鬼面の女に殺された未咲は塔の受付に戻され、
人生は生まれる前に、自分で決めた“台本”通りに進むという真実を知らされる。
塔の世界の家族を守るため
再びアマデウスの塔を登った未咲は、
“交代の儀”を止める方法を探し始める。
そして、強引に交代の儀を行う方法を話してくれそうだという直感から、
前の亡くなった住人の娘・真利がいる旧校舎へ向かった。
旧校舎は私が通う高校と隣接している。
家から徒歩20分くらいの所にある。
真利ちゃん……あの子は確か、旧校舎の3階の女子トイレにいたよな……
取り壊しが決定している旧校舎は、廃墟と化していて、心霊スポットのような異様な雰囲気がある。
3階に着き、真利ちゃんがいた女子トイレに向かった。
私の足音だけが廊下に響く。
肝試しをしているみたい。
未咲「ここか……」
3階の女子トイレに入ると
真利ちゃんはいた。
未咲「真利ちゃん……」
真利「……あなたは……この前の……」
未咲「私は未咲って名前だよ。
ここでよく本読んでるの……?」
真利「未咲ちゃん……私は外で遊ぶより本が好きなの……だからここにいても……時間はあっという間に過ぎる……」
未咲「何の本読んでるの?」
真利「″悪霊の記憶がある女″って小説……面白いよ……」
未咲「へぇ……怖そうなの読んでるね……私はあんまり小説は読まないからな……
ねぇ……最近、交代の儀のこと誰かに聞いた?」
真利「……3日前に鬼面の人から聞いたよ。近いうちにやるって」
未咲「交代の儀は、対象の生きてる人が全員死なないとできないでしょ?
でも強引に交代の儀をやるって聞いたけど、それ本当?」
真利「本当だよ……何でそんなこと聞くの?」
ここで素直に阻止するためだから!なんて言ったら話してくれなそうだ。
何て言おう……
私がどう返答するか考えていると
真利「未咲ちゃんが今死ねば、交代の儀に私たちと参加できるんじゃない……?」
未咲「え?無理でしょそんなの……人数も変わるわけだし……」
真利「私が鬼面の人に言っておいてあげるよ……」
未咲「仮にできたとしても、私は赤の他人のあなたの家族になるわけでしょ?それは嫌だよ」
真利「学校卒業したら出ていけばいいんじゃない?」
メチャクチャなことを言ってる。
私は今の家族と過ごしたいのに。
真利「私みたいに……ここを飛び降りれば……一瞬で終わるよ……」
真利「未咲ちゃんは死にたいって思うことないの……?」
未咲「あるよ……だけど私は今の家族と生きたいから」
真利「……未咲ちゃんなら私とも、私の家族とも仲良くできそうだし……楽しいと思うよ……」
未咲「嬉しいこと言ってくれるね。私も真利ちゃんと仲良くしたいと思うよ」
真利「………」
真利ちゃんは照れてるのか、何も言わず下を向いた。
未咲「私と仲良くできるなら、3日前に鬼面の女がなんて言ってたか教えて?」
真利「そんな大したこと言ってないよ……交代の儀はこの旧校舎でやるって……」
未咲「ここで?!」
真利「音楽室に大きな鏡があるの……
その鏡の前に、私たち家族が全員映るようにする」
未咲「それだけ?」
真利「通常ならそれで入れ代われるらしいけど……今回はピアノを誰かが弾かないといけないって」
未咲「ピアノ?誰が弾くの?」
真利「わかんない……私たち家族は鏡の前に立ってなきゃいけない。鬼面の人は立会人の役だって」
未咲「まさか弾くのは悪魔とか……」
真利「知らない……弾く曲はモーツァルトのレクイエムだって。その曲を弾き終わったら交代の儀は完了するって言ってた」
未咲「レクイエム……前にどっかで聴いたことあるな……」
レクイエムを弾くことで、
強引に交代の儀が可能になるのか?
未咲「いつやるの……?」
真利「わかんない。次みんなが集まるのは……またこの旧校舎の音楽室だと思う……多分……そのときに詳しい日時とか決まると思う」
未咲「次の話し合いはいつ……?」
真利「わかんない……急に来るから。いつも私の家族と鬼面の人が一緒に来るよ」
……交代の儀が行われる日時がわかれば、阻止できる。日時を知るにはどうすれば……
未咲「そうだ!じゃあ交代の儀の日時わかったら電話して!?」
私は紙に自分のスマホの番号を書いて、真利ちゃんに渡した。
霊が電話できるのか?と疑問はあった。
でも、怪談で霊から電話がかかってくる話はよくある。わずかな可能性かもしれないけど……。
あとは学校の授業が終わったら必ず旧校舎を見に行くとか……。
休日も旧校舎に行くようにしないと……
未咲「じゃあ電話してね!」
真利「うん……」
不安ながらも旧校舎を出た。
未咲「やれることは何でもやらないと……」
しかしいろんな情報が聞けた。
真利ちゃんは私にだいぶ心を開いてくれてるのかな?
生身の人間で霊と話せる人なんて、滅多にいないからなぁ……寂しかったのかな?
未咲「……」
私たち家族が全員死んだら、交代の儀ができるようになる。
でも 特殊な交代の儀のやり方を行えば、私たちが生きていても交代の儀は成功する……。
成功したら私たち家族は全員死ぬ。
そして、入れ代わりで真利ちゃんの家族が生き返る。
絶対に止めないと……
家に着く頃にはだいぶ日が暮れていた。
そんなに長い時間、旧校舎にいたっけ……?
居間にはお父さんとお母さんがいた。
いつも通り元気だった。大丈夫だと安心した。
こうやって毎日、みんなが無事かどうかを確認している。
2階へ上がり、隆太とお兄ちゃんの様子も見ようと思った。
隆太の部屋をノックした。
すぐに隆太の声が聞こえた。
隆太「だれー?」
未咲「私。ちょっといい?」
隆太「え??」
隆太の部屋に入るとテレビを見ていた。
特に異常はなかった。
未咲「なんでもない。ありがと」
隆太「え?え?」
次にお兄ちゃん(康男)の部屋をノックした。
未咲「……お兄ちゃん?いない?」
しばらくしてお兄ちゃんの声が聞こえた。
康男「なに……?」
とても小さな声だった。
体調でも悪いのか……?
未咲「ごめん、ちょっといい?」
お兄ちゃんの部屋の扉を開けた。
未咲「え……」
お兄ちゃんは電気もつけずに
ボーッと何かを見ていた。
未咲「こんなに暗くして何してんの……?」
康男「え……別に……自分で描いた絵の出来栄えを見てるんだよ」
お兄ちゃんはこの前、私に見せてくれた自作の絵をボーッと見ていた。
その絵は、2階に現れた、前の住人の恵さんの絵だった……。
未咲「何でそんなの見てるの?」
絵は確かにうまいかもしれないけど、その絵はとにかく不気味だった。正直気持ち悪い……。
お兄ちゃんはこの前、交通事故に遭った。
真面目で物静かなお兄ちゃんは、この家の呪いを受けやすいのかもしれない。
部屋の電気をつけて言った。
未咲「……しっかりして!そんな絵を見てたらおかしくなっちゃうよ?!その絵私にちょうだい?」
康男「え……別にいいけど……捨てるの?」
未咲「いいでしょ?」
康男「いい出来だったのにな……」
未咲「それは呪いの絵だから!自分じゃ捨てられないでしょ?!」
私は絵を手に取りお兄ちゃんの部屋を出た。
未咲「勘弁してよ……」