未咲「……あなたも運がないね」
恵「……?」
遥斗「 やめろ!」
恵「遥斗……大丈夫。私たちは霊体。なんでもすり抜けるから」
遥斗「そうなの……?」
未咲「……私は普通の人間とは違う」
遥斗「……え?」
恵「……?」
引き金を引いた。
衝撃が体中に響き、
硝煙の臭いが辺りを覆った。
発砲音で家族が起きないか不安になったけど、大丈夫そうだった。
恵「あ……い……痛い!……熱い!」
遥斗「ママっ!なんで撃ったんだよ!?」
未咲「……他人の家族の未来まで背負う気はないよ」
遥斗「ひどい……!」
未咲「ひどい?じゃあ私の家族はどうなるの?」
遥斗「………」
未咲「私だけが交代の儀を止められる……
私の家族は絶対に守る……」
遥斗くんは涙目で私のことを睨んでいた。
その表情からは、強い怒りと悲しみを感じた。
恵「遥斗……大丈夫だよ……
お前(未咲)はただの高1の子どもじゃないのか……。
……もうお前らに情けはかけない。
早く全員死んで私たちと交代すればいい!」
未咲「……交代の儀は一人欠けたらできないんでしょ?いま消してあげようか?」
再び恵さんにピストルを向けようとしたとき、
恵さんは消えてしまった。
遥斗くんも……。
どこ行った……?
私の感情は高ぶっていた。
そのままなんとなく地下に行った。
……霊でも元は人間。
見た目は人間そのもの。
安易に攻撃するのは躊躇われた。
何かいい方法があれば……
地下へ続く階段に鬼面の女はいなかった。
相変わらず異質な寒気がする地下。
前の住人の学さんが、閉じこもっていた部屋に行った。
学さんは前と全く同じ姿勢で座っていた。
学「……何か用か?」
未咲「あなたの奥さんはだいぶ気が強い人だね」
学「……恵が?」
未咲「私たちに早く全員死んでほしいみたい」
学「そうか……こればかりはすまないとしか言えない……」
未咲「……恵さんにも言ったけど、あなた達は運がないね」
学「え?」
未咲「私がこの世界に来なかったら、無事に交代の儀を成功できたんだから」
学「……君に何ができるんだ?ただ私たちが見える霊感があるだけだろう?」
未咲「……さっき恵さんをピストルで撃ったよ」
学「え?!ピストル?!」
未咲「私はあなた達に攻撃ができる。でも、あなた達の攻撃もくらうことができちゃうけどね」
学「そういえばこの前も斧を出したな……君は何者なんだ……」
未咲「……誰かが言ってたけど、
神様に特に愛された者。
闇の王。過去世はヤマタノオロチ。
だけど、今の私は単なる普通の女。
ただ″アマデウスの塔″ってものに登ったら、この世界にいたの」
学「アマデウスの塔……夢の話じゃないのか……?」
未咲「この世界自体が夢のようなもの……。
それでも……この世界の私の家族は、私がずっと憧れていた家族そのものなの」
学「ヤマタノオロチ……一応……後で鬼面の人に相談させてもらうよ……。
君の名前教えてもらっていいか?」
未咲「みさきだよ」
学「未咲さんか……
オレも人生やり直そうと必死で耐えたんだ……
協力してくれなんてもちろん言わない……
だけど……邪魔だけはしないでほしい……
頼む…………」
未咲「フッ……自分が死ぬのを何もせず待っていろっていうの?」
学「……恨むなら……鬼面の女を恨んでくれ……」
未咲「恨む?逆に私が恨まれる立場だと思うけど?」
学「?」
未咲「せっかく家族構成が全く同じの生贄がようやく来たのにね?」
学「え……?」
未咲「その生贄の中に、私みたいな交代を阻止できる人がいるんだもん。運が悪いよね」
私は学さんを覗き込むように言った。
その表情は、怒りを秘めて皮肉めいた笑みをしていたと思う。
未咲「なんか言い返してみな?あなたは一家の大黒柱でしょ?」
学「……鬼面のあの人がいれば大丈夫だ……」
未咲「あんなのに惑わされていたら、あなたの家族に幸せは来ない。
私のお父さんもずっと悪霊に惑わされていたんだから」
学「え……?
……とにかく……あの人がここに来たら相談させてもらうよ」
未咲「そう。あなたはここにずっといるの?」
学「ほぼここだよ……家族に話があれば一階や二階に行く」
未咲「そっか」
自分の部屋へ戻りながら考えた。
鬼面の女に私のことを相談して、何かが変わるのだろうか?
次の日
学さんが鬼面の女から、何を言われたかを聞きに行った。