(春日井市議会本会議 末永けい 討論)

末永けい

 第73号議案 高蔵寺まなびと交流センター運動場整備工事の請負契約について,反対討論を行います。
 本議案の運動場整備工事は,市民生活の中で大きな問題となっているグルッポふじとうの利用者用の敷地内駐車場について,現状44台に31台を増設し,75台とする内容が含まれています。結果的に敷地内駐車場が増設されることはよいことではありますが,ここに至る市の意思形成過程が,市民・利用者の意向に正面から向き合ったものではないことなどを理由に反対の立場を取りたいと思います。
 それは,3月議会の私の一般質問に対する次の答弁などに表れています。「今回の整備は,運動場整備に併せて正面駐車場の安全性向上を図ることを目的としたものであり,敷地内駐車場の駐車台数は増加しますが,積み上げによるものではございません」との答弁です。つまり,敷地内駐車場不足という優先課題に対応したものではないということです。
 グルッポふじとうは,廃校になった旧藤山台東小学校施設を活用し,高蔵寺ニュータウンや市の東部地区など,多世代の皆様が交流し,高蔵寺ニュータウン活性化の起爆剤となることが期待され,平成30年4月に開所しました。東部市民センターから移転し,グレードアップした図書館や,児童館,地域包括支援センター,自習室,体育館,カフェなど,公共機能を複合的に有した本市の東部地区の基幹的施設です。
 しかし,そんな期待や役割があるにもかかわらず,敷地内駐車場が不足しており,グルッポが開所して以降,市民や利用者の皆様は,大きなストレスを抱えてきました。グルッポ敷地内に駐車場を増設してほしいという声が,市民の皆様から多数寄せられていることは疑いようのない事実であり,ここにおられる皆様も御承知のことと思います。
 市は,この問題への対処が遅れたため,東部市民センターの図書室を利用されていた方が,グルッポに移転後には足が遠のいてしまっているなど,残念ながら現状グルッポは,広く市民に利用される施設になっているとは言えない状態です。敷地内駐車場不足を理由に行くのをやめたと施設利用から遠ざかっている声があることは非常に残念なことで,施設の趣旨からして,市としても望むところではないはずです。
 グルッポふじとうは,設計段階から敷地内に駐車場が不足することを懸念する声がありました。市は,平成27年の基本設計当時,駐車場の必要台数を100台と想定していたところ,実際には,利用者用の敷地内駐車場は44台しか整備せず,グルッポ開所後,施設から約200メートル離れ,暫定駐車場となっている藤山台調理場跡地を暫定的ではなく,常態的に使用せざるを得ない事態となってしまいました。藤山台調理場跡地は,施設から200メートルも離れており,常態的にグルッポの駐車場として使用するには適していないため,今日に至るまで多くの市民から不満の声が出ているのです。
 問題は,グルッポ利用者にとって不便なだけにとどまりません。駐車場を探し求める自動車がグルッポの周囲をさまよっていたり,路上駐車も発生したりで,周辺住環境の悪化にもつながっています。
 これまでに市に寄せられた市民の声の一部を御紹介します。
 「グルッポに移転してから図書館が通いづらくなった。グルッポのほうは駐車場も目の前に少ないし,少し離れた位置に駐車場があるので雨の日など不便。目の前に駐車場をたくさん整備してほしい。」「図書館が東部市民センターからふじとうに移って利用できなくなりました。借りて返すだけなのに駐車場がいっぱいか遠くしか空いていない。図書館の機能を東部に戻すか,グラウンドを駐車場として開放してください。」「友人が同好会等に通っています。駐車場が少なく困っているとのこと。」「グルッポふじとうの駐車場がいつもいっぱいです。少し離れたところに駐車場がありますが,子ども連れにはきついです。駐車場のせいで支援センターにも行きづらいです。」「足が悪いため,運動場の一部を駐車場にしてほしい。」「本を返却するために訪れたが,全面,北駐車場まで満車であった。返却だけで北部駐車場まで行くのが大変である。」「利用者に比して建物前の駐車場が狭過ぎます。北部駐車場があることは分かっていますが,猛暑や雨の中歩くのが苦痛です。グラウンドの一部を駐車場に開放してください。」「駐車場が狭い。出ようとする車と入ろうとする車が出会ってしまうので,何とかならないか。子連れで第2駐車場へ行くのは少し遠い。」「駐車場が遠いので大変です。子連れで本をたくさん借りて,おじいちゃん,おばあちゃんもきっとそうだろうと思います。暑い夏もとても大変でした。お年寄りや子どものための施設であれば,使用しない運動場を駐車場として開放し,使うときだけにしてください。」「ベビーカーを引くのに遠くてとてもきついです。」「駐車場は遠過ぎます。殊に利用するならやむを得ないけれども,常時となると直ちに改善してほしい。」「毎回車を駐車するためにうろうろしなければならない。駐車場を増やさない,増やせない理由を教えてください。」「駐車場が狭い。駐車正面場は狭く,一時停車して待っている人がいる。北部駐車場があることが分からない。こんな雨の日に北部駐車場は誰も使わない。」「高齢化する中で,車を駐車させるスペース(歩くのを少なくするため)を広く造ってほしいです。」「運動場を駐車場化しないのであれば,駐車場までの歩道に屋根をつけてください。雨,炎天下に本と子どもを連れて歩くのはつらいです。敷地内に職員用があるのもどうかと思います。バスも不便。坂道で自転車も難しい。車しかありません。」「足の悪い両親を抱え,近くの駐車場がいっぱいで,遠くの駐車場をいつも歩いてきております。近くに駐車場の増設をお願いします。」こうした数々の声です。
 こうした状況の中で,200メートル離れた藤山台調理場跡地は,あくまでも暫定駐車場という位置づけであるにもかかわらず,本会議などで市は,敷地内と暫定駐車場を合わせた総数としては確保できているなどと言ってはぐらかしてきました。しかし,実際の市民や利用者,現場のニーズは全く違うものだったのです。遠く離れた場所に駐車を余儀なくされ,お年寄りや子育て世代をはじめ,多くの不満の声,交通弱者やちょっと用を足したいだけの利用者にとって,200メートルの距離はとても不便です。
 しかし,さきの3月議会では,市民の皆様にとって,駐車場が近いほうが便利なのか,遠いほうが便利なのか,市長に対してお尋ねしたところ,市長答弁は,駐車場についてはそれぞれの考えがあるなどと唖然とするものでした。市民や利用者がどれほど困っているのか,現場のニーズを理解しておられるのなら,このような答弁にはならないはずです。トップが現状認識を改めなければ,担当部局も適切な対応が取れないのではないでしょうか。仮に議会において,市としてグルッポ周辺の公共施設を今後どのように利活用していきたいのか,明確な考え方が示されているのならまだしも,一般質問で当局側が説明できる機会を何度も設けさせていただきましたが,残念ながら,グルッポへのアクセスで不便を感じておられる市民や利用者の皆様が理解,納得,安心できるような答弁は得られませんでした。
 本73号議案は,さきに示されている運動場整備案のとおり,広場や遊具ゾーンなどを整備するものと思われますが,残念ながら,整備案は,これまでグルッポを供用してきた中で,市民や利用者の声とはかけ離れたものであり,最優先課題であるグルッポのアクセス性,つまり駐車場不足問題について,優先的に検討されたものではありません。
 整備案を検討するに当たって行われた昨年10月のアンケートにおいて,A,芝の運動場,B,遊具・休憩施設,C,グルッポの散歩道,D,グルッポの大屋根,E,正面駐車場の拡張は,それぞれが単体の設問となっており,行政需要や優先度を聴取できるものではなく,駐車場増設と比較して広場や遊具等の設備が実際にはどれほど求められているものなのかを評価することはできませんでした。また,E,正面駐車場の拡張の項目において,広場,遊具を確保した上で駐車場を拡張と,わざわざ条件が付されており,アンケートで示された整備案自体が,これまでの市民や利用者の声や利用実態が適切に反映されたものではなく,不可解なものだったのです。運動場を活用した整備内容について,駐車場よりも高いニーズのものがあるのであれば,客観的データをお示しいただきたいものです。
 さらに,アンケート実施期間は2週間しかなく,250件の回答しか得ておらず,グルッポの1日当たりの平均利用者数が1,570人であることからすると,サンプル数も不十分です。そして,アンケートにおいて,正面駐車場についてこれほど問題となっていたのにもかかわらず,拡張台数も示されておらず,必要十分な市民意見が聴取されたものとは評価できないアンケートでした。
 広場や遊具ゾーンを整備するということであれば,グルッポ全体で利用者や施設での滞在時間が増加することは想像に難くありません。市も「児童館利用者や図書館利用者が,屋外に滞在することで,これまでより滞在時間は長くなるものと考えております」としております。であるならば,現状,既に敷地内駐車場が不足している利用実態を勘案し,改めて敷地内駐車場が何台あったら適切なのかを積算した上で運動場整備工事を行うべきだと思います。
 しかし,一般質問や先日の委員会においても,そうした積算は行われていないとのことでした。限りある公有財産や税金の有効・効率的な運用を託された執行機関としては,軽薄であると思います。
 駐車場の必要台数など,これまでの利用実態や類似施設などを調べれば導き出せるものであり,運動場整備後において,その積算があるからこそ,後々適切に振り返ることもできるのです。これだけ駐車場不足が利用者にとって負担となっているにもかかわらず,運動場整備を検討するに際し,敷地内駐車場の必要数を改めて積算し直さないことは不自然です。
 今回,結果的には敷地内駐車場は,44台から31台増えて75台になるようですから,敷地内に駐車場台数が増えることについては,市民の皆様の利便性の向上につながります。しかし,自治体の長として,行政需要やその優先度を背景として進めるべきところ,駐車場整備について,合理的に検討を行っているのであれば,議会において明確な答弁が行えたはずであり,利用者ニーズを基に適切に意思形成が図られたものとは評価し難いものがあります。
 当初,必要台数を100台と想定していたのであれば,今回の整備案で敷地内に31台増設し,75台になるとしても,100台には及びません。市は,敷地内駐車場と暫定駐車場を合わせて駐車場は足りているという考え方ですから,ベビーカーを引いた親子や幼児,お年寄りを200メートルも歩いていただく前提ということになり,児童館や地域包括支援センター,図書館などの施設利用を想定したものとしては,あまりにも不便で配慮を欠くと言わざるを得ません。また,敷地内と暫定駐車場で合わせて考えるということであれば,敷地内75台と暫定駐車場97台で総数は172台となってしまいますので,市の理屈で言えば,駐車場を造り過ぎということになってしまうのです。
 市民や利用者から敷地内駐車場の増設を求める多数の要望があり,敷地内に十分な用地があるにもかかわらず,必要とされる敷地内駐車場を優先的に検討しなかったのはなぜなのか疑念は残ったままです。
 公共施設は造ればいいというものではなく,それを利用する市民のことを考えなければ,単なる税金の無駄遣いになります。最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならないと規定した自治法等にも違背することになります。
 施設へのアクセス性を確保することは,施設整備のイロハのイだと思いますが,なぜ市民の声に真摯に向き合おうとしないのか理解ができません。グルッポの駐車場問題をずっと追ってきたことにより,現市政の問題点が顕著に現れていると痛感した次第です。
 御承知のように,本市の町内会加入率は,市の呼びかけむなしく,年々右肩下がりである中で,ニュータウンでは,時代に合った新しいコミュニティを構築し,グルッポのような施設は,その拠点になることが期待されていると思います。しかし,今のような向き合い方では,ニュータウンのコミュニティは分断され,街の活力やエリア価値の低下につながってしまうという危機感があります。実際に,高蔵寺ニュータウンでは,リ・ニュータウン計画の目標で掲げた人口や子育て世代の割合がどんどん低下を続けています。市が,これまでグルッポで対応してきたような姿勢では,残念ながら結果がついてこないこともうなずけます。
 市長には,市民やまちづくりへの向き合い方を根本的に見直していただくことを強く求め,反対討論といたします。

 

【末永けい関連質問等】

【高蔵寺ニュータウン】ようやくグルッポふじとうの敷地内駐車場が44台→75台になります

【グルッポふじとう駐車場不足問題】市民の皆さまと伊藤太氏の認識には大きな隔たりがあります

多くの市民の皆さまが声をあげたことで市は【グルッポ敷地内駐車場】を増設する方向に考えを改めました

【市民意見募集】グルッポふじとうの敷地内駐車場は15台増設で十分でしょうか

【グルッポふじとう】の敷地内駐車場を増設すべき状況なのは明らかです

【要改善】グルッポふじとうの敷地内駐車場が少なく、多くの市民・利用者の皆さまの足が遠のいています

グルッポふじとう(旧藤山台東小学校施設)敷地内に駐車場が足りず、みんなが困っているんです!