2008年5月22日撮影のMRI画像を添付図に示す。

腸骨(及び仙骨)の溶骨と周辺軟部(梨状筋等?)への進展が認められる。
2月から自覚症状がありながら3ヶ月も見落としていたことになる。

この致命的なミスについて私は自分の命をもって責任を取る覚悟は出来ている。
が、この極めて低レベルな「失敗」について、私は非常に「恥ずかしく」思う。

人様に話したい内容ではないがミスの「原因」については参考になる事もあるかもしれない。
簡単に経過を辿ることにしたい。

<2月>
・放医研で胸部、骨盤のCT撮影ー肺の転移巣の再発を確認。他異常なし。
・がんセンターでも、太もも裏が痛い事を申告。
 「胸部から大腿部への転移は稀」「CTに異常が無い」との理由で経過観察。
・近所の大学病院で整形外科受診。腰椎CTを取るも異常なし。「軽いヘルニア」との診断。

<3月>
・放医研で骨シンチ、PET-CT、胸部骨盤CT、等精密検査。「肺再発以外異常無し」
・国立がんセンターで胸部骨盤CT。「肺再発部以外異常なし」
・太もも裏痛が増強。徐々に座れなくなる。

<4月>
・3月末の精密検査で異常が無かった事から整骨院やカイロ、鍼に通いだす。5~6院試す。
 (一番効果があったのがAKA法というリハビリ手法。一時的に軽快する)
・大学病院でMRIを取ろうとするが、腰椎と骨盤を同時に撮影できないとのこと。
 「一般的には腰椎の方が怪しい」との事で腰椎を撮影。「異常なし」

<5月>
・どうしてもおかしいのがんセンターで骨盤MRIを依頼。
・「肺病巣の進展からして他への転移は考えにくい」、「大腿部への転移は稀」等の根拠から、
 あくまで「念のため」という位置づけでやっと転移が発見される。


結果論から言えば、
・私の場合、骨シンチに映らないタイプだった。(造影剤とCaの結合が弱いのかもしれない)
・PETでも3月末まで見つかり難い「程度」、「場所」への転移だった。
・骨盤への転移でありながら、自覚症状は坐骨神経を介した「大腿部」だった。
・私の癌は成長速度が極めて速い。

等の不運が重なったとも言える。しかし2月の時点で大腿部や骨盤MRIの予約を入れていれば、
3月には病巣が2~3cmのレベルで発見できたと思われる。

それを妨げたのは、
・統計的な根拠を信じて「疑い続けなかった」こと、
・想定外のトラブルに対する「対処」が欠けたこと、
だろうと思う。

本業の研究でも常に「失敗」はこの2つの条件が重なったときに起こる。

私は自分では何とかこの「神髄」が判る程度に経験を積んだつもりになっていた。
が、結果として、これまで修練し重ねてきた能力を何一つ発揮できず、凡ミスを犯した。

一流の研究者とは、常に「自分は間違っているかもしれない」と疑い続けられる者だと思う。
「自分は正しい、間違っていない」と思った瞬間から真実を追究する姿勢は失われる。

診断がついた時から癌で死ぬ覚悟は出来ている。
しかし、今回の凡ミスを取り返せず「2流」のまま終わる事だけは死んでも容認出来ない。
6月5日に実施した生検の結果が出た。骨盤内の腫瘤に癌細胞が検出された。
速報レベルなので詳細は追って報告があるが、明日から抗癌剤治療に入る。

議論は多岐に渡ったが期待しうる薬剤として
シスプラチン+ジェムザールの標準量からスタートする。

効果判定をこまめに行い、ダメなら即放射線。
MRIの画像上、転移は確実と評価された。確認の為6月2日にがんセンターで骨シンチを取る。

骨盤部は念のため45度斜めからも撮影。
結果は「cold」すなわち転移病巣を疑う集積は無し。

主治医も私もこの結果は理解できない。
偽陰性になることもあるがその確立は10%以下と思われる。

急遽「細胞診」のオーダーを入れ、生検で確認することになった。
まだ決着が付かない。
3月末の骨シンチとPET-CTを含む精密検査では異常は見られない。
放医研でもがんセンターでも「異常なし」の所見を頂く。

同時期に整形外科で腰椎MRIも取り、ヘルニアからくる坐骨神経痛との診断を受けた。
臀部と太ももは痛かったがそれ程でも無く、転移とは殆ど考えなかった。

しかし今腰部CTをよく見直すと骨盤内の像に不明瞭な境界がある。
この時に「骨盤のMRI」も直訴して取っていれば3月末に発見できたかも知れない。

4月末、ついに痛みから眠れなくなり鎮痛剤を飲み始める。
整形外科的には「ものすごくありふれた」症状らしく経過観察を続ける。
(MRIの予約を取ろうとしたら1ヶ月待ち、、。がんセンターで取る事にする。)
整体や鍼で症状が多少軽快する事もあり、完全に「整形外科的」症状と思ってしまう。

5月14日定期検診時に「念のため」と言い張り、なんとかMRIの予約を入れてもらう。
結果、転移がほぼ確実になった。

想像しにくい時期、場所、転移状態な事は否めないが私は2つのミスを犯している。
・3カ所の病院の見解が一致したとはいえ、他者の意見を無批判に信じたこと。
・CT検査を過信し、どんな手を使ってもMRIを取ろうとしなかったこと。
 (MRIにこれ程の威力が有ることを初めて知った。)

もうリカバリー出来ないほどの致命的ミスである可能性が高いが
私の失敗例をブログに記載する事で少しでもご参考頂ければ幸いに思う。
3月頃からずっと腰、臀部、太もも裏側の痛みが続いていた。
骨シンチ、PET、CT、腰椎MRIなど、疑われる場所を3月~4月に検査し異常なしだった。

が、どうしてもおかしいので骨盤MRIも先週取り、昨日結果を聞いた。

結果
・仙骨、腸骨に骨転移の疑いあり、
・仙骨につながる筋肉へも浸潤が疑われる。

との速報がでた。今週日曜から緊急入院し、6月2日に骨シンチの再検査を行う。
(ここまで炎症があればPETではほぼ擬陽性になるので取ってもムダ)
体調不良につき、一ヶ月近くブログの更新が出来ていない。

癌の治療経過や癌治療について記載すべき事は多いのだが、ほぼ寝たきり状態になっている。
(その様子すら更新できない、、)

記事の進展は暫くムリかも知れませんがコメントなど頂ければ可能な限りレスポンスするつもり
ですので今後ともよろしく御願い致します。

study2007
(study2008に改名するかちょっと考え中、、、)
私は元々我慢強い方かもしれない。特に「痛み」についても大抵の事は我慢できる自信がある。
例えば鎖骨骨折くらいだと「ちょっと痛いな」と思う程度で柔道の試合に出た事もあったし、
かかとの骨を亀裂骨折し歩けない状態の時もイザ試合となれば100mを11秒で走ったりもした。

しかしながら、病院に行く直前の癌の痛みはこれらの例を遙かに上回る「痛み」だったと思う。
最初に整骨院に行った時は「背中から胸にかけて鉄の塊が1kgぐらい埋め込まれている様な痛み」
と医師に訴えた。(しかしこの時は胸部レントゲンのみで「異常なし」と判定される)

問題はこれ程の痛みをなぜ我慢できてしまうか?である。
いくら私が我慢強くても、もう少し早く病院に行くべきではなかったか?

恐らく「セキ」もそうなのかも知れないが、癌の痛みの特徴は数ヶ月かけ非常にゆっくりと増悪
してゆく。例えば骨折などはある日突然痛みが現れる。我慢強さに関係無く「異常である」と
明らかに判断できる。

しかし癌は非常にゆっくりと進行するため「昨日と今日の差」は非常に小さい。天気や仕事の変動
に隠れ、「何かおかしいな?」と思いながらも相当悪くなるまで我慢できてしまう。
・起きあがる時にテーブルなどに手をつくようになる。
・荷物やバックが右手で持てなくなり左手で持つようになる。
・くしゃみをした時に胸全体が張り裂ける様に痛くなる。
・寝返りをうてなくなり、決まった姿勢で寝るようになる。

そんな「異常な状態」に陥りながらも自分なりに工夫し、対処しながら仕事や日常生活を続ける。

癌の症状に他とは違う特徴があるとすれば以下の3点ではないだろうか?
1.徐々に、そして数ヶ月単位の長期に渡り、ゆっくりと悪くなる。
2.安静にしても楽にならない。呼吸器の場合むしろ横になった状態の方が痛みが増す。
3.(かなり酷い状態でも)我慢できる。

特にタチの悪いのはこの「我慢できてしまう」点であろう。病院で1日中セキをしている患者も
「いやあ、症状は大した事は無いんだけどね、、、」と言う場合が多い様に思う。

40歳以上の喫煙者(経験者も含む)で心当たりのある方は検診を受けてみては如何だろうか?
・健康診断は役に立たなかったのか?
・癌が見つかるまで自覚症状は無かったのか?
という質問コメントを頂いた。癌患者なら誰でも聞かれる質問である。

検診については本ブログでも記載する予定でいるがこのペースだと数ヶ月後になりそうである。
私がグズグズしている間にも患者予備軍が本ブログを見ることもあるかと思うので1部記載する。

<呼吸器の検診について>
・胸部レントゲンは患部や読む人にもよるが径約10mm程度以上の大きさで無いと判別出来ない。
・(背骨や胸骨と重なる)縦隔付近の場合、径50mmの病巣を見逃しても不思議ではない。
肺癌の増大速度を「おおよそ3ヶ月で倍増」と仮定すると「発見時には既に厳しい」。

・一方、CTではスライドピッチにもよるが2~3mmの病巣を発見できる。
・メリットは「半年から1年程度早く」見つけられる点にある。ただし肺癌の発症は潜伏期にも
 よるが3~4年程度以前、なはずである。癌の統計に見られる様に発見時に1つ2つの病巣
 であっても実際には観測にかからない病巣が多くの場合存在する。半年早く見つけるメリットは
 必ずしも決定的なモノではない。

とはいえ1年早く見つければ転移の可能性は低い。また術前or術後の抗癌剤治療もかなり楽になる。
特に運悪く?肺門部や縦隔に重なった患部では肺内転移するまで見つからない場合が多いので、
そう言う意味で「喫煙者及び間接・直接の喫煙経験者」にとってCT検査は重要である。

<自覚症状について>
しかし、より重要なのは「自覚症状」である。私の場合は、
・殆ど眠れない程の、肩こり、胸痛、背中痛等である。
・血痰は無し。
・(今にしてみれば、、)少々のセキ、呼吸が浅い感じ?、食べ物のつまり感?程度である。
診察以前にもネットで調べ「血痰やひどいセキ」が無いことから私は癌の可能性を否定した。
これは完全に間違いである。かなり酷い状態になるまで殆どセキが出ない患者は沢山居る。

<私の自覚症状の一例について>
意外に思われるかも知れないが癌の診察がついた時、正直私は原因が判って「ほっとした」。
それほど背中や胸の痛みは酷かった。ネットや本で自分であれこれ病気について調べたりもした。

今考えれば明らかに異常事態である。にも関わらず私は「癌検診」を受けようとは考えなかった。
たまたま業者の不手際があり、予定されていた出張がキャンセルされ、時間が取れたので病院に
行った。そうで無ければ今でも病院に行っていないかも知れない。

長引く肩こりや背中、腰の痛み、、、これらは内臓疾患の可能性が充分にありうる。
例え定期検診が「異常なし」であっても本人が「何かおかしい?」と感じれば癌や重要疾患の
恐れがあると考えるべきである。

その際、
「自分の親族に癌は居ない」とか
「テレビCMでも大竹しのぶが肩こりの原因は末梢神経のキズ」と言ってた、
等の全く根拠のない情報は排除すべきである。調べて見なければ判らないのである。

またCTを撮影したら、どんなに医者に嫌がられても映像を全てCDに焼いて貰うべきである。
大抵の病院のシステムではディスクに焼いて貰えばwindows PCで見ることができる。
肺は結節が沢山あり、癌病巣を見極めるには上下の断面の流れの中で確認する必要がある。

どこの病院だろうが、どんな医者だろうが、「見逃す恐れ」は常に付きまとう。
私は職業柄「誰も信用しない習性」が身に付いており自分で確認した事以外は信じない。
これまでに恐らくのべ200時間以上はCTやPET、レントゲン画像を見てきたと思う。

見逃された後になって医者や病院の不平を言うのは勝手ではあるが、有効な手法では無い。
5mmピッチ以下で撮影してもらい、自分でチェックするのが最低限の「癌検診」と考える。
エピジェネティックな発癌研究の1例として有力になりつつある説にDNAメチル化がある。
DNAメチル化の詳細は例えば国立がんセンターのホームページにも解説がある。
国立がんセンター研究部「DNAメチル化異常と発がん」

2004年以後更新されておらず最新の情報とは言い難い。が、まあ、こういったweb情報の更新は
私の勤務先でも何年も「放置?」になる事は珍しく無い。仕事している研究者であればある程
「そんなヒマは無い」からである。ここでは参考程度に用いることにする。

他の情報等を含め、今のところ私の理解するメチル化とは、
・ゲノム内のCpGアイランドにメチル基が付加する事でmRNAの発現を調節する。
・DNAの1次構造を維持したまま、生体の分化(色々な臓器を作ったりする)を制御する。
・メチル化と脱メチル化は本来正常な生体の機能であり、親DNAから娘DNAに当然受け継がれる。
といったところである。

なぜメチル化異常が起きるのか?、また一度起こってしまった異常は正常化されるか?
という点が患者である私の興味の中心であるが、未だ明確な答えは無い。(と思われる)

ましてや現段階でDNAメチル化と食事を関連付ける事はマウスorラット実験程度の根拠
しかなく完全に時期尚早である。が、私を含めた末期癌患者にとって将来重要になるかも
しれない「幾つかの推定」を以下に記載しておく。
methyl

癌細胞内ではメチル化の結果として既にDNA一次構造の突然変異も起こっているかも知れない。
あるいは一次構造に異常が無くても、メチル化してしまった遺伝子は二度と正常に戻らないかも
しれない。癌患者が今更食事に気を使うのはムダな努力かも知れない。

しかし一方で、DNAの一次構造に異常の無い癌or癌患者が居る事もよく知られた事実である。
さらに、メチル化が酵素的な修飾であるならば細胞質内の酵素のバランスを正常に戻す?、
もしくは何らかの化学物質を付加する事で「可逆的に」正常状態に復帰できるかも知れない。

少なくとも食事をバランス良く制御する事で「新たな癌化」のリスクは下げられるかも知れない。
これは寛解を目指し、長期生存する事を目標とする私にとって重要な事の様に思える。

私は抗癌剤治療を調子良く維持する為、玄米+菜食を基本にしてきた。それを「非科学的」だと
批判する意見も当然ある。一方で血液の状態を監視し、動物性タンパク質の摂取も行ってきた。
これはマクロバイオティクスの立場からは認められない事かも知れない。

しかし私は今後もこの路線を維持するつもりである。恐らく遺伝的に肉食を主として来なかった
私(や、多くのアジア人)にとって牛肉や豚肉などの動物性脂肪はリスクが高そうだが、魚介類
でのタンパク質摂取はある程度必要な事の様に(勝手に)推定する。

一方緑黄色野菜はこれまでに不足して来た事もあり、今後も出来るだけ摂取するつもりである。
少なくとも「野菜で癌が治るわけがない」という意見は将来的に「間違い」になる可能性がある。
2003年4月14日ヒトゲノムの98.8%が解読され、ヒトゲノムプロジェクトの完了が宣言された。
ポストゲノム研究の主流は当然ながらゲノムと(癌を含む)疾病の関連を探ることにある。
(と、期待したい、、、)

癌研究の場においては、ヒトゲノムプロジェクトが終盤にさしかかった2000年頃に前後し、
DNAの一次構造変異説の「不備」が指摘され始め、細胞質内の発現異常に関する可能性、
すなわち「遺伝子外的な要因」がクローズアップされ始めた。このDNAの一次構造以外
の機構を中心的に取り扱うのを「エピジェネティック研究」と分類する様である。

まるで「流行語の羅列」である。が、そもそも70年代以前は発癌の場所に関する話題は
「DNA vs細胞質内」という構図を持ち活発に議論されていた様である。いわゆる
「タンパク質か?DNAか?論争」である。

70年代に入るとエームステストという細菌や微生物を使った変異原生性試験方が確立した。
簡便な試験により多数の発癌物質が試験され、突然変異との良い相関が確認された。さらに、
80年代にワインバーグet. al.,によりヒト膀胱癌の中に癌遺伝子が存在する事が確認された。
しかもその遺伝子はDNAの中のたった1個のG→T置換という「突然変異」が原因である事が
確認された。80年代後半にはP-53に代表される癌抑制遺伝子も発見された。

「画期的で先駆的な発見」と「比較的簡単な試験法の確立」により癌研究の中心は圧倒的に
「突然変異説」に傾いた。こういった「流れ」は医学に限らず自然科学の分野でしばしば
見られる現象である。主流の研究に「乗っかり」偉大な先人の後を追うのは楽だからである。

大した独創性も予算も必要とせず。似たような手法で「話題性の高い」結果が得られる可能性
があり、それでいて「最先端のつもりで居られる」からである。癌遺伝子を探す「宝探し研究」
に比べ、癌遺伝子の「意味」やそれを包含する「生体内の癌」の全体像を探求する努力は明らか
に不足していた様に感じる。

DNAのメチル化やアセチル化などは核外で起こる酵素的な修飾に過ぎない。しかし遺伝子の発現
には影響を及ぼす。癌研究において明らかな重要性があるにも関わらず2000年にMethyLight法
などが確立されるまで殆ど?クローズアップされて来なかった。どうやら今流行中の様である。

研究者が流行の説に乗っかり右往左往するのはある程度やむを得ない。予算を獲得したり、
学会で発表したりするのに便利であるし、そういった研究の中の幾つかは役に立つ事もある。

しかし私には時間的余裕は無い。治療方針や生活習慣を選定する上で「何を」「どう考え」
進めるか?は自己責任で、しかもかなりの部分を「推定」しながら進めねばならない。