をかけて、若ー千代による唯一の楽日相星対決。低く突っ込んだ千代の富士、願ってもない両差し。素早く引き付けて吊り寄り。若乃花首捻りから左巻き替えて右上手も引いたが、出足と引きつけによって浮き上がってしまい、懐の深さも粘り腰も発揮できない。下がりながら吊り身で残そうとしたが、すでに足は俵の外。2敗を守って決定戦に進出したのは、千代の富士だった。
決定戦。これで今場所は全階級で実施されることになるが、史上初のことだった。高砂一門で同学年の両者、前年九州でも同じく横綱と小結として決定戦を戦ったばかり。3場所ぶりの再戦は、右肩で当たった千代の富士。ぶちかました朝潮が二の矢の攻めを繰り出すより早く左に開いて叩き込み。ゴロリと転がった朝潮、何ともあっけない幕切れで雪辱ならず。